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第82話 兎人サリー

次に出発かと思ったら、新しいイベントが始まっちゃいました。

(9月9日午後です。)

  シェルさん達は、もう一度洋服屋さんに行って、買い物をしている。サリーは、余りにも汚いので、店には入れないでいる。僕と一緒に待っているのだが、先ほどからサリーのお腹がグウグウなっているのが聞こえる。サリーは、顔を真っ赤にしているが、顔がどす黒いので、よくわからない。


  僕は、近くの屋台に行って、串焼き肉を1本買った。銅貨28枚だった。サリーに渡すと、喉を詰まらせながら、一瞬で食べた。この2か月、肉は食べていないそうだ。まあ、攻撃能力のない兎には狩りはできないだろう。兎人のスキルは、走ることと、食べられる野草を見つけること、それに穴を掘ることが得意らしい。昔はそれだけで十分に生きて行けたらしいのだ。しかし、人間と暮らすようになってから、野菜だけでは栄養が足りず、力が出ないらしい。しかし、サリーはお金も持たずに家出したので、草だけで我慢して旅を続けた。たまに野生の人参を見つけると、非常に嬉しかったらしい。お肉よりも好きだそうだ。やはりウサギだ。


  川や沼で、身体を洗ったが、そんなに綺麗にはならないので、こうなってしまったらしいのだ。12歳だという事だが、身長は、僕とほぼ同じか、ちょっと大きい位だ。胸は膨らんでいるが、ノエルと同じ位かと思う。シェルさん達が帰って来た。これから、大衆浴場に行くらしい。僕もついでに行ってみることにした。


  大衆浴場は、男と女は別々に入り、一人銅貨60枚だった。サリーがあまりにも汚いので、入場を断られそうになったが、大銅貨2枚を渡して、無理して入れて貰った。


  僕は、普通に一人で大浴場に入って、のんびりしていた。隣の女湯では、キャアキャア、シェルさん達の声が聞こえたが、他人の振りをした。風呂から上がって、外で待っているとシェルさん達が出てきた。サリーを見て驚いた。まるで別人だった。


  髪の毛は真っ白で、兎の耳が2本、髪の間から伸びてピコピコしている。目鼻立ちは、シェルさんとよく似ており、大きく違うのは、真ん丸の赤い目だ。身体はスレンダーで、ミニスカートの後ろがぷっくらと膨らんでいる。シッポが隠れているそうだ。シッポを出すための専用のパンツがあるらしい。脚はスラッと長く引き締まっており、人間の女の子の脚とは違う健康そうな印象を受ける。僕がサリーを見つめていると、サリーが顔を赤らめ、シェルさんがジト目となった。


  ホテルに戻って、シングルを一つ追加し、レストランでディナーを予約してから、僕とシェルさんの二人で、買い物に出かけた。僕の服を買うためだ。最近、僕の世話はシェルさんがするようになった。理由は良く知らない。女性陣のヒエラルキーには口を出さない方がいい。


  今度の冒険者服は、紺色のブレザータイプになった。ズボンは、グレーのチェック模様のもので、ベルトは剣帯を付けるタイプの物だ。このブレザーの下に鎧を着装し、小手や脛当ては、上から着装するそうだ。


  ブレザーの下は、白のカッターシャツで、冬場は、有名なBB会社のチェック柄のカシミヤマフラーを首にを巻くそうだ。靴は短靴を履かせようとしていたが、泥が入ったりしたら嫌だから、ブーツにしてもらった。


  試着して、鏡を見たら、王立魔法学院の生徒が着ているような感じの服装だった。当然、男子学生の方だ。サイズは、少し大きめにして貰った。この1年で8センチ伸びたことを考えると、漸く、成長期が来たのかも知れない。


