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第2部第104話 マリアちゃんが大変です

(12月15日です。)

  アンドロイドのクレスタからシルフに『空間通信』が入った。クレスタは、僕の唯一の子、マリアちゃんの母親としてシルフが作製したものだ。マリアちゃんは、今、2歳半だがどうも普通の子と違うらしいのだ。マリアちゃんは、赤子の頃から『念動力』が使えていたので、普通ではないことは分かっていた。しかし、何があったのだろう。取り敢えず、『白龍城』に変えることにした。


  今、午前8時なので、セント・ゴロタ市は現地時間で今日の午後6時頃の筈だ。丁度夕食の時間の筈だ。


  直ぐに『ゲート』を開いて、自分達の部屋に転移した。アンドロイドの僕のコピーとシェルのコピーは、すぐに異次元空間に退避したので、同一人物が二人並ぶことはない。僕達は、部屋着に着替えてから階下の食堂に降りて行った。エーデルやノエル達が揃っていたが、突然現れた僕に驚いていた。


  それからお帰りのキスが始まったが、正式の妻達とはキチンとキスをしたがフランちゃんやブリちゃん達元婚約者とは、軽くほっぺにチュッをしてハグするだけにしている。皆、大学を卒業してそれぞれの仕事を見つければ、きっと良い相手が見つかるだろう。


  最後に、マリアちゃんの方に近づいていく。マリアちゃんは、テーブルに座って、僕達の方を見ている。いつものアンドロイドの父親と代わった事には気が付かないようだ。僕は、マリアちゃんを抱き上げて、『ただいま』のハグをしたが、何故か嫌がっていた。


  その時、マリアちゃんの身体から『電撃』が走った。僕は、『蒼き盾』のシールドが防御してくれたので、どこも怪我をしなかったが、常人では大火傷をするレベルの威力だ。


  クレスタが申し訳なさそうに説明してくれた。


  「マスター、申し訳ありません。最近、気に食わないことや怖いことがあると、いつもこうなんです。今日は電撃でしたが火炎や氷結など、魔法種は色々なのです。」


  ノエルに聞くと、威力はそれほどでもないが、完全無詠唱で、前動作なしで発動するので防ぎようがないそうだ。そういえば至る所に焼け焦げや抉れている場所がある。リトちゃんなどの小さな子は、完全に距離を置いている。まずい。このままでは、この子は友達のいない『寂しんぼ』になってしまう。


  「マリアちゃん、パパのこと嫌い?」


  「ううん、抱っこイヤー。」


  急に抱っこされたので、吃驚したようだ。しかし、これでは育てるのも一苦労だろう。クレスタは、何度か攻撃を受けて、人造皮膚が損傷したらしいが、直ぐに補修ができるので大丈夫だったらしい。しかし、人間の場合にはそうはいかない。この前は、メイドが右手に大火傷を負ってしまい、直ぐにフランちゃんが『治癒』スキルで元通りにしたが、そのメイドさんは後宮勤務から2階の迎賓室勤務に配置換えになったそうだ。それからは、クレスタ以外にマリアちゃんに手を触れる者はいなくなったらしい。


  この問題は、夕食後に皆と相談して対応策を決める事にした。食事も凄まじかった。殆ど手を使わずに食べている。肉や魚は器用に切り分けて、そのまま口元まで移動させている。空中に浮かんでいる料理を大きな口を開けてパクリと食べている。口の周りは、ソースだらけだ。


  「マリアちゃん、行儀が悪いよ。」


  言われてキョトンとしていたが、自分が叱られた事が分かったのか、顔を真っ赤にして泣き始めた。あ、不味い。マリアちゃんの身体が炎に包まれ始めた。僕は、慌ててマリアちゃんの身体の周りに薄いシールドを貼ってやった。勿論、マリアちゃん、何が起きたか分からなかったようだが、いつものようには魔法を発散できずに、魔法が消滅してしまった事に驚いていたようだ。


  「マリアちゃん、魔法はダメだよ。」


  マリアちゃん、目に涙をいっぱいに溜めながら、僕の方を見ている。皆は、ホッとした様子だ。僕が使ったシールドは、『蒼き盾』の防御能力の応用なので、ノエルも使う事ができないようだ。うん、さあゆっくり食事をしよう。今日は、サーモンのガーリックソテーと冷たいパスタだ。久しぶりにグレーテル大陸の料理を楽しむ事にしよう。


  マリアちゃんが、一生懸命『念動』でサーモンを切ろうとしていたが、僕が切れると同時に『復元』しているので、全く切る事ができない。パスタを浮遊させようとしても、打ち消す方向に力を加えているので、ピクリとも動かなかった。マリアちゃん、顔をまっ赤にしてウンウン唸っていたが、結局、諦めて子供用のフォークを使って食べ始めた。2歳半にしては器用に使っている。使おうと思えば、きちんと使えるみたいだ。


  食事が終わったら、もうおネムの時間だ。クレスタと一緒に3階の自分達の部屋に戻って行った。マリアとクレスタだけは、3階に居室スペースがあるのだ。まあ、その辺の住居よりも広いスペースで、大きな遊戯室兼勉強部屋と寝室、クローゼットにバス、トイレとなっている。当然に、バスタブはクレスタとマリアが入っても余裕があるくらいに広い。


