表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
707/753

第2部第257話 竜に乗ってその10

(5月11日です。)

  ギルドに戻って、キラちゃんと銀ちゃんを連れてお屋敷に戻ったら、ドビちゃんが弟達に服を着せている最中だった。ダモラさんは、木綿の小ざっぱりしたワンピースに胸当てのついたエプロンを付けている。ダモラさんは、私よりちょっと小さいくらいなんだけど、胸が大人の女性のように立派にあるので、私のメイド服は着られないそうだ。ドビちゃんも私より1個下のくせに、明らかに私よりも胸があるみたい。


  私が銀ちゃんを連れて来たのに吃驚していたんだけど、可愛らしい仔犬から大きな銀狼に戻ったのを見てもっと驚いていたみたい。銀ちゃんが、仔犬の姿を維持するのに魔力を消費するので、必要ない時は元の姿が楽なんですって。ふーん、そう言うもんなんだ。


  ダモラさんが、お風呂が沸いているからと教えてくれたんで、『じゃあ、皆で一緒に入ろう。』って言ったら、それはできないって言われたの。何故?私は、皆と一緒に入りたいのに。でも、使用人と主人が一緒にお風呂に入ることは出来ないって頑なに断られちゃった。


  結局、ドビちゃんと弟二人、あ、レビちゃんとラルちゃんと言う名前なんだけど、この3人は使用人じゃあ無いからって一緒に入って貰った。このお屋敷、お風呂が広いのがお気に入りなのに。


  お風呂から上がってから、キッチンの横のダイニングに行くと、私一人分しか用意されていないの。自分達は、後で食べるんですって。これだけは、絶対に許せない。食事は、みんなで食べると何倍も美味しいんだから。すぐに準備して貰ったわ。勿論、私も手伝ったの。一応、私が上席に一人で座って、ダモラさんがキッチン側、ドビちゃんがドア側に座り、レビちゃん達は、それぞれの隣なんだけど、二人がダモラさんの隣に座りたがって、喧嘩を始めたの。ドビちゃんが、1日おきに交代だって言っていたけど分かったのかなあ。


  今日のメニューは、豚肉の生姜焼きとキャベツとベーコンのスープなんだけど、超美味しいの。ダモラさんの料理スキル、上級ね。レビちゃん達には、子供用の甘辛ソースにしていたみたい。あ、でも今日は日曜日なのよ。原則、食事の準備もしなくていい日なんだけど。そのことを言ったら、『私たちも食べますし、お風呂も入らせてもらうのでついでと言うことで気にしないで下さい。』て言われたの。そう言うもんかな。


  レビちゃんとラルちゃんは、今年4歳になるんだって。と言うことは、小学校までまだ3年かあ。この世界には幼児教育機関が無いから、子供の世話をしながら働くのって、とっても難しいのかも知れないわね。





  夜、いつものようにキラちゃんと一緒に寝ようとしたら、銀ちゃんもそばに寄ってくるの。銀ちゃん、獣臭がするから、ちょっとだけ『クリーン』を掛けさせて貰った。うん、これで大丈夫。でも銀ちゃん、私の足を舐めるのやめてくれないかな。くすぐったくて、眠れないから。後、キラちゃんに『聖なる力』を流し込んでいたら、『自分にも流してくれないか。』って言うの。別に、負担も何もないから、頭に手を当てて流してあげたら、『おお、これは良いのう。』とウットリしているの。聞いたら、体の奥からポワーンと温かくなるんだって。何か温マッサージみたい。


  夜中、息苦しいので目が覚めたの。銀ちゃん、お腹を上に出して寝ていたんだけど、頭が私のお腹の上で、枕じゃないって言うの。もう、そのまま『空間浮遊』で浮かして、キラちゃんの向こう側に転がしたんだけど、朝、起きたらちゃっかり私の横で寝ていたわ。










  次の日、朝5時に起きて稽古を始めたんだけど、見学者がキラちゃんと銀ちゃんになったの。銀ちゃん、興味深そうに見ていたんだけど、コテツを抜いた時に、尻尾をお腹にしまってキラちゃんの陰に隠れてしまったの。何故か知らないんだけど、怖いんですって。変なの。


  学校に行く前に、銀ちゃんのことをダモラさんに頼んでおいた。ご飯は、朝と夕の2回、私があげるからいらないんだけど、10時と15時にお庭に出してもらいたいの。おトイレタイムね。そう言えば、銀ちゃんのためにお水を飲むための器、まあ洗面器だけど、を準備したんだけど、キラちゃんも一緒に使い始めていた。あ、竜もお水を飲むんだ。そう思ったら、銀ちゃんが『特に飲まなくても平気だが、あれば飲むそうだと言っている。』と教えてくれた。その事実を知ったことよりも、銀ちゃんとキラちゃんが当たり前のように意識を共有している事に吃驚したわ。


  稽古が終わって、屋敷に戻ると、もうダモラさんが起きていた。お茶を入れてくれたんだけど、早すぎませんか。でも、スラムに住んでいた時も、朝5時に起きて、子供達の朝ごはんの準備をしたら、すぐに西門のところまで行って、その日の仕事を貰うんだって。アブれると、その日の夕飯が無いこともあるので、皆、必死なんだそうだ。特に、力の弱い女性の仕事は少なく、男性用の辛い荷物運びや、畑のクワ仕事だってやる時があるそうなの。それに比べれば、個々の仕事なんか、仕事の内に入らないって笑って言ってくれた。


