第7話 初クエスト
翌日になり、俺とエミリアは現在ギルドにて挑戦するクエストを選んでいる。
ちなみに昨夜は当たり前だが、期待するようなことは何も起こらなかった。ま、分かってたけどね。はあ……。
俺がそうやってちょっぴりへこんでいると、エミリアが質問してきた。
「ユウト、これなんかどう? オークの討伐クエストみたいなんだけど」
「ほう、どれどれ」
クエストの内容を読んでみる。
王都の西の森にオークの群れ(10体)が出現し、近くの村が襲われたりしているので討伐して欲しい。報酬は10万レード。クエストランクB級。
オークか。RPGとかでよく見るあれだな。まあめちゃくちゃ強いってイメージもないしいけるだろう。 ん? 待てよ?
「あれ? エミリアってC級じゃなかったっけ? クエストランクB級ってあるけどこれでいいのか?」
「ええ、これでいいわ。あたし最近はわざとB級クエストをやるようにしてるのよ。2週間後にあるB級昇格クエストに備えてね。まあB級クエストの中でも難易度が高そうなのは極力避けてるけどね」
「あー、そういうことなのか。なら俺もこれでいいかな」
へえ、B級昇格クエストが今度あるのか。それはいい。俺もそれ受けよっと。E級からはなるべく早くおさらばしたいしな。
「決まりね。じゃあ受付に行って申請しましょ」
「ああ」
俺とエミリアはクエスト用紙を持って受付のエマのところへ向かう。
「おはようございます。ユウトさん、エミリアさん。クエスト申請ですか?」
「ああ、このクエストを頼むよ」
俺はオーク討伐クエストの用紙をエマに渡した。
「B級クエストですか。なるほど。まあユウトさんはE級とはいえ昨日ガイさんを倒した程の実力者ですし、エミリアさんもここ最近B級クエストをいくつもクリアしてますから問題なさそうですね。いいでしょう。クエスト挑戦を許可します。気をつけて行ってらっしゃいませ」
「おう。じゃあ行くか」
「ええ。あ、ちょっと待って。そう言えばユウトって武器とか何も持ってないけど、昨日みたいに素手で戦うの? それとも何か魔法とか使うわけ?」
「あ……」
そういや何も考えてなかった。素手でも十分戦えそうな気はするが、せっかく異世界に来たんだから剣とか魔法で戦いたい。
「うーん、特に決めてないけど、剣とか魔法が使いたいなあ」
「そう。なら魔法剣士になるわけね。あたしも魔法剣士スタイルだからおすすめよ。まああたしは剣より魔法がメインだけどね」
おお、魔法剣士っていい響きだなあ。ぜひ、それでいこう。
「でも、今急に魔法を覚えるってわけにもいかないから、今日のところは剣で戦うのがいいかもね」
「まあそうだな」
剣なんて使ったことないけど、学校の剣道の授業で先生に褒められたこともあるし、きっといけるはずさ。
「でも、ユウトって剣を買うお金無いわよね?」
「あ、そうだった」
「あたしも剣を買ってあげるお金まではさすがにないし……、あ、そうだエマさん。たしかギルドって剣を貸し出してなかったかしら?」
「ええ、貸し出してますよ。あまりいい剣ではないですけどそれでもいいなら」
「かまわないわ。今日のところはそれでなんとかするわ。ねえ、ユウト」
「まあ貸し出してくれるだけありがたいしそれでいいよ」
「分かりました。では、どうぞ」
俺はエマから剣を受け取った。少々年季が入っているようだが、まあ大丈夫だろう。
「あ、あとこれあげます」
エマが何かの本を俺に渡してきた。なんだろう。
「えっと、これは?」
「魔法大全っていう本です。魔法を使いたいって話してたので、どうかなあと思って」
「まじか。結構よさそうな本だけどもらっていいのか?」
「ええ、私はもう十分読み込みましたし、ぜひ貰ってください」
「そうか。ありがとう。大事にするよ」
「いえいえ、どういたしまして」
よし、これで準備は整ったな。いよいよクエスト初挑戦だ。
「じゃあ、早速クエストに向かいましょう」
俺たちはクエストの舞台である西の森へと向かった。
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「よっしゃあ! これで3体目!」
俺とエミリアが森へ入るや否や、待ってましたと言わんばかりにオークの群れ10体が襲いかかってきたので、俺たちは今、絶賛戦闘中だ。
そして、ただ討伐するだけではつまらないので、どちらが多く倒せるか競っている。オークだけにね。
「やっぱやるわね。でも、あたしはこれで5体目よ! ファイアボール!!」
エミリアの放ったファイアボールがオークに見事直撃し、一撃で仕留める。
ファイアボールっていうと弱いイメージだけど、エミリアの魔力が高いからなのかかなりの高威力になってるな。
いいなあ魔法。俺も早く覚えてー。
「グオオオ!!」
俺がエミリアの魔法に見惚れていると、残りのオーク2体が同時に俺に襲いかかってきた。
「やべっ」
俺はオーク2体の振り下ろしてきた棍棒をとっさに剣で同時にはじく。
そして、はじかれたことでバランスを崩してよろめいたところをすかさず攻撃する。
「これで終わりだ!」
俺はオーク2体の首を正確にはね、勝負は決した。
「5対5。勝負は引き分けね」
「そうだな。正直5体目倒された時は負けるかと思ったよ。でも引き分けかー。どうせなら勝ちたかったぜ」
「あたしだって勝ちたかったわよ。でも、初めてのクエストでこれだけ戦えるってあんたやっぱ相当すごいわよ」
「そ、そうか? なんか照れるな」
面と向かってそんな褒められると素直に嬉しいな。クエスト初クリアの喜びと合わさって2倍嬉しいぜ。
「さて、ギルドに戻りましょうか」
「そうだな。報酬が俺たちを待ってるぜ」
そう言って歩き出そうとしたその時だった。
巨大な咆哮が突然真後ろから聞こえた。
「グアアアアアア!!!!」
驚いて振り返ると、そこには紫色という気持ち悪い色の身体をした1体のオークがいた。
それはさっきまで戦っていたオークよりも身体の大きさがケタ違いに大きく、10メートル近くありそうな巨体を誇っていた。また、武器である棍棒も俺の身長以上ありそうだった。なんだこいつは。
「ヴ、ヴェノムオーク!! 何でこんな森にいるの!?」
エミリアがそう叫んだ。そして顔には焦りの色が見える。
「ヴェノムオークって言うのかあいつは。強いのか?」
「強いってもんじゃないわ! A級冒険者でも殺されることがある要注意モンスターよ!!」
A級でもやられるのか。それはなかなかのもんだな。
「ってことはこいつを倒せば、俺はA級以上の実力があるってことか」
「はああ!? あんた戦うつもり!? 無茶よ! あんたが強いのは知ってるけど、さすがにヴェノムオーク相手じゃ勝てっこないわ!! 逃げましょう!!」
エミリアがそう叫ぶ。
確かにそんなイレギュラーな強さのモンスターが現れたんだから、エミリアの言うとおり逃げるのが正解なんだろう。
だが、イレギュラーな強さなのは俺も同じだ。S級を目指すんだから、こんなモンスターにビビっている訳にはいかない。
「いや、逃げるのは悪いがなしだ。俺は戦うぞ」
「で、でも!!」
「大丈夫だ。戦うからには必ず勝つ」
そう言って俺はヴェノムオークに挑むのだった。




