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第83話 このダンジョン、絶対おかしい

いやあ、サリーちゃんのいじられ役、最高です。でも、ずっと付いてこられたら、迷惑です。

(9月10日夜、ダンジョン21階層です。)

  夜、イフちゃんに起こされた。何かがいるらしい。僕は、服を着て起き出した。テントの外に出てみると、波打ち際が凄いことになっている。タコみたいな吸盤の付いた足で、埋め尽くされている。沖合には、大きな目が光っている。


  クラーケンだ。


  地上に上がってくることはできないが、足を延ばせば、テントまでは余裕で届く。このままでは、クラーケンの餌食になってしまう。イフちゃんに、皆を起こすように頼んで、僕は、試しに足の1本を切ってみる。切れた足は、バタンバタンのたうち回っているが、切られた元の方は、暫くすると再生していた。うん、切りがない。しかし、殲滅方法が分からない。


  攻めあぐんでいると、後方から悲鳴が聞こえた。何も着ていなかったサリーが、クラーケンの足に絡め取られている。体中にクラーケンの足が纏わり瞬いている姿は、なかなかエロい。


  オホン。そんなことを言ってる場合ではない。沖合の本体までは100m以上ある。僕は、『瞬動』を連発して、海上を移動した。身体が海に沈む前に、10~15m先の地点まで移動するのだ。それを連発すれば沈むことは無い。クラーケン本体の傍まで来た。クラーケンも、まさかここまで来る者がいるとは思わなかったみたいで、足のすべてを波打ち際まで伸ばしていた。


  僕は、クラーケンの頭と思われるところに手を当てて、ファイア・ボールを深部で爆発させた。頭と思われるところを始め、本体が粉砕された。僕は、海に落ちたが、のんびり背泳ぎで、浜辺に戻った。


  サリーが泣いていた。体中の至る所に吸盤の跡があった。大事なところにも大きな丸い跡がついていた。よほど痛かったのだろう。ノエルがヒールを掛けて、跡を1個1個消していた。うん、これからは屋外で素っ裸で寝るのはやめましょう。危険だから。


  翌朝、クラーケンの死体は消えていた。イフちゃんに預けていた足1本だけは残ったので、今日の朝食に焼いて食べた。美味さがハンパね位、旨かった。


  22階層からは、氷雪エリアだった。21階層のビーチエリアは何だったのか、ダンジョンマスタに聞きたい。あれ、ダンジョンマスタなんて居なかったかな。これは、別の話ですね。


  皆、慌てて冬物を出して着ていたが、サリーは、冬物を持っていなかったので、ノエルの予備を借りていた。この階層は、滑りやすいことに気を付けさえすれば、魔物は大したことはない。ジャイアント・フットとかイエティとか、それなりの大きさではあるが、魔法攻撃をしてこないので、僕とシェルさんの物理攻撃の餌食となっている。エーデル姫とノエルは魔石取りだ。


  どんどん下に行って、30階層ボスのところまで行った。ボスは、とても綺麗な女性の人だ。真っ白な長髪、真っ白な肌、口から吐く息も真っ白だ。雪女だ。


  あ、危ない。サリーが不用意に近づいた。あ、違う。誘われているんだ。フラフラと歩いて、雪女の傍まで行った時、白い息を身体に浴びてしまった。サリーは氷に包まれた。


  『イフちゃん』


  僕は、イフちゃんに頼んだ。雪女は、『地獄の業火』に包まれ、消滅してしまった。ついでに炎の熱で、サリーちゃんの氷が解けた。少し、耳の先っぽが焦げてしまったが、氷漬けよりはましだろう。


  魔石は回収できなかったが、ドロップ品があった。氷結石だ。これさえあれば、冷蔵・冷凍は思うまま。いちいちフリーズの魔法を定期的に掛ける必要がない。ありがたくゲットしよう。


