表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
697/753

第2部第248話 冒険者ギルドその18

(4月16日です。)

  ベルさん達と別れた後、もう一度冒険者ギルドに行き、受付の女の人にギルド長のエーデル様への面会を求めたの。すぐに2階に行ってくれて、これから会ってくれるって。もしかして、ギルド長って暇なのかな。場所は知っていたので、案内無しで2階に上がって行った。部屋のドアをノックすると『どうぞ。』と声がしたので、そっとドアを開けて、室内にはいった。そこで、カーテシーをのご挨拶をしたのち、ソファに座ったわ。


  エーデル様は、ピンクのドレスを着ていて、とってもお綺麗。そう言えば、部屋の中にはピンクの調度品が多いわよね。趣味なのかしら。


  「ようこそ、マロニーちゃん。今日はご活躍だったわね。まさかマロニーちゃんに『テイマー』のスキルがあるとは思わなかったわ。」


  「いえ、テイマーって良く分からないんですけど、ただ、あの地竜の目を見ていたら可哀そうになって、撫でてあげようかなって。」


  「フーン、よく分かんないけど。ところで、今日のご用件はなあに?」


  「はい、実は・・・・」


  私は、今までの状況を説明した。孤児院に入らなければいけなくなったこと。小学校に通わなければいけないこと。ポーターとして、ベルさん達をサポートしていかなければいけないことなどだ。


  「それで、これからどうしたいの?」


  「はい、帝国の法律では、高校入学程度の実力があれば、小学校が免除になると聞いたのですが、それを受けたいんです。でも、この世界で、そのような認定試験を行っているかどうかも分かりません。」


  「そうだね。」


  「それで、人間界の帝都に行って認定試験を受けたいんです。でも、どうやって行くことができるのか分からなくて。」


  「ウーン、でも、マロニーちゃん、その試験に合格する自信があるの?」


  「えーと、試験を受けたことはありませんが、数学なら複素数平面や微分・積分位なら本で覚えました。グレーテル語の標準語と古語、それにルーン文字による魔術式の読解も本で覚えております。物理と科学、それに地学も高校レベルなら何とかなると思います。歴史や地理も、グレーテル大陸史を何回か読んでおります。」


  まあ、80年もあったしね。夜勤の度に本を持ち込んでいたし、夜勤明けや休日は、終日冥界図書館に籠っていたし。


  「あなたの言っていること、良く分からないけど。ちょっと待って。その辺のことは、私ではなく、領主館にいるクラウディアが詳しいの。クラウディア、ちょっと来てくれる。」


  エーデル様、誰を呼んでいるんだろう。暫くすると、ドアがノックされて魔人族の女の子が入って来た。貴族服を着た、上品そうな女の子だが、え、この子ってこの前、猫ちゃん達を帝国に連れて行った子とそっくりなんですけど。


  「エーデル様、どのようなご用件でしょうか。」


  「クラウディア、こちらはマロニーちゃん、帝国の高校入学認定試験を受けたいんだって。相談に乗ってくれる。」


  「畏まりました。マロニー嬢、こちらへどうぞ。」


  クラウディア様は、立ち上がって、そのまま壁の方に手をかざした。あれ、これって?壁との間に『空間の揺らぎ』が生じている。クラウディア様が、『揺らぎ』の方を指さし、


  「どうぞ、こちらへ。」


  恐る恐る、『揺らぎ』に近づく。『揺らぎ』の向こうは壁が見えるだけ。私の空間収納と同じように見えるの。そのまま、『揺らぎ』の中に入っていくと、一瞬で、そこはどこかのお屋敷の応接間になってしまったの。でも、普通の応接間と違うのは、あの『揺らぎ』が幾つかならんでいるってことかしら。これって、メイド魔法の『空間転移』よね。続いて、クラウディア様も出てきて、ドアを開けてくれた。ドアの外は長い廊下になっていて、廊下の向こう側に階段があった。


  「あのう、ここは?」


  「ゴロタ帝国ティタン大魔王国領領主館です。1階の応接室にご案内します。」


  1階に降りると、広い広間になっていて、手入れの行き届いている調度品や什器が落ち着いた雰囲気を醸し出している。応接室に入ってソファに座ると、すぐにメイドさんがティーセットを持って来てくれた。お茶請けのスイーツは、見たことのない物だったが、『タイタンの月』と表記されていて、うりざね顔の女の人の横顔が紙箱に書かれていた。遠慮なしに食べたんだけど、とても美味しい。癖になりそう。お茶もとっても美味しいの。


  クラウディア様が、正面のソファに座って、いろいろ説明してくれた。まず、高校受験資格認定検定、略して高検は、年に1回、10月にしか行われず、今まで、小学校在校生が受検した記録はないそうだ。でも、受けられないかと言えば、年齢制限がないので、受けられるそうだ。ただし、受けるためにはいくつかの条件があり、中学校での授業をいくつか受けて貰って、能力があるかどうかの予備調査を行うそうだ。また、身元保証が必要だが、あなたの身元を保証してくれる人の保証書が必要だそうだ。


