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第2部第112話 クルス教を改革します。その3

(12月30日です。)

  今日は、クルス教総本部で、全国司教・神父総会を開催することになっている。あれから、西の鉱山に行ってミラノ司教に総本部に戻って貰って、今後の総本部にお願いしたところ、渋々引き受けて貰った。北の戦場跡で遺骨収集作業をしているベネット司教は、なかなか会えなかったが、漸く会う事ができたので、総本部に戻ってミラノ司教のお手伝いをお願いした。


  そして、今日、今後の教会運営についてすべての神父さん達に示達することになったのだ。昨日は、夜遅くまで打ち合わせをして、細かい所を決めて行った。勿論、そのような場ではシルフがメインに立案することになるのだが、あらゆる事象に精通しているシルフなればこその制作案が次々と提案されてきた。


  まず、クルス教総本部の名称だが、建物の教会と組織としての教会が混在しているので、組織名を『聖クルス教団』と改称する。それから総本部という名称は廃止し、単に『聖クルス教団本部』と呼ぶことにした。総本部の建物は、『聖クルス教大聖堂』と本来の呼称に戻して本来のあるべき名前にした。まあ、この国には大聖堂と名前の付く建物は一つしかないので、単に『大聖堂』でも通じるのだが。


  各市町村にある教会は、〇〇市クルス教会と呼び、勝手に大教会とか教導所とかの名前を使ってはならないこととした。また、領都にあるメインの教会のみ○○聖堂と領都の名称を冠した『聖堂』と位置付けた。


  役職についてだが、教団の最高位は、『教皇』とし、その下に『聖機卿』を3人置いて、『教皇』の補佐をすることにした。その下には『司教』を置き、本部の事務職のトップと各地の聖堂のトップに『司教』を配置する。


  一般の教会には、『神父』又は『神父補』を置き、女性の場合は『神母』又は『神母補』と呼ばれることにした。また、式典のみを行う専門職を『司祭』と呼び、大きな教会には、『神父』1名と『司祭』数名を配置することにした。これでテレーズさんは『教皇』となったわけだが、あれ以来、テレーズさんは皆から『聖女様』と呼ばれている。


  各地の神父さん達を集めるのも大変だった。国内には168か所の教会があり、連絡網も無い事から、直接赴いて招集しなければならなかったのだ。当然、行ったこともない場所ばかりなので、『ゲート』は使えず、本国から政府専用機の『翼改』型旅客機2機を呼んで、各地を回って貰った。操縦は、勿論パイロット型アンドロイドで、神父さんへの招集案内を渡すために、本部の事務担当の神父さん二人を同行していた。事務担当の方は、最初、おそるおそる乗り込んできたが、可愛らしいCA型アンドロイドから機内サービスを受けて安心したらしい。『翼改』は、垂直離着陸できる構造なのだが、大量に魔力を消費するので予備魔石も含めて、魔力を満タンにするのは僕の役目だった。こうして全体会議の準備は整った。






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  会議は、大聖堂の礼拝所で行われた。500人は入れそうな大礼拝所だ。300人程度の神父さん達なら余裕で入ることが出来た。最初は、テレーズさんの挨拶だ。もう、聞いている方が恥ずかしくなる位、たどたどしい挨拶だったが、可愛らしい笑顔で逆に好感を持たれたようだ。美少女っていつでも得するのね。


  次に、来賓として僕の挨拶が続く。僕は、シルフが作ってくれた原稿を喋るだけなので気が楽だった。


  「えー、僕がこの国の新皇帝であるゴロタです。皆様、初めまして。今回、クルス教総本部を解体し新組織を作ることになりました。僕からのお願いは、たった一つです。皆様、神と子と精霊の名により、迷える子羊をお救い下さい。それができるのは、皆様だけです。国民の平穏な生活や平和の維持は僕の役目ですが、国民の信仰の力を支えるのは皆様のお力によらなければなりません。隷従と迫害、貧困と飢餓、強奪と姦淫すべての大罪をなくすためにぜひご尽力をお願いします。」


  これで挨拶は終わりだ。続いて、各神父等の役職を発表した。司教に任じられる者は、前に出て聖女様から信任状が交付された。それぞれに複雑な顔をしている。こんな信任状を貰ったって、教会の窮状は変わらないのにという顔だった。


  最後に、教会の規模、孤児院等の福祉施設の有無等により教会のレベルを8段階に分け、最大で400万ギル、最低でも100万ギルの越年資金を交付した。これには皆吃驚していた。皆、今日のために一番いい法服を着ているのだろうが、全て木綿生地の貧相なものばかりだ。これから夏だからいいが、この服装で冬は厳しいだろうと思われるものばかりだ。きっと、越年もお祝いらしいことが出来ずに過ごすのだろう。


