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第2部第223話 聖女様マロニーその9

(1月14日です。)

  今日も、朝5時から稽古を始めたんだけど、メニューが少し変わったの。最初は、丸太木刀による素振りを5分300本、それから『コテツ』による長剣の7つの形を15分5セット、そのまま上段からの『気』を決めて斬撃の練習を10分40セット行うの。それから新しく取り入れた『投げビシ』によるメイド魔法『空間浮遊』からの投擲を30セット10分行う。これは1個の『投げビシ』を浮かばせ私の周りを何回か周回させてから的に向かって移動して命中させるという練習で、勿論手を使うのは1個を取り出すときだけよ。最初は、ゆっくり移動させて確実に命中させる練習から始めたの。それから、ちょっとづつ早くしていって、1セット20秒以内を目指して練習だ。


  次は、『虹の魔弓』による7色の射の準備を300回5分行う。これは弓が勿体無いので、矢筒から矢を取り出して弓につがえ構えて鏃を光らすまでの練習だ。火の赤、風の橙、雷のの黃・氷の緑・聖の青・治癒の藍・光の白を1回1秒で完了するように練習をする。まあ色については虹の7色をイメージしているけど、全体に光っていて少し色づいているかなという程度だけど。


  次は、3本の矢を一度に放ち、3つの的に当てる練習を30分30セット、これも放ってからメイド魔法『空間浮遊』の応用で『移動』の力を3本に働かせるのだが、これが一番難しい。1本だけなら、グニャリと曲げられるのだが、3本同時に全て命中させるためには、3つの意識を別々に働かせなければならない。それと、20m先にある的に当たった矢を回収するのに、1歩のジャンプで取って戻る練習もする。これもメイド魔法『空間浮遊』の応用で、浮かんで移動させる力を養う練習だ。元の位置に戻るまで地面に足をつけずに移動するのだけど、移動速度が中々速くならない。これなら歩いて採りに行った方が早いわ。


  最後に『投げビシ』3個を自由に回転させて10分間、その状態を保つ練習だ。この練習は、近くに人がいるととても危ない。小さな『投げビシ』が空中を移動しているとほぼ見えないからだ。そのため陽が昇ってから、周囲に気を配りながらの練習になる。初めてこの練習をゴータ様に教えて貰った時は、『投げビシ』が溶けてしまったから、赤く発熱する速度までで抑えておいたの。


  練習を完了するのが午前6時30分、それから木刀でドンキさんとの地稽古を30分してもらう。ドンキさんの打ってくる木刀を、木刀で受け、払い、交わす練習だ。自分からは打って行かない。ドンキさんの上段からの鋭い打ちを、木刀の鎬で合わせるだけで逸らし、横薙ぎの胴は、木刀で受けるかミリ単位で躱す。足捌き、体捌きそして動体視力と先読みの力、何か欠けても失敗する。30分、、集中力を維持したまま動くと流石に汗だくになってしまう。最後は、転がって逃げて稽古終了になる。ああ、死ぬかと思った。


  シャワーで汗を流してから、魔石のカケラを並べて、一つ一つ見ていく。メイドの嗜みとして、素材の『目利き』がある。良いお茶の葉や水を見分ける力だ。この力を応用して、魔石の名称や持っている能力を見分ける力を養っている。この緑色っぽい魔石のカケラを見ていると、


  『ファングウルフの魔石、能力:魔力備蓄』


  とか、赤っぽい魔石のカケラをを見ていると、


  『ファイアスネークの火魔石、能力:発火』


  とかが分かっちゃうの。これって『鑑定』っぽく無い?『ピロロローン、メイド魔法『鑑定』を覚えた。』という声は聞こえないけど、目利きがグレードアップしたのは確かね。因みに、今まではお茶っぱを見ても『普通の茶葉、少し古い』程度しか分からなかったけど、この練習をはじめてから、部屋に置いてあるお茶っぱを見ると、


  『ベンジャミン産の茶葉、製造後4か月、品質B』


  と分かるようになったの。すごい。私って、完全に上級メイドね。でも、この能力って内緒にしていた方が良いみたい。その方が色々便利そう。ウフフ。


  今日から、ブレナガン領内の市町村を回って『人間化計画』を進めるんだけど、領内には市が1つ、町が3つ、村が5つあるらしい。その全てを回るのに、最低でも2週間、いえ休憩も入れないといけないから、3週間は掛かるわね。真冬だから、農家の方々は農閑期でいいんだけど、移動するこっちは、大変な作業ね。移動は馬車でするんだけど、私とヘルプのシスター3人が乗る馬車が1台、護衛の騎士産たちが乗る馬車が2台、それと荷物用の幌馬車が1台の計4台のキャラバンね。シスター達は、私よりは少し年上って感じだけど、元グール族だったので、当時は20歳位だったのかしら。皆、こんな旅は初めてらしく、馬車の中は修学旅行状態みたいなものだった。見るもの、聞くものが全て初めてらしく、また途中で食べるものも美味しいだの嫌いだのと。まあ楽しいからいいけど。


  私は、いつものメイド服にダウンジャケットを羽織っているの。ダウンジャケットがちょっとアレだけど、防寒衣ってこれしか持っていないし。と言うかシスターさん達は、何でそんな高級そうな毛皮のコートを着ているんですか?


