第74話 ビビ・ダンジョン攻略
ビビの店がオープンしました。売れてます。売れてます。売れてます。どんどん、売れてます。
(7月22日です。)
その夜、ビビさんの家は賑やかだった。みんなで、夕食を作り、皆で一緒に食べた。子供達は、何となく嬉しくなり、走り回っている。
ダンジョンの名前を『ビビ』と登録したと発表したら、ビビさんは泣き出してしまった。ダンジョンショップの名前は『ビビ・ダンジョンショップ』とすることにした。自分の名前を店の名前にしているのだから、誰からも文句は言われない。将来的には、宿泊施設や食堂を経営し、ギルドの出張所も運営できるようになれば良いが、それには、もう少し費用と人手が必要なので、これから頑張ることになった。
夜、寝るときになって、子供達がテントで寝たがったので、しょうがなく僕とシェルさんが、ビビさんの家のベッドで寝ることになった。深夜、家の外で水の音がする。何かと思って、そっと起き出しだし、家の裏に行ってみると、ビビさんが全裸で身体、特に股間を洗っていた。石鹸を付け、股間の間の大切なところを指を使って何度も何度も洗っていた。僕は、黙ってベッドに戻って泣いた。シェルさんも泣いていた。
翌朝の日の出前、僕は森の近くまで行って、明鏡止水流の『形』を練習した。最後に、『ベルの剣』を納刀し、あの紅い剣を出した。今日は、剣をイメージしただけで、直ぐに出現したが、完全に『出現』つまり透明感が無くなるまで、若干の時間がかかった。それに、明鏡止水流で、『大剣の形』は習った事が無いので、『長刀の形』を使ってみるが、何か違う気がした。今度、習いに行ってみようと思った。それと、これを実践で使うのはしばらくやめようと思った。ゴブリン・ロードと戦った時、切れ過ぎて、制御ができなかったのだ。
あの時は、頭を二つに割って、とどめを刺そうと思ったのに、身体まで真っ二つになってしまった。あれでは、オーバーキル過ぎる。今の『ベルの剣』でも、全く火力不足を感じないのに、あれでは、無用の長物になってしまう。使い方を考え、最も必要な時に、最大の力を発揮できるようにする必要があると思ったのだ。
朝食後、シェルさんとエーデルは、ビビさんの店の前に立って客引きをした。ノエルとクレスタさんは、商品説明および販売員を、ビビさんは焼きたてパンを作っていた。
さっそく冒険者の集団が来た。ギルドからの探索依頼を受けて来たようだ。急な探索依頼だったため、探索用の魔道具が不足しているようだった。魔光石が飛ぶように売れた。ビビさんのパンが焼きあがって、香ばしい匂いを漂わせると、焼きあがった瞬間に完売になってしまう。干し肉、干芋などは、午後から来る冒険者に良く売れた。おそらく、今夜はダンジョンの中で泊まるのだろう。
夕方、殆どの商品が無くなってしまった。僕が、明日以降のために、昼間の間に仕入れをしていたので、明日売る商品がないという事は無い。最悪、パンだけ売っても利益が出るはずだ。
夜、皆で売り上げを確認したら、思いがけない金額となったため、ビビさんがまた泣き始めた。
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(7月29日です。)
冒険者ギルドから呼び出しが来た。僕達は、『ビビの店』が軌道に乗ったみたいだったので、市内に帰っていた。ギルドに行ってみると、凄い人だった。入口前では、子供達がポーター志願で声を掛けて来るし、中は、初心者から高ランクパーティーまで、ダンジョンに入るための手続きのため、行列を作っていた。ダンジョン出現直後は、ドロップ品も多いし、宝箱やレア鉱石が発見されやすいのだ。
受付の子は、僕達を見て直ぐに裏に行くように合図した。ギルドマスター室には、ギルドマスターとゲール総督がいた。用件は、ビビ・ダンジョンの攻略だ。どうやら、攻略が行き詰まっているらしい。あれから1週間経っているのに、第7階層のボスを討伐出来ないそうだ。
ギルドマスターのケンタさんという人は、黒い髪の若い男性で、ノエルと同じ出身みたいだ。彼とゲール総督が、士官学校の同期だったらしい。
依頼は2つだった。
1.なるべく深い階層まで攻略して貰いたい。
2.マッピングもお願いしたい。
この依頼の報酬は、出来高払いだそうだ。今回は、ゲールさんとイレーヌさんも参加するそうだ。
翌日、『ビビの店』の前で、ゲール総督を待っていた。『ビビの店』の前には、丸テーブルがいくつか並べられており、テーブルの真ん中から、大きな日傘が掛けられていた。もう7月なので、日差しが強く、殆どのテーブルは埋まっていた。
新しく雇った亜人の子が、走り回っていた。ゲール総督達がやって来た。ゲール総督は、冒険者服に軽鎧と普通の格好で、長剣を帯剣していた。イレーヌさんの格好に驚いた。超ミニスカだ。セント市には、ミニスカートが売ってないため、サイズに合ったプリーツスカートを切ってもらったそうだ。
試着するのが恥ずかしかったので、腰に当てて、この辺でいいと言って切ってもらって、実際に着たら、腰回りの膨らみの分だけ短くなってしまったそうだ。パンツが見えそうなギリギリ感がエロいんですけど。そんな事を考えていると、シェルさんにジト目で睨まれた。
そういえば、ビビさんと新しく雇った子も、ミニスカートだったけど、ビビさん、何か有ったんですか?
