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第2部第273話 初めての人間界その11

(6月5日です。)

  今日は、魔法陣暴発事故の調査と言う事だったけれど、いつの間にか私の武器の能力調査になってしまった。一体、今日の調査の目的って何だったのかしら。それに武器の能力調査なのに、マリンピア魔導士長を始め、 グレーテル王国の行政庁の方々まで同行している。なんか私の素行調査も兼ねているのかしら。まあ、悪いことは何一つしていないし。騎士団本部は、グレーテル離宮兼ゴロタ帝国大使館からすぐ近くにあったので、皆で歩いていく。騎士団本部は本当に大きな建物で、敷地も、完全に森の様相を呈していた。


  騎士団に到着したら、調度、昼食時だったので、皆さんと一緒に隊食を食べたんだけど、カレーライス、とても美味しかった。やっぱり大きな鍋で作るカレーは別格の美味しさね。スイーツも、今が旬のイチゴが出されたんだけど、とても効果そうなイチゴ、甘さも半端なかった。品種は『甘乙女』だって。絶対、どこかからパクっている名前ね。でも、美味しいからいいわ。


  午後1時から、武器の実演が始まったの。最初は『投げビシ』ね。的は、等身大の人形が30m位先に立たされていたの。なんか、リアリティがありすぎる気がするんだけど。10個位を左手で持って、次々と右手の人差し指と中指で挟んで投げ続けた。3秒くらいかしら。人形の心臓部と頭を狙って投げたんだけど、頭が3発目位ではじけ飛んでしまったわ。仕方がないので、腕の付け根を狙ったんだけど、両腕も千切れてしまったのは、きっと人形が柔らかすぎるのよね。


  次は『エルフの弓』で、試射をしたけど、5つの的に同時に命中させたところ、見物の騎士団から驚きの声が上がっていた。本当は遮蔽物等があれば、もっと効果的なんだけど、まあ、これはこれで良いかなと。


  後、『虹の魔弓』で5つの的を狙ってみる。5本の矢を次々と放って行ったが、『火』、『氷』、『風』、『雷』それと『『光』の5属性をそれぞれの矢に纏わせたので、5つの的がそれぞれの特性に応じて反応していた。


  『火属性』は、大爆発して何も残らなかった。


  『氷属性』は、大きな氷柱が出来上がってしまう。


  『風属性』は、分厚い的が真っ二つに切り離されてしまった。


  『雷属性』は、爆発こそしなかったが、バチバチと放電を続けている。


  最後の『光属性』は、的が物凄い光で覆われてしまい、その後、光が消えたときに真っ黒になった的が現れてきた。


  光は、闇属性の魔法を相殺する効果があるので、単発では効果が良く分からないようだった。これで弓の能力披露は終わりだ。本当は300m以上の的に全射命中させることも出来るのだが、ここでは披露出来ないので、我慢しよう。


  次は、剣の威力だが、『コテツ』を取り出して、左腰に差し、据え切り用の人形の前に立ち、腰を落として、居合一閃、人形を斜め上に切り上げた。ズルっと人形の上半身が斜めに落ちるとともに、コテツは、既に鞘の中にしまわれている。最後に『エスプリ』を取り出し、頭上に掲げてから『聖なる光』を周囲に拡散した。今回、お集まりいただいている人には不要かも知れないが、身体の中を『聖なる力』が満ち溢れてきたので、効果は認知できただろう。


  スターバ団長や騎士団の幹部の方達は黙り込んでしまった。かなり、驚いているようだ。同じく、魔導士教会の幹部の方達も唖然としていた。


  「マロニー嬢、先ほどから魔力を大量に使っているようだが、魔力量は大丈夫なのかな。」


  「いえ、団長様、今回の技は全く魔力を使っておりません。こちらの世界では生活魔法と言われるレベルの物ですが、私の魔力は極めて少ないので、魔力を使わずにできることをしただけです。」


  

  「先ほどの『火魔法』を纏った弓を、うちの団の弓手に試させてもらえないだろうか。」


  「ええ、どうぞ。」


  一人の屈強な若者が前に出てきた。弓手は、技術もさることながら、強力な弓を使うことによって、遠距離まで威力の高い矢を放つことができるので、筋肉マッチョな若手が扱うことが多いらしいのだ。最初、少し小馬鹿にした態度が見受けられた。私のような小さな体の女の子が使える弓が大の男に使えない訳がないとでも言いたいようだ。しかし、予想通り、『虹の魔弓』を弾くことが出来ない。顔が真っ赤になっているが、びくともしなかった。


  「駄目です。私には引けません。」


  うん、そうなるでしょうね。最近は、なにも気にしないで弾いているけど、最初は『身体強化』を掛けなければフルに引けなかったんだから。これには、他の弓手も驚いたようで、次々と試し引きをしていたけど、引けたのは3人だけだった。コツもあるので、最初に身体を目いっぱい使って弾くコツをその場で教えてあげたら、引けるようになった方も何人かいたわ。あ、一番最初に引いて駄目だったお兄さん。何回教えてあげても引けないの。力自慢なだけあって、力だけで引こうとしているんじゃ、いつまでたっても引けないわよね。


