表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
685/753

第2部第236話 冒険者ギルドその6

(4月1日です。)

  ベンド市にある、冒険者組合で初めて知った事実は、冒険者になるのが成人つまり15歳以上でなければならないと言う事だった。私が読んだ本に書いてある『冒険者になるためにABC』では、殺人、強盗等の重大犯罪歴が無いことや、他の冒険者組合から資格をはく奪されたことがないことのほかに、適性魔法がどうとか、最低限知っておくべき魔物の知識、素材の採取方法などが書いてあったけど、年齢のことはちっとも書いていなかった。そう言えば、年少者には冒険者ではないがポーターとして冒険者の手伝いをする仕事もあるって書いてあったけど、私には関係ないわねってスルーしていた記憶があるわ。でも、ここはごまかすしかないわね。


  「あのう、15歳にはなってます。」


  本当は、80歳なんだけど。でも10歳と言うのが、ゴロタ皇帝お付きのメイドとしての条件だったような気がするけど。まあ、ここでは15歳にしておこうっと。受付の女性、チラッと目の奥が光った気がするけど、気にしないことにしよう。


  「わかりました。ここでは『能力測定器』がありませんので、自己申告のみとなり、発行されるのも『仮冒険者証』となります。本日、記載されている内容に虚偽がある場合、冒険者証がはく奪となることもありますので、ご注意下さい。それでは、この『登録申込書』に記載してください。文字は書けますか?代筆は、銀貨1枚となっております。」


  「大丈夫です。」


  年齢と名前以外は本当のことを書いた。

******************************************

【ユニーク情報】

名前:マロニー

種族:人間

生年月日:グレーテル王国歴2015年5月6日(15歳)

性別:女

父の種族:人間

母の種族:人間

職業:元メイド

******************************************

【能力情報】

得意武術 弓

習得魔術 メイド魔法

*******************************************


  えーと、これしか書くことがなかった。生年月日も5年以上サバを読んだけど、仕方ないわよね。あ、5月6日なのは、間違いないのよ。ご主人さまが、何かの肉の塊にご自分の血液を垂らして、私を作られたのが5月6日ですもの。私達って、作られてすぐに意思を持つので、しっかりと覚えているわ。書き終わった申込書を渡すと、


  「ありがとうございます。仮冒険者証作成費に銀貨2枚を申し受けます。なお、仮ではなく本カードを作られるときには銀貨1枚の追加料金がかかりますので、ご了解ください。」


  銀貨2枚をお財布から出して渡した。しばらくすると、白色の板に文字が彫られているカードが渡された。なんか嬉しい。カードには冒険者ランクがしっかり記録されておりランク『F仮』と書かれていた。受付の隣には、依頼ボードがあり、3枚だけ依頼書が貼られていた。


  「あのう、ここって、どうしてこんなにガラガラなんですか。」


  「ああ、この国では冒険者という制度がなじみがなくって。依頼も少ないし、冒険者登録する方もマロニー様を含めて、本日で8名となります。」


  まあ、8名もいるからいいか。でも、その人達ってどうやって食べていくのかしら。とりあえず、依頼ボードを見てみる。2枚は薬草採集依頼。もう1枚は、帝国領内への護衛依頼だった。あ、ちょうどいいかも。


  私は、すぐに受付の女性に護衛依頼を受けたいと申し出たんだけど、護衛依頼は『C』ランク以上でなければ受けられないと断られてしまった。『C』ランクと言えば、ゴータ様かあ。ゴータ様って、凄い冒険者だったのね。仕方がないので、他の依頼を読んでみる。薬草採取は、毒消し草と甘露草の採取だった。毒消しポーションと回復ポーションの原料だ。それぞれ、袋に一杯詰めて採集すると、素材買取料とは別に銀貨1枚が貰えるそうだ。私は、その依頼書をもって、受付に行った。


  「あのう、この二つの薬草って、この付近で採集できるのでしょうか。」


  「情報をお求めでしょうか。情報料は大銅貨2枚からとなっていますが。」


  えー、ちょっと聞いただけじゃない。採集できるかどうかだけで大銅貨2枚って高すぎね?


  「情報料なしで、薬草の所在場所を教えることはできませんが、この付近には豊富にあるそうです。ただ、見分けがつかないと採集はできませんので、ご注意下さい。」


  あ、タダ情報ありがとうございます。それでは受けることにしましょう。受託証拠金を払おうとしたら、この依頼には必要ないそうだ。早いもの勝ちで採集してきた方が報酬金を貰う権利があるそうだ。


  早速、採集に向かう。服装は冒険者服だけだ。ショートソードもしまっておいた。ただし、剣帯だけは、チュニックを締めるのにつかっているので、付けたままだ。この街では、冒険者は出入りの際の通行税を支払わなくても良いみたい。超ラッキー。街道から外れた森の入り口に行ったら、薬草が群生しているじゃない。メイド魔法『鑑定』で全ての薬草を鑑定してみる。


