25.森の中の反戦エルフ達
グッドナイト財団、私設特殊工作部隊。
そのボス、メイナン・メイデン。
彼の部隊は今、森の入り口にある村にいる。列車を飛び降りて森に逃げたクロナツ達を捕まえる為、当初彼は直ぐにでも森を探索しようと考えていたのだが、調べてみると森は彼の予想以上に大きかった。国知らず森ほどではないが、それでも準備もせずに入れば下手すれば遭難してしまう。それで彼は計画を変更した。
「いやいや、ここで無理は賢明じゃないでしょ」
と。
まずは準備を整えることにしたのだ。本部に連絡をし、森の中を捜索するのに適した装備一式を送ってくれるように依頼した。ついでに部隊の臨時増員も。
もちろん、その間も森の近くにある交通の要所を押さえる事は忘れなかった。クロナツ達が来れば捕まえるように指示を出してある。今のところ、報告は何もない。ならば、そう遠くへは逃げていないはずだ。恐らくはまだ森の中だろう。
遭難して、死んでいなければ。
そして、そんな彼は今、借りている村の宿の部屋で、一人考え事をしていた。
煙草を思い切り吸い込むとゆっくりと吐き出す。
ついさっき、彼の部下から「垂れ込みがありました」と報告があったばかりだったのだ。また謎の手紙が届いたのだ。その手紙によると、クロナツ達は森の反対側にある小さな村に辿り着いたという事だった。その村は交通の便が悪い。もし、それが本当なら、今から行けば追い詰められる可能性が高い。
彼の部下は「早く向かいましょう」と彼を促した。これで森を歩かなくて済むと、期待しながら。
が、メイナンは動かなかった。
“――トップの連中が狙っていたオリバー・セルフリッジって野郎達がリッセの街を離れたって、少し前に連絡があったばかりだ。ちょっとばかり、タイミングが良すぎないか?”
普通なら、クロナツ達は人里を目指すと考えるだろう。ならば、何処かの村に辿り着いていてもおかしくはない。それに、交通の要所には見張りがいる可能性が高いと考えるのなら、取り敢えずは人が来ないような外れの村を目指すというのも、一応は理に適っている。
それから彼は煙草をもみ消すと、宿の従業員を呼んだ。やる気のなさそうな中年の女性が彼の前に顔を出す。
「何でしょうか?」
「いや、大した話じゃないんだが、もし仮に、この近くにある森の中で暮らそうと思ったら、何か手段はあるかな? キャンプ場があるとかさ」
するとその中年女性は、どうしてそんな事を尋ねるのか分からなかったからだろうが、怪訝そうな表情でこう答えた。
「キャンプ場なんてシャレたものはこんな辺鄙な森にはありませんよ。名所も何にもないですし。ただ、暮らすってのとはちょっと違うかもしれませんが、森の中にあるエルフ達の集落に、遭難しかけた者が助けられた事なら何度かありましたが」
「エルフ?」
「ええ、この森にはエルフ達が住んでいるんです。昔は人間ともよく交流していたんですが、前の戦争で無理矢理兵士として駆り出された後は、すっかり警戒してしまっているみたいで」
「ほー」と、それを聞いてメイナンは面白がった。それから、部下から報告のあった、送られて来た謎の手紙の“垂れ込み”を思い出す。
「ありがとうな、おばさん」
そう彼が礼を言うと、中年女性は怪訝そうな顔のまま、部屋から出て行った。
「恐らく、手紙の垂れ込みは嘘の情報だろうな。前は上手く利用されちまったが、今度はそうはいかない」
そう独り言を言うと、彼はそれから部下を呼んだ。そして、森の中にいるエルフ達について調べるように指示を出し、同時に本部に要求している装備に武器も追加しておいてくれと頼んだ。