  ホテルのディナーは豪華だった。ウエイターさん達も妙に親切だ。おかしい。今までの例だと、シェルさん一人いるだけで、サービスが極端に悪くなったりしたのが、今日はサリーもいるのに、どうしたんだろうと思っていたら、原因が分かった。衛士隊の方から、皇帝陛下の賓客だから丁重に扱うようにとのお達しが来たようだ。


  サリーには初めてのフルコースディナーらしく、マナーも良く知らないようだったが、自分の好きなように食べて良いとエーデル姫に言われていた。しかし、やはり、女の子、一生懸命エーデル姫の真似をしながら食べていた。サリーのために、スープだけ人参スープを頼んであげたら、物凄く喜んで、こんなに美味しいスープは生まれて初めてだと言って涙目になっていた。シェルがもう一杯お替りをお願いしていた。


  食事のあと、サロンで寛いでいるときに、皆で話し合って、サリーは帝都のお姉さんに会うまでは一緒に旅をするが、冒険には連れて行かない。夜寝るときは、シングルに独りで寝かせる。野営の時は、セレモニーはしな、という事になった。


  あの、シェルさん、サロンでそんなにお酒を飲んだら、大変なことになりますよ。シェルさんは、ワインを醸造した強いお酒をそのまま飲み続け、僕にお姫様抱っこで部屋に連れていかれた。


  この日、シェルさんは、ツインに寝かされた。


  次の日、ギルドに行ってみると、冒険者が殆どいなかった。どうしたのか聞いてみると、ダブリナ市で衛士隊が全滅し、治安状態が悪くなったので、奴隷解放戦線の支部長から、冒険者の派遣依頼が来て、報酬が良いので、皆そっちに行ってしまったらしい。トラオさん、頑張っているみたいです。ダンカン商会の資金が山のようにあったらしいので、当面は不自由しないだろう。ギルドでは、現在、依頼を処理できなくて困っている。そんな依頼の中で、最も難度が高いのが、古いダンジョンのボスの討伐だ。


  ずっと放置されていたダンジョンで、最近、最下層ボスが復活して、ダンジョンそのものが活性化したそうだ。しかも、そのダンジョンは35階層まであり、最下層まで行くまでに各階層ボスも高難度の魔物が多いらしいのだ。


  僕達は、どうしようか考えた。皇帝陛下の要請で、帝都にも早くいかなければならない。35階層のダンジョンとなると、最低3日以上かかるので、どうしようかと思ったのである。


  僕達の目を引いたのは、その報酬である。大金貨1枚なのである。普通の依頼では考えられないほどの高額だ。これは、郡長官が出しており、スタンピードが発生した時の被害想定を考えると、妥当な額だそうだ。


  特にお金に困っているわけではないが、金額に惹かれ、引き受けてみることにする。そんなに困っているのなら助けてやっても良いと考えたからだ。え、お金欲しさじゃ無いですから。多分。


  その依頼を受けたのち、ワイバーン1匹をオークションに掛けてくれるように依頼した。裏の解体場でワイバーンを1匹、取り出して見せたところ、このセント市でオークションにかけるよりも、帝都で掛けた方が良いと言われた。


  しかし、帝都ではもっと程度の良いものや、固有種を出したいので、少し位、安くなっても良いから、此処で掛けてみてくれとお願いした。ある程度、相場感も掴みたかったからである。


  ギルドに預かってもらい、手数料、銀貨3枚を支払った。最低落札価格は、大金貨1枚にした。そんなに安くてもいいのかと言われたが、これも作戦である。皆の注目を集めれば、収集家やバカな大金持ちが大金を出すだろうと思ったからだ。それに、まだ29匹もあるのだ。あまり欲張っても良くない。


  その日のうちに、準備を整え、ダンジョンに潜ることにした。サリーは、ホテルで待機しているように言ったら、一緒に行きたいと涙目で訴えた。もし、このまま帰ってこなかったら、どうしたら良いか分からないと言うのだ。なんて、不吉な事を言うんだ。