  『クローバー:食用、熱処理をすると食べられる。薬効なし。』


  『甘露草:食用、生食も可。薬効:体力微回復。低級回復ポーションの原料。根から採取すると良い。』


  『毒消草:食用、生食は苦い。薬効:毒微消し。低級毒消しポーションの原料。根は不要。』


  クローバー以外を仕分けしながら採取する。あっというまに袋に一杯になってしまった。甘露草は、剥ぎ取り用ナイフを使って丁寧に根から掘り出したの。毒消し層は、適当にプチって採取した。あ、もう終わっちゃった。これってメイド魔法『鑑定』があれば楽勝だ。でも、これって冒険でも何でもないわよね。ただ、森の端まで行って帰ってくるだけじゃない。勿論、魔物なんか陰も形もないし。ギルド支所に戻ったら、あまりの速さに吃驚していたみたい。袋2つ分の甘露草と毒消し草を出すと、状態を確認している。まあ、もぎ立て、取り立てで保存しているからね。


  確認し終わったので、受付の女の人が依頼書にが何やら書き込んでいて、大きなメモ帳の間に依頼書を挟んでから、銀貨1枚を報酬として貰うことになった。そのほかに、素材報酬として、銀貨5枚を貰った。私の採取した甘露層が丁寧な採取だったので、割増料金もあったようだ。


  その時、ガヤガヤと男の子達が入って来た。やっぱり薬草採取に行っていたようだ。見た目は私と同じようだが、グール人から人間に戻ったのだろう。10歳位に見えるが、皆15歳以上の筈だ。彼らも薬草採取に行っていたようだが、随分早く帰ってきたようだ。リーダーらしい男の子が大声をだしている。


  「あれ、薬草採取の依頼書、1枚なくなっている。エレアさん、誰かクリアしちゃったの?」


  「はい、こちらの方が。先ほどクリアなさいました。」


  「しょうがないな。早いもの勝ちだからな。今日は、朝6時から採取に出たのに。でも、いっぱいあるから、素材買取りしてよ。」


  「はい、喜んで。」


  カウンターの上に薬草をぶちまけるんだけど、明らかに単なるクローバーやヨモギ、ドクダミが混じっている。エレアさんと呼ばれた受付の女の人が顔をしかめる。


  「これは、薬草でない雑草がかなり交じっております。このままでは、仕分け賃の方が薬草代よりも高くなってしまいますよ。ご自分で、仕分けされてから、お持ち込み下さい。」


  「えー、そんなこと言ったって、みんな同じに見えちゃうよ。」


  「だから、『本草百科事典』を買う様にお薦めしたではないですか。」


  「だって、金貨1枚もするんだろう。買えるわけないよ。」


  なんとなく、聞いていて面白いけど、男の子達、可哀そう。


  「あのう、手伝いましょうか?」


  「誰、君?」


  「今日から冒険者になったマロニーです。」


  「ふうん、君、薬草、詳しいの?」


  「少しは。」


  「じゃあ、ちょっとやってみてよ。お礼は、大銅貨1枚でどう。」


  別にお礼なんかいらないけど、カウンターの上に山積みされている草を次々と仕分けしていく。あら、随分、薬草が少ないようだけど。それに甘露草も根元から千切っているし。なにより、春の陽気に当てられて薬草がしなびれかけているわ。


  10分位で、すべてを仕分けしてあげたら、男の子達と受付のエレアさんが吃驚していた。


  「おまえ、適当に仕分けたんじゃあねえか?本当に大丈夫なのかよ。エレアさん、どうよ。」


  「完璧です。甘露草と毒消し草はこの山に間違いありません。マロニー様、どちらかで薬師でもしていたんですか。」


  「いいえ、でもお茶の葉の仕分けはしていましたから。」


  元メイドだし、簡単、簡単。私は、そのまま、ギルド支所を後にした。初依頼達成、嬉しい。これで少しゴータ様に近づいた気がする。仮冒険者証を見てニマニマしながら歩いていると、後ろからさっきの男の子達が追いかけてきた。


  「おい。あんた、いや君。」


  「はい、何でしょうか。」


  「君、凄いね。薬草に詳しいんだね。」


  「いえ、図鑑で見たことがあるだけです。」


  「ふうん、学校を出ているんだ。俺は、ずっと剣の練習をしていたから、学校には行かなかったんだ。」


  グール族でも、都市部の子は学校に入るけど、田舎の村や町の子は、学校に行かない子が多いみたい。


  「俺は、ジェイド。君は?」


  「マロニーと申します。」


  もうそろそろお昼にしようかなと思ったけど、面白そうだから付き合うことにした。


  「マロニーか。こいつはランク、それでこっちがヘルド。皆、同じ村から来たんだ。本当は、王都の騎士試験を受けたかったんだけど、『人間化』でこんなに小さくなってしまったから、もう少し大きくなるまで待つことにしたんだ。それまで、冒険者で稼ぐことにしたのさ。」


  「そうですか。でも、ここ依頼が少ないですよね。これでは依頼料を稼ぐのも大変ですよね。」


  「そうなんだよ。それでお願いがあるんだけど、明日、俺たちと一緒に薬草採集に行ってくれないかな。あ、お礼は、薬草代の半分で良いから。俺たちだけだと、どれが薬草なのか分からなくって。」


  「えーと、明日はゴロタ帝国領に出発するので、無理です。今日、お昼ご飯を食べてから、そうですね。午後2時に東門のところに来てください。」


  「あ、ゴロタ帝国領に行くのか。そうか。じゃあ、今日だけ、今日だけ頼むね。」


  これで、夕方までの暇つぶしが出来たわ。

メイド魔法『鑑定』は、役に立ちますね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