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第2部第122話 東海岸を目指します。その1

(2月1日です。)

  僕とシェルそれとセレンとシルフは、ウサ王国の東の山を越えて、遠い海岸線を目指している。南北戦争が終わって、リトちゃんを白龍城に戻した時、セレンちゃんが、今度は自分が行くと言って大泣きをしたので、仕方がなく連れて来たのだ。


  この大陸は、西海岸から東海岸まで直線距離で4300キロもあるので、徒歩では2年近くかかってしまう。馬車では1日に80キロ進んだとして2か月近くかかるだろう。しかし、東西を結ぶ街道は、10本近くあり、街や村を飛び石のように立ち寄って行くとすると、更に距離が延びるので3カ月以上かかってしまうだろう。


  ジェット戦闘機で飛行すれば、3時間程度で横断できるだろうが、それでは国内の問題を解決できないだろう。中央部から東海岸までは、砂漠や森林それに山岳地帯が続いており、人間族が暮らしているかどうかも分からない。至る所に魔物が跋扈しており、そこで暮らしている者達がどんな暮らしをしているのだろうか。僕は、旅に向けて、緑色の地トカゲ2頭と馬車いや竜車を用意した。竜車は、キャビンが4人乗りで、御者台に2人が乗車するようになっている、


  ウサ王国の東の国境の山を越えると、そこは乾燥した大地だった。山から吹き下ろしてくる乾燥した季節風は、大地にわずかに残った水分を完全に蒸発させてしまう。遠い東の彼方に雪を被った山が見える。とりあえず、あの山を目指そう。シェルは、僕の隣でウトウトしている。シルフとセレンは、キャビンの中だ。道なき道ではあるが、平坦な道を時速20キロ位で進んでいると、眠くならない方がおかしい。僕は、シェルが業者台から転落しないように片腕でシェルの肩を支えながら竜車を走らせていた。セレンも御者台に乗りたがったが、シェルの気が向いたときにだけ、少しだけ交代しているようだ。竜車を引いている地トカゲは、1日に1度、生肉を食べるだけでいいみたいだ。ドラゴニュート達は、干し肉を与えていたそうだが、地トカゲが本当に好きなのは生肉なのだそうだ。水分も余り飲まない。汗をかかないので、それほど必要とはしないのだろう。


  夕方は、いつもの通り、キャンプセットとお風呂を準備してから食事を作り始めることにしている。シェルとセレンがお風呂に入っている間に、食事の準備をしておくのだ。たまに一緒に入って、お互いの背中を流し合うのだが、相変わらずシェルの胸は平らだった。絶対にセレンの方が胸がありそうだが、最近シェルは、全く気にしなくなったのかパッドもしなくなっている。ハイエルフは300年以上の寿命があり、30歳位で成人の身体になるそうなので、きっと30歳近くなってから胸が膨らんでくるのだろう。しかし、シェルの母親を見ても、ボリュームのある胸ではなかったので、遺伝も関係しているのかも知れない。セレンは、推定年齢200歳以上なので、これ以上発育することは無いだろう。


  砂漠地帯では、人間や亜人の集落は無く、砂にはサンドウオーム、いわばにはロックゴーレムが潜んでいて、僕達に襲い掛かってきた。サンドウオームは、シェルの『ヘラクレイスの弓』の餌食だった。僕が何らかの魔法で殲滅しても良かったのだが、シェルも退屈しきっていたので、対応させることにした。ロックゴーレムは、岩陰に潜んでいて、獲物が通り過ぎようとすると、丘の陰から岩を落としてくる。待ち伏せしている所に接近するだけで、敵の存在に気が付いた僕は、あらかじめ、シールドを張っていたし、崖を転がり落ちてくる岩を、『指鉄砲』で粉砕しているので、全く竜車や地トカゲには被害がなかった。東に見えていた山の傍まで行くと、かなり大きな川が横切っていた。その手前には、小さな集落があった。集落も小さいが、建ち並んでいるのも家屋ではなくテントだった。何かの動物の皮を張っているテントで、僕達の馬車を見つけて、何人かの獣人達が集落の入口に立っていた。みな、弓矢を構えており、僕達に警戒をしているようだ。


