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第2部第258話 竜に乗ってその11

ネネさん、超強力魔法使いの片鱗が見えます。

(5月14日です。)

  今日、ネネさんの使うポーターセットをいつもの鍛冶屋さんで揃えることにした。ポーターセットと言っても、採集した薬草や鉱石、魔物の素材などを収納するリュック、野営用の寝袋や鍋などの調理セット。火を付ける魔火石に水を出す魔水石、灯りのランタンや応急治療セット、後、ロープにチョーク、裁縫道具や磁石などのサバイバルセット。それと解体用のナイフと護身用のショートソードかダガーだ。


  ネネさんは、当然、剣を振ったことなどないし、獣を解体したこともない。でも、この前見たネネさんの能力では、魔法の適性があるみたいなの。だから、ショートソードじゃなくてダガーにした方がいいみたい。ダガー以外の品で銀貨6枚半だったんだけど、持ち合わせが銀貨3枚しかなかったの。これだって、土日に安い賃仕事をして貯めたお金なんだって。足りないお金とダガーは、私が出してあげた。今までのお礼と言うことだったんだけど、ダガーの値段は内緒にしておいたの。刃体は黒いけどミスリル銀とのハイブリッドで、刃こぼれし難いものだと店長が言っていた。


  それから、私のお屋敷の裏庭で、魔法の練習をした。まず、魔力が流れるイメージを感じて貰うの。私が、ネネちゃんの背中に手を当てて、ネネちゃんが右手を広げて伸ばして貰う。


  「ネネさん、手の先に炎が点火するイメージと、私が背中に当ててる手から右手に流れる力を感じて。」


  そう言って、いつものように『火』を灯すイメージを心の中で描いた。


    ポッ!


  ネネさんの手の先に、小さな火が灯った。後は練習ね。この世界では、単純な生活魔法なんだけど、何回も練習すれば、意識せずに使えるようになる筈。これから毎日、もう疲れたって感じになるまで練習する様に指示をしておく。いわゆる魔力切れね。寝る前がお薦めよ。だって、すぐ眠れるじゃない。


  今度の土曜日、西の森にキラちゃんの餌を狩りに行くんだけど、ネネさんも一緒に行く事にしたの。お昼のお弁当は私が準備するから、学校が終わったら直ぐに行くことにした。ネネちゃんの冒険者デビューね。




  金曜日の放課後、ネネちゃんの魔法制御訓練の成果を確認するために、取り敢えず1回だけ火を出して貰った。右手を出して手のひらを拡げると同時に『ボッ!』と炎が燃え上がった。うん、いい感じ。じゃあ、連続で5個出して貰う。今度は『ボッ!ボボボボッ!』とほぼ間隔なく炎が燃え上がった。


  最後に大きな炎をイメージして貰う。『ボワーッ!』、大きな炎。ネネさんの身体と同じ位の炎が燃え上がった。これには本人が驚いているようだ。うん、『火』はこんなもんかな。次は、土だ。地面から手のひらに乗る程度の泥団子を作る。それをお茶碗の形にしたり、お皿の形にする。勿論、手を触れずにだ。ネネさん、目を皿のように大きく見開いている。


  コツは、作りたい形のイメージで、手に魔力を集めるの。最初は、その手を土に翳して形作るんだけど、その内、手をかざさなくても出来るようになるわ。私の場合は、魔力じゃない『イメージの力』なんだけど、違いがよく分からない。土魔法って、器用さと体力の勝負ね。細かな作業もあれば、城壁の造成なども有るし。ネネさん、ウンウン唸っているけど泥団子はピクリともしない。何を作ろうとしているのか聞くと、カップを作ろうとしているんだって。それは、ちょっとハードルが高いんで、まず泥団子を平たく潰して、今度はそれをまーるい球に戻す練習をしましょうね。





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(5月17日です。)

  今日は、ネネさんと冒険に行く約束の日だ。私が、キラちゃんと銀ちゃんを連れて、西門に行くと、もうネネさんが待っていてくれた。ネネさんは女性用の作業衣上下と運動靴にポーターセットを装備している。