“どうやら、久しぶりに大がかりな戦闘になりそうだ”
彼はそんな予感を抱いていた。
クロナツが運んでくれと言われた大きな荷物を一人で抱え上げると、森の中の集落のエルフの子達は「おおー!」と驚きの声を上げた。
彼らはエルフの子達よりも少し背が高い程度のクロナツが怪力を発揮するのが珍しくて面白いのだろう。
その素直な反応に、クロナツは少しばかり照れてしまった。
彼はこのような扱いに慣れていない。実は子供が苦手なのかもしれない。決して嫌いではないのだけど、どんな態度で接すれば良いのかが分からない。まさか、凄むわけにもいかないし。
その頃、近くの家の中では、フユが病気に罹った男のエルフの治療をしていた。
「――はい。これで大分楽になると思いますよ」
青白い寂光。フユの手から放たれるそれが、その男のエルフの頭部を癒していた。
「おお」と、男のエルフは目を見開く。「本当だ、随分と楽になった」
それを聞いて、彼の結婚相手だろう女のエルフが「ありがとうございます」とお礼を言って頭を下げた。
「いいえ、そんな。わたし達は、お世話になっている身分ですので」とフユは謙遜し、にっこりと笑う。
エルフ達にも治癒魔法を使える者はいるが、どんな病でも治せるという訳ではない。フユは偶然、その病気の治療方法を知っていたのだ。
テントの前。
「これも、よろしくねー」
と、エルフの少年がベルの形をした道具を置いて行った。
「はいー」と、それにノーエンは答える。それから直ぐに目の前にある筆と睨めっこをし始めた。
彼は今、集落の魔法道具の修理を一手に引き受けているのだ。簡易テントを立ててもらって、その中で運ばれて来た故障した魔法道具を悪戦苦闘しながら直している。
彼は魔法関係の技術者だが、研究が中心で道具を作ったりは滅多にしない。だから苦手だと言っていたが、それなりにがんばっているようだった。
クロナツ達は、今、森の中にあるエルフ達の集落にいる。
エルフ達に森の中で囲まれ、矢を向けられた時は、殺されるものと思っていたが、「新技術を戦争に使わせない為に、グッドナイト財団から逃げている」と事情を説明すると、彼らは態度を急変させ、クロナツ達を集落に迎え入れてくれたのだ。
どうやらそのエルフ達もかつての戦争で随分と酷い目に遭わされたらしい。だから、クロナツ達に協力してくれたのだ。森の奥に引き込んでいるのも、無理矢理戦争に参加させられないようにする為なのだとか。
何もしないで集落の厄介になるわけにはいかないと、クロナツ達はそれぞれの特技を活かして村に恩返しをしていた。
クロナツはその怪力で力仕事を。フユは治療や料理、裁縫などを。ノーエンは魔法道具の修理。
エルフの集落の暮らしは、贅沢さえ期待しなければそれほど悪いものでもなかった。少なくとも、いつ殺されるか分からないような逃避行よりは随分ととマシだった。
ただ、流石にいつまでも厄介になっているわけにはいかない。クロナツはそう考えていた。
このままいつまでも自分達がここに居続ければ、いずれはグッドナイト財団が追って来るだろう。しかも、武装して。この集落のエルフ達を、自分達の戦闘に巻き込むわけにはいかない。
「……クロナツさんよ、今度はこっちを頼まれてくれんかね」
荷物を運び終えると、クロナツは年配のエルフの一人にそう頼まれた。どうやら井戸の水を汲んで欲しがっているようだ。
「おう。任せておきな」
そう言うと、クロナツは腕をくるくると回しながら、井戸に向って歩いていった。が、そこで遠くの空に妙なものを見つける。
――なんだ、ありゃ?
