第86話 快楽の穴
シェルさん達は測定していますが、ゴロタは、何故、測定しないのでしょうか。今日は、サリーちゃんのお姉さんに会いに行きます。
(9月17日です。)
次にエーデル姫を測定してみた。
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【ユニーク情報】
名前:エーデルワイス・フォンドボー・グレーテル
種族:人間族
生年月日:王国歴2004年11月01日(16歳)
性別:女
父の種族:人間族
母の種族:人間族
職業:王族 冒険者B
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【能力】
レベル 30(9UP)
体力 150(40UP)
魔力 170(40UP)
スキル 90(30UP)
攻撃力 140(60UP)
防御力 90(30UP)
俊敏性 110(50UP)
魔法適性 火
固有スキル
【熱攻撃】【熱感知】【威嚇】
習得魔術 ファイア・ボール
習得武技 【熱刺し】
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エーデル姫も上昇が激しい。数値もそうだが、武技で【熱刺し】が増えている。まだ、使ったことは無いそうだが、使い方は、自然に分かるので、気力を溜めるコツさえ掴めば、すぐ、使えるだろう。
次は、シェルさんが測定してみた。
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【ユニーク情報】
名前:シェルナブール・アスコット
種族:ハイ・エルフ
生年月日:王国歴2005年4月23日(16歳)
性別:女
父の種族:エルフ族
母の種族:ハイ・エルフ族
職業:王族 冒険者B
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【能力】
レベル 47(12UP)
体力 320(70UP)
魔力 230(50UP)
スキル 300(100UP)
攻撃力 330(40UP)
防御力 180(80UP)
俊敏性 320(70UP)
魔法適性 風
固有スキル
【治癒】【能力強化】【遠距離射撃】【誘導射撃】
習得魔術 ウインド・カッター
習得武技 【連射】【威射】
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シェルさんも、すさまじい上がり方だ。あの、なんちゃって『D』ランクが嘘のようだ。きっと、もうすぐ『A』ランク昇格間違いなしだ。それよりも、武技で【威射】が増えている。どんな武技かわからないので、今度試してみよう。
僕は、皆が勧めるのに、測定しなかった。これ以上ランクが上がってもしょうがないし、ランクよりも、もっと大切な何かを求めているからだ。
エーデル姫の冒険者証のランクを『C』から『B』に上げて貰った。これで、僕のパーティは、全員が『B』ランク以上となったわけだ。
もうそろそろ、パーティ名を考えた方が良いのかも知れない。
『殲滅の死神』
これでは、泣きたくなってしまう。でも、良い名前が思いつかないので、もうしばらく『名無しパーティ』で行くことにする。そういえば、武器の素材で、外側部分は、ワイバーンの皮が最上だそうなので、ギルドの裏に併設されている解体場で、一番損傷のひどいワイバーンを解体して貰う。ついでに、リン村で討伐したグリフォンの解体もお願いした。解体料は、大銀貨5枚だった。夕方には、解体が終わっているという事だったので、また寄ることにして、ギルドを出た。
昼食後、武器屋に寄ってみることにした。つい、ワイバーンの皮を張っている防具を見てしまう。下地は軽金属の鎧なのに、大金貨3枚もした。下地がミスリルだったら、どの位するのだろうか。現在、クレスタさん以外は、全員がミスリル防具を装備している。クレスタさんもミスリル防具を装備すべきか悩むところである。魔法使いは、通常、後衛で魔力向上装備はしても防御力向上を狙っての防具は、あまり装備しないからだ。
夕方、ギルドに戻る前に、サリーのお姉さんが働いているという場所に行ってみることにした。お店の名前は知らないが、住所は知っているそうだ。住所を頼りに、行ってみると、そこは青少年が行ってはいけない街だった。女性が性的サービスをする飲食店や、女性の裸を見せる店、そして女性が春を売る店。サリーは、顔を真っ赤にしながら、お姉さんの働く店を探した。お姉さんの名前は『エリー』というらしい。
住所地らしきところの表通りには、エリーさんの働く店は無かった。仕方が無く、裏通りに回ると、町の雰囲気は、一変した。原色の照明が輝く中、殆ど地肌が透けて見える服装の女性や、完全にパンツが見えるミニスカートの女性、中には、乳房の部分をくりぬいた服を着ている女性までいた。すべての女性が亜人だった。その中にエリーさんの働く店があった。店の名前は、『快楽の穴』と言って、いわゆる私娼窟である。
店の入り口にいた中年の女性に、エリーさんを呼んで貰おうとしたら、今、客を取っているから、もっと後に来いと言われた。銀貨1枚を渡すと、態度が急変し、直ぐにエリーさんを呼びに行ってくれた。
