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第2部第250話 竜に乗ってその3

(4月21日です。)

  昨日は、遅くなった事ではネネさんに怒られなかったが、学校で何をやらかしたかを聞かれてしまった。ネネさんは、今、6年生なのだけど、私のクラスの出来事が校内中に広まっていたそうだ。小さな女の子が大きな魔人族の子を2階の窓から落としたとか、人間族の男の子が、口の中に何かを打ち込まれて大怪我をしたとか、絶対に普通じゃないことが起きていた事がバレバレだったみたい。私は、ネネさんには本当のことを教えてあげた。ドビチャンのお母さんの事もだ。ネネさんは、今日の放課後、ドビさんの家に行ってみるそうだ。





  朝、ギルドの練習場に行ってキラちゃんに、昨日会いに来なかったことを謝っておいた。キラちゃんが、物凄く恨めしげな目をしていたので、顔に頬を擦り付けてあげたんだけど、飛竜ってこんなに甘えん坊なのかしら。後、ずっと鎖に縛り付けておくのも可哀想なので、メイド魔法『開錠』で鎖を外してあげた。私が稽古をしている間だけ、自由にお空を飛ばせる事にしたのだ。稽古が終わる頃キラちゃんが帰ってきたので、残り物のイノシシのお肉を全部あげて食べて貰ったの。それから、鎖に繋いで急いで孤児院に帰ったんだけど、後でキラちゃんを放し飼いにしたことがエーデル様にばれて怒られちゃったんだけど、この時は何も分かっていなかったの。


  ネネさん達と一緒に登校したんだけど、教室に着いたら、なんか雰囲気が違う。男の子達は、私と視線を合わそうとしないし、女の子達は、目がキラキラして居る。まあ、あまり詮索せずに席に座っていたら、ドビちゃんが昨日のお礼を言ってきたの。お母さん、あれから目を覚まして、お粥を食べてくれたんだって。まだ体力が無いんだけど、もう安心だって。そう言いながら、目に涙を浮かべていたのは、今までの不安がなくなって、よほど嬉しいんだね。あ、今日の放課後、ネネさんがドビチャンの家を訪ねることを伝えると、何の用だろうと言っていた。私も分からないわ。


  始業の鐘が鳴って、先生が教室に入って来たんだけど、私の方を見て、さっと目を逸らしている。失礼しちゃうわね。HRが始まって、先生からの注意事項が有ったんだけど、今日の朝、飛竜が街の上空に飛来したので、登下校の時は気をつけるようにって言われた。あ、とても不味いような気がする。取り敢えず、正直に言おう。


  「はい、先生。」


  手を上げて、発言を求めたの。


  「な、何かな?マロニー君。」


  「その飛竜、私のキラちゃんだと思います。」


  「え?今、なんて言ったの?」


  「はい、その朝飛んでいた飛竜って、私が冒険者ギルドに預けている飛竜のキラちゃんだと思います。」


  「な、何だって。ちょ、ちょっと待って下さい。」


  先生、慌てて教室の外に飛び出して行った。流石にクラスのみんなも騒ぎ出した。ドビちゃんが、


  「マロニーちゃん、貴女、飛竜を飼ってるの?」


  「うん、一昨日捕まえたの。」


  あれ、みんなどうしたの。雰囲気が変。ドビちゃんがさらに、


  「マロニーちゃん、違っていたらゴメン。貴女、王国で『殲滅の聖女』って呼ばれてた?」


  「ど、どうして知ってるの。」


  「だってクラスの男子が噂していたんだもの。それに昨日1日の出来事、絶対に普通の小学生じゃないから。それに、そんなメイド服で通う小学生だっていないよ。」


  まあ、基本メイドモードだし。まさか冒険者服で授業って、ないと思うわ。学校で誰と戦うの?先生がいないせいか、クラスの女子が私の周りに集まって来た。色々聞かれたが、このメイド服はどこで売ってるのとか、今度キラちゃんに合わせてとか。男子達は、何か恐ろしいものを見るような目つきだったの。失礼しちゃうわね。


  先生が帰って来て、校長先生のところに行くようにって言われたの。またですか?結局、この日は冒険者ギルドに行って、エーデル様に事情を説明したんだけど、朝の稽古の後、衛士隊では飛竜が飛来したって大騒ぎになったんだって。キラちゃんの所にも調査に来たんだけど、ちゃんと鎖に繋がれて鍵も掛かっていたので、別の個体だろうとなったみたい。


  エーデル様が、これから領主館に行くから、キラちゃんも一緒に行く事になったの。でもキラちゃんを空間収納に入れたくなかったので、飛んで行って貰おうとしたら、それもダメだって。結局、首輪に鎖をつけて私が引くことになったんだけど、キラちゃん、尻尾を振りながら涎を流すのやめてね。ワンコみたいだから。


  街の人達が大勢見て居る中、500m位歩いたのかな。初めて分かったんだけど、キラちゃん歩くの下手。立って、翼についているちっちゃいカギ爪見たいのを前脚にして歩くんだもの。それなら鳥みたいにスクッと立てば良いのに、それは出来ないみたい。あ、コウモリね。コウモリのような体型だから歩くのが下手なのか。領主館に着いたけど、流石に館内に入る訳には行かず、外で待っていたの。暫くしたら、赤い吊スカートを着た小さな女の子と紫色のドレスを着た物凄い美人さんが領主館から出て来たの。その後ろから、え?うそー!ゴータ様も出て来たじゃない。