  31階層は、キマイラ・エリアだった。標準キマイラが次々と現れる。だが、複数匹が一遍に現れることがないので、シェルさん達の敵ではない。僕は、手出しをしない。シェルさん達は次から次へと攻撃手を変えて殲滅していく。その間、毒を浴びるのは、常にサリーだった。ノエルが毒消石で、中和させているが、魔法攻撃の耐性がゼロのサリーだった。


  32階層は、サイクロプスの群れだ。だが、このサイクロプス、でかくない。身長2m位だ。それが、ウジャウジャいる。個体の強さは、オーク程度だが、とにかく数が多いため、処理に手間がかかる。クレスタさんが、イライラして『クエーク・リキッド』を発動する。振動で、大地が液状化する魔法だ。サイクロプス共が液状化した地面に沈んでいく。敵全体が沈んだことを確認して、術を解いた。サイクロプスは、固まった地中にとじ込まれて絶命した。この時、液状化した地面に足を取られて、泥だらけになって泣いていたのがサリーだった。


  33階層は、フェイク・イフリートだ。イフリートに姿は似ているが、熱くない。体中が燃えているようだが、触っても平気だ。これが、3~5匹ずつ現れる。一体、なんで攻撃するのだろう?


  シェルさんの弓矢による複数攻撃で、簡単に絶命する。魔石とドロップ品を回収するが、全ての個体からドロップ品が出た。すべて魔火石だ。これでは、あまり儲からなそうな気がする。


  当然、サリーは、フェイク・イフリートの投げてよこしたショボいファイア・ボールを浴びて、大やけどをし、ノエルにヒールを掛けて貰っている。


  34階層は、マッド・マンだ。攻撃力はあまりないが、投げて来る泥の塊がウザい。単に汚れるだけではなく、ヘドロの匂いがするのだ。よく見るとヘドロの中に、気持ちの悪い虫がウニャウニャいる。女性陣は、キャーキャー言いながら、よけ続け、攻撃する余裕がなさそうだ。僕は、仕方がないので、マッド・マンを凍らせて砕き、破片の中から、魔石を探して砕いて行った。5匹に1匹は、ドロップ品があったが、泥団子の元とか、泥風呂入浴剤とか、訳の分からないものばかりだった。


  当然、サリーは、顔に泥を浴びて、ヘドロと変な虫だらけになり、他の女性がサリーから逃げ回っていた。僕が、洗濯石で綺麗にし、気持ちの悪い虫は、クレスタさんのウオーターで洗い流し、シェルさんのウインドで乾かしていた。ホントにトロ兎だ。


  いよいよ、最下層、最強ボスだ。だが、何となく予想がつく。きっと、最下層ボスもどうしようもなく、どうしようもないのだろう。


  とりあえず下に降りてみる。最下層は、森林エリアだ。このダンジョンで初めてのシーンだ。森林、木、木の魔物。あれだ、トレイニーかトレントだ。この階層の最奥部にいるはずだが、突然、木の枝が伸びて襲ってきたり、木の根が地面から生えてきたりと多彩な攻撃をしてくるので、本体まで行くのが容易ではない。


  特に、女性陣は、下から伸びて来る根の先で、大事なところを突かれるので、悲鳴なのか何なのかわからない声を上げている。僕は、シールドを張って、何も構わず突っ込み、最奥部のトレイニーを『ベルの剣』で上下左右に切り裂く。


  全ては終わった。ダンジョンは、解放された。トレイニーの魔石を回収したので、もうこのダンジョンには用はない。驚いたことに、トレイニーのドロップ品は、単なる『木の杖』だった。このダンジョンは、本当に人を馬鹿にしている。


  お約束通り、サリーは木の根の攻撃を受けまくり、立てなくなっていた。イフちゃん、替えのパンツ出してください。






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  ギルドに戻って、成功報酬を貰う。魔石と氷結石以外のドロップ品を納品した。だが、泥団子や泥風呂入浴剤は、納品を拒否された。『木の杖』も同じだった。『木の杖』は、次のキャンプファイアで燃やそうと、イフちゃんに預かって貰った。一連の泥関係は、その辺に捨てた。乾いて、砂になれ。