  「あのう、身元保証って、何を保証するんですか?」


  「あなたが、どこで生まれ、どのような人物かを知っている人の保証が必要です。通常は、両親または親権者が保証してくれるんですが。」


  「両親も親権者もおりません。」


  「その場合は、少し困ったことになります。帝国で、信用調査をして身元が明らかな人間界の帝国の者でなければなりません。どなたか人間界の帝国人に知り合いはいませんか?」


  一人だけ思い浮かべたの。でも、その方は、こっちに来てから一度も会ってないし。そもそも私の身元保証人になってくれるだろうか。なんか、駄目な気がしてきた。私は、冥界生まれで住所なんかないし、両親は、見たことも無い何かの肉塊だし。そう考えてきたら、物凄く悲しくなってきて、もう冒険者にはなれないし、ずっと孤児院暮らしが続くだろうし。


  メソメソ泣いていたら、クラウディア様、困ったような顔をして部屋を出て行った。一人ぼっちになったら、なおさら悲しくなってきて、もう世間体など関係なしに大泣きしていたわ。でも、泣いたら、少しは気分が晴れたみたい。さあ、帰ろうかなっと。立ち上がろうとしたとき、応接室のドアが開いたの。振り返ってみると、そこにはゴータ様が立っていたわ。え、何で?ゴータ様、いつもの冒険者服にショートソードを右腰に下げて、私を見てニッコリ笑ってくれた。もう、私、頭に血が上っちゃって、思いっきりゴータ様の胸に飛び込んでしまった。それで、大泣きに泣いたんだけど、何故、泣いているんだろう。ゴータ様、優しく私の肩を抱いて、そのまま持ち上げ、ソファに戻してくれた。ゴータ様も私の隣に座ってくれたの。後からクラウディアさんが来て、正面のソファに座って、説明を始めたの。


  「こちらのゴータ様は、帝室と縁の深い形で、帝国では絶大な信用を得ている冒険者です。今回、ゴータ様がマロニー嬢の身元保証人になるとのことですので、この件についての問題は解決しました。後は、受検についてですが、8月末が申請期限となります。申請書は、後日、通学している小学校まで送付します。また、人間界の帝国に行くには、現状、この領主館に設けられている転移部屋からしか転移できません。高検直前になりましたら、こちらにおいでください。説明は以上になります。」


  クラウディア様、申し訳ありません。良く、聞き取れませんでした。チラチラとゴータ様を見ていて、胸がいっぱいになってきて、あ、駄目、また泣いちゃいそう。


  ゴータ様と領主館を一緒に出たんだけど、これからゴータ様は行くところがあるって。それで、今度の日曜日、クエストに出る予定だけど、一緒に行ってくれるかお願いしたら、OKを貰えたので、朝8時、ギルド前で落ち合う約束をしたの。あれ、これってデート?いや違うよね。違います。違うの。その日の夜は、なんかフワフワしちゃって、孤児院のお仕事も中途班場になってネネさんに何回も怒られてしまったの。







  次の日、冒険はお休みして、レッドリリイのみんなとショッピングに行くことにした。冒険者服を新調しようと思って。ベルさん達が、怪しんでいたけど特に他意はないのよ。ただ、今の冒険者服って、機能性重視じゃない。ちょっとかわいさに欠けるかなって。それに、季節も温かくなってきたし、春らしい明るい色合いのものを探すことにしたの。まあ、メイド服も可愛いから好きだけど、冒険にはちょっとね。あと、下着、可愛らしい下着を買いたいの。今、付けている下着って、木綿のお臍をかくすような下着なので、もっと女の子らしい下着が欲しいなって。え、違うのよ。決して勝負パンツが欲しいわけじゃないからね。


  結局、赤を基本としたチェックのネルシャツにしたの。ボタンダウンで、胸ポケットが左右にあるの。あと、下は、クリーム色のカーゴパンツ。ボケっとが4つもついていて、裾を紐で縛るタイプのものにしたの。本当は、カーキ色にしようかなと思ったんだけど、クリーム色の方が女の子らしいと言う一言でこれになっちゃった。あと、帽子。今被っている帽子は中折れタイプで、森の妖精のような雰囲気を出しているんだけど、思い切って全く違うタイプを選んだの。ハンチングタイプのエンジ色で、お店の人がキャスケットって言っていたわね。剣帯と矢筒が赤いのはしょうがないとして、この服装とショートソードの色、どうかな。ベルさんが、呆れながら、『十分可愛いし、これ以上可愛くなったら私達どうするのよ。』て言っていたので、これで決定にした。あ、勝負パンツは、子供用が無かったので、今までので我慢することにしたわ。

これでマロニーちゃんの小学校生活は終わりかと思ったが、まだまだ続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