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第53話 カインズ・ベルレール・ダンベル辺境伯爵

辺境伯領都サン・ダンベル市に着きました。今日、初めてホテルのスイート・ルームに泊まります。そこでは、ウフフ。

(5月23日です。)

  サン・ダンベル市は大きな都市だった。


  ヘンデル帝国との戦争を何回も経験し、最前線の防衛拠点として、発展してきた都市だ。都市全体を石と土でできた城壁で囲んでいる。その城壁も高さ10mと、他の城塞都市の城壁よりも格段に高い。


  城門は、東西南北に1個ずつ、しかも、東と南北の門は、馬車が通れない位に狭くなっている。だから、ヘンデル帝国へ向かう馬車は、反対側の西の門から出て、城壁沿いに東に向かわなければならないようになっている。勿論、防衛のための作りだ。


  領主は、カインズ・ベルレール・ダンベル辺境伯爵。辺境伯爵は、侯爵に準ずる地位で、かなり地位が高いが、武人でなければ務まらずグレーテル王国には、4人の辺境伯がいる。ゴロタの出身地ハッシュ村を統治しているエクレア辺境伯、クレスタさんの出身地であるカーマン王国と海を挟んでいるリングル辺境伯、その東側を統治するモーメント辺境伯の4人だ。そのうち、最も格式が高いのが、ここのダンベル辺境伯である。それは、常に戦争の危険に晒されている証でもあった。


  ダンベル市は、他の都市と大きく異なっている。亜人の都市だ。フレグラン町でも思ったが、この都市では、亜人が人口の5割近くになっているそうだ。ほとんどが獣人で、エルフは少ない。その理由は、エルフ族は、ヘンデル帝国からもっと東にあるエルフの国の方向に逃げる者がほとんどだかららしい。


  亜人のうちでも、鼠人が最も多い。まあ、子供を1年に数人は生むし、丈夫で病気知らずなので、多くなるのも当たり前である。しかし、生活できる範囲で子供を産むので、破滅的状況にはならないようだ。亜人の中でも最も高貴とされているのが、猫族わけてもライオン種と虎種の亜人である。しかし、この両種族は非常に仲が悪いそうだ。


  獣人の中には、猿族はいない。あまりにも人間に近いので、神様も悪戯する気が無かったのであろう。


  あと、ドワーフとコボルト、そしてニンフがいるが、ニンフは僕のような健全な青少年は、一生会うことが無い種族である。


  コボルトとゴブリンは、ルーツは一緒であるが、神の悪戯により、オスのゴブリンと人間の女性から、たまに高度の知識を持つ者が生まれ、ゴブリンの群れから離れて自活していったのがコボルトの祖先だとされているが、神のみぞ知る謎である。僕は、まだコボルト族の人を見たことはない。かなり稀少な存在らしい。というか、迫害されて人間から隠れて住んでいることが多いらしいのだ。見た目が魔物のゴブリンと似ているせいかも知れない。


  サン・ダンベル市は、魔法の都市でもある。魔力により、都市機能が維持されている。市内を流れている上水は、近くに川がないのに、いつも豊かな水量を誇っている。これは、土魔法で深く井戸を掘り、風魔法で風車を回してくみ上げ、水魔法で浄化して放流しているのだ。


  街路灯は、30mおきに設置されており、夕方、すべての街路灯の魔石に魔力を注ぎ込んでいる。道路や城壁の補修には土魔法を使い、治癒院では聖魔法がふんだんに使われている。


  逆に、産まれながらに魔力が少ない者は、就職も難しくなり、日雇いの労働者くらいしか仕事がない。


  そんなサン・ダンベル市であった。


  領都の西城門に着くと、いつも通り、平民の列に並んで、2~3時間は並ぶ覚悟だった。


  しかし、ジェイク村の件があるので、辺境伯代行の使いの者が迎えに来ているはずだ。騎士団の隊長から、その使いの者の馬車で一緒に行ってくれとのことだった。


  辺境伯代行ですか。王都のジェンキン宰相みたいな人なら良いんだけど、怖い人なら嫌だなと僕は思っていた。


  立派な8頭馬車が城門の中で待っていた。騎士さん達と一緒に大きな門を入り、その馬車に乗ったら、並んでいる人たちがジッと見ていた。あ、シェルさん達のスカートの中を見られたかも知れないと思ったが、もう遅かった。