  弓矢を構えている獣人は、犬人のようで、あまり身体は大きくはないが、それでも身長は170センチ以上はありそうだ。頭には、皮紐を巻いており、大きなコンドルの羽を1本から3本位さしていた。上半身は、毛皮を纏っており、下半身は細長い皮を何重にも巻いていて、大切なところを隠していた。足も皮をサンダルのように巻いている。顔と体の前面には、大きな入れ墨をしているが、刺青の図柄が何を表しているのか謎だった。


  僕とシェルは、馬車から降り、アメリア語で話しかけた。


  「僕はゴロタ、東の海まで行く途中です。この村は何と言う村ですか?」


  「この村、『キーモ・サビー』だ。儂は、酋長のトントンだ。」


  頭に沢山のコンドルの羽を付けている男が挨拶をしてきた。この村をパッと見た感じ、ホテルや旅館があるようにも見えないし、また、お風呂もなさそうなので、今日の宿をここにする必要もないのだが、取り敢えず、村の外れに泊まることにした。


  「酋長さん、僕達、この村の外れで宿泊したいのですが、許可をして貰えますか。」


  「よそ者、村の中に泊めない。村の外、泊める。」


  僕は、酋長さんの言いつけ通り、村の中を横切って、東に抜け、50m位離れたところで野営することにした。いつもの通り、野営セットをしていると、さっきの酋長が若い衆3人程を引き連れて来た。酋長は、長い槍を持っている。槍の穂先は、石をとがらせたものだ。まあ、製鉄技術はなさそうだ。槍は長さが3mもあるのではないだろうか。穂先の近くに、色々な色の羽や毛皮を結び付けている。どうやら、この槍が酋長の象徴らしいのだ。酋長は、僕達のキャンプセットを興味深そうに見ていた。僕が貼ったテントは、防水性のあるゴアテック素材だし、骨組みも軽量なアルミパイプ製だ。それに簡易竈門も、最近ではコンロが3つにオーブンが1つ、それに洗い場シンクと水道セットが付いているものだ。水道は、異次元空間に貯水している所からポンプで繋いでいる。彼らは、基本的に住むところを決めておらず、野牛や水牛の群れを追って移動しながら暮らしているそうだ。大きな群れなら、幾つかの集落が集まるのだが、冬場は少ないので、群れを見つけると争いになることも多いらしいのだ。酋長が、僕に話しかけて来た。


  「今日、魔物、襲ってくる。男達、寝ないで警戒。ここも危ない。」


  魔物の襲来が分かるらしい。でも、この辺の魔物ってストーン・ゴーレム位の筈だが。そう思っていたら、どうやらストーン・ドラゴンという魔物らしいのだ。ドラゴンという名前がついているが、地トカゲを大きくしたものらしい。森のように豊富な食料がある訳ではないので、地トカゲなどは、肉なら何でもたべるのだろう。特に人間種は、肉質も柔らかいので、良い獲物にされているのかも知れない。犬人種たちの武器は、黒曜石の穂先がついた槍と、弓矢だ。矢は硬い樫の木の枝を削ったものだった。こんな武器でストーン系の魔物と戦うなど、絶対に敵う訳が無かった。せめてハンマーや斧などの打撃系の武器なら何とかなるかもしれない。


  彼らのうち、何人かは小さなナイフを腰に差していた。きっと旅人等から譲って貰ったのだろう。こんな小さなナイフ1本に、彼らは幾らの対価を支払ったのだろうか。僕は、イフクロークの中からバトルアックス10本とミスリルの鏃の付いた弓矢を10セット、それにミスリルの穂先が付いた槍を10本出してあげた。見張りの1人が、走って集落のテントの方に走って行った。暫くすると、酋長が出て来た。一人の娘を連れている。


