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第2部第170話 第二次神魔戦争その1

(9月7日です。)

  結局、今日までゴーレシア王国に滞在して、王城作りの手伝いをすることになった。ハイ・ボラード市の内装職人と家具職人、建具職人などを招聘したり、ローズウッドやマホガニーなどの高級建材はゴロタ帝国から資材と職人を派遣して貰った。


  ミネフトリーネ王子の息子ラザニア君は、現在10歳だが学校には入っていない。家庭教師もいないために、母親から読み書きを習っている程度だそうだ。母親のメフィロさんは山エルフ族の王女で、またミネフトリーネ王子にもエルフの血が入っているので、ラザニア君は、一見するとゴブリンの血が混じっているかどうか分からないくらいだ。皮膚の色にしても、ゴブリン特有の緑色と言うよりも、青白い肌色という感じなので種族特性がほとんど無い状態だ。娘さんのマルリちゃんも、ゴブリンだとは誰も思わないだろう。もうエルフそのものだ。シェルも、『この子達は私の郷にいても誰もゴブリン種の血が混じっているなど思わないだろう。』と言っているので、逆に、このゴブリン族の国で暮らしていけるのか心配なくらいだ。


  そして、今日、二人の留学準備が完了したので、ゴロタ帝国に転移する事にした。王城前の広場に、ゲートを開き、皆で『白龍城』に転移した。転移先は、城内の転移部屋だ。転移部屋と言っても広間と間違える程の大きさだし、応接セットがいくつも置かれていて、ホテルのロビーのような雰囲気だ。


  取り敢えず、リトちゃんは、自分の部屋に戻って幼稚園へいく準備をしてもらう。もう1週間もサボっていたんだから、今日は、これから登園して貰う。ラザニア君達の部屋は、3階奥の客間にしたが、客間と言っても3LDKになっているので、親子3人、不自由はしないだろう。お付きのメイドも1名の人間族と2体のアンドロイド・メイドを付けたので、日常生活には不自由しないはずだ。


  落ち着いたら、白龍城の隣の迎賓館『チューダ宮殿』に引っ越して貰う予定だ。白龍城では他の皇族や行政官の出入りが多く、学校への通学も不便なので、迎賓館の方が暮らしやすいだろう。子供達の進学先には、いくつかの候補を奥様に提示しておいた。まず、帝国セント・ゴロタ大学附属初等部への入学が第一候補だ。次は、やはり帝立だがタイタン大学附属小学校への進学だ。ここは自然環境が豊かで、子供を伸び伸び育てるには環境が良いだろう。最後は、グレーテル王国の王都にある王立魔法学院附属学校初等部だ。ここは、小学生の場合、魔法適性が無くても入学できるが、中等部からは魔法学校、騎士学校、商業学校とその子の適性に応じて進学先が分かれて行く制度となっている。ノエルとビラは魔法学校、シズは騎士学校に進学していた。


  今日は、3人の歓迎会をする事にして、それまで部屋付きメイドに場内を案内させる事にした。シェルは、マリアちゃんの部屋に行って、アンドロイドのクレスタと共に何やら話し込んでいる。マリアちゃんは、素直で良い子なのだが、少し常識のない困ったちゃんのところがあるので、シェルもきめ細かく様子を見ているようだ。


  午後、メフィロさん一家は、これからの暮らしに必要な衣服や調度品を買いに行く事になった。必要な経費は、皇室の内廷費から拠出する事になっているが、将来的には、ゴーレシア王国内の鉱物資源の利権獲得が見込まれるので、安い投資と言うわけだ。


  メフィロさんは、帝都の女性達の着ているミニスカを見て驚いていたが、勿論自分でも着てみたいと思っていた。今日の買い物でも何着か買うつもりだ。ゴーレシア王国の森の中では、山蚕蛾の繭から紡いだ絹織物と、麻茎から漉いたゴワゴワの麻衣位しか無く、デザインも頭から被る簡易な服しか無かった。この国では、絹や麻以外にも木綿や人工繊維など豊富な素材を色々と使った服が多く、またデザインも斬新でカラフルなものばかりだ。


  子供服にしても、他所行きの畏まったものから、普段使いの丈夫なものまで種類が多いが、基本的なコンセプトは『可愛い』である。さすがに文化程度も高く裕福な国だけあって、ゴーレシア王国では考えられない状況だった。メフィロさんは、子供服専門店に入ると、時間を忘れて品定めをしてしまった。子供たちは、最初のうちは着せ替え人形に甘んじていたが、そのうち飽きてしまって店内を駆け巡っていたので、試着しようとしている服をもって子供たちを追いかける始末だった。その後、スイーツ屋さんで子供たちに甘い物を食べさせてから白龍城に戻って行った。


  次の日、メフィロさんは、シェルの案内で帝国セント・ゴロタ大学付属学校初等部を訪問した。現皇后陛下の来訪と言うことで、校長先生以下教職員は緊張しまくっていた。校長先生は、ゼロス協会のマザーであるが、生きとし生ける者は死の前においては全て平等であるという教義のを尊び、ゴブリン族であっても学びを求める者に対しての偏見など持っていなかった。落ち着いた雰囲気の教職員と、1クラス20人の少人数でのきめ細かな教育方針、それと教育のためのあらゆる設備が整っている学校をみて、メフィロさんは一目で気に入ったようだ。早速、編入手続きをして、ラザニア君は小学4年のクラスに、マルリちゃんは小学1年のクラスに入ることになった。二人とも、ゴブリン族の標準語である古代魔人語を話しているが、ティタン大魔王国の標準語であるグレーテル語、かれらは魔人語と言っているが、それはほとんど話せないので、当分の間は、首に翻訳魔道具をつけていなければならないだろう。しかし、子供らしい柔軟な脳をもっているので、シルフから睡眠学習プログラムを受ければ、半年も経たずに日常会話に不自由することはなくなるだろう。