エリーさんを見て驚いた。顔かたちは、サリーにそっくりだったが、身長が165センチ位あり、三角形で局部が隠れているだけのパンツに、スケスケのガウンを羽織っているだけ。豊満な乳房を隠そうともしない格好なのだ。首には、奴隷の首輪を着装していた。
「お姉ちゃん!」
サリーが叫ぶと、手を口に当ててビックリしたようなエリーさんは、踵を返して店の中へ走り込んで行った。先程の中年女性に事情を聞いてみると、エリーさんは奴隷として働かされており、保証金の額と毎日の稼ぎから経費を引いた利益を充当すると、完済まで後15年位は掛かるそうだ。参考に聞いたら、エリーさんの保証金は大金貨3枚だそうだ。
1人の客から、1回に銀貨2枚を取っても、エリーさんの取り分は大銅貨3枚程なので1日5人の客を取って、銀貨1枚半。月に20日働いて、大銀貨3枚。1年間働いて金貨3枚と大銀貨6枚。
それなら、10年掛からずに返済できそうだが、保証金には、利息が付き、15年は、客を取り続けなければならないという。兎に角、エリーさんと話がしたいと言ったら、1時間、銀貨2枚を払えば良いというので、直ぐに払った。
エリーさんの部屋に案内されたが、途中、女性のあんな声やこんな声が聞こえて来て、全員が顔を真っ赤にしていた。エリーさんは、部屋にいた。今は、ちゃんとしたガウンを着ていた。
エリーさんに聞いたら、王都で仕事を探すために旅をしている途中、旅行証明書をなくしてしまったそうだ。王都に入れずに城門前にいて途方に暮れていたら、親切そうなオジさんが、裏門から入れて上げると言って来た。信じて付いて行ったら、奴隷市場に連れて行かれ、奴隷として売られてしまったそうだ。
旅行証明書を亡くした段階から本当に失くしたのか怪しいが、今となってはどうしようもない。大金貨3枚なんてお金、きっと一生働いても返せないと思い、やけになって、好きに暮らすことにしたそうだ。毎月の収入から、実家に送金しているので、保証金はほとんど減っていないそうだ。
僕は、シェルさんと目配せして、大金貨3枚をテーブルの上に並べた。1枚、2キロはある金貨だ。それを3枚ならべたので、エリーさんは目が点になった。でも、不安そうに僕の方を見た。このお金の代償に何をしなければならないのか。何もなく、こんな大金をくれる訳が無い。
シェルさんが、
「返済の事は心配しなくて良い。その内、お金が出来たら、返してくれればいい。とりあえず、保証金を返しましょう。」
と言った。エリーさんは、着替えてから、身の回りの物をまとめて、鞄にいれ、僕達と一緒に部屋を出た。先ほどの女性に事情を話し、保証金を払いたいと申し入れたら、今日は支配人がいないので、明日にしてくれと言われた。そして、今日、エリーさんを連れ出すのなら、これからの泊まりでの遊び代として銀貨5枚、保証金として大銀貨1枚を払うとともに、僕の身分証明書を見せてくれと言ってきた。
この店は、政府公認ではないのに、結構しっかりしているみたいで、僕は、冒険者カードを見せた。女性は、一生懸命にメモをしていたが、冒険者ランクを見て、膝が震えていた。
その後、その女性は、エリーさんの首輪を外してあげた。随分、緩やかだと思ったが、奴隷の認定を外さない限り、帝都から出ることが出来ないので、首輪を外しても大丈夫だという事と、奴隷の首輪をしていると、どこの店にも入れないので、店外デートの時は、こうして外すそうだ。なるほど。
エリーさんとサリーは、ギルド近くの茶店でお茶を飲んでいて貰って、僕達だけでギルドに戻った。冒険者達は、結構、夜の女性を買っているので、もしかするとエリーさんの事を知っている人がいたら困ると思ったからだ。ギルドで、僕達が使用する分以外の素材を売ったら、大金貨3枚半になった。ワイバーンの残りの素材で1枚、グリフォンの素材が2枚半だった。それと、首で切断されたグリフォンの鷲の頭を剥製にすると高額で取引きされるので、オークションに掛けることを勧められた。勿論、そうした。
ホテルに戻って、サリーのために取ったシングルの部屋をツインに変えて貰ったが、フロントの女性が、いかにも胡散臭そうにエリーさんを見ていた。女性から見ると、その方面で商売している女性は、すぐわかるみたいだ。僕には、全く分からないが、歩き方とか身のこなしで分かるし、エリーさんの服装も原色が多く、素人の女性はあまり着ない色の組み合わせらしい。
食事は、ホテルのレストランでディナーと思ったが、エリーさんが気まずそうだったので、外の焼肉レストランに行くことにした。ここなら、食べ放題、飲み放題でいろんな人が来るから、気にしなくて済むだろう。食事中、エリーさんが隣に座って、
「借りたお金は必ず返します。このお礼はどうしたら良いのかわかりません。今日は、私にできることをさせてください。」
と言って、僕の太腿をさすって来たので、思い切りシェルさんに手を叩かれ、それからは、僕の隣には座らせてもらえなかった。エリーさんは、物凄く未練たらしい顔をしながら、お肉をお代わりしていた。
この夜、シェルさん達は、何か物凄かった。あの風俗街や『快楽の穴』での光景が刺激になったみたいだった。
いやあ、扇情的ですね。でも、あまり悲哀さは感じません。この世界の男女の行為って、結構フリーです。