  辺境伯邸は、領都の真ん中にあり、広大な屋敷を掘割が囲んでいた。そのまま、馬車で、敷地内に入り、大きな玄関前で馬車が止まった。


  玄関の前に立っている人が代行さんだろう。


  僕達は、馬車から降りたが、一番最初に僕が降り、代行の目線の前に立って、シェルさん達のスカートの中を見られないようにした。本当に、何でこんな苦労しなければならないのか不思議な僕だった。


  シェルさんは、ミニスカートの裾を摘み、左足を右足の後ろに曲げて、膝を落とすカーテシで代行さんに挨拶したが、エーデル姫は、立ったまま、右手の甲を代行さんの前に差し出した。


  代行さんは、意味が良く分からないようだったが、長年の習慣で、姫様の右手をとり、手の甲に軽く口づけをして挨拶をしていた。後で、代行さんは、この行動が正しかったことを知るのだった。


  客間に案内され、待っているとダンベル辺境伯が入ってきた。


  ダンベル辺境伯は、我が目を疑った。目の前にいるのは、エーデルワイス第二王女、その隣にいるのは、この前『四精第1位白金大褒章』を授与されたゴロタ名誉子爵とシェルナブール名誉男爵ではないか。自分は、その場に居合わせたので、間違える訳ない。ほかの人達は、良く知らない。


  綺麗なご婦人から可愛らしいお子さんまで、みな変わった服装をしているが、あの短いスカートが良く似合っている。辺境伯、話がずれて行ってます。


  とにかく、辺境伯は、直ぐにエーデル姫の前に膝まづき、左足を床に付けて、臣下の礼を採って、姫様の差し出した右手の甲に軽くキスをした。


  それを見ていた代行は、さっき、ちゃんとキスをしておいて良かった。これで首がつながったとホッとしていた。


  すぐに、今いる客間から奥の応接室に案内された。応接室はだだっ広く、大きなソファとテーブルが2セット置かれている。壁一面に本棚が並べられ金文字が凄そうな雰囲気を与えている。カーペットは踝まで埋まりそうなぐらいフカフカで、これならマットレスが無くても快適に寝れるんじゃないかと思った僕だった。


  皆は、ソファに座ったが、ソファが凄く沈み込むので、膝が上の方を向き、膝の間から何か見えそうな感じだったので、女性陣は皆、スカートの裾を引っ張っていた。


  出された紅茶はとても上品で、バラの香りがした。また、お茶請けのお菓子も、砂糖菓子だったが、口の中でホンワリと溶け、フルーツの香りがした。


  辺境伯にジェイク村の事件について報告した。オーガ・デーモンがボス格だったこと。レッサー・デーモンが無数にいたこと。そして、大勢の人が亡くなったことを話した。


  シェルさんが、亡くなった人たちの事を話している間、僕は遺体を埋めた塚の前で泣いていた若い奥さんの事を思い出して、ボロボロ涙を流し続けていた。それを見ていたシェルさんやクレスタさん、エーデル姫、ノエル全員も涙を浮かべていた。イフちゃんは、短いスカートをめくりながら遊んでいた。


  ダンベル辺境伯が、とても驚くことを言った。


  最近、領都でもデーモンが出没するらしい。それに、北の山の麓にあるノース村、この村と、最近、連絡が取れなくなった。どうやら、デーモンにやられたらしい。調査隊を3回ほど派遣したが、誰も帰ってこない。