翼がある。白い。だが、鳥ではない。もっと硬い感じがする。
そしてクロナツは、それに物凄く悪い予感を覚えたのだった。
「いやぁ、優秀、優秀。
大したもんだ」
そう言いながら、メイナンが上機嫌で森の中を進んで行く。どんな装備なのかは分からないが、こんもりとした着ぶくれしたような恰好をしている。
彼の傍には一時的に応援を頼んで増えた彼の部隊の構成員達がいて、上を見上げながら歩いていた。
彼らの上には、鳥のような姿をした飛行能力を持った魔法疑似生命体が飛んでいて、森の中を案内していた。中にはまだ“それ”から送られ来る映像に慣れないのか、時折、つまづいてしまう者もいたが、大きな問題もなく有効にその魔法疑似生命体は機能していた。
スカイ・ナビゲーター。
それがその魔法疑似生命体の名前だった。木で作った体で補強してあるので、一見すると魔法疑似生命体には思えないが、鳥にも見えない。彼らが知る中で最も近いのは凧だったが、飛行機というものがもしこの世界に存在するのなら、それが一番イメージに一致するかもしれない。
スカイ・ナビゲーターは、単に人間達を先導するだけではなく、空の上から地上の様子を捉え、その映像を地上にいる人間達の頭の中に送り続けるという能力も持っている。
だから、行き先に障害物があったなら直ぐに分かるし、探索にも使えるし、近くに誰かがいても直ぐに分かる。
しかも、スカイ・ナビゲーターは、魔力がなくなりかけると自由落下をし、風圧を魔力に変えて蓄える能力まであった。つまり、一度上空まで上がれば、エネルギー補給いらずで壊れるまで長期間動き続ける事が可能という優れ物なのだ。
実験でその有用性は確かめられていたが、こうして実戦投入されるのは実は初めてだった。
「いやぁ、“実証実験をやってやる”って技術部に言ったら喜んで格安で貸してくれたからなぁ、これ。
ラッキーだった」
メイナンが空を飛ぶスカイ・ナビゲーターを眺めながらそう言った。それを聞いて部下の一人が驚く。
「え? あれ、実証実験って名目で貸してもらったんですか?」
「おう。因みに、他の装備もだからな。壊すなよ」
そう澄まし顔で返すメイナンに部下は「はぁ」と曖昧に返事をした。相変わらずだなこの人は、などと思っている。
そんなタイミングだった。
やや遠くだが、森の隙間にある集落の映像が、彼らの脳裏に送られて来たのだ。
「おっと、見つけたぞ」
近くにエルフがいる可能性を考えて、メイナンは小声でそう言った。スカイ・ナビゲーターを見つけられてしまったのか、集落のエルフ達が何やら騒いでいるのが分かる。
“目立ち過ぎるってのが、このスカイ・ナビゲーターの欠点だな。夜なら良かったが、夜の森を歩くってのも危険だしなぁ”
などと、それを見て彼はそんな感想を持つ。
「ボス」
集落のエルフ達が戦闘準備をし始める映像が送られてくるのを見たからだろうが、部下の一人がそう深刻そうな声で言った。
「分かってるよ。こっちの装備は最新式だが、地の利は向こうにあるから油断できない。しかし、対策は既に考えてある。その為に頼んだ装備でもあるんだよ、これは」
着ぶくれしたような装備を指で示す。
そう説明するメイナンに部下はこう質問をした。
「対策と言いますと?」
「あっちが有利なのは、ここが森の中だからだろう? なら、森の中じゃなくしちまえばいいじゃないか」
メイナンは嬉しそうににやりと笑う。その顔はとても邪に思えた。普段やる気のない彼にしては珍しくアグレッシブだ。
「――おいっ! 無理に対抗しようとするな。逃げちまえば良いんだよ!」
クロナツがそんなアドバイスを、集落のエルフ達にしている。好戦的な彼にしては珍しい。ノーエンはそれに驚いていたが、フユは普通の顔をしていた。
「そうです。森の木々がわたし達を隠してくれます。多分、簡単に逃げられます」
彼女もそう説得しようとしたが、エルフ達は首を縦には振らなかった。
「冗談じゃねぇ!」
エルフの男の一人が言う。
「オレ達は戦争でたくさん仲間を殺されたんだ。したくもない戦争に無理矢理参加させられてよ。
その上、この土地まで奪われて堪るもんか!」
そう言って、弓矢を準備する。
他の一人が言った。
