第97話 色街のお姉さんたち
コマちゃんとバルドが大活躍します。討伐成功パーティーは乱れまくります。
(11月14日です。)
ゴロタ達は、舟の上にいた。真っ直ぐ、バルドが飛んでいる付近を目指している。
バルドには、一本のロープを掴ませている。そのロープの先には、生きたニワトリの脚が結わえ付けられている。ニワトリは、逃げようと必死に羽ばたいているが、逃げられる訳がない。バルドが、ニワトリの高さを水面ギリギリにする。瞬間、大きな口を開けた水竜が、ニワトリを一口で丸呑みした。勢い余って、首の付け根まで、水面から出てしまった。
「「ウインド・カッター」」
ギュイイーン、ズバン!!
シェルさんと、ノエルの風魔法が炸裂した。水竜の頭が落ちた。しかし、胴体が死んでいない。何も無い首の切り口から、血を吹き出しながら、水底目指して逃げて行く。残された頭が、ニワトリを加えたまま、沈んでいったが、浮力があるのでゆっくりだった。僕達は、バルドが離したロープの片方を持って、水竜の頭を引き上げた。ニワトリには、大きなフックを取り付けていたので、口から外れる事はない。
しかし、逃げて行った胴体が気になる。あれで復活したらキモいが、相手は魔物である。油断は出来ない。バルドが、警戒音を発した。下だ。そう思った瞬間、僕達の舟が、底からひっくり返された。船頭さんと僕達全員、そしてコマちゃんが、水面に投げ出された。コマちゃんは本来の姿に戻って、犬カキで泳いで、皆を救助していた。
『あやつは、未だ下じゃ。』
コマちゃんは、本来の姿だと念話が出来る。
『皆を、岸まで連れていってくれ。』
コマちゃんは、ビラとノエルを背中に乗せ、シェルさん達と、船頭さんを背中のたてがみに捕まらせて、岸に向かった。シェルさんは、しっかりロープの端を握りしめていた。
僕は、シールドを大きく張って、水中に球形の空間を作った。シールドは、僕には、効果がないため、中からの攻撃は可能だ。浮力を調整しながら、その場に浮かんでいると、首から血を吹き出しながら、水竜が突っ込んでくる。頭が無くなった水竜には、それしか攻撃方法が無いので仕方がない。
僕は、十分に引き付けてから、水竜の心臓付近でファイア・ボールを炸裂させた。水中では、5m離れると、魔力を到達させるのが難しいのだ。今回は、触れる事が出来そうな位、近かったので、完璧に出来た。しかし、余りにも近すぎたため、水竜の死体は、僕のシールドに激突した。地上だったら、全くダメージなく終わるのだが、ここは水中である。シールドごと撥ね飛ばされてしまった。僕は、シールドを身体に纏うだけにして、岸に帰る事にした。
水面に浮かんで、『敏捷性強化』をかけることにより、水上を歩くことにした。まず、片足を水面上に出した。水面を踏みつけるようにすると、当然に水面下に沈もうとする。その刹那、もう一方の脚を水面上に出し、水面を踏む。物凄い速度で、繰り返すと、脚が沈まないようになり、水面に立っている状態である。周囲には、物凄い波紋が出来ている。そのまま、僕は、前に一歩踏み出した。その脚が沈まない前に、もう一方の脚を前に出す。こうして、僕は岸辺まで戻った。シールドのお陰で、一滴も濡れずに済んだようだ。
皆は、ずぶ濡れだったので、シールドで覆い被せ、中に温風を流し込んで乾かした。勿論、船頭さんとコマちゃんは別である。今回、一番活躍したのはバルドだったので、ニワトリのむね肉をお皿一杯に上げた。コマちゃんも活躍したので、皆から抱っこのご褒美を貰っていた。クレスタさんの胸に顔を埋めて、うっとりしているスケベ犬だった。
街に戻って、組合長から報酬と依頼完了報告書へのサインを貰った。水竜の首も冒険者ギルドで金貨5枚で引き取って貰うつもりだったが、組合長が、今晩、一晩貸してくれと言ってきた。今夜、組合員の仲間達と討伐記念祝勝会をやるので、そこに飾って置きたいと言うのだ。僕達は、首を組合に寄付することにした。喜んだ組合長は、今日の祝勝会にぜひ参加してくれと言ってきた。喜んで参加させて貰う。
夜、全員で組合に行ったら、大勢の漁師さんが集まって、浜焼きパーティーをしていた。漁師さんの中に混じって、綺麗なお姉さん達が大勢いた。色町から、馴染みを呼んで来たらしい。僕は、色っぽいお姉さんに囲まれて、顔が真っ赤になってしまった。当然にシェルさん達は、それを阻止したいが、大勢の漁師さん達に囲まれて、僕に近づくことが出来なくなっているようだ。
お姉さんの一人が、胸をポロンと出して、僕の顔をパフパフし始めた。隣のお姉さんは、僕の片手をスカートの中に引きずり込んでガンガン動かしている。ああ、遂に一人のお姉さんが、僕の前にしゃがんで、ズボンを下ろそうとしている。シェルさんは、身体を真っ赤に光らせて、漁師さん達を2~3m吹っ飛ばしながら突進して、僕を奪還しに来た。僕の右手が白く濡れていたので、直ぐ洗濯石で消毒していた。
「ゴロタ君、もう安心よ。怖かったでしょ。」
いえ、ピクピク引き攣っているシェルさんの顔が怖いんですけど。
