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第1話「うどんとアニメと独裁と」

ありがとう

令成2年、日本。

四つの都市が独立した。

香川コウセンはその中でも特殊な位置にいた。

二次元規制条例。

狩夜崎史郎議長の名のもとに始まったそれは

書店からインターネットに至るまで

あらゆるアニメ絵、漫画絵的な作品全てに規制をかけた。

反対勢力もあるにはあったが、

狩夜は臆することなく職務に邁進した。


香川コウセン国空港には

出国用のゲートが二種類設けられていた。

香川国民とそれ以外の人々である。

それ以外は他国とさほど変わりがないのだが、

香川国民用のゲートには床に様々な二次元の絵が描かれていた。

日本刀を持つ少年や華美な衣装に身を包んだ美少女。

黄色い毛並みのねずみや青い肌のたぬきに至るまで

とてつもない数のジャンル絵が揃えられている。


今日もまた一人の脱国者が燻りだされようとしていた。

軍服を思わせる制服を纏った職員が

青年に九人組の美少女の絵が描かれた板を踏ませようとしている。

青年の体は震え、汗が頬から滴り落ちていく。

「高松市56689-1 中村友和!」

名を呼ばれた青年は足を上げ、

板を踏もうとした瞬間、避けるように転がる。

職員は獲物をみつけた狩人のごとく

目を細め、頬を歪ませる。

「めこちゃんを踏むなんて俺にはできねえ!」

「違反者だ!連れて行け」

「いやだぁぁぁぁぁぁ!」

中村友和はこうして空港に併設された矯正施設「製麺職人養成所」へと

連行され、製麺技術と献身を叩き込まれ全国へ香川うどん職人(監視付)として

出荷された。


そこに慈悲はない。

あるのはうどんへの愛と外貨である。


そして、中村大輔は兄である友和のせいで

家宅捜索と取り調べを受けていた。


「あんだろ、ああ?」

ロン毛の警察官が広島風のメンチを切りながら

睨みつける。

スマホ(監視アプリインストール済)、ベッド、屋根裏と範囲を広げても

それらしき物がみつからず、ロン毛は大輔を脅す。


「知らねえよ、兄貴が隠れてやってたんだろ」


精一杯の虚勢を張りながら

大輔は呟く。


「聞こえねえ、お前みてえなチェリーの声は聞こえねえ」

警官は大輔の腹にボディブローを放つ。

過去に秋葉原や原宿でみられたチーマーの如き恫喝とみえない形での暴力は

大輔の精神をすり減らさせていた。


「おい、あったぞ」

大輔の部屋に入っていった警察官の声が二人に届く。


「は?そんなはず・・・(用水槽の中にビニール袋で包んで隠したぞ)」

サングラスをかけた色黒の警察官がニヤけた顔で

証拠の雑誌をもってくる。

最終写真塾と書かれたA5サイズの薄い美少女アイドル専門雑誌であった。

「え?」

「は?」

大輔とロン毛の声が瞬間、重なる。


サングラスはページを捲り、叫ぶ。

「ほら、ここだよ、ここ」

新お嬢様専用機動姫戦艦ナデナデルナルナ特集と書かれたページを指さす。

ページの隅々にまで編集者の熱意が文章で埋め尽くされている。


「は?絵ねえじゃんこれ」

ロン毛は目を細めながら字を読むも

よくわかってないようだ。


大輔は震えた。

(こいつ・・・わかってやがる)


字は一つの記号に過ぎない。

ある程度の暗号解読技術と経験を使うことで

文字は絵へと認識される。

その名をAAアスキーアートという。









バカばっか

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