第77話 ワイバーン殲滅
いよいよワイバーン戦です。ゴロタ達は、またまたチートな戦いをしてしまいます。
ワイバーンは、バラバラに飛翔してきた。陣形などは無い。ただ、飛翔の邪魔にならないように、お互いの距離は十分に取っている。
シェルさんは、50本の矢を、地面に差した。そして、5本を引き抜き、弓につがえた。身体が赤く光っている。鏃も青白く光っている。
クレスタさんは、ロッドを高く掲げて、待機している。詠唱はしない。心の中のイメージで魔法を生じさせることに慣れてきたようだ。今日の魔法は、アイス・ランス。初級魔法だ。魔力を込める。ロッドの魔石が水色に光り始めた。
エーデル姫とノエルは、落ち着いていた。最近、僕に習った魔法を使うだけだ。使うのは、慣れているファイア・ボールだ。でも、飛ばすのではなく、敵の体内で生じさせるだけ。飛ばすよりもずっと簡単で確実。遠隔で発生させるのにはちょっとしたコツが必要だ。発生させる場所を強くイメージしなければならない。
戦闘が始まった。シェルさんの弓矢5本が、5匹のワイバーンそれぞれの右肩の付け根に突き刺さった。
ズバン!!!!!
ワイバーン達の右肩が吹き飛んだ。右の翼は、ダランと垂れ下がり、きりもみしながら下に落ちて行った。一回の『射』で、5匹が落ちた。
クレスタさんのアイス・ランスが5本、投射された。落ちた5匹のワイバーンの左翼に命中する。広げていない場合は、翼を突き抜いて、左わき腹をえぐり取る。これで、一度に5匹のワイバーンの翼が犠牲になってしまった。
エーデル姫とノエルが、無詠唱で、ファイア・ボールを連発する。極小のファイア・ボールだ。しかし、ワイバーンの口からは、炎と煙が吹きあがる。どこから飛んでくるのでも無い。突然、口の中に火球が生じるのだ。避けようがない。防ぎようがない。
僕は、自分の身長よりも長い木剣を振っている。木剣のはずなのに、青白く光っている。軽くワイバーンの頭を打つと、頭蓋が陥没して絶命する。首筋を斜めけさ切りにすると、頚椎骨折により絶命する。たまに、心臓を突く。心臓破裂で絶命する。血潮は飛ばない。ワイバーンはほとんど損傷のない状態で絶命していく。
第1陣の5匹は、1分で全滅した。後続のワイバーンも5匹ずつ殲滅されていく。5分経った。飛翔しているワイバーンは残り5匹だった。
うち1匹は青黒い色をしている。口からチロチロ赤い炎が見えている。特殊個体だ。地上にいる僕に向かってブレスを吹く。黒龍のブレスほどではないが、確実に僕を包み込んだ。僕は、氷のシールドを張っていた。白く輝いていて、火傷一つしない。
僕は、特殊個体の方を見た。30m位上空を飛翔している。僕は、上空にジャンプした。10m位の高さまで上がったとき、特殊個体に向けて、大剣を揮った。青い斬撃が直撃した。
特殊個体は、墜落した。僕も落下していったが、先に地上に着地していた。落下してくる特殊個体を、大剣三の型、脇構えからの切り上げ打突で、あばら骨から心臓付近を打ち据えた。特殊個体は絶命した。
残ったワイバーン4匹は、慌てて逃げ出した。南の方に逃げようとした刹那、物凄い恐怖の存在を地上に感じたようだった。
平素は、餌の存在でしかない、人間の女性、その女性から発せられる恐怖により、ワイバーン達は、地上に落ちた。既に息は無かった。その女性はヴァイオレットさんだった。
戦闘は終わった。
------------------------------------------------------------------
ヘンデル皇帝陛下は、自分の目の前に繰り広げられる光景が信じられなかった。これは何だ。戦闘か。あの帝国軍1個大隊でやっと1匹を撃退できるワイバーンだぞ。それを、あの子供達は。
戦闘になっていない。ワイバーンが全く攻撃してこないじゃないか。
「マーキン帝国魔導士長、彼らは、何をしているのだ。」
「良く分かりません。分かるのは、あの背の高い女が、アイス・ランスを使っているという事です。しかし、1度に5本のアイス・ランスを撃つことはできますが、5匹の敵に別々に命中させるなど、聞いたこともありません。しかも、あの威力、あの固いワイバーンの表皮をああも容易く削ることは、初級レベルでは不可能です。おそらく、極大級、それを無詠唱で連続で。あの女、もしかすると、あの魔王の生まれ変わりかも知れません。」
「いや、魔王の生まれ変わりは、あの男の子のはず。」
「パトロン帝国軍統合幕僚長、あの、弓矢を使っているエルフは、何をしているのじゃ。」
「分かり申さぬ。一度に5本の矢を撃つことはあっても、余程の膂力が無ければ、あのような飛距離は不可能です。もっと不可能なのは、それを別々の敵に命中させることです。また、あの弓矢の威力、我が帝国には、ワイバーンの皮膚を貫通させるだけの威力を放てるアーチャーは1人もおりませぬ。」
「うむ、マーキン帝国魔導士長、分からぬと思うが、あの二人の子たちは何をしているのじゃ。」
「はい、わずかに魔力を感じるのですが、何をしているのか、皆目見当もつきません。ただ、ワイバーンの口から炎と煙が出ていますが、彼らが関係しているかも知れません。」
