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第2部第231話 冒険者ギルドその1

いよいよ、冒険者への道が始まります。

(3月21日です。)

  朝食後、マックさんは『これから騎士団に出仕するので、夕方、また来てくれ。』と言われた。そのときに、『魔剣一刀流』の形を見てくれると言ってくれたのだ。それはとても嬉しいので、是非お願いすることにした。


  夕方まで、市内見学をすりつもりで、道場を出ようとすると昨日、道場の中に案内してくれた少年が声を掛けてくれた。


  「お前、今日は市内見物か?」


  「はい、何か良いものが無いかと思い。」


  「お、女の子が一人でウロウロしていると危ないぞ。仕方がないから、俺が案内してやるよ。」


  何故か、顔を赤くして言っている。


  「ありがとうございます。それではお願いします。」


  少年は、マイキと言って12歳だそうだ。父親は、ある騎士爵の従卒をしており、今は、叛乱軍討伐軍に従事しているそうだ。マイキ君の夢は、騎士の従卒ではなく騎士になるか、でなければ、これから新設される衛士か兵士になることだった。小学校は出ていないが、読み書きはできるし、これから3年間修行すれば絶対になれるはずだと言って笑っていた。


  マイキ君は、腰に木刀を差し、私の前を歩いている。


  「で、どこに行きたいんだ?」


  「うん、武道具屋さんや防具屋さん、それに旅の食料品を売ってるお店に行きたい。」


  「よし、じゃあ、この街で一番高級な店に連れて行ってやる。」


  マイキ君は、どんどん市の中心街の方に歩いて行った。でも段々魔人族の姿が少なくなり、貴族や裕福そうな服装の人達が増えてくるに従って、歩く速度が遅くなって来た。それでも、何とか目的地に到着したようで、大きな武道具店の前で立ち止まった。


  「ここだよ。」


  そう言って入ろうとしない。


  「あれ、マイキさんは入らないの。」


  「バカ、この店は高級店なんだぞ。俺みたいな魔人族が入ったら怒られてしまうぞ。」


  「えー、大丈夫よ。一緒に入りましょうよ。」


  そう言って、マイキ君の右腕を取って一緒に店の中に入った。店の中は、いかにも高級店ですという感じで、真っ赤な絨毯が敷き詰められ、商品は全てガラスのショーケースか、店員の後ろの棚に陳列されている。


  「いらっしゃいませ。」


  店員が、マロニーに慇懃な礼をするが、マイキ君を見て、


  「お客様、従者の方は店外でお待ちいただけないでしょうか。」


  「マイキさんは、従者じゃありません。私を案内してくださったのです。」


  「いえ、そう言われましても。」


  マイキ君が従者であろうとなかろうと魔人族だから入店お断りなんでしょう。それなら、きちんと書きなさいよ。


  「俺、外で待っているから良いよ。」


  「じゃあ、私も出るから良いわ。」


  店内をパッと見ても、目を惹くような物は無かったし。トットと出ることにした。それから、街の中心街ではなく魔人街に近い場所にあるお店に行くことにしたの。その店は、間口は狭いけど、奥行きが長く、隣に工房が併設されていた。看板には、『ガチンコ武道具店』と書かれていて、伝説の鍛治職人の名前を冠していた。あれ、確か私の『聖剣エスプリ』もガチンコと言う人が作ったような記憶があるんですけど。店内は雑然としていたけど、いかにも職人の武道具店と言う感じだった。店の前にはジャンク品が置いてあったが、1本1本、手に取って調べてみた。勿論、メイド魔法『鑑定』を使ってだけどね。ほとんどが『Fランク』品だったけど、1本のショートソードだけ、『B』ランクだったの。柄もボロボロ、柄に巻いている革も擦り切れていたし、鞘もそれなり。刀身も錆が浮いていたけど、刃の部分だけ錆が浮いていないし、刃こぼれもないの。そう言えば、『鋼とミスリルのハイブリッド』と書かれてあったわね。値段を見ると、銀貨2枚と値札に書かれていた。


  その剣を持って、奥に言ったら、見るからに意固地そうなドワーフのおじさんが、ジロッと私を睨んできたの。絶対にお客さんに対する目つきじゃ無いわよね。


  「あのう、これが欲しいんだけど。」


  「それは切れ味は良いが、造りが酷い。本当に買うのかね。」


  「はい、鋼部分の錆を落として、柄の皮を巻きなおしていただけますか。それに目打ち釘が緩んでいるので、新しいのに交換してもらいたいんですが。」


  「あんた、この剣のどこを見て選んだ。」


  「はい、刀身は、錆びていますが鋼とミスリルのハイブリッドですね。それに刃体に刃こぼれが無いので、補修も簡単に済みそうですし。」


  「ほう、分かっているね。しかし、柄皮を巻きなおすのに銀貨9枚、さび落としに銀貨2枚がかかるが、それでも買うかね。」


  「はい、お願いします。期間はどれくらいかかりますか。」


  「そうだな。柄皮を標準品にすれば3日、特殊な素材にすれば取り寄せの期間がそれなりだな。勿論、金額もそれに応じて高くなるがな。」


  「では、標準品でお願いします。お金は、これでお願いします。」


  金貨1枚と銀貨3枚を出して、依頼をした。店主は、私みたいな小さな子が金貨を持っていることに吃驚していたが、着ている冒険者服も悪い物ではないことから、何となく納得したみたいだ。引換券を貰い、マイキ君に渡しておいた。


