第94話 残念な美少女 ビラサンカさん
魔法学院って可哀そうな子ばかりなのでしょうかね。ビラサンカさん、ノエルさんとダブります。
(10月17日です。)
ビラサンカさんは、農家の娘だ。両親は、酪農とトウモロコシを作って生計を立てていた。両親は、ビラサンカさんを魔法学院高等部に入れるために、大分無理をしていたみたいだったが、娘の幸せのために、貧しい中、何とかやりくりしていた。
帝立魔法学院は、王国魔法学院と同じように、学費や校内で必要な物は国家負担だし、望めば寮に入って、食住も国費で賄って貰える。
しかし、ある程度の出費はどうしても必要なので、学内で、低利融資を受けることができる。これは、卒業後、僻地医療とか、帝国軍勤務などの任務につけば免除されることになっている。
しかし、ビラサンカさんは、卒業後は村に帰って、両親の仕事の手伝いをしなければならなかったので、実家からのわずかな仕送りだけで遣り繰りし、借金無しで学校生活を送っていた。
そのため、学校内では浮いた存在だった。外食をした事は無い。洋服も、村から持ってきた地味なものが2着だけで、下着もパンツしか持っていなかった。それでも、最低限のもの、パンツの替えとか靴下の替えは買わなければならなかった。ブラジャーをしなくても、平素は、制服の上着を着ていれば、ばれなかったが、夏にカッターシャツになったときは、胸のポチが目立って恥ずかしかった。
学用品は、ある程度は支給されたが、大事に使わないといけなかった。
ノエルは、聞いていて、自分が王立魔法学院にいた頃の事を思い出してしまった。でも、ノエルには両親がいるのだ。両親を亡くしたビラサンカさんよりは、ずっと幸せだと言える。
趣味は、散歩とウインド・ショッピングそして図書館での読書だった。
シェルさんが、パーティ参加の条件を話した。
1.冒険者ランクが低いのだから、今日からビラサンカさんのことは「ビラ」と呼ぶことにする。
2.ゴロタ君のことは、「ゴロタさん」と呼ぶこと。
3.エーデル姫とシェルさんは、ゴロタ君の婚約者だから、そのことを理解すること。
4.ノエルとクレスタさんも、婚約者候補だから、ゴロタ君とキスする権利があるが、あなたは、単なる仲間だから、腕を組んだりキスをしてはいけない。
5.自分でできることは、どんどんやること。特に食事と掃除は、必ず手伝う事。
6.お金の心配はしないこと。欲しいもの、したいことがあったら、必ずシェルさんに言うこと。
ビラは、ゴロタの年齢を知らなかったので、こんな中学生位の子供に、婚約とかキスとか何を言っているのだろうと思ったが、他の条件については異論は無かった。
ゴロタは、聞いていて、特に意見は無かった。4番目の『準婚約者』って何かな、と思ったが、いつものように、ケーキをチマチマ食べていた。
早速、シェルさん達とビラで、洋服や下着などの買い物に行った。ゴロタは、暇だったので、街を散歩することにした。
ブラブラ歩いていると、後ろから子犬が付いて来る。真っ白なムク犬だ。大きさは30センチくらいだから、生後2か月位だろうか。その割にはしっかり歩いている。ゴロタが立ち止まると立ち止まって首を斜めにする。歩き始めると、一緒に歩き始める。
どこの犬だろうかと思いながら、屋台で肉刺しを買って、子犬に上げてみる。子犬は、余程お腹がすいていたのか、ガツガツ食べた。しかし、地面に落ちたのは食べないで、ゴロタの手から直接なら食べる。結構、清潔好きなのかも知れない。
大きな目と可愛らしい真っ黒な鼻を見ていると、どこかで見たような気がする。
「コマちゃん」
何気なしに、そう呼んでみたら、白く光り始めた。あ、やっぱりコマちゃんだった。念話で話しかけてみたが、『ワンワン』と吠えるだけだった。犬型になっているときは、念話はできないかも知れない。抱き上げると、嬉しそうに顔をベロベロしてくる。可愛い。でも、ホテルには連れて行けない。
近くの広場で、遊んでいると、シェルさん達が、買い物を終えてゴロタの所へ来た。
コマちゃんは、ビラの所に走っていって、ワンワン吠えながら、しきりに話しかけているようだ。シェルさんが、この犬はどうしたの?と聞いてきたので、コマちゃんだと言う事を話したら、もう、皆で争奪戦になった。
コマちゃんも満更でも無さそうで、特にクレスタさんとエーデル姫の爆乳が、気に入った様子だった。このエロ爺犬め。後で聞いたら、犬だったらどんな格好の犬でもなれるらしいが、今回は女性人気ナンバー1の姿になったらしい。あざとい。
ビラは、自分が学校をやめなければならなくなった原因の魔物なので、複雑な気持ちだった。でも、可愛いことは可愛いので、悪い気はしなかった。
ビラの服装は、エンジ色の上着に、水色のスカートで、上着は、武器屋で買ったものらしい。中に、革鎧が付けれる用になっている。スカートは膝上20センチ位で、下に黒色のピッタリした半ズボンを履いている。スパッツと言うらしいが、横から見たら、見えないようになっている。
真っ白なストッキングが、膝上まで伸びており、ストッキングの上端と、スカートの裾の間を見ていると、何か萌え萌えして来るのは、ゴロタだけだろうか。
