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第63話 とても残念なイレーヌさん

バーベキュー屋さんとありますが、網の上に肉を置いて焼く店をイメージしてください。しかも、自分で肉を取りに行く食べ放題の店を。

(バーベキュー店の続きです。)

  この店は、帝国内各都市に姉妹店があるらしく、2時間以内なら、食べ放題、飲み放題で1人、大銅貨4枚とリーズナブルな価格設定である。イレーヌさんに聞くと、軍の仲間や小隊で来るときは、この店ばかり来るらしい。道理で、店内、軍人以外は僕達だけだった。


  しかし、皆さん、軍服を着てお酒を飲んで良いんですか。聞けば、軍人は何時如何なる時も軍服を脱いではいけないそうだ。ああ。


  ホテルに戻ったのは、それから4時間後だった。2時間という時間制限があるはずだが、あの店は帝国軍御用達の店のような物なので、時間制限はあってないような物らしい。おかげで、シェルさんは、泥酔していて歩けなくなっている。ほかの皆もかなり酔っていた。部屋の前で、イレーヌさんは、直立不動の姿勢を取り、


  「おやすみなさい。」カチン


  挨拶をして自分の部屋に戻った。シェルさんをダブルベッドに寝かせ、服を脱がせる。パンツも脱がせる。温かい濡れタオルで、全身を拭いてあげる。大事なところも拭いてあげる。毎日、やっているところだから平気だ。僕も成長した。


  エーデル姫は、風呂に入っていた。クレスタさんとノエルさんが、部屋に乱入してきた。全員で夜のセレモニーが始まる。しかし、皆は知らなかった。僕が、部屋にシールドを貼り忘れたことを。イレーヌさんが隣の部屋から、顔だけ出して覗いていたけど放っておいた。







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  自分は、イレーヌ少尉です。


  尊敬するゲール大佐から、秘密指令を受けました。王国から隠密で来られたエーデルワイス王女殿下に随行し、行動を逐一報告することです。


  本日の行動報告。

    1200 エーデルワイス王女と合流

    1230 昼食 僕殿支払い

    1330 ホテル予約 シングル1部屋銀貨2枚

    1400 壁抜け実験

    1530 ロビー待ち合わせ

    1800 バーベキュー店 歓迎会

    2200 就寝


  しかし、就寝後、隣の部屋を覗いたら、ゴロタ殿がシェル殿の身体を拭いていた。なんと優しいのだ。わが軍の男子で、そのような優しい男子は皆無である。


  次に、隣の部屋に宿泊のクレスタ嬢とノエル嬢が部屋に入ってきた。入って来たと同時に裸になった。なんとパンツまで脱いで。あれではスッポンポンではないか。そのような風習は、帝国には無いな。


  あ、部屋の明かりが消された。これでは、何も見えぬではないか。


  ん、なにやらへんな音が。チュウチュウと何かを吸う音だな。意地汚い夢を見ているのだな。


  この音は何だ。ピチャピチャ。聞いたことのない音だ。何も見えぬ。


  おお、凄い寝言だ。どこへ行くと言うのだ。もう夜中だぞ。よし、私も寝るとしよう。  


  とても残念なイレーヌさんだった。






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(6月19日です。)

  城砦町ビッツから東へ行く駅馬車は3日に1度しかない。軍人さんは、自分達の馬車や馬で移動する。ビッツ町から軍人さんがいなくなると人口1000人程度の村という事になり、駅馬車がある方が不思議だ。それだけ軍人さんの需要があるのだろう。


  駅馬車は、朝早く出るため、6時にホテルを出なければならない。朝食は移動中の馬車の中でパンを齧ることにする。シェルさん達は、いつものミニスカ姿だが、イレーヌさんは、やはり軍服だった。背中に背嚢を背負っている。背嚢の上には簡易テントを乗せて縛り付けていた。完全に行軍スタイルだ。


  シェルさん達は、ミニスカだが、帽子は被っていない。彼女達のポリシーは、『昨日と同じ格好はしない。』だそうだ。それって、絶対変ですから。


  馬車は8頭立ての6人乗りだったので、僕達だけで1台貸し切りとなった。まず、隣のアート村を目指した。護衛は、帝国軍の騎馬隊8名である。既に提督から、僕達のことは伝達済みのようで、緊張した面持ちで警護に付いている。他の乗客はいない。まあ、そんなもんかな。


  出発してから、直ぐに朝食を出す僕。少し硬くなったパンを火魔法で温めて柔らかくする。それにバターを塗って、皆に配る。チーズとハムのスライスを皿に乗せて、馬車の中のテーブルに並べる。最後に、水筒に入れておいたミルクティーをマグカップに入れて、やはり火魔法で温める。これで、準備完了。いただきます。


  イレーヌさんが、僕の手際を見て、関心していた。こんな揺れる馬車の中で、全然零さずに準備できるなど、常人ではできることではないと褒めてくれた。うん、僕は常人ではない。


  馬車の中で、イレーヌさんの話を聞くと、年齢は、15歳だそうだ。皆、意外な顔をしている。通常、士官学校は、15歳から入学できるはずだが、イレーヌさんは士官学校を卒業していないのだろうか?その答えは、直ぐに分かった。イレーヌさんは、学業がことのほか優秀であることと、特殊スキルを有することから、12歳で士官学校中等部を卒業し、高等部に進学したのだ。士官学校は、初等部からあり、すべて官費学生になる。大学部は、部隊配備をして5年以上の経験と大尉以上の階級でなければ入学できない。通常は、24歳で大学部入学だそうだ。


  イレーヌさんは、初等部から士官学校に入学していたので、このように一般の人と会話するのは初めてだそうだ。5歳と聞いて、シェルさん達が嫌な顔をしたことを僕は知らない。