  ゴーレシア王城が完成すれば、城内に転移部屋を設けて、そことメフィロさん達が起居するチューダ宮殿にゲートで結んであげようかとも考えているが、もう少し時間が必要であろう。キティちゃんは、ラザニア君と同い年というか学年では同い年なのだが、キティちゃんは飛び級で小学6年であり、全校委員会の委員長をやっている。しばらくはラザニア君とマルリちゃんの面倒を見て貰おうと思ったのだが、マルリちゃんはすぐに仲良くなったが、ラザニア君が恥ずかしがって話しかけられないようだ。キティちゃんの前に行くと、顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。僕が少年時代だったころを思い出すようだが、メイドさんとか他の大人達には普通に話しかけているところを見ると、同い年の女の子に免疫がないのかもしれない。母親のメフィロさんや、メイドさん達が生暖かい目で見守っているようだけれど、そんなことなど気が付かないマルリちゃんが、爆弾発言する。


  「キティお姉ちゃんって、可愛らしいから、ラザニアお兄ちゃんのお嫁さんになればいいのに。」


  これを聞いたラザニア君は、顔を真っ赤にして大汗をかいて否定しているが、キティちゃんは平気なようだ。


  「マルリちゃん、私はね、ゴロタ陛下位強い人でなければお嫁さんにならないの。お兄ちゃんも頑張って強くしようね。」


  うん、今のところ、ラザニア君には目がないのかも知れないね。


  ボラード統治領のインフラ整備とゴーレシア王国の再建についてバンブー・セントラル建設のバンブーさんと打ち合わせをしたところ、北アメリア大陸の石油プラント建設が軌道に乗っていて、工業団地も着々と稼働する工場もできてきているそうなので、新世界へ、もっと力を注ぐことができるそうだ。また、ハイ・ボラード市をはじめとする領内各市町村に建設する予定の学校と病院及び孤児院について、建設国債を発行して低利での投資を募ることになった。細かなことは、現地のクラウディアと打ち合わせして貰うとして、異世界との往復のために専用の転移門が必要だそうだ。バンブーさんだけでなく、ドエス商事も、異世界との交易を一手に引き受けたいと言ってきたので、近いうちに国内の有力企業を募って、訪問団を結成しなければならないだろう。


  タイタン鉄道会社の社長であるマルタン男爵が白龍城を訪ねてきた。アメリア大陸とボラード統治領に鉄道建設をしたいそうだ。現在、ゴロタ帝国内の鉄道事業を一手に引き受けており、モンド王国との鉄道も軌道に乗ってきているそうだ。これからは、アメリア大陸では、都市間の距離が長いため、鉄路よりも航空機の需要が高くなるものと認められることから、異世界のボラード統治領に鉄道を敷設してみたいとのことだった。ハイ・ボラード市をハブとしてきたのゴーレシア王国や北西のブレバタ市とつなげるのは、平野部が広がっているので、早期完成が見込まれるらしいのだ。うん、これなら国費の投資が宰相に済むかも知れないので、調査のための技師の派遣をお願いした。


  ドエス商事の社長、ドエスさんから新たな相談があった。異世界での風俗営業の実態を調査したいそうだ。最終的には、健全な風俗営業を開業したいそうだ。健全な風俗営業って、どんなことをするのか知らないが、人間族や亜人族を異世界に送り込み、夜の営業をしたいらしいのだ。まあ、需要があれば特に問題ないけれど、昨日まで奴隷並みの生活をしていた魔人族にそんな余裕があるとも思えないし、グールやレブナント達には、そもそも、そのような欲望があるのかも不明だ。まあ、調査するだけなら、特に支障がないので、今度の商談訪問団に交じって、調査員を送り込むことに同意した。まあ、ドエス商事は、現在は風俗営業も行う国内最大の商事会社であり、信用もあることから、任せても大丈夫だろう。


  シルフから、ボラード統治領の名称及び各都市の名称を変更するようにとの意見具申があった。現在の都市名は、爆殺されたボラード侯爵にちなんで付けられたものであり、ゴロタ帝国の統治領としてはふさわしくないと言われたのだ。しかし、僕自身、なにも考えていなかったので任せることにしたら、本来のティタン大魔王国の名を復活させたらどうかと提言された。


  『ティタン大魔王国神聖ゴロタ帝国統治領』


  と称するそうだ。東の、ティタン大魔王国と被らないかと思ったが、特に問題はなく、今後はティタン統治領でいいのではないかとのことだった。帝国の飛び地であるタイタン州と紛らわしいのだが、タイタン州を以前のエクレアと名称変更すれば間違えることはないそうだ。なるほど、それなら良いだろう。都市の名前は、ハイ・ボラード市はシェルナブール市、ブレバタ市をエーデルワイス市と市名変更をすることとなった。また、通貨を変更し、現行の帝国通貨制度をそのまま適用させるそうだ。


  それらのことは、今すぐにはできないだろうし、準備期間も必要だろうと思ったが、既に、ハイ・ボラード市とブレバタ市の有力商人達には根回しは済んでいるそうだ。また、神聖ゴロタ帝国の国債も、大量に購入希望が寄せられているそうだ。シルフのやることだから、常に、損はしないように考えられていますね。

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