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第2部第260話 竜に乗ってその13

(5月23日です。)

  今日、お屋敷に冒険者ギルド長であり、かつ帝国の女王であるエーデル陛下から連絡がきた。冒険者ギルドにネネさんと一緒に来て貰いたいとのことだった。放課後、さっそくネネさんを連れて冒険者ギルドに向かった。冒険者ギルドは、まだ帰って来た冒険者も少なく閑散としていた。受付の女の人に、『ギルド長に会いたい。』って告げたら、すぐに応接室に案内された。暫く待っているとエーデル陛下が入って来られたが、一緒に入って来た女性は背中まである黒い髪をそのまま下げている美人さんだった。あ、この世界では見ないタイプの人だわ。


  「こちらはノエル、ゴロタ陛下の第6夫人、いや第7夫人?まあ、細かなところは良いとして、この方は魔法のエキスパートで帝国セント・ゴロタ大学院魔法学部教授をしているの。将来は帝国魔法学院の学院長になる予定よ。彼女がネネさんの相談に乗ってくれるはずなの。それじゃあノエル、お願いね。」


  「初めまして、あなたがネネちゃんね。よろしくね。」


  「は、はい。よろしくお願いします。」


  「まず貴女が、魔法の力を活用したいとのことだけど、条件が幾つかあるの。まず、魔力ね。あなたは知らないかも知れないけど、魔力は使わない限り絶対に伸びていかない力なの。でも、使ってさえいれば、いつか必ず魔力は伸びて行くのよ。これは、運動能力と一緒で、一定以上の負荷を与えなければ、能力は伸びていかないのよ。あ、『負荷』って分かる?」


  黙って頷くネネさん、真剣に聞いている。


  「次に魔法適性の問題。要は、どんな魔法が使えるかってことね。これは魔法で生きていくのなら2つ以上は欲しいわね。でも、訓練で伸ばすのは1つだけにした方が良いのよ。2つ同時にやると、どっちつかずの中途半端で終わることが多いから。」


  「あとは、魔力の操作力、これはどれだけ魔力を自由に使いこなせるかという問題ね。これができるには訓練しかないわ。」


  「最後に、魔法とは直接関係ないかもしれないけど、学力ね。基本的な知識がなければ、高度な魔法理論も理解できないでしょう。最低でも、中学卒業以上の学力が必要となるの。」


  うん、聞いていて眠くなってきた。本当は大切なお話をしているんだろうけど、どうもノエル様のお話を聞いていると子守唄のように聞こえてきちゃって。でも、ネネさんは、キチンと聞いてね。自分の将来にかかわることだから。


  「実はね、現在の帝国セント・ゴロタ大学の魔法学部は、来年4月に開設予定の帝国魔法学院として独立することになるの。それに伴って付属の高校と中学も併設するので、ここを受験したらどうかと思って。勿論、寄宿舎もあるし、奨学金制度や特待生制度もあるの。ただ、私もそうだったんだけど、学費や食費がかからなくても、その他の経費はどうしても必要になるの。お友達と一緒に食事に行くにしてもそうだし、普段着だって、ずっと同じという訳には行かないわね。」


  「あのう、日曜日に冒険者ギルドでポーターをするのは駄目なんでしょうか。」


  「ウーン、可能なんだけど、いいパーティーに恵まれなければ苦労するわよ。それに、皆、土日に魔法の練習をしている子達も多いから。差がついちゃうんじゃないかな。」


  「魔人の子でも魔導士になれるのでしょうか。」


  「ウーン、今の帝国国防軍には魔人族の魔導士はいないかも知れないけど、魔人族の国であるモンド王国とかにはもちろんいるわよ。」


  「魔人族の国があるのですか?そこは、魔人族の王様もいるのでしょうか?」


  「もちろんよ。それに、これは内緒なのだけどゴロタ皇帝陛下のお父様も魔族だったようね。兎に角、上の世界では、魔人族だからと言って差別されることは絶対にないわよ。」


  あれ、魔人族の国のこと、ネネさんに言ってなかったっけ。そう言えば、聞かれなかったしね。私は、当然、冥界図書館の地理の本で勉強していたから知っていたわよ。


  「まあ、そういう事で、あなたが奨学金を貰える特待生になれるかどうかは、実力次第なんだけど、あなた、どんな魔法を使えるの。」


  「は、はあ。『火魔法』と『土魔法』を少しだけ。」


  「そう、じゃあ、外に出ましょうか。」


  そう言って、さっさと応接室を出て行ったの。行く先は、ギルドに併設されている演習場だった。30m先に金属製の人形が置かれていた。魔法測定人形だと言われたが、あんな人形があるんだ。足が無いし、頭と胴体がずん胴になっていて、目と口の部分に穴が開いているだけ。両脇に手のようなものが生えているけど、見た感じ、大昔の地層から発掘された土人形に似ている変な人形だった。


  「まず、あの人形に魔法を当ててみて。あなたの最大魔力を込めた魔法ね。『火』でも『土』でもどちらでもいいわ。」


  ネネさん、緊張しながら人形の方を向く。右手を前にかざして、目を瞑る。あ、手の前に火がポワッと浮かんだ。その火がどんどん、どんどん大きくなると同時に色も赤色から黄色、そして白色へと変化していく。ネネさんの身体と同じ位の大きさの火球になったところで、ネネさん、目をパッチリと開けて、右手を真上に持って行って、そこから『ファイアボール』と言いながら手を振り下ろしたの。