  朝、8時にドビちゃんと一緒にお屋敷を出て、孤児院によってネネさん達と合流して集団登校したんだけど、ドビちゃんがおニューのワンピースを着ていたもんだから、そのお話で盛り上がっちゃったみたい。


  ネネさんが真剣な顔で聞いて来た。


  「ねえ、マロニーちゃんは冒険者ギルドでポーターなんでしょ。」


  「ええ、そうよ。」


  「ポーターって、私でもなれるのかな?」


  「能力さえ有ればなれるんだけど、危険もあるのよ。」


  「うん、知っている。この前、孤児院出身のポーターが大怪我したって言っていた。」


  その話は、私も聞いていた。簡単なイノシシの狩猟依頼だったんだけど、デビルパンサーが現れてしまって、パーティーは必死に逃げたんだけど、ポーターをしていた14歳の男の子が逃げ遅れてしまった。満載の荷物を持っていては、瞬足のデピルパンサーからにげられる訳ない。結局、その子は足を一本持っていかれてしまったんだけど、本当だったら死んでいてもおかしくないんだって。でも戻ってきた冒険者達が死に物狂いでポーターの少年を助けに来てくれたらしいの。確か、ギルド法ではポーターを見殺しにして魔物から逃げた者は、冒険者資格剥奪という厳しい処罰が待っている。これにより、ポーターを囮にして自分達だけが強力な魔物から逃げ果せるという悪質な行為は激減したそうだが、皆無ではないそうだ。


  「冒険者もそうだけど、ポーターも危険な仕事よ。それに苦労の割に収入も少ないし。」


  「え、そうなの?だってマロニーちゃん、凄いじゃない。もうお屋敷も持ってるし、ドビちゃんのお母さんも雇ってあげたんでしょ。」


  「私は、たまたま運が良かっただけ。それにパーティーにも入れてもらえたし。ポーターでパーティーに入れて貰える子って少ないのよ。だから、毎日、雇ってもらえるように、朝早くからギルドに顔を出しているし。」


  「ふーん、そうなんだ。」


  「ネネさんは、小学校を卒業したら住み込みの店員か職人になるって聞いたんだけど。」


  「うん、本当はもっと上の学校に行きたいんだ。でも、孤児院は出なければいけないし。だから、マロニーちゃんみたいに仕事しながら学校に行けないかなって思って。」


  「ふーん、上の学校って中学校?」


  「うん、私、勉強好きだし。でも、孤児じゃあ高校は絶対無理だけど、中学校は行ってみたいな。」


  ネネさんは、成績も良く、学年委員もやっている。それなりの所には就職できるだろうけど、学歴が無いから、下働きか軽作業しかさせて貰えないかも知れない。頭が良いだけに、自分の将来が見えているのだろう。でも、冒険者ってどうだろう。ゴロタ帝国内の冒険者って、1年以内に3割も死亡若しくはリタイヤしてしまうし、3年間、冒険者をやり続けることが出来れば、一人前って認められるんだって。


  この世界には、ダンジョンがそれほど無いようだけど、人間界ではダンジョンは普通に街と隣接してあるし、ダンジョンを中心に街が作られることもあるらしいの。そうなると、ダンジョンに潜らなければ冒険者として活躍出来ないし、常に死と隣り合わせの依頼も多い筈。


  簡単な薬草採集だって、野獣や魔物と遭遇するだろうし。と言うか、そう言う危険がある場所の薬草だから高額で取引されるんだし。兎に角、冒険者になるためには、他人より優れた能力が必要なの。ネネさんには、どんな能力が有るんだろうか。まあ、12歳にならなければ、ポーターになることは出来ないんだから、今すぐ決めなくても良いだろうけど。そう言ったら、え?もう12歳になってるの?


  ネネさんは4月生まれなので、もう12歳なんだって。孤児院で毎月1日にしているお誕生会の時、私はまだ入所していなかったから、知らなかっただけらしいの。取り敢えず、今日の夕方、冒険者ギルドに行って、ポーター登録をすることにしたの。でも、ネネさん、どれ位体力があるのかな?




 「いらっしゃいませ。『神聖ゴロタ帝国冒険者ギルド本部ティタン大魔王国領支部』へようこそ。本日は、どのようなご用件でしょうか?」


  放課後、ネネさんと一緒に冒険者ギルドに行き、受付のお姉さんにいつもの定型句を言われた。


  「あのう、この子、ポーター登録をしたいんですが。」


  「分かりました。その前に、一度能力測定を行います。年齢や犯罪歴、過去の冒険者ギルドでの制裁歴等を調査する必要がありますから。


  なるほど、確かに。ネネさんは、恐る恐る機械の測定口に手を差し入れる。

*************************************

【ユニーク情報】2032.05.11現在

名前:ネネジェリカ・フォルテ・ビカフォード

種族:魔人

生年月日:王国歴2020年4月18日(12歳)

性別:女

父の種族:魔人族

母の種族:魔人族

職業:小学6年生 冒険者:ランクF

******************************************

【能力情報】

レベル      5

体力      22

魔力      43

スキル      9

攻撃力     12

防御力     16

俊敏性     12

魔法適性    火 土

固有スキル   なし

習得魔術    なし

習得武技    なし

******************************************


  ネネさん、魔人族のお貴族様の血筋だったみたい。

  

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