  あ、キラちゃん、尻尾を丸めて私の後ろに隠れちゃった。隠れられる訳ないのに。紫色のドレスの人が、キラちゃんの側に寄って、キラちゃんの頭に手を置いている。暫く、そのままにして居たんだけど、手を離してからゴータさんの所へ戻って行った。ゴータさんに耳打ちをしている。どういう訳か私には聞こえなかった。こんな事初めて。それよりゴータ様と近いんですけど。その女の人と女の子は、領主館の中に入って行ったんだけど、女の子が振り返って『キラちゃん。またね!』と言ったら、キラちゃん、尻尾を振ってるの。え、言葉通じているの?それに、この子がキラちゃんだなんて教えていないんだけど。


  「マロニーちゃん、その飛竜、ワイバーンに似ているけど、ちょっと違うみたいだ。『古龍』じゃあないけど、上位竜なんだって。あの谷に一緒にいたから、ワイバーンの夫婦だと思ったら、オスが死んだメスのために餌を取ったり、他の飛竜から卵を守って居たらしいよ。そもそも、その飛竜、幼体と言うか子供だしね。」


  え、何それ。キラちゃん、子供なの。それに上位竜って。えーと、冥界図書館にある魔物図鑑には確か竜種について詳しく書いてあったわよね。


  えーと、地竜と水竜は、厳密には竜種では無くって、トカゲやカエルの仲間だったはず。竜種は、下位竜種にワイバーンとレッサードラゴンがいて、中位竜種に火竜とか氷竜とかの属性竜がいるのよね。で、上位竜は精霊竜と言って精霊と契約を結んでいる竜なんだけど、7大精霊は気まぐれで、精霊竜に生まれても契約できない竜もいるって書いてあったわよね。キラちゃん、何竜なんだろう。まあ、深く考えても仕方ないし。可愛いからいいか。


  「マロニーちゃん、深く考えるの辞めたろう。結構大雑把に出来てる?」


  あ、ゴータ様にバレてる。それで、キラちゃんを街中で飼うのは無理があるので、龍の谷で暮らさせたらどうかと言うの。それって、キラちゃんと別れるって事でしょ。いくらゴータ様のお言い付けでも、それだけは絶対に嫌。それなら街を出ます。東の荒野でも、北の荒野でもキラちゃんと一緒に住む場所なんて幾らでもあるし。


  「あのう、ゴータ様にお願いが有るんですが。」


  「何だい?」


  「お金なら出します。学校にも行きます。それで領主様に、この子と一緒に暮らすのを許していただきたいんですが。もう街の上空は飛ばしません。お約束します。この子、きっと私がいないと駄目なんです。甘えん坊で、泣き虫で大食いで、それで可愛い目をしてるし、お口も臭くないし。」


  最後の方は良く分からなかったが、言っていて涙が止まらなくなっちゃった。この世界で初めて私が世話をしなければいけない存在。孤児院の子供達もそうだけど、誰かが救いの手を差し伸ばさなければいけないなら、私が差し伸ばすわ。だってキラちゃんなんか、誰も手を差し伸ばさないでしょ。竜騎士の騎乗竜になるか素材にされるだけでしょ。あのギルドで見せた助けを求めるキラキラした目を見て、今更お別れなんてできないわ。


  『アリガト』


  え?何?今の声は何?誰の声なの。私の頭の中に直接話しかけてる感覚。周りを見るとキラちゃんがこちらを見ている。長いまつ毛が震えているの。泣いてるの?今の声はキラちゃん?でも、もう何も言わなかった。


  「マロニーちゃん、大きなお屋敷を買って、そこで暮らしなさい。それで、庭にキラちゃんの住む小屋を建てて貰うんだ。どうだろう。領主には許可を貰うから。」


  あ、うれしい。うれしいのに涙が出てきちゃった。これで、キラちゃんと一緒に住める。私は、何度も何度もお礼を言って、再びキラちゃんをつれてギルドに戻ったの。でも、さっきの声は何だったんだろう。


  孤児院に戻ると、ドビちゃんと小さな双子がいたので吃驚した。お母さんは療養所に入院になり、その間、ドビチャン達はここで暮らすことになったの。1階の特別室に簡易ベッドを運び込んで、そこで暮らすんだって。良かったね。ネネさんも有難うございます。今日の状況をネネさんに話して、まもなくこの孤児院を出るかもしれないと言ったら、少し悲しそうな顔をして居たけどネネさんだって、あと1年したら、ここを出て働かなくっちゃいけないんだもの。いつまでも一緒にはいられないわよね。


  夕食の準備をして、お風呂に入るんだけど、ドビちゃんは、弟達と入るので一番最後にして貰ったの。弟さん達、ずっとお風呂もシャワーも入ってないんだって。ドビちゃん、大変ね。でもニコニコ笑っているから、まあいいか。


  この世界では、孤児は色々と面倒見てくれるけど、父親が死んだ母子家庭には優しくない気がする。やはり男と女では稼ぐ額が違うし、ドビちゃんの所のようにお母さんが寝込んだら、誰も面倒を見る人がいない場合、ヘタをすると餓死もあり得ただろう。


  今回は良かったけど、私が行かなければ昨日か今日にはお母さんは死んでいたかも知れない。そう考えると良かったんだけど、ドビちゃんみたいな子が他にも一杯いるんだろうな。

キラちゃん、精霊竜だそうです。それに会話もできるのか謎です。

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