  受付の女の子が、郡長官から言付けを預かっていた。『本日、夕食会を催すので、ご来臨賜りたい。』との事だった。皆で行っても良かったが、今日は皆疲れているので、シェルさんと二人で行くことにした。エーデル姫たちは、海鮮料理屋でタコ以外の海鮮料理を食べることにしたそうだ。





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  夕方、郡長官公邸にシェルさんと二人で行った。ホテルから近いので、歩いて行ったが、門番の人に招待されていることを説明するのが大変だった。公邸に歩いて来る人はいないからだそうだ。シェルさんは、疲れている筈なのにルンルンだった。僕と二人、腕を組んで、ぴったりと寄り添って歩いてここまで来たからだ。


  本当に久しぶりだった。ハッシュ村から、エクレア市までの旅が懐かしい。もう一度、あんな風に旅がしたいなと思った。決して、今の仲間と一緒なのが嫌なのではない。いや、とても楽しい。でも、こうして二人きりになると、やはり、この瞬間が、もっと長く続いて欲しいと思うのだった。公邸の門のところで、暫く待っていると、秘書の方が出て来て、謝りながら案内をしてくれた。特に招待状も無かったので、門番さんは普通の対応を取ったのだろうと思い、別に腹も立たなかった。


  郡長官は、ビルト3等上級認証官で、このセント市は、帝都に一番近いため、高位の認証官が赴任することになっているらしい。夕食会の前に、談話室に案内され、本日の列席者を紹介された。ビルト郡長官は、秘書さんが紹介してくれて、後は自己紹介となった。


    エンドール帝国軍セント市駐屯部隊司令官とその奥様


    スータト市衛士隊隊長とその奥様


    ミドーリ市商工会会長とその奥様


    ギアナ亜人協会会長とその奥様


  僕は、亜人の方が列席されているのに吃驚した。今まで、帝国に来てこのようなことは無かったのである。紹介が終わったら、夕食会が始まった。僕は、ビルト長官とその奥様に挟まれて小さく座っていた。シェルさんは、ビルト長官の隣だ。まずい、非常にまずい。何か聞かれても答えられない。しかし、それは杞憂に終わった。シェルさんが、最初に、僕は大変恥ずかしがり屋なので、質問は私にしてくださいと、お断りしてくれたのだ。グッジョブ、シェルさん。


  夕食会は、非常に和やかだった。奥様達は、シェルさんの着ているシルクのミニスカートが非常に気になっているらしい。これは、オーダーメイドで王都であつらえたものだという事、腰回りのリボンに格式があって、私のしている『赤色』が、一番高貴な色だという事を言っていた。


  シェルさん、とても嘘つきです。そんな話は聞いたこともありません。しかし、僕は黙っていた。奥様達は、色の区別を一生懸命メモしていた。次に、エンドール司令官から質問があった。シェルさんの使う弓についてだ。あのような威力の弓は見たことも聞いたこともないとの事だった。実は、ワイバーン討伐を見学に来てたらしいのだ。


  シェルさんは、秘密にする理由もないので、正直に答えた。『能力強化』のスキルと『遠距離射撃』、『誘導射撃』のスキルを使っていて、弓矢は普及品であること。あと、対象により鏃に風魔法を纏わせていることも教えてあげた。エンドール指令官は、一生懸命メモしている。


  ミドリーナ商工会長が、ダブリナ市の鉱石精錬について、聞いてきた。今の工場を支配しているトラオ氏と交渉をしたいのだが、どうしたら良いだろうかと。僕は、紹介状を書くので、直接、行って相談してみてくださいと言った。勿論、シェルさんを通じてだが。

ダンジョンをクリアしても、最近は、美味しいドロップがありません。ネタが尽き掛けています。

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