  あ、そう言えば、シズ様、ご自分の『ヨイチの弓』を使ってみるように言われた。見たことも無い素材でできている弓で、とても大きい。『和弓』という弓だそうだ。1本の矢をつがえてキリキリ引いてみると、強力な力で反発してくる。凄い。これなら、無駄な力を加えずに遠距離射撃が出来そう。5本の矢を連続で放ってみる。うん、とても引きやすい。というか思った通りの動きで狙った的に向かって放たれていく。私には分からないけど、この弓には『遠距離射撃』の力が付与されているとのことだった。でも、私の『虹の魔弓』には、ゴータさんがお作りになった魔石と魔法陣が付与されているんですもの。魅力度から言ったら、絶対に『虹の魔弓』よね。


  シズ様のお話では、ゴロタ皇帝陛下の第一皇后陛下のシェルナブール様のお持ちの弓が史上最強なんですって。どう、最強かと言うと、弓に弦が張っていなくて、さらに矢もつがえる必要がなく、魔法の矢が飛んでいくんですって。それって、もう弓じゃ無いわよね。


  これで調査は、終了。それから騎士団の道場で、剣の稽古に付き合ったんだけど、明鏡止水流本部道場で真ん中から下位の方達の実力次々と私にかかってくるんだけど、ほとんどの人は、私に小手を取られてしまうの。だって、面を狙ったって、飛び上がらなけれが当たらないんですもの。1本とられたら次の人と交代。何人くらいの人と稽古したかしら。まあ、私も足捌きや体裁きの練習になっていたので、文句はないんだけど。






  お屋敷に戻ったら、一番最初に来た部屋、『転移の間』に行ったの。そこにはいくつか転移のための『空間の揺らぎ』があったんだけど、帝都の白龍城へ繋がる『揺らぎ』があり、白龍城の『転移の間』には、魔界の領主館につながる『揺らぎ』が常設してあるんですって。でも、私が自由に白龍城に出入りするのは問題があるから、今度、魔界と直接行き来できる『揺らぎ』を作ってもらうって言っていた。それが出来れば、私も自由に行き来できるのよね。え、でも、そのためには、まず、魔界の領主館に自由に出入りできなければならないし、この世界に来たって、王都の離宮に自由に出入りできなければならないのよね。ウーン、どうしようかな。これは、本格的に『空間転移』を自由に使えるようにする必要があるわね。





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  その頃、グレーテル国王の居城の中、国王陛下執務室にはジェンキン宰相とマリンピア魔導士教会魔導士長が会談をしていた。


  「それで、ジェンキン宰相、マロニー嬢の出所は明らかになったのか。」


  「いえ、それが『異世界である『魔界』の人間族の国』とだけ言っておりますが、国名も言わなければ、国主の名も明らかにしないのです。しかし、10歳程度の女児が、たった一人で自国を離れ、冒険者を目指すなど、この世界では考えられません。」


  「うん、それで能力的にはどうじゃ。我が臣民として召し抱えることは可能か。」


  「はあ、まず、我が国の国民になるための承諾を得なければなりません。そのためには、現在、ゴロタ皇帝陛下の庇護下にあることから、ゴロタ皇帝陛下の許諾を得る必要があるかと。」


  「マリンピア魔導士長、あの子を臣下に加えることについて、そなたの考えはどうじゃ。」


  「はあ、かの女児の魔力は計り知れないものがあります。異なる魔法を帯びた矢を、あのように連続で放つなど、我が王国騎士団及び魔導士協会には存在しておりません。そればかりか、『異次元収納』に『浮遊』、『治癒』、本人は否定しておりますが、今までの魔法界の常識をことごとく打ち破る能力、それと古代ルーン文字どころか古代ヒエログリフまで読解できる能力と魔法に関する深い造詣。我が国の魔導士協会に参加していただければ、我が国の魔導士協会の実力は数倍にもなるのではと愚考いたします。」


  「ほう、だが、本人は自らアーチャーと申しておるそうではないか。それほど、弓の実力も凄いのか。」


  「これはスターバ騎士団長から聞くべきと思いますが、私の見たところでは、1個大隊以上の実力があるのではと思います。マロニー嬢の同行者であるネネ殿に聞いたのですが、彼女は、魔界に置いて『殲滅の聖女』と呼ばれており、3000人の反乱軍を一人で殲滅したという噂があるそうです。」


  「なんと3000人を一人で。まるでゴロタ皇帝の再来じゃな。ジェンキン宰相。彼女を何とか我が国民として、臣下に加えるのじゃ。報酬は思いのままで良いからな。」


  「はあ、しかし、以前のゴロタ皇帝陛下のようにエーデル姫のような存在がない我が国にとって、なかなか難しいかも知れませんな。」


  「ところで、今回、我が国に来訪してきた理由は何じゃ。」


  「はい、同行のネネなる女児が来年4月からの王立魔法学院中等部への入学のために、試験前の下調べに来たと聞いております。」


  「そうか。それじゃあマーリン校長に下知じゃ。二人の合格通知を出すように。それも今すぐじゃ。あ、このまま転入させても良いぞ。」


  まだ、小学5年と6年の二人が中学校に入学させるなど、完全に周りが見えなくなっている王様でした。

相変わらずの残念な国王陛下でした。

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