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第2部第113話 2031年を迎えます。

(2031年1月1日です。)

  今日は、元旦だ。日付変更線と言うものがグレーテル大陸とアメリア大陸の間のパンゲア大洋の中間に設定してあるので、アメリア大陸の方が早く元旦を迎えるらしいのだ。そのため、元旦の皇室行事は、南アメリア統治領から始まることになる。離宮前広場には、朝から大勢の人が待ち受けていた。このひ、3階のベランダには、僕の他に妻達全員が整列している。参賀者は、ざっと3万人くらいだろうか。


  僕を中心に、右にシェル、左にエーデル、それから交互にノエル、ビラ、シズ、フミ、ジェーンとならんで最後に妻ではないがフランちゃんが並んでいる。みな、豪華なドレスとティアラ、ネックレスを付けている。僕は、いつもの王冠を被り、王杓を手に持って、真っ赤なガウンを羽織っている。この季節では、暑いが、シールドと冷却魔法で汗をかくことは無かった。シルフが用意した音響装置を通じて、集まった人たちに挨拶をする。


  「国民の皆さん、新年、あけましておめでとうございます。昨年、インカン王からこの国を譲り受けて以来、私たちは,皆さんと広く接することを願ってきました。新しい年を迎え、皆さんと直接お会いできる日を心待ちにしていました。そして、今年が、皆さんにとって、希望を持って歩んでいくことのできる年になることを心から願います。ここに、我が国と世界の人々の安寧と幸せ、そして平和を祈ります。」


  まあ、これ位は、原稿さえあれば、スムーズに言う事が出来た。それから施政方針について話すのだが、これは昨日、レコードに録音していた物を流しているので、僕は口パクをしているだけだ。要点は、いくつかあるが、


  1.奴隷制度は絶対に認めない。奴隷と言う存在を否定します。

  2.飢餓により、争いが起こらないよう、十分な食料を準備します。

  3.今年は、税金を徴収しません。今年の収穫、収入は皆様の幸福のために使ってください。

  4.わが国には聖女がいます。神と子と精霊の名のもとに、聖女を敬い、慈しみましょう。


  以上で終わりだ。最後の項目は、シェルがぜひ入れてくれと言ってきた。これで、テレーズさんは公認の聖女になったことになる。教会の方には、聖女に関する申し込みが殺到しているそうだ。聖女の来ているワンピースを複製させてくれとか、聖女饅頭、聖女煎餅、聖女ケーキに聖女チョコ、はては聖女に似せた銀色のカツラと眼鏡セットまであるようだ。すべて、売り上げの2割を版権として納入することにより独占販売権を得られる契約にしているそうだ。どう考えてもあくどいと思うのですけど。


  新年の離宮参賀が終ったら、閣僚達との昼食会だ。この場で妻達を紹介したが、閣僚達は目が点になっていた。第2夫人から第7夫人まで皆、超絶美女ばかりだからだ。あと、フランちゃんに注目が集まっている。紫色の髪の小柄な女性だが、異教徒ではあるが元大司教だったという事が広まっているらしいのだ。この前の『異端審問』が、噂になっているらしいのだ。まあ、それでなくても幼女顔の小柄なフランちゃん、僕の元婚約者という立場だが、やはり目立つのだろう。


  妻たちの紹介のあと、各閣僚が自己紹介をしたが、皆、非常に緊張していた。フミさんとジェーン以外は、全て国家殲滅級の冒険者だと言う事も知れ渡っているようだ。この閣僚達は、定期的にゴロタ帝国本国の閣僚と情報交換をしているので、色々な情報を得ているのだろう。会食が終ったら、今度は、ゴロタ帝国本国の白龍城に転移するのだが、その前に、大聖堂の様子を見に行くことにした。大聖堂の前は、広い前庭になっているのだが、そこが人の列で埋め尽くされている。どうしたのかと思ったら、『聖女祈祷済み』のグッズを買うための列らしいのだ。護符が5000ギル、クルス小が10000ギル、クルス大が30000ギル、クルス像が50000ギルと言う信じられない値段が付けられている。それに、何故か饅頭や煎餅、クッキーを売っている屋台が沢山並んでいた。もう、元旦のミサはとっくに終わったと言うのに、この大盛況、本当にこの国の人達は信心深いようだ。


  そっと、大聖堂の中に潜り込んでみると、もう、中も大変な騒ぎだった。ミラノ聖機卿たちも汗だくでグッズを売っているし、個別祈祷申込所にも長い行列ができていた。今後、日曜日に限って、ミサの後、若干名のみ祈祷をするそうだ。祈祷料は10万ギル以上となっているが、金額によってご利益が変わる訳ないのに、最高200万ギルで申し込んだ者もいるそうだ。


  この調子なら、教団の借金などあっという間に返済できそうだ。テレーズさん、ミラノさん、頑張ってください。







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  南アメリア統治領時間の午後5時に白龍城に転移したが、白龍城は、まだ午前3時だった。僕とシェルは、少し眠ることにしたが、僕達が帰ってきたことを聞きつけたセレンちゃんが、眠そうな目で僕の部屋に入ってきた。そのまま、僕のベッドにはいってきたので、しょうがない。3人で並んで眠ることにした。3時間位ウトウトしていたら、セレンちゃんが起きだしてトイレに行った。シェルは、いつもの通り、ぐずぐず寝ているので、構わずに僕だけお風呂に入ることにした。ゆっくり湯船に入っていると、セレンちゃんが入ってきた。セレンちゃんは、もともと人魚から人間の女性の姿に変身しているので、上半身は女性のようだが、下半身は何も無かった。排せつはどうするのか分からないが、セレンちゃんが言うには、なんとなく出てくるそうだ。どこから出てくるかは分からないそうだ。うん、さすが魔物だけあって謎だらけだ。