「私達には木々の隙間から、正確に敵を射貫けるだけの弓矢の腕前があります。この辺りの地形も熟知している。森の中での戦闘では負けはしません」
それを聞いてノーエンが言う。
「いえ、多分相手もそれを分かっていて、準備しています。あんな鳥みたいなもんまで用意しているくらいですよ?」
そして空を飛ぶ、恐らくは案内用だろう魔法疑似生命体を指差した。またクロナツが口を開いた。
「あいつらの目的は俺らだ。別にこの集落を乗っ取ろうと思っている訳じゃない。一緒に逃げて、俺らがいないと分かれば、あいつらは直ぐにどっかに行く!」
エルフの男達はクロナツ達の説得に耳を貸そうとしなかったが、エルフの女達は多少は揺らいでいるようだった。
――逃げるだけで済むのなら、その方が良い。
そう思っているようだ。
それを察してか、少しだけエルフの男達の態度も軟化したように思えた。そこにフユが言葉を加えた。
「戦争が嫌いとあなた達は言っていましたけど、あなた達がしようとしているのは、戦争とどう違うのですか?」
そしてその言葉で、エルフの男達の何人かは弓を下げた。悲しそうな顔で、フユのことを見つめる。
後少しで説得できそうだった。
――が、その時だった。
目の前の森が突然燃え上がったのだ。
クロナツが言う。
「あいつら、森に火を放ちやがった!」
火は急速に燃え広がり、あっという間にエルフ達の集落を取り囲んだ。普通の燃え方ではない。恐らくは、特殊な火の魔法だ。これでは逃げ場がない。それどころか、焼き殺されてしまう。
「ハッハー!」
そこでそんな笑い声のような掛け声のような声が聞こえた。
燃え盛る炎の先、着ぶくれしたような姿の男達が立っていた。その中心にいる恐らくはボスだろう男が言う。
「どうやら状況は分かっているようだな。頭が良くて助かるよ」
当然、皮肉だ。
血の気が多いエルフの一人が、その男に向けて矢を放った。ところがその矢は、途中の炎で引火し、着ぶくれしたような装備に当たると跡形もなく崩れてしまった。
どうやら矢による攻撃は無効のようだ。
そこでフユが言った。
「何かしら、あの着ぶくれ怪人は?」
ノーエンが続ける。
「装備とはいえ、よくあんなダサい恰好ができますね。恥ずかしくないのでしょうか?」
クロナツが更に続けた。
「恥知らずじゃなくちゃ、火攻めなんてできねーだろ」
それを聞いて敵のボスだろう男は、頬を引きつらせながら「お前ら、本当に状況が分かっているんだろうな?」と、そう言った。
「この炎は我々のコントロール下にある。つまり、いつでもお前らを焼き殺せるってことだ。だが安心しろ。殺すつもりはない。
ただ、まぁ、炎が燃えている間で、魔法の結界をこの狭い集落全体に張ってやる。つまり、お前らは何処にも逃げられないカゴの中のネズミってわけだ。
後でゆっくりと捕まえてやるからな、覚悟しろ」
それからその男はそう楽しそうに説明した。その説明通り、彼の部下達は集落に結界を張り始めたようだった。
「あいつらぁ! 神聖な森を燃やしやがってぇ!」
やがて、我慢の限界を超えたのか、エルフ達が矢を一斉にグッドナイト財団に向けて放った。が、既に結界が効き始めているのか、今度は届きすらせず、途中で矢は跳ね返されて落ちてしまう。
「無駄だ。もう詰んでいるんだよ。お前らは捕まるしかない」
それを見て、敵のボスがそう言った。
がしかし、そこで異変が起こったのだった。
「――そうとも限りませんよ」
そんな声が響いたかと思うと、正体不明の黒い球体がクロナツ達の目の前に現れる。そしてその球体は、森を焼いている炎を吸収し始めてしまったのだった。
「なんだぁ?」
メイナンはその目の前で突然に起こった信じられない現象に思わず目を見開いた。技術部が開発した新種の炎の魔法が、どんどん無効化されている。いや、それどころか、吸収されて取り込まれてしまっているように思えた。
炎を吸収すればるするほど、黒い球体が赤黒く光り、熱を帯びているように見えたのだ。
やがてあらかた炎を吸収し尽すと、その球体は形状を変え始めた。尻尾が生え、手が生え、足が生え、まるで巨大な黒いカエルのような姿に。しかも、吸収した熱はそのままのようで、赤黒く光っていた。
見たことも、聞いたこともない魔法。
黒い球体は完全にカエルの姿になると、「ゲコォ!」と鳴いた。開いた口からは、少しだけ炎がチロリと燃え上がった。
