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第2部第98話 可哀そうな妹 その2

(10月23日です。)

  ラミア両替店の2階の奥が、社長室になっていた。ノックもせずに社長室のドアを開けると、小太りの中年男が一生けん命、しょるいを鞄に入れていた。きっとあくどく金を貸した権利証などであろう。デボラさんが、捜索差押令状及び逮捕令状をラミアに示して、その場で逮捕した。木製の手枷をして、手枷に結ばれたロープを2人の衛士が持っていた。僕が、ラミアに質問する。


  「闇奴隷商人から買ったイオークの娘、どこにいますか?」


  「し、知らん。イオークなんか買っておらん。」


  「本当ですか。この書類にはちゃんと書かれていますよ。」


  僕は、デボラさんの持っている書類を指さした。デボラさん、ラミアに見えるように書類を掲げている。


  「今なら、奴隷売買罪は減刑してあげても良いんですが。」


  「お、お前にそんな権限があるのか。若造。」


  デボラさんが、きつい口調でたしなめた。


  「お前、誰に向かって口をきいてる。こちらにおわしますは、この度、この国の皇帝になられたゴロタ陛下様だぞ。頭が高い。控えおろう。」


  この言い回し、絶対、どこかで聞いたことがある気がする。ラミアは、目を大きく見開いた。目の前にいる20歳にも満たないような少年が、新皇帝だなんて信じられないのだろう。しかし、デボラ衛士隊長が言うのだから間違いないのだろう。ラミアは、力なく膝を折ってしまった。


  「む、娘は、この街の東の郊外にある私の別荘に閉じ込めている。頼みます。どうかご寛大なるご処分を。」


  この男の処分は、セカンド君の妹さんの状況を確認してから決めることにしよう。デボラさんに確認すると、校外の別荘にも捜索の手が伸びているが、人数は10人程だとの事だった。特に戦闘になることは無いだろうから、大丈夫だろうが少し心配だ。僕は、イフちゃんにお願いして、先に別荘に行って貰う事にした。場所が良く分からないが、衛士隊の騎馬10頭がいれば、そこが目的の場所だから、探すのにそれほど時間はかからないだろう。


  デボラさん達が重要書類などを押収している間に、イフちゃんから『念話』で連絡が来た。別荘を見つけたそうだ。イフちゃんと意識の共有を図る。別荘が頭の中に見えて来た。森のほとりに、それほど大きくない屋敷が立っている。レンガ造りのしゃれた建物だ。屋敷の前には、警備の男が1人立っていたが、見るからに柄の悪そうな裏社会の男と言う感じだ。建物の中には、数人の気配があったが、人数などは分からなかった。


  デボラさんに、ラミアの別荘を見つけたので、そこに向かうと言うと、一緒に行くと言ってくれた。デボラさんの他に3人程の衛士の方が同行してくれた。別荘は、歩いていくと半日くらいかかりそうな距離だったので、『空間移動』のゲートを開いて、皆で移動した。転移先は、別荘の正面だったので、警備の男が、吃驚して屋敷の中に逃げ戻ろうとしていた。このまま逃がしては面倒なので、取り敢えず警備の男を『威嚇』により、その場で気を失わせた。


  中の者に対しては、『スリープ』で眠らせることにする。『威嚇』で気を失わせては、起こすのに手間がかかってしまうし、なにより下半身が汚くなってしまうので、近寄りたくなかったからだ。屋内に入ると、入口に面した部屋には若い男が床に眠りこけていた。奥のダイニングにつながっているドア近くには、初老のメイドさんが倒れている。ダイニングとキッチンにも3人程の男女が倒れこんでいたが、倒れている女性は年配のメイドで人間族だったので、目的の女の子とは違うようだ。イフちゃんが、『2階におるぞ。』と教えてくれた。


  僕は、セカンド君を1階で待たせて、シェルと一緒に2階に上がって行った。2階の廊下の奥には、分厚い扉があり、厳重に鍵が掛けられていた。僕は、閂を外し、鍵を『開錠』魔法でロック解除してから、静かにドアを開けた。中からは、変な匂いがしている。獣臭い匂いと血の匂い、それとわずかに糞尿の匂いだ。匂い消しのための香が炊かれていたが、僕の鼻はごまかせなかった。薄暗い部屋の奥には天蓋付きの寝台があり、そこに一人の女の子が座っている。透けて見えそうな薄いレースのガウンを羽織っているだけで、あとは何もつけていない。


  その女の子は、僕とシェルを見ても、何も反応しなかった。というか、見ようともしない。ただ、黙って座っているだけだ。目に光が無く、ただボンヤリと開けているだけ。いわゆる正気を失っている様子だ。胸は少女らしい僅かな膨らみがあるだけだが、身体の前面の毛は全て剃られていた。シェルが、僕の脇腹に思いっきり肘鉄を喰らわせて『あっちを向いててよ。』と怒られてしまった。僕は、涙目になりながら慌ててドアの方を向いている。


