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第2部第198話 マロニーは小学4年生その3

女子会は年齢は関係ないようです。

(11月14日です。)

  今日は、弓道愛好会のオフ会の日だ。『オフ会』って何なのか分からなかったら、学校以外で集まるのをオフ会って言うんだって。学校でのあつまりをオンザスクール、学校以外をオフザスクールって言うの。それ、絶対に意味が違う気がするんだけど。


  皆、弓を持って来ていたんだけど、エルフィー弓道具店で買ったものがほとんど。でも、見た感じ色だけで選んでいる感じ。戦闘用の物は一つもなかった。というか、絶対、お店の前に並べている子供用の弓矢だから。まあ、それでも前には飛ぶだろうからいいけど。


  今日のために、私は朝からクッキーを焼いたりサンドイッチを作っていたの。それと甘い果物と蜂蜜で作ったポンチも作って手をかざして作った氷を浮かべておいたの。季節的には初冬だけど、ポンチって冷えてないと美味しくないものね。弓道愛好会は4年生以上の女の子であることを入会条件にしているんだけど、6年生が2人、5年生が3人入ってくれたみたい。でも発起人がクララさんだし、一番の経験者が私だと言う事なので、当分の間は、私達がイニシアティブをとっていくみたい。


  会の名前なんだけど、『白百合会』か『黒百合会』かで揉めているそう。どうして百合なのかは分からないけど、百合は絶対に譲れないワードらしいの。特にクララさんが強硬で、百合が付かなければ解散するって泣いたと言う話も聞いていた。うん、よく分からない話ね。話題は、ソニーお嬢様の小学校時代のお話になり、当時、ソニーお嬢様を囲む会があったそうなの。それで、どこに行くのでもゾロゾロと付いてきて、一番参ったのはトイレに行く時で、一人で行きたいのに、ソニーお嬢様が入っている間中、男の子が近づかないように警戒するんだって。それって、今、ソニーお嬢様がトイレに入っていますって教えているような気もするんですけど。


  あと、ソニーお嬢様の婚約者の方のお話になって。この前、ハンス市に行ったときに婚約者の男性とお会いになったのだが、その時はあいさつ程度にしかお話ができなかったそうだ。ソニーお嬢様は、プレゼントを準備していったけれど、相手の方はそっけなく受け取るだけで、ソニーお嬢様へのプレゼントを用意していなかったと寂しそうにお話になられた。おや、もしかして、相手の方をあまり気に入っていないのかな。貴族の結婚って、とっても難しいらしいの。まず、相手の方の身分、それから種族、それから資産や収入、最後に相手の年齢と。これらすべての条件にあう相手など、今、この世界の置かれている条件から考えると、とても難しいらしいの。


  それで、ソニーお嬢様のお相手の方って、外れている条件が幾つかあるみたい。まず、本来は貴族でないということ。これは伯爵家よりも格上の辺境伯家に養子に入ったから条件的にはクリアしていても、本来の貴族ではないので、貴族らしい教養や知識に欠けることがあっても我慢しなければならないんだって。あと、資産。相手のもともとの生家は、大商人だったんだけど、経営がうまくいかなくて破綻寸前のところ、ソニーお嬢様の婚約という条件で伯爵家から融資を受けることになったの。これって融資を当てにしてソニーお嬢様と婚約したってことだよね。それで、本人は父親の家業の手伝いをしているんだけど、あまり収入がないようなことを言っていた。


  そういう話を淡々と話されるソニーお嬢様に対し、皆もどう言っていいか分からずに黙り込んでしまった。それに気が付いたソニーお嬢様、笑顔になって、


  「こんな暗いお話はやめにして、楽しいお話をしようよ。」


  と言ってくれた。うん、私は、皆にポンチを配ったり、お茶をお出ししたりとホステスに専念していたんだけど、急に私に話が振られてきた。


  「そう言えば、マロニーちゃん、最近バーカス君が来ないけどどうしたの。」


  「あ、彼は今、剣術の師匠が付いたので、午後はその師匠から剣術を習っているんだって。強くなって驚かせてやるんだって言っていたわ。」


  「へえ、ところでマロニーちゃんはバーカス君のこと、どう思っているの。最初は嫌っていたようだけど、最近は、とっても仲がいいのよね。」


  皆、この話には食いついてきた。どうって言われても、ただ私に付きまとっている男の子っていう存在で、それ以上でもないし、もしかしたらそれ以下?とにかく、80歳の私にとって8歳の男の子にときめくなんてありえませんから。それに、きっと来春には、ここを出発するだろうし。どうして来春かと言うと、これから冬本番を迎えるのに、旅をするのは無しかなと思ってしまって。でも、来年の5月には11歳になってしまうんだけど、11歳でも幼女なのかな。あ、それって聞いてみよう。