  「偉大な旅人、私達に武器くれた。旅人、友達。これ、お礼。」


 え、お礼。酋長は、連れて来た娘を差し出した。いや、どう見ても7~8歳位でしょう。娘は、僕をちらっと見て顔を真っ赤にしている。僕は、丁寧にお断りした。詳しく話を聞くと、この娘さん、酋長の孫娘らしく、今日、生贄になる予定だそうだ。村には、この娘が最後の娘らしいのだ。あとは、生贄にならない赤ん坊が3人いるだけだそうだ。赤ん坊は、小さすぎて生贄にならないとの事だった。シェルが、僕を見ている。どうして僕の周りには女の子が集まってくるのだろう。しかも、殆どが少女か幼女だ。まあ、最近の僕は、きちんと断ることが出来るようになってきたので、以前のようにぞろぞろと女の子を連れて旅をするようなことはないけど。


  翌日の未明、部落に迫ってくる足音が聞こえた。それも、どうやら2体のようだ。村の青年達11人が、それぞれ武器を持って待ち構えていた。老人や、女性及びさっきの娘さんは僕が張ったシールドの中だ。勿論、セレンもその中だった。こちらの武器は、ハンマーアックスが10本とミスリルの弓矢が1セットだ。槍については、きっと役に立たないだろうから、今回は使用しない予定だ。僕は、特に何も準備をせずにいた。シルフが、長さ76センチの『SMAWロケットランチャー』を準備している。腰には『MP5』をぶら下げていた。シェルは、いつもの『ヘラクレイスの弓』だ。


  近くの岩の陰からストーン・ドラゴンが現れた。大きさは10m以上ある。地トカゲよりも格段に大きい。翼が無い所を見ると、飛ぶことは無いだろう。また、口から毒や炎を履くこともなさそうだ。やはり、ドラゴンというよりも大型のトカゲだ。トカゲが2体、四本の足でゆっくりと歩いている。トカゲは、普通に歩いているのだが、あまりの重さに足先が地面に埋もれてしまった、いかにも歩きにくそうだ。そのため、動きが極めて遅い。村の若者が、1本の矢を放った。弓を一杯に引き絞った力のこもった矢だ。


  『ズボッ!』


  矢が、トカゲの片目に突き刺さった。ミスリルの鏃だ。絶対的な硬度は、その辺の石ころなど比較にならないほど硬い。矢を射った本人が、その威力に吃驚したようだ。石でも痛さは感じるのだろう。トカゲが、首を振って目に刺さった矢を振りほどこうとしているが、深くささった矢が抜ける訳無かった。シェルが、『ヘラクレイスの弓』で、残りのトカゲの目を全て射抜いてしまった。物凄い威力だ。赤く光る矢は、そのままトカゲの後頭部から抜けて行ってしまった。その時、シルフのロケットランチャーが火を吹いた。トカゲの後ろ脚に命中だ。片足を吹き飛ばされたトカゲは、その場で『ズズーン!』と転倒してしまった。もう1体のトカゲが、それを見て、ゆっくりと頭を来たほうに向ける。逃げる気なのだろう。シルフが、ロケットランチャーの後部にロケットの入ったチューブを再装填し、すかさず発射した。命中だ。もう1体もその場に倒れ込んでしまった。ハンマーアックスを持った村人たちがダッシュでトカゲに群がって行く。ハンマー状の斧で、トカゲの身体を削って行く。


    ドガン!ドガン!ドガン! ドガン!ドガン!ドガン! ドガン!ドガン!ドガン! ドガン!ドガン!ドガン! ドガン!ドガン!ドガン!


  もう、土木工事かビルの解体工事のようだ。胸の奥の魔石が見えて来た。僕は、皆の攻撃を一旦中止させた。僕は、息も絶え絶えのトカゲの傍に寄って、ミスリルのナイフを魔石に当てる。力を少しだけ込めると、石のようなトカゲの筋肉がすっと切れていく。赤くて大きな魔石を2体から回収した。1個は、酋長に渡し、もう1個は武器の報酬として貰っておいた。


  それからは、朝だと言うのに祝宴だ。サボテンの実から作ったお酒がだされたが、あまり美味しくはなかった。でも、シェルがしこたま飲んで、完全に酔いつぶれてしまっている。あのう、どうして、僕の横に、あの女の子がピッタリくっ付いているんですか?セレンちゃんが、顔を真っ赤にして女の子を引き剥がそうとしていた。

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