  僕は、ノエルにマリアの将来について相談した。このままでは、魔法の制御も知らないままに自由に魔法を使ってしまう。それに面倒なのは念動力だ。これは魔法ではないので、アンチ魔法を使う訳には行かない。アンチ魔法とは、使われる魔法属性と反対属性の魔法だ。火魔法に対する水魔法。風魔法に対する土魔法のように、属性魔法を無効化させる魔法だ。しかし、魔法属性の他に魔法のレベルがある。レベルを間違えるとオーバーキャパになってしまって。相手に被害が及んでしまう。その見極めが難しいそうだ。


  僕は、直径5センチ位の魔石を取り出した。何の魔石か分からないが、とにかく無属性だが魔法耐性の強い魔石だ。その魔石に手をかざし、『錬成』スキルを使ってみる。魔法を吸収する能力付与だ。吸収できる最大魔力は200程度だが、通常の魔導士の最大魔力量に匹敵する。マリアの魔力は、きっととんでもなく大きいだろうが、今日、僕の目の前で使った火魔法は、せいぜいレベル3の魔力量30位だろう。まだ、魔力のコントロールができないので、無駄に魔力を使い過ぎているようだ。ということは、そのレベルの魔法なら1日に6~7回程度なら吸収できるだろう。貯蔵された魔力は、ノエルかビラなら魔石から吸収できるはずだ。また、クレスタも動力源に魔力をりようしているので、ある程度は吸収できるはずだ。シルフに確認すると、クレスタの魔力貯蔵量は100程度だそうだ。ただし魔力の利用効率が極めて高く、異次元空間から供給される高次元エネルギーと組み合わせて300日程度は、魔力を補充しなくても済むらしいのだ。僕は、先ほどと同等の魔石を錬成してシルフに渡した。クレスタの体内の魔石と交換してもらうためだ。これで、少しはマリアちゃんの魔力を吸収できるだろう。


  あと、ノエルは大学院で魔力を無効化するアルゴリズムを研究中だそうだ。そのアルゴリズムを魔法陣にして魔石に組み込むことが出来れば、マリアの魔法を無効化または微弱化できるかもしれない。しかし、その実用化はかなり先になるかもしれないと言っていた。


  時差の関係で、僕とシェルは全然眠くない。エーデルが物欲しそうな顔で僕を見ているが、今日はそんなつもりで帰ってきたわけではないので、無視することにした。しかし、ずっと起きているわけにも行かない。仕方がないので、一旦、南アメリア統治領に戻ることにした。南アメリアでは、やらなければいけないことが山積していた。南アメリア大陸は、南北には平定したが、東西はまだまだ未開の地が残っていた。インカン王国時代にも、何度か東征軍や西征軍を派遣したらしいのだが、何本も東西に流れている大河沿いの一部を開拓できたにすぎなかったらしいのだ。


  あとは、未開のジャングル地帯だ。イオーク達も住んでいたらしいのだが、魔物と野獣が多すぎて、有効な武器や攻撃力を持たないイオークは、徐々に追い払われ、今では大陸南部の森で細々と暮らしているらしいのだ。したがって東西の交通は水路が中心で、東の海の河口部は、とんでもなく幅が広いそうだ。


  今度、シェルと二人、いやセレンちゃんを連れて行ってみようと思っている。そう言えば、最近、セレンちゃんに会ってなかったな。思い出したので、シェルと一緒に、南アメリア市の帝城まで転移してみる。帝城の補修はだいぶ進んでおり、僕達の部屋やセレンちゃんの居室は既に内装工事までおわっていた。あとは、それなりの什器や絵画、彫刻などを置いて皇帝にふさわしい部屋にするそうだ。


  セレンちゃんは、僕達を見つけると物凄い勢いて走り込んできて、僕の首に両手を回して抱き着いて来た。あ、泣いてる。きっと物凄く寂しかったのだろう。それにセレンちゃんとは『隷従』の契約を結んでいる。隷従の契約を結んだ魔物はマスターの命令は絶対に服従するばかりではなく、常にマスターの事を考えるようになるそうだ。セレンちゃんも、見た目は人間だが、本質はセイレーンという魔物だ。おそらく、僕がいないときには、1日中、僕の事を考えているに違いない。


  それに、この城には、使用人は多いが、セレンちゃんと友達になろうと言う者はいないので、きっと話し相手もいないのだろう。このままでは、セレンちゃんが可哀そうすぎる。僕は、シェルと相談して、セレンちゃんを『白龍城』に移すことにした。セレンちゃん、最近、やっと人間の言葉を発音できるようになってきたが、やはり一人で勉強をしても学習効果はたかが知れている。それに、早い段階でグレーテル語に慣れておくと、何かと便利になるだろう。


  僕は、セレンちゃんに、これから遠い国に行くから、部屋に置いてある必要な者を持つようにお願いした。セレンちゃん、キョトンとしている。必要な者が分からないのだろう。シェルがセレン付きのメイドの一人を呼び、事情を話して、セレンの洋服や生活必需品をトランクに詰めさせた。あまり荷物はないようだったが、まあ、そんなものだろう。自由に街に買い物に行けないのだ。荷物が増える訳がない。


  さあ、セレンちゃん、『白龍城』にお引越しだ。

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