「うむ、ところで、あのゴロタ殿は、何をしているのじゃ、お、飛んだ。あ、落ちた。誰でも良い、余に説明してくれぬか。」
「陛下、あのゴロタ殿の使っている剣は、大剣を模した木剣のようで。」
「は、では、あのゴロタ殿は、木剣でワイバーンを殲滅しているのか。あ、終わった。」
------------------------------------------------------------------
ゲート市明鏡止水流道場の師範は、涙を流していた。秘伝として封印されていた、あの大剣の七つの型、その型を使って活躍するゴロタを見て、自分の目的とする道が見えた気がしたのである。あの姿を目に焼き付けよう。あすから、予備の大剣を出して千本素振りを始めようと考えている師範だった。
すべての殲滅が終わってから、皇帝陛下の前で整列して膝まづいている僕達。
「大儀である。」
これで、皇帝からのお褒めの言葉は終わった。褒美は、宰相から後で送られてくる筈だ。
僕達は知らなかった。皇帝陛下は、何て言って褒めたらいいのか分からなかった事を。何故なら、僕達がどうやってワイバーンを殲滅したのかを、誰に聞いても答えられなかったからである。
確かなのは、あの子たちと同じ事ができる者は、帝国内には居ないと言う事だ。ピント外れの褒め言葉なら、しない方が良い。したがって、この言葉のみになってしまったのである。
------------------------------------------------------------------
キャラバン隊は出発した。目的地はセントラル中央郡の中核都市ダベリン市だ。ここから、10日程掛かるので、到着予定は、9月1日だ。
ダベリン市までは、途中、町が1つと、村が2つあり、その他は、ダンカンさんの宿場に泊まる。
今日は最初の村、ゾル村だ。この村には、女目当てのキャラバン隊の男達から金を絞るための施設が多い。お風呂に、劇場に、休憩所。そこで働く女性は、全て兎人だ。奴隷もいれば、自由人もいる。
僕達が泊まったのは、村で唯一の一般旅行者用のホテルだ。ホテル内の部屋は、クラス分けされている。僕達が取ったのはSクラスの部屋で、ダブルベッドに追加ベッドの部屋とツインだ。皇帝陛下達は、自分達の寝台車に泊まるし、ダンカンさんは、最初から、僕達とは行動が別だ。このホテルに泊まっている最上客は僕達だった。
食事は、ディナーコースにした。今まで、宿場で食事をしていたが、ごった煮にパンというものだった。皇帝陛下に、晩餐を一緒にとのお誘いもあったが、皇帝陛下と一緒では、緊張して食べた気がしないので、丁重にお断りしていた。
食後、部屋に戻った。今日、僕と一緒に寝る予定は、クレスタさんだ。クレスタさんは、重い。いや、体重の話ではない。夜のセレモニーだ。最近、クレスタさんは、遠慮がない。ノエルが隣で寝ていてもだ。
今日は、本当に久しぶりにクレスタさんだ。
ここの風呂は、洗い場もあり、バスタブも大きく二人が入っても十分な広さだ。しかし、部屋との間仕切りに大きな窓が開けられ、水晶ガラスが嵌められている。だから、お風呂で何をしているのかが丸見えなのだ。僕が、お風呂に入っていると、クレスタさんが入ってきた。背中を流してくれる。自分のタワシを使って。次に、僕を立たせて、前に回る。泡だらけのタワシで、僕の前を洗う。お湯を掛けて泡を流す。いつもはこれで終わりだ。しかし、今日は違った。クレスタさんは、僕の腰を抑えながら、その場でしゃがみこんだ。
(ここから先の記述は作者により削除されました。)
------------------------------------------------------------------
(8月28日です。)
旅の7日目、唯一の町、ジェリー町に着いた。町に着いて驚いた。女性の殆どが、ミニスカートなのだ。え、ヘンデル帝国って、質実剛健、控え目な女性だったはずですが。中には、明らかにロングスカートを切っただけという物もあったけど、殆どが新しく新調している。
変だなと思ったら、原因は、直ぐに分かった。
町の中心部にある「ダンカン洋装店ジェリー1号店」で、最新モードとして、ミニスカートを飾っているのだ。コピーが凄い。
「あの『殲滅の死神』ご用達。帝都で大ブレーク中。いつかは着てみたいミニスカート。もう、見えても平気です!」
ダンカンさん、これって違法じゃありませんか?
シェルさん達は、皆でワイワイ買い物をしていた。今年の流行色がどうとか、新素材が何とか言いながら、次々に購入している。まあ、お金はあるから、いいけど。シェルさん、自分達が冒険者だってこと、忘れているでしょ。
それから3日目、明日はいよいよダブリナ市に到着だ。
しかし、僕達は、未だ知らない。帝国の将来を大きく左右する事件が、この街で起きてしまう事を。
いよいよ、ダブリナ市に到着です。この町は奴隷の町です。さあ、またチートな戦いが始まるのでしょうか。最近、エッチなシーンが少なくなっているような気がします。戦いに忙しいし、これ以上進展させる気が無いので、現状維持のままです。