  物凄い勢いで飛んで行った火球は、測定人形を業火で包み込み、その後、演習場の奥の土塁にぶつかって大爆発をした。あ、測定人形さん、真っ赤になって、腕の一部がなくなっている。測定人形から奥の土塁まで、一直線で地面が焦げていた。


  あ、これって、きっとやばい奴だ。このままじゃあ、絶対叱られるな。でも、ノエル様もエーデル陛下も黙っているし。とりあえず、フォローしなきゃ。


  「あ、あ、あのう、ネネさん、まだ魔法を使い始めたばかりで、うまくコントロールが出来なくって。ごめんなさい。最初の時は、こんなに大きくなかったから。」


  「そ、そう。ネネさん。あなた、詠唱はしないの。」


  「え、詠唱ですか。『ファイアボール』って言いましたけど。」


  「いえ、それは発動呪文で、詠唱とは違うのよ。あ、頭が痛くなってきたわ。」


  「エーデル陛下、演習場をこんなにしてしまって申し訳ありません。今、直しますから。」


 「あ、心配しないで。マロニーちゃん、お願いね。」


  あ、私ですか。そうですよね。私、何回目だろう。慣れたもんだから。すぐに、土を盛りあげて、大きく空いた穴と火球が走って行った後を埋め戻しておいた。土塁も元通りに復元してと。うん、これで元通りかな。少し芝生が焦げているけど、気にしなければ大丈夫よ。


  「そ、それでネネちゃん、あと、何ができるの。と言うか、魔力は大丈夫?」


  「あ、はい。魔力は大丈夫だと思います。あのう、こんなこともできるんですけど。」


  ネネさん、火球を5個出してから頭の上で旋回を始めさせた。と同時に、その辺の地面から、ティーカップセットと竈門を作り出し、お湯を沸かし始めた。あ、それって私がこの前ネネさんに教えた奴だ。うん、キチンと制御できているようだ。


  「ネネさん、あなた、今何をやっているの?というか、火魔法を使いながら土魔法を発動させているわよね。」


  「え!あ、はい。この火球はジャグリングの様なもので、意識しなくてもできますので。」


  うん、今日までずっと練習していたもんね。でも、ノエル様に注意されたと思って、火球は消滅させたし、ティーセットや竈門も土に戻してしまった。


  ネネさん、取り敢えず能力測定してみようか。そう言われて、ネネさん、あの測定器にまた手を差し出すことになってしまった。そっと手を差し入れる。針がチクンとするとき、少し顔をしかめていた。

*************************************

【ユニーク情報】2032.05.23現在

名前:ネネジェリカ・フォルテ・ビカフォード

種族:魔人

生年月日:王国歴2020年4月18日(12歳)

性別:女

父の種族:魔人族

母の種族:魔人族

職業:小学6年生 冒険者:ランクF

******************************************

【能力情報】

レベル      7(2UP)

体力      25(3UP)

魔力      54(11UP)

スキル      9

攻撃力     14(2UP)

防御力     18(2UP)

俊敏性     13(1UP)

魔法適性    火 土

固有スキル   なし

習得魔術    ファイアボール アースウオール

習得武技    なし

******************************************


  ああ、魔力の伸びが素晴らしい。1日1ポイントずつ伸びている。後、『アースウオール』が使えるようになったみたい。でも、どんな魔法なんだろ。今度ネネさんに使ってもらおう。でも、エーデル陛下とノエル様、黙ってしまわれたんですが。


  「あのう、ネネさんの魔法、魔法学院に行けるでしょうか?」


  お二人とも何も言わずに文字盤を見つめている。


  「あのう。」


  「あ!え?ああ、ネネさん。貴女、魔法は誰に習ったの。」


  「はい、こちらのマロニーちゃんからです。」


  「えーと、マロニーちゃんね。貴女、ちょっと測定器で測定させてくれない?」


  え、私ですか?いや、それはダメでしょう。だって生年月日がおかしいから。


  「あ、それはちょっと。痛いのは嫌だし。この前、ポーター認定証で測っても魔力は『10』のままだったし。」


  「そう。それじゃ、マロニーちゃんはどこで魔法を習ったの。」


  「いえ、魔法は使えないんです。こちらで言う『生活魔法』位なら、魔法でなくても使えますし。メイド魔法は、先輩メイドから教えて貰いました。」


  「メイド魔法って何?」


  「はい、空間収納や空間浮遊などですけど、教わったのは空間収納だけです。」


  「空間収納って、『異次元空間収納』の事?それって、特級魔道士級の最上級魔法よ。」


  「えーと、魔法って言うけど、魔法じゃなくて、力の操作みたいなものです。呪文もありませんし。」


  私は、空間収納から、いつものように見えないドアを開けて、中にしまっているコテツをを取り出してみせた。ノエル様、その様子をじっと見ていたが、首を傾げていた。私の動作に魔力が感じられないらしいのだ。えーと、魔力は余り持っていないんで、使っていないはずなんですが。


  結局、この日は、メイド魔法の『空間浮遊』でネネさんを浮かした事と、火と水と風と電撃と光を掌にショボく出して見せたのと、土でティーカップを作って見せたの。でもノエル様、今日はネネさんの進路相談のはずだったんだけど。あ、メイド魔法の『空間移動』と『空間転移』それと『気配消去』は内緒にしておいたの。理由はわからないけど、その方が良い気がして。

 

ネネちゃん、見かけだけはマロニーちゃんの能力を大きく超えています。

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