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第92話 魔法学院高等部1年ビラサンカ

ようやく最初の郡都に到着します。帝国は、変わって行きます。

(10月13日の夕方です。)

  エスト央東郡郡都イースト・セント市は、それなりに大きい都市だった。僕達は、正門を開けて貰って、駅馬車ごと入った。皇帝陛下から下賜された『特別1等上級認証官証』の効果は絶大だった。


  ホテルは、最高級ホテルだったし、ホテルの前では、郡長官と三権の長達が並んで待っていた。僕は、少し後悔したがもう遅い。


  ホテルの前では何だからと、ホテルの中の貴賓室で歓迎セレモニーを行なった。それぞれに自己紹介をして、お茶会となった。皆、皇帝陛下によろしく取りなしてくれる様申し添えていた。シェルさんが、


  「皆さんのご厚誼は、決して忘れません。必ず、皇帝陛下には申し伝えます。」


  と、嘘八百を、いけシャアシャアと言っていた。大体、皇帝陛下に再会する予定はないでしょう。


  皆が、帰った後、漸くチェックインしたが、スイートルームを準備していると言うのを、必死に断ってダブル2つにして貰った。聞けば、上級認証官は、常にスイートだそうだが、国の経費で払う方達と一緒にして貰いたくない。


  食事は、久しぶりにフルコースにしたが、王都の超高級牛肉に比べると、ちょっと落ちるかなと思うレベルだった。


  翌日は、市内観光だ。ダブリナ市の時と違って、雰囲気が明るい。亜人の数はそれ程多くないが、笑いながら仕事をしている。亜人が人力車を引いていても、鞭で叩かれたり、轡を噛まされたりしていないのだ。奴隷の首輪をしていないのに、何故、同じ仕事をしているのか尋ねると、他に出来る事が無いし、収入が良いので、親方に頼んで、車を貸して貰って商売しているそうだ。


  親方は、奴隷を手放したが、車の貸し賃や、修繕費、許可手数料等で利益が出ているらしい。今までは、奴隷の衣食住に、車両管理費等が経費としてかかってしまい、奴隷の損耗も馬鹿にならなかったので、余り儲からなかったらしい。


  今までは、車夫の様な肉体労働奴隷は、大金貨1枚半が相場で、借金をして奴隷を買ったら、絶対に儲からなかったそうだ。


  きっと風俗街の奴隷達だって、今も同じ仕事をしているだろうと思うが、シェルさんが近づけさせてくれないので、よく分からない。


  冒険者ギルドに寄って、以前にオークションに掛けた、グリフォンの頭が落札されたか聞いたら、大分前に落札され、大金貨9枚になったそうだ。皆は、『え!』と驚いたが、もし、胴体と繋がっていたら、一体幾らになるのか興味があった。


  係の人が、今まで、完全体で出された事が無いので分からないが、翼まで付いた状態だったら、大金貨20枚以下ということは無いだろうと言うことだった。


  ただ、防具素材としては、ワイバーンには劣るそうなので、希少性で高価になるそうだ。大金貨9枚をそのまま受け取る事にした。総重量18キロになるが、大きさは大した事は無い。


  そのまま、イフちゃんに預け、ワイバーン1匹をオークションに掛けたいと言ったら、不思議な顔をされた。最近あまりワイバーン討伐の話は聞いてないし、何も持たずにギルドに入って来たからだ。取り敢えず、現物を確認するため、裏の解体場に行って貰ったが、先程まで何も無かった筈なのに、体長10m位のワイバーンが置かれていることに驚かれてしまった。


  傷は翼膜に数個の穴が開いているだけだ。良く見ると、口の中が焦げているのと、心臓付近に刺し傷があるのだが、いくらでも補修が効くレベルだそうだ。係員も、こんなにレベルの高いワイバーンの死体は見た事が無かったそうだ。


  希望落札価格を聞かれたので、大金貨5枚と言ったら、安すぎると言われたので、ダメ元で10枚にした。剥製にする手間賃と出品料の合わせて、金貨2枚を支払い、ギルドを後にした。


  市内をブラブラしていたら、魔法学院があった。帝立で、高等学部まであるらしい。何気なく見ていたら、突然、校舎の裏から爆発音と黒煙が上がった。皆で顔を見合わせていると、血だらけの生徒や教師達が校門の方に走って逃げて来ている。僕達は、イフちゃんに武器だけ出して貰って、校庭の方に向かって歩いて行った。


  校長先生らしい人が、僕達を見つけて、大声で注意してきた。


 「君達は誰じゃ。ここは危ない。早く逃げなさい。」


  事情を聞くと、高等部の授業で、召喚魔法に失敗して、デビル・ライオンを召喚してしまったらしい。僕は、デビル・ライオンを知らなかったが、名前からライオンの一種だと思った。


  デビル・ライオンは地獄の門番と言われ、通常、地上界に来る事は無い。地獄界があるかどうか知らないが、地下世界にいて、平素は、台座の上で石の様になっているらしい。


  中庭に行ってみると、ライオンと似ても似つかない物がいた。頭は、クルクルの縮れ毛がモッコリしており、顔は目玉の大きい鼻ぺちゃの犬、身体は、確かにライオンのようだが、背中に背ビレのように毛玉が並んでいる。そもそも体型がおかしい。頭が非常に大きいのだ。前足に、赤い玉を持っていて、その玉から、紅蓮の炎が放たれると、当たった校舎が大爆発を起こすのだ。


  僕は、クレスタさんに皆のシールドを頼むと共に、自らもシールドを纏った。


 歩いて近づいてみると、そいつの大きい事が分かる。肩までの高さが5mはあるのだ。そいつは、僕に気が付くと、赤い玉を向けた。炎が一直線に襲い掛かる。僕は、手を前に出して、当たった瞬間、上に曲げて遥か彼方まで飛ばした。


  そいつは、連続して3発、撃ってきたが、全て同じ様に弾き飛ばした。


  そいつは、大きく肩で息をしながら、もう1発撃って来たが、僕は、敢えて避けずに受け止めた。


    ドドーン!