  西門の外に出てから、例のロープを取り出す。ネネさんと私がロープを掴んで、一緒にふわりと浮かび上がる。キラちゃんがロープの端を掴んで引っ張ってくれる。あっという間に森の橋に到着した。キラちゃんは、呼ばれるまでは自由に飛んでいる事にしている。銀ちゃんも森の中で自由に散策するみたい。私とネネさんは、獲物の探索に当たる。まず、ここで思いっきり深呼吸してもらい、森の匂いを覚えて貰う。木と土と何かの混ざった匂いだ。獣の匂いが混じると、独特の獣臭が感じられる筈だ。魔物の匂いは、一概に教えられない。だって死臭なんか知らないだろうし。後、森の歩き方を教えてあげる。小枝や枯れ葉を踏むと足音が響くので、なるべく、そう言うものを踏まないように気を付けながら歩いて行く。最初はうまく出来ないだろうが、そう言う意識で歩くことが大切だ。それと、リュックの大きさも意識していなければならない。大きなリュックが木々に引っかからないように気をつけながら歩かなくっちゃ。


  あ、なんかいる。私は、右手を横に広げてネネさんを停止させた。左手に持っている弓を構える。この匂い、きっとイノシシだ。矢を空間収納から1本だけ取り出す。背中の矢筒に入っている矢は使わない。でも格好いいから背中の矢筒にも10本の矢を入れている。私って、形から入るタイプだから。猪の姿は見えない。この先80m位先のブッシュの陰だ。矢に属性を付与せずに思いっきり引き絞る。猪の首筋に矢が貫通するイメージを持った。ヨシ、矢を放った。森の木を避けながらイノシシに向かって飛んで行く。


    ブヒーッ!


  イノシシの断末魔の声が聞こえてきた。走って、現場に向かうと、大きなイノシシが絶命していた。矢は、イノシシの喉を貫通して、どこかに行ってしまっていた。早速、コテツを取り出しイノシシの頭を切り落とす。切り口を下にして血抜きをしながら皮を剥ぎ、背骨を中心に左右に切り開いた。右足1本だけは取っておいた。あ、ネネさんには刺激が強すぎたみたい。どこかに走り込んで『リバース』しているみたい。解体後のイノシシの大きなお肉を、上空まで浮かび上がらせた。キラちゃんがそれを見つけて空中でキャッチする。後、銀ちゃんを呼ぶ。現れた銀ちゃんにイノシシの右足をあげたら、綺麗に食べてくれた。骨は、食べないみたいだけど、ペロペロ舐めている。うん、舐めるのは癖みたい。我が家用にもう1頭狩ってから街に戻ったんだけど、ネネさん、なんかぐったりしていた。


  「ねえ、ポーターって、みんなマロニーちゃんみたいな事できるの?」


  「ううん、空を飛んだり、見えない遠くの猪を見つけたり、弓を射ったり、矢を左右に曲げたり、イノシシを浮かばせながら解体することができるのは、私だけみたい。あと、ランクの高い冒険者は、もっと凄いことが出来るけど、修行が必要みたい。明日は、レッドリリイの仲間と依頼を受ける予定だけど、ネネさん、どうします?」


  「勿論、行くわ。明日がポーターデビューの日だから。」






  次の日、午前8時に冒険者ギルドに行ってみると、レッドリリイのメンバーとネネさんが既に来ていた。両者は、初対面ということで、自己紹介をしていたが、まあ、ネネさんは12歳としては大きい方なので、ベティさんと並んでも違和感は無かった。今日受けた依頼は、薬草の採取だった。最近、魔物や野獣の討伐の依頼が少なくなってきたらしい。ベルさん、どうして私を見るんですか?


  薬草採集も大事な仕事だし、特に希少種の場合、量によっては大金になる場合があるので、馬鹿に出来ない。今回の依頼は、消毒に使う『除菌草』と魔力回復薬に必要な『魔こも花』だ。特に『魔こも花』は、超希少種で、3本で銀貨5枚の成功報酬と1本銀貨3枚での買い取りだった。魔力回復ポーションが高いわけだ。この草は、森の奥の日の差さないところに自生しているらしいが、1日探しても見つからない場合があるみたい。皆で北の森に向かう。北の森には、途中まで乗合馬車があるが、いつものようにロープを使った『空間浮遊』による移動だ。これなら馬車代もかからないし、馬車よりも速いし。街道から外れてからは、薬草を探しながらなので、少し走る速度を遅くする。あ、『除菌草』の匂いがする。ここから西の方だ。300mくらい先だ。『除菌草』は、茎と葉に薬効成分があるので、根を掘る必要がない。皆に袋を1つずつ渡して採集を始める。この草は、ドクダミとそっくりの葉と茎だが、匂いが違うので、刈り取ったら必ず匂いを嗅ぐようにお願いした。1時間ほどしたら、全員の袋がパンパンになったので、空間収納にしまったんだけど、ネネさんが、