  昼食休憩では、イフちゃんにキャンプセットを出して貰った。イレーヌさんは、誰もいなかったはずの馬車の中から僕とそっくりな女の子が出て来たのに吃驚し、次に何もない空間から大きなキャンプセットを出してきたので、もっと吃驚していた。


  テントも出して貰って、テントの中にあるテーブルセットをセッティングし、簡易竈門2脚を使って、お湯を沸かすのと、フライパンを温めるのを同時に実行する。


  昼食のメインディッシュは、ホットケーキで、今日の早朝、裏庭で作っておいたホットケーキの種をイフちゃんが出してくれた。1枚ずつ、焼いて行く。ホットケーキ、蜂蜜、ホットケーキ、蜂蜜の順で重ねて行く。それから、お好みでチョコレートの粉末をトッピングして、出来上がり。クレスタさんにミルクティーを作って貰い、皆でテーブルについて食事開始となった。


  イレーヌさんは、別世界を見ているようで、恐る恐るホットケーキを食べて、顔がパアーと明るくなった。やはり、女の子は甘いものを食べると嬉しくなるらしい。





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  アート村に着いたのは、午後5時過ぎだった。ここには、旅館しかなかったので、いつものセットで部屋をとり、イレーヌさん用にシングルを一つ取った。夕食は、旅館では準備できず、近くの食堂で食べるらしい。


  皆で、食堂に行ったら、そこは定食屋みたいなところで、僕は、肉と野菜を一緒に炒めたものがメインディッシュになっているセットを頼んだ。パンは、オプションで、デフォルトはライスだ。豆から作る調味料入りのスープ、ソイスープには、海草と豆の固めた白くて柔らかい物のコラボが美味しい。この白いのは、『TOFU』という、この地方の特産品らしい。


  小さな小皿に入った野菜の塩漬けや海草の煮た物などは食べ放題だった。何より、銅貨60枚と言う値段が素晴らしい。イレーヌさんは、『SABAMISO』と言う謎の魚を食べていたが、元の姿が分からないので、食べる気はしなかった。


  食事が終わったら、村の中を散歩してみたが、本当に見るべきものが何も無かった。仕方がないので、旅館に戻り、早く寝ることにする。今日は、クレスタさん、ノエルのペアで寝るのだけれど、シールドを張ってから寝よう。







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  イレーヌさんの、本日の行動報告。


     500 起床

     600 ホテル出発 料金不明

     700 駅馬車乗車

    1200 昼食

    1730 アート村到着

    1800 旅館到着

    1900 夕食 料金不明

    2100 就寝


  本日の特異報告


  ゴロタ殿は、この一行のメイドと判明。荷物搬送から食事の世話まで、全てをこなしている


    謎の少女、発現 詳細不明


    謎の魔法 使用 詳細不明


    僕殿の部屋の監視 不能  原因不明


  はっきり言って、役立たずです。






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  次の日の朝、僕は、村の外に出た。全速力で村から遠ざかって、村が見えなくなってから、ワイちゃんを呼んだ。


  ワイちゃんが、人間の食べ物が食べたいと言ったので、女の子に変身させて、洋服を着させた。当然、イフちゃんが出してくれた。


  ワイちゃんを背負って、村に帰ると、皆が起きて来る時間だった。シェルさん達は、ワイちゃんを見て、ちょっと吃驚したが、『まあ、いいか』で終わった。イレーヌさんは、色々聞いてきたが、僕は、イレーヌさんとはそんなに親しくないので、まともに返事が出来なかった。いつまでもコミュ障は治らないようだ。


  朝食も、例の定食屋で食べた。朝食セットと言うものを全員が注文した。ライスにソイスープ、目玉焼き、ハム、海藻、野菜の塩漬け、それに謎の豆。この豆は腐っているのかと思うほど臭かった。


  皆、イレーヌさんの食べ方を真似している。基本的には、全ての料理は、大豆がキー素材らしく、色々な食べ方をしているようだ。糸を引く豆以外は旨かった。何より、値段だ。1人銅貨36枚と言うのは、今までの最低価格だった。


  ワイちゃんは、初めての人間の食べ物が気に入ったようだ。しかし、木の棒2本を使って食べるのは、出来なかったので、スプーンを貸して貰った。ワイちゃんが、一番気に入ったのはあの臭い豆で、お代わりをしていた。1皿、銅貨5枚だった。


  ワイちゃんは、お土産で持って帰りたいと、店の人に頼んだら、隣の食料品店で売っているとの事だった。


  食後、その店に行ってみると、見たこともない食材が並んでいた。臭い豆は、直ぐ見つかった。長藁に包まれていた。


  1個、銅貨3枚と鉄貨9枚だった。ワイちゃんは、10本買った。


  出発の準備が整ったので、全員で、駅馬車に乗る。ワイちゃんも乗ったので、定員オーバーだったが、御者さんにチップを渡したら、OKだった。ワイちゃんは、靴を脱いで、僕の膝の上に乗ったので、シェルさん達から冷えた空気が流れてきた。クレスタさんは、本当に氷を出しそうで怖かった。


  お昼になって、キャンプセットを出したら、問題が発覚した。椅子が6脚しか無かった。仕方がないので、ワイちゃんを僕の膝の上に乗せたまま、食事をしたら、シェルさん達からの空気が完全に凍りついてしまった。

基本、この物語に出て来る女性は、ゴロタと同年代です。クレスタさんだけ、ちょっと違いますが、やはり、ジャリばっかりではお話に幅と艶がなくなりますので。え、艶がないと、考えさせてください。

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