イレーヌさんの武器は、ボウガンだった。
一気に、7階層まで行く。ダンジョン7階層のボスは、キマイラの特殊個体だった。頭が虎、体がトカゲ、尻尾がサソリだった。特に、尻尾が厄介で、電撃を飛ばして来る。死にはしないが、感電状態で麻痺してしまうのだ。
イレーヌさんは、既にビリビリしている。クレスタさんが、土魔法で防御しているので、さらに被害が広がることは無いだろう。しかし、地面を走って来る電撃はハッキリ言って綺麗だ。つい、見惚れてしまう。しかし、眺めてばかりもいられない。虎頭の氷ブレスも、見ている分には、キラキラ光って綺麗だが、命中すると、確実に凍る。この季節、非常に有難いが、ここでは嫌だ。
いい加減、見飽きて来たので、エーデル姫にお願いした。この前、肺の中でファイア・ボールを爆発させる秘訣を教えていたので、今日は、初披露だ。
勝負は、一瞬だった。
キマイラは、胸と腹を内側からミンチ状に爆発して、お亡くなりになった。バタン、バタンと地面を叩いている尻尾は、ゲール総督がスパッと切って落とした。ゲール総督、狡いです。ミスリルの右小手がドロップした。小手のドロップは、厄介だ。片側ずつしかドロップしないので、両手を揃えるのが一苦労なのだ。
8階層は、火山階層だ。暑い。兎に角、暑い。出てくるモンスターは、スライムだけだが、厚さで倒れそうだ。金属装備は、焼けるように熱くなるので、脱いでしまった。女性陣は、ノエルを除き、ミニスカだけになる。僕は、シールドを身に纏っているので平気だ。
そこに、アシッド・スライムが降って来るのだ。今回も、犠牲者はイレーヌさんだった。アシッド・スライムは、強い酸を吐く。強い酸は、服を溶かす。溶けた後には。
イレーヌさんは、キャーッと叫び声を上げてしゃがみ込んでしまった。パンツまで溶けている。ゲールさんがガン見している。目が離れないようだ。シェルさんが、耳を引っ張って、後ろを向かせた。僕は、前の方にいたので何も見えなかった。イフちゃんが、パンツとエーデル姫のミニスカを出してあげた。イレーヌさんは泣いていた。もう、お嫁に行けないと言って泣いていた。ゲール総督、責任を取って下さい。ゲール総督は、横を向いて口笛を吹いていた。
8階層のボスも、アシッド・スライムだった。ただ、異様にデカイ。高さは2m以上ある。こいつも酸を吐くので、女性陣は誰も近づかない。ゲール総督が、長剣で斬りつけるのだが、こいつはその時だけ2つに割れるが、しばらくするとくっついてしまう。連続で切って、32個のスライムにしたが、やはり1匹に戻ってしまう。
その間、スライムの酸の体液を浴び続けるので、ゲール総督のマッチョなボディが露わになって来る。女性陣は、両手で顔を覆っているが、指の隙間からランランと覗いている目線が怖い。もう、これ以上見たくないので、ボロボロになったゲール総督の服を『再生』スキルで復元する。
シェルさんが、ジト目で、さっきのイレーヌさんに、同じスキルを使わなかった事を非難したが、やはり、ほら、あれです。最後は、クレスタさんが超氷結魔法で凍らせて、シェルさんが、弓で砕いて、魔石以外を溶岩の中にポイして終わった。イレーヌさんが、「私のスカート、返せ。」と叫びながら、物凄い遠くへ投げていたのは、見なかった事にしよう。
ドロップ品は、また、ミスリルの右小手だった。
9階層も溶岩地帯だったが、ここで厄介なのは、地面から急に溶岩が吹き出る事だ。吹き出る直前、地面が盛り上がって来るので予測は出来るのだが、ウザい。女性陣が、もっと嫌がるのは、至る所から伸びて来るチンアナゴみたいな奴だ。首から先がちょっと太くなっており、色が焦茶色と、生理的にダメな上に、急に地面から伸び上がるので、スカートの中に頭が入って来るのだ。あっちでキャーッ、こっちでキャーッと賑やかだ。
僕は、それには、全く対応を取らず、左右の溶岩溜まりから首を出して、口の中から溶岩を吐き出す溶岩亀に注意していた。吐き出されると、地面が溶岩だらけになって、前に進めなくなるのだ。僕は、左右を探知し、溶岩亀がいやらしく首を伸ばした所を、斬撃で首チョンパする。ゲール総督。一番後ろでニヤニヤしてるのって気持ち悪いんですけど。
9層のボスは、サラマンダーだった。ハッキリ言って火蜥蜴。火には水です。ここはクレスタさんが一人で頑張った。
まず、土魔法で、サラマンダーの周りを囲う。次に、火を吹き続けるサラマンダーの上から、水魔法で、大量の水を打ちまける。
サラマンダーが水没して終わった。溺死である。ゲール総督が口を大きく開けて固まっている。サラマンダーを溺死させて殲滅など聞いたことないらしい。サラマンダー討伐は、2個大隊以上でないと成功しないと言われている。火耐性の盾で接近を図る部隊と、長槍と弓矢で攻撃する部隊が必要とされている。
まだ熱いので、冷めるのを待って、丁度良い湯加減の時に、皆んなでワイワイお風呂タイムだ。底に沈んでいるサラマンダーが、丁度良い足場になっている。
女性陣は、バスタオルを身体に巻いている。え、それってマナー違反。ゲール総督は、堂々と前を隠さず入って来る。大騒ぎする女性陣。ゲール総督。それって、セクハラです。
お風呂を出てから、ゆっくりお湯を抜く。一遍に抜くと、溶岩池に流れ込んだお湯が、水蒸気爆発を起こすからだ。
ドロップ品は、またまた、ミスリルの右小手だった。
さあ、いよいよ10階層だ。
ビビさんは、特定のお客さんを掴もうとしています。




