表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
726/753

第2部第276話 初めての人間界その14

(6月6日です。)

  あの、洞窟のショートカットが第5階層のみをパスしたとすると、ビーチエリアは第6階層となり、これから行くのは第7階層となるかもしれない。第7階層は、都市エリアだった。石造りの立派な建物が並んでいるが、勿論誰もいない。この建物はビルディングって言うんだって。冥界図書館の『都市インフラの整備と計画』という本に書いてあった。あ、魔物の気配だ。ウエンディちゃんが戻ってきて、3ブロック先に大型のキマイラが2匹いるそうだ。え、2匹?面倒くさいな。そう言えば、こんな都市エリアで、魔物たちは何を食べているんだろう。餌になりそうなものなんか何もいないと思うの。銀ちゃんが念話で教えてくれたんだけど、基本、魔物は大気中の魔素や妖気を吸い込んで存在を維持しているんだって。そのため、聖なる場所に魔物がいないのは、聖なる力が怖いのではなく、魔素や妖気がないからなんだって。銀ちゃん、教えてくれてありがとう。


  キマイラの位置を確認する。ビルの陰で自分たちの安全を確保しながら接近する。あと、1ブロックというところまで来てから、『虹の魔弓』に5本の矢をセットする。『火』属性を帯びさせてから、上空めがけて放つ。矢は、ビルの上を飛び越すような放物線を描きながらキマイラ1体に命中する。ビルの向こうで爆発音がしたかと思うと、魔物の気配が1体になってしまった。続いて、同様に5本の矢を放つ。キマイラは、爆砕してしまったようだ。魔石だけ回収して、階層の奥に進んでいく。結局、階層ボスの間に到着するまでにキマイラ8体を殲滅してしまった。


  階層ボスは、グリフォンだった。それもかなり大きく、空を飛んでいる。私は、キラちゃんに竜の姿になって貰って、騎乗セットを装着する。グリフォンは、しきりにこちらを見ているが、階層ボスエリアから出ることができないようだ。キラちゃんに騎乗してから、グリフォンよりも上空に位置する。高度差がある方が、矢の威力が高くなるからだ。それを知っているグリフォンも死に物狂いで上昇してくるか龍種モドキのグリフォンと精霊竜のキラちゃんでは、飛翔能力に差がありすぎる。高度差200mで『雷』属性の矢を5本はなった。全射命中だ。あ、錐もみ状態で落ちていく。あ、衝突した。土煙が凄い。少しもったいなかったかな。きれいな死体なら高く売れたかも知れない。これからは気を付けよう。


  しょうがないので、グリフォンのライオンの頭だけを切り取って空間収納にしまい込み、後は魔石だけを回収して、第8階層に向かうことにした。


  地下第8階層は、冬山エリアだった。吹雪が凄い。でも、『聖なるシールド』のお陰でシールド内はポカポカだ。このエリアでは、真っ白な毛におおわれた大型サルと、大型のウサギがいた。大型サルは気持ち悪かったので、殲滅するとして、大型のウサギは毛皮もお肉も利用できるのだろうから、丸ごと収納したい。うん、方針は決まった。『虹の魔弓』に矢をつがえて『氷結』と呟いてから放つ。いくら冬山に生息していても、絶対零度に近い温度に耐えられるわけもなく、その場で氷の柱に閉じ込められてしまう。ウサギは、そのまま回収し、サルは、砕いてから魔石だけ回収する。冬山は凍った雪で歩きにくいので、全員を『空間浮遊』させ、『空間移動』で前進する。フワフワと吹雪の中を進んでいく姿って、知らない人が見たら気持ち悪いだろうななんて考えながら階層ボスエリアに来た。あ、階層ボスは綺麗な女の人だ。でも、髪の毛から足先まで、すべて真っ白。目だけが赤いの。吐く息も白いところを見ると、あの息、浴びるときっとまずい奴よね。


  『火』属性の矢をつがえて放とうとした瞬間、


    『待って、どうぞ通って良いわ。』


  念話で話しかけられた。まあ、通って良いと言うのなら、通るけど、それじゃあ、この階層ボス、何のためにいるのかしら。そんな事を考えながら地下第9階層に降りて行った。


  地下第9階層は、火山エリアだった。さっきの氷の世界から一転、灼熱の世界だ。これは、普通の冒険者では、攻略は無理だろう。寒さ対策と熱さ対策、氷の魔物と炎の魔物、両方に対処する必要があるからだ。でも、私は大丈夫。『聖なるシールド』は、物理攻撃、魔法攻撃そして闇攻撃から守ってくれるので、火山から吹き出て来る溶岩や噴火で飛んでくる火山弾も全て防御してくれる。溶岩池の中から、何本かの手が伸びている。マグマ・ハンドだ。いやらしいことに、マグマの雫を飛ばしてくる。まあ、当たらないけど。でも、生身に当たったら無事ではすまない。幸いなことに、マグマハンドは、名前の通り手だけの存在なので、その場から動くことはない。そのまま進んで行くと、今度は、溶岩の中から顔が出てきた。マグマ・ヘッドだ。目も鼻も単なる丸い穴だけの存在だ。こいつは、大きな口を開けて、マグマの唾を吐いてくる失礼な奴だ。ちょっと頭に来たので、ペッペッと履いている口に向かって『氷』属性の矢をはなってやる。あれ、口が固まっているのに唾を吐くなんて。マグマ・ヘッドは破裂してしまった。あと、上から垂れて来るマグマの雫と、突然、地面から吹き出て来るマグマ噴泉に気を付けなければならない。マグマ噴泉は、地面が赤く膨れ上がってくれるので予測は簡単だが、上から垂れて来る雫は予測が難しい。でも『聖なるシールド』は万能よ。もう、完全ハイキングモードで、階層ボスエリアまで到着した。