  シェルは、僕がセレンちゃんと一緒にお風呂に入ることに抵抗を感じていたが、セレンちゃんが女性ではないと言う事が分かってからは何も言わなくなった。ただ、セレンちゃんが僕の下半身を洗うのだけは許さなかった。それは自分の仕事だと言う事らしい。お風呂から上がって、部屋着に着替え、階下に降りて行ったら、もう、マリアちゃんは起きて遊んでいた。クレスタは、マリアには内緒だが、アンドロイドなので、全く眠らなくても良いらしいのだ。


  そう言えば、僕が白龍城を留守にしているときは、僕そっくりのアンドロイドが代行しているのだが、セレンちゃんは、魔物特有の認知能力で、人間ではないことが分かるらしく、僕そっくりのアンドロイドにはベタベタしないそうだ。魔物の能力、怖るべしだ。


  新年の朝食会が始まった。朝食の前に、お帰りのキスが始まる。でも、ほんの半日前に南アメリア離宮で別れたばかりなのに、これだけは別らしいのだ。元婚約者たちにはほっぺにチュッとハグだけだが、ジェリーちゃん達はとても不満そうだ。でも、もう婚約者ではないので、キスをするわけにはいかない。そこは、キチンと分けて考えなければいけないのだ。


  朝食後は、白龍城の2階ベランダに出る。白龍城は、高い階段を上がって1階の大広間や謁見の間に入るようになっているので、ベランダは実質3階にあるのだが、便宜上2階と呼んでいる。ベランダに並ぶのは、僕とマリアちゃん、それに妻達だけだ。マリアちゃんは、クレスタに抱っこされている。僕の服装は、南アメリア離宮での参賀式と同じだが、妻達は、違うドレスに着替えていた。あのう、そのティアラと首のネックレス、南アメリア離宮の時と違うのではないでしょうか。そう思ったが、シェルに『男は細かい事は気にしないの!』って、思いっきり後頭部を叩かれたので、涙目になりながら黙っていることにした。僕が思っていることは、シェルには念話で筒抜けなので、絶対に悪口など思ってはいけないのだ。



  白龍城前広場には、10万人位はいるようだ。僕の挨拶の前に、フランちゃんが、ここにいる人達の幸せを祈っている。広場の皆も、膝ま付き、手を合わせて祈り始めた。フランちゃんが、金色に光り始めた。その金色の光が広場に集まっている人々に降り注いでいく。フランちゃんのユニークスキル『祝福』の光だ。このスキルの効果はよく分かっていないようだ。神の祝福が目に見える形で現れないので、効果があったかどうか分からないのだ。ただ、最悪の運命は最悪から、運が悪い程度に軽減されるし、並の運命の人は、ほんのちょっぴりだけ幸せを感じる時があるそうだ。幸せの運命を辿っている人に対しては、より幸せに、そうでない人はそれなりに幸福度が増すらしいが、感じ方には個人差があるようだ。


  次は、僕の新年の挨拶だ。南アメリア統治領で行った挨拶と代わり映えしない挨拶をして終了だ。さあ、これからお待ちかね『TIT48』のステージだ。


  ブリちゃんら元婚約者達達の歌と踊りのステージだ。地上からも見えるように、前の柵が下がっていく。でも、皆、あんなミニを履いて踊っているのを下から見たら、絶対にパンツが見えちゃうと思うんですけど。


  TIT48のステージの次は、ミキさんの独唱だ。ピアノの伴奏はドミノちゃんだった。クラシックから2曲を歌い、最後は神聖ゴロタ帝国の国歌だ。題名は『紅き剣と蒼き盾』だ。作詞・作曲はシルフとなっているが、絶対どこかの国の国歌をパクってきただろう。


  ♪おお!見えるだろうか あの紅き剣と蒼き盾


  ♪剣がが赤く光を放ち 禍を討ち滅ぼす時


  ♪蒼き盾は 我等を護り 夜通し光り輝いていた


  ♪ああ、紅蒼旗は まだたなびいているか?


  ♪自由と平和の地 世界を統べる者の地に


  中身のない国歌だとは思うが、国歌なんてこんなものだろう。この国歌は制定されたばかりなので、まだ、あまり知られていなかったが、これから各種式典やラジオ放送の放送終了時には必ず掛けられるし、学校でも音楽の時間に教えるので、徐々に浸透していくだろう。


  式典が終わると、妻達はそれぞれの実家に帰っていった。実家のないビラやミキさん、それにシンシアさんなんかは白龍城に残留だ。当然、セレンちゃんも行くところがないので、キティちゃんと一緒だ。リトちゃんは、両親がいるのに帰ろうとしない。ここにいる方が面白いそうだ。


  そう言うわけで。静かになった白竜城で、正月休みをまったりしようと思っていたら、ある出来事でそうもいかなくなってしまった。

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