  北の山は、地底の闇とつながっていると、言われており、デーモンが 大量に沸いているようだ。要するに、そのノース村が、今回のデーモン騒動の元凶のようだ。


  しかし、調査隊が全滅するとなると、かなり強力なデーモンがいるのかも知れない。それで、『僕達に調査・討伐をお願いしたい。』という事だった。


  僕達は、冒険者だ。ギルドに内緒で直接依頼を受ける訳にはいかない。正式にギルドに依頼を出して貰いたいと言ったら、すぐに出してくれるそうだ。これで、話は終わった。


  僕達は、宿を予約していないので、直ぐに退去したいと言った。辺境伯は、全員、ここに泊まって貰いたいと言ったが、シェルさんが丁寧に断った。僕も、こんなお屋敷ではのんびりできないので、普通のホテルに泊まりたい。


  それでは、姫様だけでも泊っていただきたいとお願いしてきた。それなら構わないと思ったが、エーデル姫が『絶対に嫌。』と言って、顔を真っ赤にして反対した。何か、怒っている。シェルさん達は何も言わないで、ニコニコ笑っている。エーデル姫、可哀そう。


  最後に、辺境伯が紹介するホテルに泊まってくれるようにお願いされたので、それは了承した。宿泊費用は全て辺境伯が負担するそうだ。そのホテルに行ってみて驚いた。白亜の宮殿とでもいうような作りで、こんなホテルが営業できるというだけで、この都市の裕福さが分かるというものだ。


  玄関前に立っているドアマンに大銅貨のチップを渡し、フロントに行ってみると、辺境伯からの連絡が言っていたので、支配人が出て来て応対してくれた。ポーターは、何も持つ荷物がないのに、4人ほど付いてきた。


  階段を上ろうとしたら、何か箱のようなものが、ロープで上下しており、それに乗って上の階に行くようになっている。これも、魔石のエネルギーで動かしているらしい。詳しいことは分からない。


  その昇降機に乗って、支配人がパネルに魔力を流し込むと


    ヒューーン!


  と言う音とともに、箱が上がり始めた。最上階は、5階だった。辺境伯は、この5階フロアすべてを借り切っていた。


  5階は、スイートが2つ、キングのツインが2つ、キングのシングルが4つとなっている。


  異様に部屋が多いが、警備の関係で、フロアを貸し切ったようだ。


  よし、今夜は一人でゆっくり寝れるぞと思ったら、全員でスイート1部屋に寝ることになった。え、それって絶対におかしいから。


  スイートは、キングサイズのベッドが2つ、ダブルベッドが2つの4ベッドで、2つの部屋にそれぞれ分かれている。真ん中にリビングがあり、お風呂は窓の外に1つと室内に1つあった。


  カーペットは、辺境伯邸に在ったものと同じく、踝まで沈みそうなもので、この上でも十分に寝ることが出来るはずだ。


  食事は、部屋まで運んで貰って食べる形式で、次から次へと運ばれる料理は、どれも美味しかった。しかし、運んでくる人が毎回違うので、その都度大銅貨1枚を渡すのがウザかった。ちなみに、先ほど、何も持たずに部屋まで付いてきたポーターの人達にも大銅貨1枚ずつを渡した。本当、何しに来たん。


  食後、僕はゆっくりと屋外の風呂に入った。ホテルの周りには、このホテルより高い建物はないので、誰にも覗かれる心配はない。しばらくすると、皆も裸で入ってきたが、全員が入れるほど大きくないので、何人かは、お風呂に入り、何人かはお風呂の縁に腰かけて、足湯を楽しんでいた。いや、クレスタさん、僕の正面に腰かけて、足を広げるのやめてくれません。それに、ニヤニヤしないでください。


  お風呂から上がって、夕涼みをする。初夏の風が気持ちいい。


  僕は、キングサイズのベッドに寝たのだが、このベッド、ツインなのにくっ付いている。そう、キングのダブル状態だ。枕も一杯あるし。みんなで、一緒に寝なさいと言っているみたいだった。


  その夜、イフちゃん以外、全員が一つのベッドで一緒に寝た。僕は、辺境伯邸で気を使って疲れていたので、直ぐに爆睡してしまった。


パーティーの中で、一番危険なのは、クレスタさんの様な気がしますが、皆さんは、どう思われますか。そう思われた方は、ブックマーク登録をお願いします。

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