  シェルが部屋の中の引き出しから下着やワンピースを出して着せていたが、僕には後ろの方での作業だったので、何をしていたのか良く分からなかった。


  「もう、いいわよ。」


  シェルの声で、振り向くと、そこには可愛らしいイオークの女の子がいた。しかし、どうも様子がおかしい。自分から動こうとしないのだ。シェルが着替えをさせるために立たせたらしいので立っているが、まったく動かないのだ。僕は、階下に行ってセカンド君を呼んできた。セカンド君、部屋にはいるなり『イーちゃん。』と声を掛けた。この子の名前は『イー』と言うのかと思ったら、妹は全て『イー』ちゃんらしいのだ。


  イーちゃんは、セカンド君の呼びかけにも全く反応しなかった。一体どうしたのだろう。これでは生きているとは言えない。僕とセカンド君でイーちゃんを1階まで降ろした。手近のソファに座らせてから、眠りこけている年配のメイドを叩き起こした。軽く頬をビンタしただけだけど、口の中を切ったようで、唇から血を流しながら目を覚ました。メイドは、僕達の姿を見ると、『ヒッ!』と小さな悲鳴を上げたが、周囲の状況を見て、何が起きていたか分かったようだ。


  「あなた達、この子に何をしたのですか?」


  何をしたのか想像は付くが、彼女の口から直接聞きたかった。


  「わ、私は良く知りません。旦那様が、その子を2階の奥の部屋に閉じ込めていて、私は、食事とお風呂、それと下の世話をするだけですから。」


  ああ、どうして皆、正直に言わないのだろう。正直に言ったら、少し、刑を軽くしてあげるのに。


  「この子は、いつも何も着ていないのですか?」


  「は、はい。旦那様が好みの下着や服を着せるので、それまでは裸にしておくようにとのことでした。」


  「この子は、いつからこんな様子だったのですか?」


  「あ、あのう来てから1か月位、いえ、2週間位で何も話さなくなってしまって。」


  「食事はどうしているんですか。」


  「旦那様が、自ら食べさせていたようです。でも、嫌がっていたようで、食事が終ると、ベッドがとても汚れていました。」


  「あと、ラミアはこの子にどんなことをしていたのですか。」


  「はい、鞭を使ったり、火かき棒を使っていましたが、最近は、飽きてしまったのか、あまり折檻はしていませんでした。」


  「この子の前には、何人の女の子がいたのですか?」


  「あのう、私には、詳しくは分かりません。」


  僕は、この時、初めて『威嚇』の力を使った。メイドは、目の光を失ってしまい、正直に話し始めた。


  「この子の前には、イオークの少女が4人、人間の幼女が2人でした。私が知っているのはそれだけです。」


  「その子達はどうしましたか。」


  「皆、死にました。屋敷に詰めている男達が、納屋の後ろに埋めてしまいました。」


  「死んだ理由は何ですか?」


  「旦那様の折檻が激しくて、最後は、手足を切り落としたり、首を絞めながら行為をしたりして死んでしまうのです。」


  「ラミアは、この子は、どうするつもりだったのですか?」


  「ここ、暫く仕事が忙しくて来ていなかったのですが、今度来た時には特大の道具を押し込んでみるといっていました。」


  ああ、確実に殺す気だったようだ。メイドの言葉を聞いていたセカンド君、メイドの前に近づくと、思いっきりパンチを喰らわしてやった。あ、顔が変形している。頬骨が折れてしまったようだ。それから、セカンド君、メイド君の胸目がけて、つま先でケリを入れていた。『あれは痛い。男には分からない痛さだ。』とシェルが言っていた。メイドは、3m位後ろに吹き飛んで、気を失ってしまった。


  僕は、次に一番年配の男を蹴り起こした。お腹を蹴ったので、内臓を痛めたのか、口からどす黒い血が溢れてきた。あ、いけない。少し、力を入れ過ぎたようだ。それから尋問をしたところ、イーちゃんは、この世の地獄を味わっていたようだ。ラミアがいないとき、この子は、男たちの慰み者になっていたらしい。あらゆる穴を使って奉仕させられ、ドロドロになってしまったイーちゃんを風呂で綺麗にするのが、あのメイドの仕事だったらしい。しかし、ラミアに叱られないように、怪我だけはさせなかったようだ。


  全てを白状した男は、涙を流しながら許しを乞うていたが、許すわけがない。他の男達も皆たたき起こし、スコップを持って隣の納屋の裏に行って見た。至る所の地面が盛り上がっているかへこんでいた。一つずつ、地中の遺体を掘り出させた。全部で6体の筈だったが、頭蓋骨だけで9つ掘り出された。あのメイドが知らない所でも、強姦殺人が行われていたのだろう。セカンド君、脇でお腹の内容物をまき散らしていた。まあ、完全な白骨ならまだしも、まだお肉がついているドロドロの遺体もあったので、見ていて気持ちの良いものではなかった。すべての遺体を、洗濯石とシャワーで洗い流して綺麗にしてから、男達に向かって静かに話しかけた。


  「あなた達を許す気にはなりません。あなた達には、裁判にかける手間も勿体ないです。両手か、両足あるいは首を切り落とします。どこを切り落とされるか自分で選んでください。」


   男達は、恐怖で引きつっていた。返事がある訳がない。首を落とされて即死するか、両手か両足を切り落とされて1時間後位に出血死するかどちらかの選択肢しかないのだから。結局、全員、首を切り落とされてしまい、自分で掘り返した穴の中に転が落ちて行った。

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