  「マロニーちゃんがいれば、他にポーターなんか要らないわよね。」


  って、寂しそうに言われたの。私、慌てて全否定したの。その内、私はメイドに戻るし、ネネさんだって冒険者になるための修行なんだからって。ベルさん達もウンウン頷いてくれていたし。


  それから森の奥に入って行ったんだけど、私も『魔こも花』は採集したことが無いので、見つけるのに苦労したわ。結局、草に巻き付いている蔦のような蔓の先にピンク色の大輪の花が咲いているんだけど、木の上の方に咲いているので、下の方からは見えないみたい。勿論、怪しい蔓を見つけた度に上まで上昇して確認したんだけど、最初の1本を見つけるのに1時間以上掛かってしまったわ。でも、最初の1本さえ見つけたらこっちのものね。後は、匂いを探せばいいだけだし、蔓を辿って上昇しても、この上にあるのかどうかが分かるから、あっという間に採集できちゃうの。それからは、皆は私についてくるだけで、見つけるのも最終するのも私の役目だった。かなり森の奥まで来たんだけど、もう帰ろうかという時に嫌な匂いがしてきた。種類は分からないが、魔物だ。


  「みんな気を付けて。11時の方向に魔物よ。」


  皆、武器を抜く。ベティさんは、ワンドを抜き、ネネさんはダガーを抜いて右手に構えている。屁っ放り腰だけど。私は、木の上に登り、弓を構える。魔物は1体で、ここから300m位、こちらには気がついていないようだ。取り敢えず気配の中心に向けて矢を3本放ってみる。命中したようだが、まだ動いている。私は、木の枝をジャンプしながら近づいてみる。100mの距離まで近づいてみて、相手の正体が分かった。アナコンダだ。それも頭が3つの。


  魔物のスリーヘッドアナコンダ。こいつの厄介なところは、3つの頭を射抜かないと絶命しないことだ。1つさえ残っていれば、動くことができ、逃げられてしまうのだ。幸いなことに、私の射った矢は胴体を地面に縫い付けていたので、逃げることができなかったようだ。


  私は、麻痺属性を帯びた矢を射って、アナコンダの動きを制し、皆に攻撃を任せた。ベルさん、ベラさんが頭1つずつ攻撃をし、もう1つの頭はベティさんとネネさんに任せることにした。


  ベティさんは、とても小さなファイアボールを撃ったが、頭に当たって『ポション』と消えてしまった。私は、ネネさんに、一昨日練習した大きな炎を、蛇に当てるつもりで手を振ってみてと指示した。その時『ファイアボール』っていうとイメージが作りやすいことも教えてあげたの。ネネさん、右手をアナコンダの頭に向けて、意識を集中している。右手の前に大きな炎が現れて渦を巻いている。


  「ベルさん達、逃げて!」


  ハッと振り向いたベルさんとベラさんが、慌ててアナコンダから離れて行く。と同時だった。


  「ファイアボール」


  大きな火球が、アナコンダの頭に向かって行く。


    ドゴーーーーン!


  アナコンダの首が消失していた。私は、咄嗟にベルさん達とベティさんに『聖なるシールド』を貼ったので誰も怪我しなかったんだけど、危なかった。『ファイアボール』を放ったネネさんも吃驚していたみたい。


  それから、アナコンダの魔石と皮を採取してから帰ったんだけど、ベティさんが、魔法を使う際の注意点を色々教えていた。魔法の使えない私では教えられない事ばかりだった。ような気がする。


  ギルドに戻って、今日の依頼の完了報告をした。採集品をカウンターの上に並べる。まず『消毒草』だ。300本入りの袋が5袋、1本大銅貨1枚だが、1500本も有れば金貨15枚だ。後、『魔こも花』は、超鮮度がいいので、最高値の1個銀貨3枚で引き取ってもらえた。全部で100個あったので、金貨30枚だ。アナコンダの魔石が金貨1枚半、皮が金貨3枚にもなった。成功報酬も入れると、金貨50枚とちょっとになった。一人金貨12枚半だ。ネネさん、何故か泣き始めちゃった。

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