  サリーの服装は、全く冒険とは関係ないミニスカート姿なので、せめて皮鎧位はと思って武器屋で調達することにした。武器は全く使えないとのことだったので、木の棒を持たせた。杖代わりかな。ホテルは、今日、解約しても1日分の料金を取られるので、そのままにしておいた。


  ダンジョンは、古いものらしく、蜘蛛の巣が張ったり、鼠が大発生したりしていたが、2階層で恐ろしい目にあった。あの黒い悪魔『G』が暗闇で蠢いていたのだ。ブーンという羽音、カサカサと這う音、すぐ気が付いたノエルが、ファイア・ボールを連発して殲滅したが、一瞬明るくなったダンジョン内で見たものは、トラウマになりそうなものだった。


  『G』の焼け跡を踏みながら、3階層に降りて言ったら、そこは、ナメクジ地獄だった。始末の悪いことに、ナメクジの中にヤマビルが点在していて、ポタポタと落ちて来るのだ。ここは、フリーズ・ドライ魔法をかけて、ヌメリを取ってしまい、壁、天井の奴らを全て床に落としてから、ファイアで瞬間乾燥してやった。


  ここのダンジョンは、いわゆる恐怖系小動物の蠢いているのが特異みたいで、10階層まで続いた。


  10階層の階層ボスは、皆、嫌な予感がしたが、そんな予感は絶対に当たる。出たのだ、物凄く大きい、黒の悪魔『G』が。


  ファイア・ボールやアイス・ランスは跳ね返してしまうので、魔法攻撃以外で攻撃しなければならない。僕は、剣を使いたくないので、シェルさんにお願いした。


  シェルさんは、震えながら、弓矢5本セットを3連続で放ったら、すべて命中、最後の方は、貫通していって、ボスは動かなくなった。


  誰も魔石を取り出そうとしなかったので、僕がファイアで炭にした。


  サリーは、後ろで、目を瞑って震えており、ちょっと漏らしているみたいだ。イフちゃんに替えのパンツを出して貰っていた。


  11階層から下は、蜘蛛のオンパレードだった。大きさといい、数といい、蜘蛛嫌いには、絶対にクリアできない状況だった。


  しかし、基本的に蜘蛛は火に弱いので、エーデル姫とノエルの二人に任せた。たまに、イフちゃんも『地獄の業火』を吹いたが、洞窟内の温度がハンパネほど上がってしまい、それからは何もしないで貰った。


  20階層のボスは、16本脚の大型の蜘蛛だった。吐く糸も、一度に40本位吐いて来るので、躱すのに大変だった。シールドを空中に張っても、蜘蛛の糸に覆われて、下に落ちてしまう。


  シェルさんの弓矢も、細かく張られた蜘蛛の巣に絡め取られてしまう。あ、結構ヤバいかも。でも、やはり火に弱く、エーデル姫とノエルのファイア・ボールで糸がすべて焼き尽くされ、その後、クレスタさんの長特大アイス・ランスの餌食となった。


  21階層は、ビーチエリアだった。ズーと向こうの下の階層への階段まで、砂浜が広がっており、魔物の陰もないので、少し休むことにした。


  打ち寄せる波と疑似太陽の光、これは泳がない手はない。皆、素っ裸になって泳ぎ始めた。それを見ていたサリーが、あきれた顔をしていたが、その内、自分も素っ裸になって泳ぎ始めた。僕は、チラと見たが、股の間には大人になりかかっている証があった。しかも真白な毛だった。


  『ところで、皆さん、泳ぎましょうよ。襲うのはやめてください。サリーまで、何をしているんですか。』と、必死に逃げ回る僕だった。


  今日は、此処でキャンプすることにした。満天の星空で、皆で楽しいキャンプ・ファイア。サリーにとって初めての経験だった。勿論、素っ裸でのキャンプ経験も。

今回のダンジョンは、女性が嫌がる魔物ばかりだったようです。

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