「なんだ、ありゃあ?」
メイナンが再びそう叫ぶと、それを合図にするように彼の部下達が一斉にその黒いカエルに向けて銃を放った。
が、まったく効いていない。弾いた音すらしないので、通り抜けているか、或いは銃弾すらも吸収されてしまっているのかもしれない。
それからその黒いカエルは、口を開けるとまるで舌を伸ばすように炎を吐いた。その炎はメイナン達に襲いかかり、数人を巻き取るようにして投げ飛ばした。
彼らの装備には防火効果があるらしく、炎によるダメージはないようだったが、それでも投げ飛ばされたことで苦しんでいる。
「ゲコォ!」
カエルはまた鳴くと、今度はジャンプをしてメイナン達の中心に着地した。衝撃で彼らは吹き飛ばされる。そしてその中にはメイナンの姿もあった。カエルは倒れているメイナンを見つけると、手で押さえつける。
メイナンはそれで身動きが取れなくなった。しかも、カエルは高熱を発している。彼の装備には防火効果があるとはいえ、このままでは熱によるダメージも受けそうだった。
「勝負ありですね」
そこでそんな声が聞こえた。
首を曲げて、その声の方を見ると、エルフ達の更に奥から痩躯で長身の男が現れた。傍らには黒い服を身に纏った女の姿もある。恐らくは魔女だ。
「まさか、オリバー・セルフリッジと、闇の森の魔女か?」
メイナンはそう呟いた。
――どうしてだ? どうして、この場所があいつらに分かった? 燃えた森の煙でも見たか? いや、それにしても来るのが早すぎる…… まさか!
そこでセルフリッジは言った。
「間に合って良かった。なんとか、助けられましたね。あなたのお陰です」
隣にいる魔女が返す。
「いいえ、セルフリッジさんの力も必要でした。敵が上空から森の中を探しているだろという予想が当たったから、わたし達も追って来られたんですから」
やはりか!
と、それを聞いてメイナンは思った。
それほど多くない人数で森に入って、クロナツ達を見つけられる手段となると、上空から探すくらいしかない。
そう当たりを付け、セルフリッジは上空を探すように恐らくは闇の森の魔女に指示を出したのだろう。
つまり、スカイ・ナビゲーターを目印に奴らはここまで追って来たのだ。
「まだ、抵抗しますか?」
それから、セルフリッジがそう訊いて来た。メイナンは手を振って直ぐに降参の合図を出す。珍しくやる気のある面を見せていたが、本来、彼はあまりやる気のあるキャラではない。諦めるのは早かった。
そして彼らグッドナイト財団の特殊工作部隊は、それからあっけなく縛られ、動きを封じられてしまった。
彼らをどうするかは、どうやらエルフ達の手にゆだねられることに決まったようだ。過激な発言をする者もあったが、そのまま近くの村まで送り返すことになりそうだった。
「……あなた達を助けに来たのです」
場が落ち着きを取り戻すと、セルフリッジはクロナツにそう言った。普通なら、そんな話は俄かには信じないだろう。クロナツの性格ならば特に。だがしかし、今回のケースは例外だった。
「あなた達を助けるように求める正体不明の手紙が何度も届きまして。しかも、どうやって調べているのかはまったく分かりませんが、場所まで書いてある。
……まぁ、もっとも、それほど情報は多くなくて、目印がないから仕方ないのかもしれませんが、今回も“この森のエルフ達の集落”としか書かれていませんでしたがね。
手紙が来ると、その所為で僕らの居場所がグッドナイト財団にバレてしまうので、無視し続けるわけにもいかず、こうして僕らはあなた達を助けにやって来たというわけです」
そのセルフリッジの説明を聞いて、クロナツとフユの二人は互いに顔を見合わせた。大体の事情を察したようだった。誰がどうやって自分達の居場所を調べ、誰がその手紙とやらを送ったのかも。
アカハルとシロアキだ。
間違いなく。
「……信じてはもらえないかもしれませんが」
そう困ったような顔で言い終えるセルフリッジに対し、クロナツは「いいや」と返す。
「信じるぜ、あんたのその話。なにしろ、こっちには、そーゆーことをやりそうな連中の心当たりがありまくりだからな。間違いなくあいつらだ!」
そして、そう言い切った。
彼はとても怒っているようだった。