もう夕方に近い時間なので、ホテルに帰ろうとしたら、若い男の子が3人、ビラに声を掛けてきた。帝立魔法学院高等部の制服を着ている。
ゴロタは、また、ガキ大将が対決に来たかと思ったら、お別れを言いに来たらしい。3人とも涙を流しながら、もう会えなくなるのは寂しいとか、大きくなったら結婚してくれとかの爆弾発言をしていた。ビラは、半分迷惑、半分嬉しいような微妙な顔をしていたが、最後は涙を浮かべて、サヨナラを言っていた。
このようなシチュエーションの経験のないシェルさん達は、ジト目になってビラを見ていた。
夕食は、ビラの歓迎パーティーになり、シェルさんがいつもの通りに酔っ払って、ゴロタにお姫様抱っこをされて部屋に戻っていった。
ビラは、その後を付いて行ったが、そのまま、ゴロタの部屋に入っていくのを見て、え?と思った。しかし、聞く訳にもいかず自分の部屋に戻った。部屋は、ツインになっていて、ノエルと一緒の部屋だった。
ノエルは、自分よりも2個下だから、詳しく聞けないしと思ったら、ノエルから説明してくれた。毎日、交代でゴロタと寝ていること。まだ、結婚前だから、何もしていないこと。(絶対に、嘘です。)ゴロタは、肉体的に子供だから、節度ある行動をしていること。キスは、1日3回を守っていること。
-----/----------/----------/-----
聞いていて、ビラは、頭が痛くなってきた。
何、それって。そもそも、このパーティーって、シェルさんのパーティーじゃないの?
それに、あのゴロタさん。何も喋らないし。皆んなとは普通に喋っているのに、私にはスルーして。私が、話しかけようとすると、下向いちゃうし。
で、さっきのお姫様抱っこ。シェルさん、酔ってても舌を出してキスしようとしていたわ。ゴロタさんは、嫌がっていたのに。それに部屋で二人っきりって。もしかして、あんな事やこんな事をしているのかしら。
大体、おかしいと思ったのよ。私だけスパッツなんて。何故、私だけなの?
ああ、スパッツを履いてないと、すぐパンツを脱げる。そしたら、あんな事だってすぐできちゃう。それって、とってもエッチ。あ、なんか変になって来た。シャワー浴びよっと。(この子も、残念美少女だった。)
------/----------/----------/-----
(10月18日です。)
今日は、旅の準備です。ビラの大型旅行鞄を買いました。やはり、有名なG社のもので、緑色に赤のリボンが巻かれていた。あと、LV社のハンドバックとP社のポーチも買ったようだ。ついでにシェルさん達も何か買ったようですが、もう諦めています。
あと、魔法道具屋に行って、雷属性の魔石をビラの短剣にセットしてもらった。短剣に魔力は無いが、短剣をワンドとして使う場合に、威力を発揮するようだ。大銀貨2枚半だった。
野営用の食器類も、買い足して、出発の準備万端だった。
最後に、もう一度ギルドに行って、ビラの能力を確認する。
**************************************
【ユニーク情報】
名前:ビラサンカ
種族:人間族
生年月日:王国歴2005年6月18日(16歳)
性別:女
父の種族:人間族
母の種族:人間族
職業:無職 冒険者:Eランク
******************************************
【能力情報】
レベル 3
体力 40
魔力 100
スキル 20
攻撃力 30
防御力 30
俊敏性 10
魔法適性 『聖』 『雷』
固有スキル
【魔獣使い】
習得魔術 ヒール
サンダー・ボルト
習得武技 なし
************************************************
魔力が、ずば抜けて多い。あと、スキルの【魔獣使い】って、生まれながらの、ビーストテイマー?
まあ、コマちゃんも異常に懐いているし。
コマちゃんは、ペットお断り以外は、常にビラの側にいる。ビラも、色々と面倒を見ているようだ。
さあ、準備は終わった。出発は、明日早朝だそうだ。
-----/----------/----------/-----
次の日の朝、皆、それぞれのミニスカ姿だった。しかしビラだけは、学院の制服姿、いわゆる『せーらー服』だった。ただし、スカートを、腰の所で捲り上げてミニスカにしている。スパッツを買った筈なのに、履いていない。
どう見ても、旅行に行く姿では無かった。コマちゃんを抱きながら、乗ったら、コマちゃんの分、大銅貨3枚を取られた。
シェルさんは、ビラの姿を見て、直ぐに、ビラのあざとい意図を察してジト目になった。エーデル姫とノエルは、何も考えていないのか、いつもと変わりが無かった。クレスタさんは、知っていても、態度に出さないので、謎です。
ビラは、駅馬車の旅は初めてらしく、窓の外をウットリと眺めていた。小さい頃から、憧れていた異国の地。自分が、そこへ行く旅が出来るなんて信じられなかった。
両親も、外国へは行ったことはない筈だ。先祖代々、ナレッジ村で生まれ、村で死ぬ。ああ、両親を一度でもいいから、旅行に連れて行ってやりたかったな。そんな事を考えていたら、涙が溢れて来た。
ビラちゃん、ごのパーティーには隠された秘密があります。それに気づくのは何時でしょうか?