  一番年配のシスターは、ブローニーさんでグール人だった時は24歳だったそう。次は、メガネをかけたフロイデさんで、21歳だったと言っていた。一番若いシスターがメリムさんで18歳だったんですって。まあ、皆、若返ったから当然なんだけど10代のシスター3人なんて絶対に犯罪よね。騎士さんの中にも若い子がいて、しきりにこちらを見ているのよ。騎士さんの馬車には、ブレナガン伯爵家の執事さんが一人と行政庁の職員が一人乗っていて、旅の経費を受け持ってくれるんだけど、かなり余裕があるみたいね。


  ブローニーさんが、


  「マロニー様は、何故、メイド服なんですか?」


  と聞いてきたの。勿論、元メイドだという誇りの証だけれども、それを言うと難しくなるので、


  「ええ、ファッションとして気に入っているのと、動き回るのに機能的だからですのよ。」


  とだけ言っておいたの。







  その日の午後、最初のイエナ村に到着したの。小野村には200人ほどのグール人とレブナント人の村長家族がいたの。皆、境界前に集まって貰って、50人位ずつ礼拝堂の中に入って貰う。わたしが、『エスプリ』を頭上に掲げて、


  「偉大なる神の御心をここにお示し下さい。」


  とかなんとか言って『聖なる力』を礼拝堂中に満たしてやってお終い。それから、具合の悪そうな人達を『癒しの力』で元気にして、次の組に交代するの。でも、皆さん、礼拝堂に入ってくると私に向かって手を合わせるのは何故?そう思っていたら、理由はすぐに分かった。シスター達が、私の事を『聖女マロニー』様と呼んでいるからだわ。完全に新興宗教の教祖様扱いね。


  今日は、この村でお泊まりなんだけど、当然、夕食は村長主催のパーティーとなって、飲めや歌えの大騒ぎ。私とシスター達は当然、お酒は飲めないけど村の若い男達がシスターの側で飲み始めて、村の娘さん達に白い目で見られていたのが笑えた。


  シスター達も悪い気はしないみたいで、ニコニコお話ししていた。この国の宗教というか建国の祖である大魔王様を信奉している『魔王教』の教えには、『産めよ、増やせよ。』と言うのがあって、教会のシスターも結婚は自由らしいの。ただ、異性と知り合うチャンスがあまり無いみたいで、今回の『人間化計画』旅行は、そういう意味でもシスター達に人気だったみたいね。何か住所交換している子も居るし。


  私とシスターは、村長の家の客室に泊まることになっていて、騎士さん達は旅館に泊まるんだけど、余り飲みすぎないようにね。私達の寝る部屋は、ツインだったんだけど、二人で一つのベッドに寝ることになったの。私は、ブローニーさんと一緒なんだけど、ブローニーさんで、冷え性みたいで身体が冷たいの。私、ちょっとだけ『暖かくなれ』の力を使って、ぐっすり寝てしまった。


  翌朝、そっとベッドから抜け出すと、気配を消しながら身支度を整えて外に出た。辺りは真っ暗。よし、誰もいない。私は、そのまま空中に浮かび上がり、村の外に向かう。風が冷たいけど我慢できないほどではない。村の外の街道そばの空き地に着地して、稽古を始めたの。


  流石に的に向けての練習はできなかったけど、一通りの訓練をした、それにメイド魔法『飛翔』も随分出来るようになった。でもゴータ様のような速度を出すことが出来ない。速度を出すと余りにも寒いのだ。ゴータ様は、何か魔法のようなものを使っていた。風も寒さも防いでいたけど。先輩メイドも、冬の朝早くに屋外で活動したり、お客さまをお迎えする時、何かの力を纏っていたような気がする。私が持ってる力なんて『聖なる力』位しかないんだけど。試しに力を自分の周りに纏ってみた。うーん、まだかな?もうちょっと強くしてと。あ、いい感じかも。身体が、ほんのり白く光っている気がする。暖かくはないけど、寒くもないわ。


  このメイド魔法、何て言うのかしら。先輩メイドが纏っていたのは、黒い闇の力だったようだけど。うーん、よし。自分で名前付けちゃえ。えーと、えーと、メイド魔法『エージス』にしよ。冥界図書館の古代神話の本に、全ての剣を防ぐ神の装備せしめる盾とかってあったもんね。


マロニーは、自動防御システムは習得しているのですが、ないかも知れません。ドンドン『メイド魔法』増えていきます。

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