  階層ボスは、大きなカメだった。カメの筈なのに、尻尾にも頭が生えている。甲羅も何もかも真っ赤なマグマだ。当然、口からはマグマの塊を拭いてくる。威力も中々のものだ。当たれば無事では済まないだろう。当たれば。私は、『氷』属性の矢を8本つがえた。昨日、8本まで打てることが確認できたので、今回、8本同時に射って見ようと思ったのだ。すべての矢に『氷』属性でも上位の『絶対零度』属性を纏わせた。狙いは、二つの頭だ。ここを凍らせれば何とかなるだろう。そう予測したの。4本ずつの矢が二つの頭に向けて放たれた。全射命中。あっという間にカメの頭が凍ってしまった。あ、動かなくなった。私は、丸太木刀を出して、凍ったカメの頭を砕いていく。二つの頭を砕き終わった段階で、甲羅から伸びていた手足が普通の黒い色に変化した。また、真っ赤に焼けた甲羅も、鈍い銀色の金属の様になった。


  『アダマンタイトだ。』


  銀ちゃんが教えてくれた。さすが銀ちゃん、博識ね。あ、でもアダマンタイトって超高級金属の筈。ミスリル鉱山から、ほんの少ししか採れないって聞いていたわ。これは、下手に削り取ろうとすると、自分の剣が駄目になる可能性があるので、このまま完全に冷えるのを待って、丸ごと収納しましょう。




  結局、触れるぐらいに冷えたのって、2時間位かかったかしら。このエリアは熱いし、地下第10階層まで潜ることにした。本当は、このエリアが最終階層だったらよかったんだけど、下に潜っていく階段があることから、最下層エリアじゃあなかったのね。


  地下第10階層は、草原エリアだった。どこからか吹いてくる風が気持ちが良い。見渡す限り、草原だった。地平線が見えるけど、そんなに広いわけないわよね。周囲に魔物の気配もないことから、食事にしましょう。時間は分からないけど、お腹の空き具合から夕食の時間になっていると思うの。今日の夕食は、アサリとハマグリのパエリアにしたわ。シーサイドエリアで、ちょっとだけ採取しておいたのを使うの。アサリにハマグリ、イカにエビあとピーマンにトマトにタマネギ、チャッチャッと炒めて、お米と一緒に炊き上げて完成。まあ、食べるのは私一人だし、ほんの少ししか作らなかったんだけど、一杯余っちゃった。残ったのはそのまま空間収納にしまっておく。食べ終わったら眠くなってきちゃった。空間収納からテントを取り出して、中に潜り込む。銀ちゃんが子犬のサイズになって、一緒に寝袋の中に入って来た。うん、モフモフが癒されるわあ。キラちゃんは、テントの外で、じっとしている。まあ、竜の姿のまま、テントに入って来られてもね。ウエンディちゃん、見張り、お願いね。


  何時間眠っただろう。頭すっきり。よし、モーニングティーを飲んでから、昨日のパエリアを温めて食べて、お腹もすっきりさせて。さあ、行こうか。というか、これだけ広いんだもん。当然、キラちゃんに乗っていくわよ。ゆっくりとエリアの奥に進んで行くと、地面の至る所がボコボコになっている。上空から見ると、私が2番目に嫌いな地面の中でモニュモニュしている奴が何匹もいるみたい。あ、頭を出して、目のない顔をこちらに向けている。おぞましい気がブルブルとしてきた。あ、銀ちゃん!銀ちゃんが高度100m位から飛び降りた。飛び降りる途中で、元のサイズの銀狼になったと思ったら、顔を出しているそいつのそばにシュタッと着地して、咆哮一発、『風のブレス』を吐いたみたい。そう言えば、銀ちゃんって、風の精霊獣だったわよね。次々と地面に顔を出すウニュウニュを切り飛ばしていくんだけど、本体は、かなり先にいるみたい。キラちゃん、しっかりと本体の居場所を把握しているみたいで、本体の真上に来た。


  よし、まずは小手調べ。『虹の魔弓』に矢を5本つがえて、『轟雷』と呟いて思いっきり矢を引き放ってやった。敵は地面の下だが、地面に着地するとともに爆発したかのような土煙が上がる。そのまま、矢は地面の中を直進したようで、本体がもがいているのが上空から見えている。土煙が止むと、大きな穴が5個所開いているが、それらの下から、地面がグニューっと盛り上がってきて本体が姿を現した。本体は、マフィンの様な身体をしており、四方八方から触手が伸びているけど、本体の周りには何もない。次は『煉獄の炎』と呟いて同じく5本の矢を放つ。これも本体の奥深くまで入り込んでから大爆発を起こした。うえ、気持ちの悪い物が舞い上がってくる。すかさず、キラちゃん、急上昇して気持ちの悪い物が付着するのを防いでくれる。ナイス判断、キラちゃん。さあ、次は、『突風』と呟いて、5本の矢を放った。大きな渦巻きを纏いながら矢が襲い掛かる。あ、きれいに5等分したみたい。もう大丈夫と思うけど、最後の5本で、本体を氷漬けにする。これで、気持ち悪い汁もこぼれてこないでしょう。地上に降下すると、調度、銀ちゃんも全ての触手を切り取ったようだけど、その口にくわえているのなあに。そんなもの、いらないから、どこかに捨ててきて頂戴。銀ちゃん、悲しそうな顔をしてから、遠く離れたところにポイしてきたみたい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