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第2部第195話 マロニーの冒険その13

(11月7日です。)

  朝5時、薄暗い内に裏庭に出る。弓の的がボンヤリとしか見えないが、夜目の効く私には関係ない。いつもの通りの練習をする。ボニカちゃんも朝練に参加すると言っていたが、まだ早いからと言って寝ていて貰った。て言うか、ボニカちゃん、夜中に私のベッドに入って来るのやめてくれない。まあ、暖かいから良いけど。


  練習後、簡単に汗を拭いたら、朝食のパンとチーズを持って、直ぐにお屋敷を出たの。向かうのは北の森。それも、北の森の奥にある川まで。普通、大人の足でも2日は掛かるらしいのだけど、別に川に用がある訳じゃない。その間の魔物を狩るだけだから。


  狙いは、ホーンベアとかファングタイガーかな。毛皮と牙が売れる奴が出れば良いな。走りながらパンとチーズを食べる。レディのすることじゃあ無いけど、まあ、メイドだし。森までの間は、何も出なかった。と言うか狼程度が出ても放っておくけど。それで、森の中に入ったら、息を整えながら、周囲の様子を伺う。ウサギが7匹、猪が1匹、後はいない。もう少し奥に入るか。


  20分位歩いたかしら。大きな獣いや魔物の気配がした。約300m先だ。気配を消して近づく。魔物特有の腐ったような嫌な匂いが強くなる。周囲を見渡す。あ、いた!木の上にブラックパンサーがいる。でも目が3つだし、かなりでかいし。魔物のデビルパンサーだ。この辺じゃレア個体か。ラッキー♪


  弓に矢をつがえておく。勿論、3連射用に予備2本も左手で持っている。せっかく目が3つあるんだから、全部の目を的にしようっと。でも流石にここからだと100m位あるので、全射命中は難しいかも知れない。もう一寸近づこう。気配を消しながら近づくと、枯れ葉を踏む音くらいなら聞こえないみたい。それに匂いも消して分からなくしているので、余程のことがなければ敵に先に気が付かれる事はない。


  標的から50m、もう外しようがない距離だ。弓を引き絞る。息を整え、射線を確認する。最初は真ん中の目だ。うまくいけば脳髄まで矢が到達する。ダメでも視力が潰れる。


  ゆっくり狙って矢を放つ。3連射だ。


    ヒュヒュヒュン!!!


  デビルパンサー、一瞬、樹上を飛び上がって、そのまま落下する。次は、丸太木刀の出番だ。一瞬で、落下地点に到達する。時間にして3秒かな。まだ絶命していないが、動けないようだ。丸太木刀を構えながら様子を見る。あ、死んだ。ご臨終です。目以外に全く損傷が無い。ヤッター。


  デビルパンサーの後ろ足を縛り、木に逆さ吊りにする。まず皮を剥ぐ。お腹の皮に切れ目を入れて、きれいに剥いでいく。次に大きな牙2本を抜いてとお。後、爪があるが、根元から抜くのも面倒だったので、足先を切断して回収する。最後に心臓付近を抉って魔石を回収して処理終了。楽ちん楽ちん。あ、ご遺体を地面に置いとかなくっちゃ、森の掃除屋さんに悪いわね。


  お昼近くになった。川が近いみたい。水の流れる音がする。ここまでお猿さんの魔物のファング・エイプが3匹出たんだけど、後はホーンラビットとか小物ばっかり。


    ガサッ、ガサッ!


  あ、いる。木をかき分けている。私は、風下の方に回り込む。大きな木が揺れている。かなりデカそう。距離は、200m位かな。弓に矢をつがえていつでも射てるように準備しておきながら接近する。見えた!何だろ、あれは?


  それは大きなカブトムシ?いや、クワガタ?


  クワガタのようなツノが上下2対、計4本ある甲虫だ。体の大きさは、本体だけで2m近くある。見るからに固そうだが、頭と胸の間を狙って矢を放つが、少しずれて硬い表皮に弾かれてしまった。これではダメだ。致命傷を与えられない。


  弓を空間収納にしまい、丸太木刀を取り出す。ツノとツノの間、眉間を叩くつもりだ。向こうもこちらに気が付いたようだ。ツノを下に向けて突進してくる。私は、直ぐそばの木の上に飛び上がり、直撃を避けたが甲虫はこの木に向かってぶつかって来た。ツノをうまく使って、鋏のように木を掴み引っこ抜こうとしている。私は、『身体強化』を掛け、思いっきりジャンプをして甲虫の頭の上に飛び降りる。体重は36キロと軽いけど、思いっきり体重をかけてツノの間をぶち叩いた。


  ベゴボッ!


  ツノの間が大きく凹んだけど、まだ動いてる。けど動きが鈍い。頭と胸の間に矢を差し込んでグリグリする。もう1本、傍に差し込んでグリグリ。3本目もグリグリ。ようやく動かなくなった。ああ、これどうしよう。取り敢えず、放っておいて昼食にしよう。チーズとクッキーを食べながら、この解体方法を検討する。こういう時、ショートソードが欲しいなあ。解体用のナイフしかないし。


  あっという間に昼食も終わったので、早速解体だ。まず刺さったままの3本の矢を抜く。ウエーッ!緑色の粘膜が付いている。矢は捨てようっと。次にナイフで、頭と胸の間に突き刺しグルリと回す。かなりグラグラしてきた。本当はひっくり返したいけど、何か虫の裏側って気持ち悪いのよね。『身体強化』を掛けてヨイショっと。あ、頭が取れかかってる。軽くナイフを回し切りにして分離成功。まず1個回収。