  「出来上がりは、このマイキ君が受け取りに来ますので、よろしくお願いします。」


  マイキ君、かなり焦っている様子だったが、私は平気な顔で他に良い物がないか店内を見て歩いた。商品の品揃えはしっかりしていたが、値段もそれなりに高い物が多い。特に装飾品が大したことないのに、値段の高い剣を見せてもらったところ、刃体が総ミスリル製で、しっかりと作りこまれているものだった。いわゆる良心的な品が多いようだ。しかし、買いたいものはなかったので、店主に挨拶をして帰ろうとしたところ、


  「お嬢さん、腰の剣帯に何も下げていないんだけど、今日買ったショートソードを使うのかい。」


  「いいえ、いつも使っているのは、これです。」


  そう言って、『聖剣エスプリ』を出して店主に見せてあげた。


  「え、これって『聖剣エスプリ』じゃあねえか。あ、と言うことは、あんた、いえ、あなた様は『殲滅の聖女』様ですか?」


  いえ、二つ名を面と向かって言われも、困るんですけど。でも、黙ってもいられないし。


  「ええ、そう呼ばれる方もいると聞いていますが、『人間化計画』を推進させていただいたマロニーと申します。」


  店主は、エスプリを私に返していただいて、


  「いい物を見せてもらいました。それでは、この剣の補修はお任せください。」


  お店を出てから、マイキ君がしきりに感心していた。剣に関しての知識だけに限らず、気難しいおじさんときちんと対応を取ったことに関してみたい。まあ、今日買った剣は、マイキ君に上げるつもりで買ったんだけど、そのことは、内緒にしておいて、出来上がってから吃驚させようかなと思っているの。


  次は、防具屋さんでもいってみようか。冒険者服の替えを買いたいの。マイキ君の案内で、防具屋さんに向かっていたところ、なんかガラの悪そうな人達がチラチラとこちらを見ていた。あの人たち、仕事もしないで何をしているんだろう。防具屋さんは、『ガチンコ武道具店』から2ブロック離れたところにあり、表通りから少し入ったところにあった。マイキ君が前を歩いて案内していると、急に横の路地から走って来た男の人とぶつかってしまった。マイキ君は、随分飛ばされてしまったようだけど、ぶつかって来た男も左膝を抱えてうめいている。その後ろから来た男たちの顔を見て、『なんだ、さっきの男達か。』と思ったけど、黙っていることにした。


  「マイキ君、大丈夫?」


  飛ばされただけで、どこもケガをしていないみたい。


  「それじゃあ、あなた達、気を付けてね。前をよく見て歩いてね。」


  可愛らしく注意をして、立ち去ろうとしたんだけど、やっぱり駄目だったみたい。男は、地面に転がっている男を入れて8人程、魔人族が3人と人間族が6人ね。皆、若そうだけど、人間族は、特に若そうね。マイキ君と大して変わらなそう。と言うことは、アンデッドだった頃もきっと十代だったわね。


  「ふ、ふざけんじゃあねえ。どうしてくれるんだ。こいつを。怪我をしているじゃあねえか。」


  「あ、そう。その怪我って私達と関係あるの。」


  「な、何だよ。おめえたちからぶつかって来たじゃあねえか。」


  「マイキ君、ぶつかった?」


  「え、さっき・・・」


  私が、思いっきりウインクをしたんだけど、分からなかったみたい。


  「ぶ、ぶつかられたような。」


  「ほら、ぶつかってないって言ってるじゃない。」


  「な、何、シレっとごまかしているんだ。ぶつかったって言ってるじゃあねえか。」


  「えー、そうだった。マイキ君、ぶつかったの。」


  マイキ君、ようやく気が付いたのか、


  「ううん、ぶつかってない。そんな気がする。」


  「ほらあ、ぶつかってないって。じゃあね。」


  男達の間をすり抜けようとしたんだけど、立ちふさがって邪魔をするの。


  「あのう、邪魔なんですけど。」


  軽く、本当に軽く、前の男のお腹にグーでパンチしておいたの。早すぎて見えないだろうけど。一瞬で、5mは吹き飛んだわね。あ、腕が変な方向に曲がっているわ。私のせいじゃないからね。


  「て、てめえ。何をした。」


  「えー!何もしていないわよ。見ていたでしょう。」


  私の方に近づいてきた男、汗臭そうだったから、今度は、胸に手のひらを当てて押し出したの。この男は、7mは飛んだかしら。


  「なんかー、みんな、飛んで行ってしまうんですけどー。」


  完全にぶりっ子モードのまま、前に進んでいく。脇の男も私に手を伸ばしてきたんで、ちょっと払ったの。肘の関節の曲がらない方に。でも、だれも私が何をしているのか見えてないみたい。


  男達は、ようやく普通の事ではないことが起きているのに気が付いたみたい。私、可愛らしく、男達の真ん中に立っている細めの男に笑いかけてあげた。


  「まだ、邪魔するのかなあ。」


  あ、みんな走って逃げているけど、あのう、この3人、置いて行かないで頂戴。臭いから。

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