  大きな衝撃音と共に、僕は火に包まれたがそれだけだった。炎の柱から、傷一つ無く出て来た僕を見て、そいつは肉弾戦に持っていこうと、襲いかかった。


    バキッ!


  そいつの鼻を正拳突きで殴ったら、もんどり打って転がった。そいつは、大きな目に涙を浮かべながら、


  『其方は、何者だ?』


  と聞いて来た。泣きながらも、随分、横柄な聞き方だと思ったが、念話なら、いくらでも話せる。


  『僕は、ゴロタ。君は?』


  『儂は、デビル・ライオンと呼ばれているが、天上界の狛犬と一身同体の身、名前は、まだ無い。』


  『じゃあ、狛犬のコマちゃんだ。君は、コマちゃん』


  名付けると同時に、コマちゃんの身体が白く光った。


  『おお、これは。これが隷従の証か。霊獣を隷従させるとは。うん?今のは、笑うところじゃぞ。』


  やはり、困った仲間だった。


  『取り敢えず、消えてくれるかな。学校のみんなが怖がっているから。』


  『では、いつでも呼んでくれ。さらばじゃ。』


  偉そうに、挨拶をして、空高く駆け上がり、消えていった。別に、瞬間的に消えることも出来るそうだが、その方がカッコ良いかなと思って、そうしたらしい。残念な霊獣だ。シェルさん達が近づいて来た。あの魔物を放っといて良いのか聞かれたが、『隷従させた。』と言ったら呆れられた。


  校舎の外に逃げていた校長先生が、戻ってきて説明してくれた。今日の授業は、初歩の召喚魔法で、サーベル・キャットかワンダ・ウルフを召喚する筈だったが、デビル・ライオンが召喚されたらしい。召喚した子は、魔力切れを起こして、意識不明の重体らしい。


  とにかく、助かったので、お礼をさせてくれと言う校長先生のことはほっといて、その重体の子のところに行くことにした。


  その子は、医務室のベッドで横になっていたが、息が途切れ途切れだ。心臓の鼓動も、今にも止まりそうだ。年齢は15〜6歳くらい、銀色の髪の毛が長い美少女だ。シェルさんが、嫌な顔をするが、構っていられない。


  その子の左手を握って、僕の魔力を流し込む。剣に流す感じと同じだ。握り合った手が赤く光り始める。暫くすると、その子はパチリと大きな目を開けた。手を握っている僕を見て、顔を赤くしながら、


  「あなたは?」


  僕は、慌てて、手を離してシェルさんの陰に隠れる。いつものパターンに、深いため息を吐いて、


  「この子はゴロタ君。私たちは、旅の途中の冒険者よ。」


  「え!冒険者さんですか?」


  「ええ、これでも『A』ランクパーティーよ。」


  シェルさん、いつ『A』ランクパーティーになったんですか?


  「え、『A』ランクパーティー?お願いが有ります。私の両親を助けて下さい。」


  聞くと、故郷の村の両親が行方不明になって半年、衛士隊や国防軍が調査に行っているが、強力な魔物がいるのか、ずっと任務失敗の状態が続いているらしい。


  この娘は、名前をビラサンカといい、年齢は16才、魔法学院の高等部1年らしい。


  まず、ビラサンカの言っている事を確認すると、6か月前から、両親からの仕送りが途絶えてしまい、手紙を書いても、何の返事も無い状況だった。最近は、手紙を受け付けて貰えない状況だそうだ。国防軍が調査失敗をしてからは、ギルドに、調査依頼をかけても『調査不能依頼』という事で、氷漬けになっているそうだ。僕達は、明日、ギルドの依頼と今までの経緯を確認してから、対応を考える事にして、学園を後にした。


  翌朝、ギルドに行ってみると、確かにビラサンカの依頼は出ていた。依頼内容は、ビラサンカの言った通りであった。そればかりか、調査依頼が数十件出ている状況だった。


  シェルさんは、余り、乗り気では無かった。一つは、ビラサンカが美少女だと言うこと。二つ目が、国防軍でさえ調査が失敗する割には、報酬が安すぎると言うことであった。


  でも、そんな事は、全く関係なく僕が受けようとしていることが分かるだけに、深いため息を付くのであった。


  ビラサンカの両親は、イースト・セント市の北東部にあるナレッジ村に住んでいた。馬車で2時間、約40キロの距離である。


  皆で、行っても良かったが、急いで調査したいので、シェルさんと二人で行くことにした。城外に出ると、いつもの通り、お姫様抱っこをして道を急いだ。


  1時間後、村に着いたが、そこには誰もいなかった。


え、また増やすの。最近、マンネリ化してきました。夜の生活が?

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