  「ねえ、聞きたいことがあるんだけど。この世界で幼女って何歳くらいまでなの。私って幼女かな。」


  これを聞いて、ソニーお嬢様が吃驚なさっていた。あれ、私って変なこと言ったかな。


  「ねえ、マロニーちゃん、確認したいことがあるんだけど、あなた、幼女でいたいの?」


  「はい、私がこの世界に来た理由は、幼女のまま、ある人に会うためなのです。」


  はい、カミングアウトしました。このことは、今、初めて皆に明かします。別に内緒にしていた訳ではないけど、少し、いや、かなり訳ありかな。


  「ねえ、聞いていい。それは何故。どうして幼女のまま、会わなければならないの。」


  「決まっているじゃあないですか。その人が幼女好きだからですよ。」


  「マロニーちゃん、確かゴロタ帝国領に行くって言っていたわよね。その幼女好きの人って、ゴロタ帝国領にいる人なの。」


  「はい、そう聞いております。冒険者になって、その人に会えとご主人様に言われております。」


  ソニーお嬢様が、頭を抱えている。皆も、私の顔をじっと見ていた。クララさんが咳ばらいをした後、


  「えー、マロニーちゃんは、十分幼女で通ると思います、この世界では小学校低学年位までが幼女かも知れませんが、マロニーちゃんは背も低いし、小顔だし、目も大きいし、胸もないし、十分幼女だと思います。」


  皆が、うんうん、頷いていた。胸が小さいのは、変身させられたからで、以前はそれなりにありましたから。AAAカップだったけど。ボニカちゃんが聞いてきた。


  「その幼女好きの男の人って、マロニーちゃんの何なの。彼氏さん?」


  「いえ、会ったことも無い人なんですけど、年齢はもうだいぶ大人だと思います。禿げてなければ良いんですが。」


  私もゴロタ皇帝のことは良く知らない。でも皇帝陛下なんですもの。それなりの年齢だと思うの。まあ、80歳の私にとっては、皆、年下だろうけど。でも、太っていて禿げている人は、ちょっと無理かな。でも、それを聞いたボニカちゃん、なぜか涙ぐみながら


  「ねえ、マロニーちゃん、逃げられないの?ここにずっといれば良いのに。」


  て言われた。あれ、私って同情されているの?


  「逃げるって、どうして。メイドだった私にとって、ご主人様のご命令は絶対なのです。」


  「でも、そのご主人様は今ここにはいないんでしょう?それなら言う事を聞く必要なんか無いと思うんだけど。」


  あれ?そうなのかな。でも、血の繋がりって絶対になかった事にはならないだろうし。


  「はい、私がどうしても嫌だったら断ることもできますが、兎に角ゴロタ帝国領に行ってお会いしてからのお話です。」


  まあ、他愛のない女子トークですから。それから、皆でサンドイッチを食べて、サンドイッチを作るときに切り取った、食パンの耳を油で揚げてお砂糖を掛けただけのラスクを食べて、最後に昨日作っておいたドーナッツを食べてとずっと食べ続けていた気がする。


  「ねえ、これみんなマロニーちゃんが作ったの。」


  「はい、料理とお菓子作りはメイドの嗜みですから。」


  「でもうちのルルは、こんなに作れないわよ。」


  「そうよ、うちのメイドなんか、料理はシェフに任せっきりで、食べる事専門よ。」


  なんか、各家のメイド批評が始まってしまった。


  「そう言えば、マロニーちゃんってメイドだって言うけど、メイド服着ていないわよね。」


  「ええ、東の荒野を渡る時、邪魔だったので捨ててしまいました。」


  「えー!捨てたの。じゃあ何を着ていたの?」


  「えーと、Tシャツに半ズボンでした。」


  「なんか男の子見たい。」


  「はい、皆に言われました。特にルルさんに。」


  ソニーお嬢様は、初めて会った時の私の服装を思い出していた様だ。


  午後は、裏で弓の練習をした。一人一人、マンツーマンで指導していたら、あっという間に夕方になってしまった。ハッキリ言って、子供用の弓は、実用性ゼロの玩具だった。20m先の的にキチンと当てるのは至難の業だ。でも、皆はそんな事を気にせず楽しく時を過ごせたので大満足だった様だ。まあ、皆は魔物狩りなんか縁がないだろうから、それでも良いんだろうけど。


  皆が帰った後、バーカス君がお屋敷に来た。本当は、お昼過ぎにも来たんだけど、女子がいっぱい居たので『おそれ』をなして出直して来たらしいのだ。特に用事はないのだが、今の剣術の師匠の指導状況を色々話してくれた。師匠は、ロブ家の騎士さんの中でも一番の健脚で、若い時は王都で就業して、王都の近衛騎士団にもいたそうだ。でも、両親がこの街にいるので、帰ってきたらしいのだ。それでロブ家で子爵家騎士として仕えている方だそうだ。この前、こちらに来た時にお話をしたが、顎髭を生やした渋めの騎士さんだった記憶がある。


  その騎士さんは、千本素振りも大事だが、正しい打ち込みをやる事がもっと大事だと教えてくれているそうだ。可能ならば、正しい打ち込みで千本素振りが出来ればいいが、本数に拘る必要はないとのことだった。うん、剣の道は深くて遠いね。

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