  一人の神父さんが、僕の傍に寄ってきて、深々と頭を下げて来た。


  『皇帝陛下、グリーンアッシュ市のベルと申します。ありがとうございます。これで子供達に、新年のご馳走を食べさせてあげられます。本当にありがとうございます。」


  ベルさん、泣かないでください。周りの神父様達も貰い泣きしていた。みな苦労していたみたいだ。こうして会議は終わった。それから、階下の大広間で本日の慰労会兼懇親会を開催した。市内の高級レストランに注文したケータリングやスイーツを出した。クルス教では禁酒の戒律はないので、普通にワインを準備したが、神父さん達、途中からアルコール度数の高い蒸留酒を飲み始めた。大麦から精製したアルコールを樽に詰めて熟成させたもので、アルコール度数が47度もあるものだ。それをグイグイのんでいる。神父さん達、この際だからと思いっきり飲んでませんか。ああ、これでは帰れなくなってしまいますよ。結局、10人以上の神父さんが、翌日、別便で送ることになってしまった。


  大晦日の午前中、テレーズさんを連れて冒険者ギルドに行った。ギルド総本部のタイア・ジョルジュ・インカン本部長が入口まで迎えに来ていた。公爵閣下に迎えに来て貰うなど、少し恥ずかしいが、立場上そんなものだろう。タイアさんとテレーズさんは初対面らしいのだが、テレーズさんの噂は既に知っているようだった。


  「初めてお目にかかります。このギルドを預かっておりますタイアです。御高名の聖女様にお会いでき光栄でございます。さあ、こちらへどうぞ。」


  うん、どうやらこの人、聖女様にお会いするのが嬉しくて迎えに来ていたみたいだ。ギルド内でも、僕達は注目の的だった。皇帝陛下の僕に対する興味よりも『聖女様』が超絶美少女だという噂が流れているからだ。テレーズさん、今日は真っ白なワンピースに白のツバ広帽子、真っ赤なリボンが帽子と腰に巻かれていて、良く似合っています。それに首にぶら下げているネックレス、どう見ても超高級品なんですが。


  2階の応接室に案内されて、そこで能力測定を行った。テレーズさん、こわごわ手を機械に差し伸べた。機械上部の画面に測定値が表示された。


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【ユニーク情報】2030.12.30現在

名前:テレーズ

種族:人間

生年月日:王国歴2015年11月26日(15歳)

性別:女

父の種族:人間族

母の種族:人間族

職業:教皇 聖女

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【能力】

レベル     4

体力     80

魔力    220

スキル   270

攻撃力    10

防御力    10

俊敏性    20

魔法適性  聖 光

固有スキル

【神の御技】【予知】【復元】

習得魔術 なし

習得武技 なし

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  うん、やはり『神の御業』があった。ほぼ、フランちゃんと同じ能力だが、『復元』スキルが追加されている。しかし、『復元』スキルで人間の部位を復元するのには、魔力量、スキル量とも全く足りない。僕が復元するときは、かなりごっそり持って行かれる感じがするので、きっと半端ない量が消費されるのだろう。まあ、あって困るスキルではないし。


  しかし、職業欄に『聖女』って、何だろう。これは皆に聖女だと思われているので、そう表示していたのだろう。でも、この測定器。本人の血液だけで鑑定しているので、『聖女』の情報って、どうやって入手できるのだろうか。やはり、テレーズさんは生まれながらにしての聖女だったのだろうか。


  しかし、この調子では、新年のミサには物凄い人数の信者が大聖堂に押し掛けるのではないだろうか。これは、早いうちにイリス警察本部長に相談しなくてはならない。


  シェルが嫌な笑いを浮かべていた。こんな笑いは、碌でもないことを考えているときの笑いだ。そのことは、この後、直ぐに分かってしまった。大聖堂に戻ると、ミラノ聖機卿にお願いして、何やらお札を書いて貰う事にしていた。魔を払い、身を守る『護摩札』と言うらしいのだが、それを1枚1万ギルで売るそうだ。そのほかに、お守りや十字架売り場にいって、『聖女のお清め済み』という張り紙をしている。これで通常価格の倍で売れるそうだ。僕には分からないが、シェルの言う事なら間違いないだろう。


  あと、期間限定予約制だが、聖女の個別祈祷という物を考えているそうだ。これは無料の礼拝とは異なり、個室で聖女と1対1で祈祷していただけるということで、1回10分で10万ギルだそうだ。何か、とっても禍々しいものを感じるのだが、それでも申込者が殺到するだろう。シルフが、どこからかポスターを印刷してきた。大きなポスターで、大商店の入口近くに張って貰うそうだ。早速、シスター達がポスターを抱えて街の方に走って行った。


  シェルとシルフで、祈祷の文言を考えている。最後の文句は決まっている。


  『神と子と精霊の名において、あなたに加護がありますように。』


  これで、OKだ。『ありますように。』とのお願いなので、もしかしたらないかも知れない。それは本人の心がけ次第という訳だ。あのう、シェルさん、皇帝と教団が結託して詐欺まがいの商売をしてよろしいんでしょうか。


  暫くして、大聖堂の前にはポスターを見て急いで来た個別礼拝の申し込み者の列ができてしまった。ほとんどが貴族や大商店のオーナーさんだ。1日限定30人、3日間のみの行事だが、直ぐに満杯になってしまった。テレーズさん、申し訳ありませんが、限定期間を7日間に延長して貰いますね。

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