至る所で、漁師さんとお姉さんが抱き合っている。もう、宴会なのか乱行パーティーなのか分からなくなったので、ホテルに帰る事にした。エーデル姫が、バケツ一杯のカニを貰っていたので、ホテルに帰ってから飲み直しすることにした。ビラは、カニを食べながら、宴会のシーンを想い出していた。
パンツを履いてないお姉さんが、漁師さんの上に乗っていた。お姉さんを押さえつけて、腰を動かしている漁師さんがいた。初めて見るシーンで、思い出しただけで、顔が赤くなる。ビラは、考えないようにしてカニを食べ続けた。自分のパンツの中が洪水になっていることには気が付かなかった。
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(11月15日です。)
朝、停車場に行くと、組合長と数人の漁師さんが来ていた。バケツ5杯のカニとエビをくれた。早速、痛まないように、イフちゃんに預けた。昨日、来ていたお姉さん数人も来ていた。僕と、お別れの挨拶をしたいと言う。とっても嫌な予感がしたシェルさんが、僕の前に立って阻止しようとしたが、後ろに回り込んだお姉さんに、僕を取られてしまった。次から次へと、濃厚なキスが続いた。僕の股間を擦ったり、自分の股間に手を引き込もうとして、仲間に引き剥がされていた。
馬車が、出発した。お姉さん達は、なぜか皆、泣いていた。僕、泣かれるような事、何もしていないんですけど。
シェルさんは、超不機嫌だった。何で、風俗のお姉さん達まであんなになっちゃうのよ。この『垂らし』が。大体、ゴロタなんて、ヒッキーで、コミュ障で、女性恐怖症でインポなのに、どこがいいのかしら。(あの、シェルさん。自分の言ってる事が矛盾しているって分かりませんか?それに、何か増えてるし。)
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(11月20日です。)
僕達は、ノースレーク湖のほとりで夜営をしていた。前の村から、次の都市まで、夜営が2回続く。今日は、その2回目だ。夜は、随分、冷え込んできた。皆、僕のテントで寝たがった。シールドで、常に適温が保てるからだ。クレスタさんも、シールドが使えるが、防御のための円形の盾を出すことしか出来ないのだ。まあ、それが普通で、僕が異常なのだが。ビラは、一度も僕のテントで寝たことがないので、分からないが、コマちゃんが、寝袋の中に入ってくれるし、時々バルドが足元で蹲って寝ているので寒くはない。しかし、何か胸がモヤモヤする。それが、何かは分からないが、そんな時は、決まって嫌らしい夢を見てしまう。あの漁師さんの行為を。上に乗っているのはゴロタさんで、勿論、下で悶えているのはビラだった。
翌日、早く目が覚めたビラは、白い息を吐きながら、岩の陰に行った。トイレに行こうと思ったのだ。そこには、『紅い大剣』を構えたゴロタがいた。声を掛けるのが躊躇われる程の緊張感と静寂。剣を振るうと、紅い光の残像が弧になって目に残る。ズーッと見ていると、意識を奪われそうになる。ゴロタの銀色の中に混じっている黒髪、それがゆらゆら揺れてから、バサッと乱れる。紅い光が走る。
見た目に囚われずに見ると、ビラよりもずっと大人のような気がする。ビラは、そっとその場を離れた。
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(11月21日の夕方です。)
イーデル東部郡最後の都市、ラッシュ市に到着した。ここは、大陸極東部の島国、ノエルのお母さんの故郷、倭の国の人達が多い。黒髪直毛で、黒い瞳が特徴的だ。余り背は高くない。でも、どうも皆、元気がない。男性も女性も下を見て歩いている。着ているものも、決して汚れているわけでは無い。だが、くたびれているのだ。
最上級ホテルのフロント係に聞いて理由が分かった。彼らは、近くの稲作農家の人たちだが、折角収穫した米が出荷できないため、こうして街に来て助けを求めているそうだった。出荷出来ない理由を聞いたところ、オークが大発生しているそうだ。
ラッシュ市に駐屯している帝国軍は、わずか300名で、既に100名が損耗している。この都市の冒険者は、『B』ランクが最高で、それも2パーティしかいないそうだ。オーク達は農場を襲うだけでなく、農家、特に小さな子を襲うので、子供達が大分いなくなってしまったそうだ。勿論、小さな子は、オークどもの餌になっている筈だ。今日は、もう遅いので、明日、ギルドに行って、詳しい話を聞くことにした。
夜、眠っていると、イフちゃんに起こされた。
『外が騒がしい。』
僕にも、直ぐ分かった。オーク達が表を歩いている。おかしい。この世界では、城壁都市が当たり前だ。それに、城門には、魔除けの石板が置かれ、通常、オーク程度の魔物は、突破出来ない筈だ。何かが、起こっている。僕は、直ぐに起きて、手早く着替えた。装備もつけ終わった頃、シェルさんが起きてきた。毛布で胸を隠して起き上がったが、一体、何の真似ですか。胸、隠す必要無いでしょ。
「オークの群れが、外を歩いてる。街が、襲われている。」
ビラを除き、全員が戦闘態勢に入った。
いやあ、嵐の予感がします。次回、いよいよ100話目(表題は第98話です。)に突入です。