  次に、もう一度ひっくり返して外殻2枚をナイフで切り取る。中の柔らかい翅も切り取っておく。胸と足は要らないかな。気色悪いし。胴体を切り取る時、色々溢れそうだし。最後に、もう一度ひっくり返して胸の中心部、つまり足の付け根辺りをグリグリして魔石を探す。カチっ!あ、有った。ゴリゴリ取り出して回収終了。川まで降りて、腕やナイフをよく洗う。もう虫はいいや。次はパスしようっと。


  川のほとりでのんびりしていたら、あれ、なんかいる。大きな魚だ。でも釣竿もないし。弓で狙っても良いんだけど、川の中に入って回収するのも嫌だし。そう思って見ていたら、そいつ首だけ出して来たの。見た感じナマズの頭みたいだけど、じっとこっちを見ている。とっても嫌な気がしたので、ジリジリ後退りしたんだけど、そいつ、口をパカッと開けて水を吐き出してきた。それも物凄い勢いで。私、咄嗟に避けたんだけど、直撃を受けた後ろの木が弾け飛んでいた。凄い威力。どうしよう。戦おうかな。取り敢えず、相手から目を離さずに弓を取り出す。矢をつがえておく。さっき3本捨てたから、矢筒には7本しか残っていなかった。戦況的に不利なので、さらに下がろうとした時、そいつは大きくジャンプして河原に上がってきた。あれ足?ヒレのような足が6本ある。こいつ魚じゃない。魔物だ。


  地上でビタンビタンしている今がチャンス。弓で3連射、狙いは全部。どこに当たってもいいや。残りの矢も全部射つ。それでもビタンビタン。最後は、丸太木刀で頭頂部をガツンと横払いで打突する。以前、大きな魚の場合、頭を殴ってトドメを刺すって何かの本で読んだ記憶がある。やっとご臨終になったナマズモドキ水竜を見て、またまた解体方法を検討する。表皮をピタピタ叩いてみると、ウロコではなく粒々の皮だ。これって、今修理に出しているショートソードの鞘なんかに撒かれてるやつだ。ナイフじゃあ、中々切れない。よく矢が刺さったわね。


  今の装備じゃ解体は無理みたい。試しに空間収納に入るか試してみる。『身体強化』を掛けて、こいつを持ち上げて、ズリッ、ズリッ。空間収納の穴に入れ始めた。あれ結構入るわ。ズリッ、ズリッ。もう少し。ズリッ、ズリッ。あ、入っちゃった。あれ、でも、これって結構魔力使うみたい。何か倦怠感みたいな、体調が悪くなった気がする。


  さあ、じゃあ早く帰ろう。『身体強化』をMAX掛けて街を目指します。森を駆け抜ける事3時間、北の城門に到着です。街に入ると真っ直ぐ素材屋さんと思ったけど、その前にリッカーさんの所へ行く。素材で欲しい物が有れば、直接取引の方が売値が良いもんね。


  「こんにちわ。リッカーさん、います?」


  「これ、必要な素材ありますか?」


  取り敢えず、さっきのナマズモドキの頭だけを空間収納から出して見せてあげる。何もない空間から、頭だけが浮かんでるのって結構ホラー。


  「何だ、こりゃ。ドスガガスじゃあねえか。しかも一頭まんまかい。嬢ちゃん、これで幾らするか知ってんのかい?」


  「知らなーい。」


  「うーん、俺も欲しいが、こんなには要らねえし。解体の手間を考えたら、素材屋に持って行ったほうがいいぞ。」


  「有難う。じゃあ、そうする。じゃあ、これは?」


  4本クワガタのツノを見せる。これは空間収納から全部出した。


  「おいおい、ジャイアント・アイアンビートルかい?このツノでいい武器が作れるんだ。本当は全部欲しいが、手持ちがねえし、2本だけ売ってくんねえか。金貨50枚出そう。」


  ツノ四本付きの頭を譲ることにした。代金は、作った武器の売上から4割貰う事にしたんだけど、それでも素材屋さんに売る値段の倍近いんだって。良かった。


  それから素材屋さんの所に行き、店の裏に今日の戦利品を並べる。パンサーやエイプの時は、ニコニコ笑っていたが、クワガタの外殻や内翅、そしてドスガガス丸ごと1頭を出すと顔が引き攣っていた。クワガタの外殻やドスガガスはオークションに出すので今日は値が付けられないって言ってきた。ならしょうがない。今日売れる素材と魔石だけで金貨12枚になった。うん、目標までもうちょっとね。


  領主館に帰る前に、もう一度リッカーさんのお店に寄ることにした。解体用の長いナイフが欲しいのだ。なるべく手を汚したくないので、水竜くらいは、簡単に切断出来るくらいの長さのものが。


  リッカーさんは、そんなナイフはないと言って、1本のロングソードを出してくれた。あれ、鞘、そってませんか。それに柄も高級そうだし。鞘から抜くと、片刃の剣なのだが、明らかに峰の方に沿っている。それに刃体に波型の模様がずっと入っているし。何となく刃そのものが赤みがかっているわ。


  「これは剣としてはお嬢ちゃんには長すぎるし、それに使いこなすのにはコツが要る。この世界のものじゃあ無いらしいのだが、入手経路は不明だ。銘はコテツ、あの馬鹿な弟子のコテツと同じ名なのが気に食わねえがよく切れるのは間違いねえ。よかったら、あのクワガタのツノと交換って事でいいぜ。」


  もう、直ぐ貰うことにした。切れなくたってこれだけ綺麗なんだもん。見てるだけで幸せになるわね。

最近、コンスタントに投稿できています。

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