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第2部第62話 神聖ゴロタ帝国南アメリア統治領

(7月21日です。)

  今日は、朝からサウス・インカン市の旧公爵邸に皆で移動した。ホテルの支配人は、僕達がチェックアウトをするのを非常に残念がっていたが、ホテルの看板に『皇室御用達』と記載して良いか聞いてきた。シェルさんが、『今のサービスレベルを落とさない限り、許可します。』と言って、右手を差し出した。あ、握手でもするのかなと思っていたら、手の平を上に向けて上下に振っている。支配人さん、直ぐに気が付いて、さっき支払った宿泊料の中から、大銀貨2枚を返してくれた。なんだか、とても恥ずかしい。


  旧公爵邸は、これからは『南アメリア離宮』と呼ぶことにした。離宮は行政庁、司法庁舎、衛士隊本部、冒険者ギルドと広い道を挟んで西側にあった。間口が300mもあるお屋敷だ。この屋敷は、現在、衛士隊員が警備をしている。侯爵が亡くなって屋敷内の財宝を狙ってくる不届き者を阻止するためだ。実際には、現在、邸宅の各出入口にはシールドを張ってゴーレム兵を配置していたので、誰も出入りできないようにしていたのでそんな心配はいらないんだが。


  今日は、カジマさんが屋敷の下見に来る。学校などのように新築の場合には、土地の購入からはじまるので、設計着手はまだまだだが、屋敷や行政庁のような既存の施設の改修には、下見をしないで設計という訳には行かない。公爵邸は、カジマさんの先々代の統領が手掛けていたらしいが、王都からも大勢の職人が来ていたので、全体の設計図などは無かったそうだ。


  僕達は、当分の間は、1階の貴賓室に滞在することにした。僕とシェルが一番大きな貴賓室、ミリアさんとメリちゃんそれにセレンちゃんは一緒の部屋だ。ビンセント君は、2階の居室を割り当てたが、だれも居ない2階では気持ちが悪いらしく、狭いが1階の使用人部屋の1室で休むことになった。カジマさんが、2階の元侯爵の部屋を最優先でリフォームすると言ったが、僕は、廊下と階段はそのままに大幅なリフォームをお願いした。将来的には、『白龍城』とこの離宮を『ゲート』で繋ごうとおもっているので、そのための部屋や、妻たちの部屋を作らなければならないからだ。3階の屋根裏部屋も、執事やメイド達の部屋だが、キチンと壁やドア、窓を補修し、冷暖房完備として貰いたいと要求を出しておいた。地下の拷問部屋や拘束室は、全て潰してシルフの研究室や倉庫にして貰った。


  当面の費用として、カジマさんに大金貨20枚を渡しておく。この国では、大金貨1枚がゴロタ帝国の金貨8枚分、重さにして1.2キロほどだ。大金貨20枚と言うと、重さで24キロ位、さすがに一人で持つには重すぎるようだ。冬だというのに秘書の人が汗をかきながら運んでいた。近い将来、ゴロタ帝国の通貨が流通するようになれば、そのような事もなくなるはずだ。


  侯爵邸で働いていた執事、メイドのうち、誘拐及び虐待に関与していなかった者に対して、また侯爵邸で働いてくれるように依頼する。イリス隊長が無実を保証してくれることが条件だった。男性執事が3名、メイドが7名、嫌疑なしで無罪放免されていた。皆、もう一度侯爵邸で働くことを希望していた。3人の執事さんの中で、最年長の執事さんを執事長にした。名前をシラトさんと言ったが、『これからはセバスチャンと呼んでくれ。』と言ってきた。まあ、それがこの国の風習なのだろうから、セバスと呼ぶことにしよう。それで、セバスさんに、この屋敷を維持管理するのにどのくらいの人員が必要か聞いたところ、侯爵邸時代は、執事が16名に、メイドが28名いたそうだ。今後、この屋敷でパーティを考えているなら、それが最低限の人数だそうだ。まあ、そうかも知れない。侯爵邸の裏には古びた宿舎があり、そこが使用人の住居だそうだ。木造の今にも屋根が落ちそうな宿舎だった。これもカジマさんに新築して貰う事にして、当面、住めるように壊れているドアや窓を『復元』で治しておく。


  あと、執事、メイドの補充採用をセバスさんにお任せしておく。あ、そう言えばロンギ市長宅も補修しないといけない。あの建物は、かなり豪華なので、迎賓館として再利用できそうだ。まあ、急ぐことはなさそうだが、一応、カジマさんに話しておこう。







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  午後、近くのレストランでランチを食べてから、シェルと二人で、冒険者ギルドに行く。ギルドマスターのジャンさんに会って、これからはゴロタ帝国の冒険者ギルド総本部の支配下になることを伝えた。このギルド内で、その措置に不満がある人は遠慮なく行って貰いたい。それなりの退職金等を準備すると申し向けたら、今すぐには返答は出来ないが、ジャンさんは、それでもかまわないと言ってくれた。


  それから、西のダンジョン以外で、この周辺にダンジョンは無いのか聞いたところ、北東に徒歩で1日の所に小さな村があり、その近くにダンジョンがあるそうだ。今までは、そこのダンジョンにだけ依頼を出していたそうだ。


  そのダンジョンは、少し変わっていて、20層まであるそうだ。しかし、冒険者が通常潜っているのは14階層までで、それより下は、昔、ダンジョンボスを攻略して以来、誰も潜っていないそうだ。魔物もそこそこ強いのがいるし、ドロップ品もでているので、結構人気があったそうだ。今は、西のダンジョンが再開したので、皆、そちらに行っているが、北東のダンジョンも決して悪いダンジョンではないそうだ。領内巡閲が終了したら、ちょっと覗いてみよう。あと、今まで、王都の冒険者ギルド総本部から給料などを支給されていたのだが、今後は、どうなるのか聞いてきたので、ゴロタ帝国冒険者ギルド総本部の職員として、そのまま転籍するので、給料もゴロタ帝国職員として同一の処遇になる予定だと説明していた。


  ジャンさんの話によると、今まで職員は、地方採用臨時職員という扱いで有り、給料は最低賃金しか支給されなかったそうだ。それでは生活が出来ないので、冒険者が持ち込んで来た貴金属やドロップアイテム等を優先的に買い取り、オークション等で売りさばいで差額を稼いだり、或いは自らダンジョンに潜ったり、自ら美味しい依頼を受けて、生活費に充てていたらしい。


  ゴロタ帝国のダンジョンでは、基本給が月額20万ギル、役職手当や都市手当て、住居手当と残業代で、20代前半で、年収300万ギル、管理職になると年収500万ギル、ギルドマスターで約1000万ギルを支給している。帝国の通貨単位ではピンとこないようなので、この国では、この約1.2倍、金貨12枚がギルドマスターの年収だと教えてあげた。勿論、この中から所得税と住民税を払って貰うが。これを聞いたジャンさん、口をあんぐり開けてしまった。あ、そう言えば、ケバックさんやイリスさん、ヒムロさんにも給料の話をしていなかったと思ったが、既にシルフが伝達済みだった。


  公務員は、地位に応じた収入を得るべきで、その収入をカットすると、不正を働くこととなるので、基本的には、生活して子供を育てるのに十分な収入を保証している。ジャンさんが、そのことを皆に知らせてもいいかというので、特に構わないと言っておいた。後ほど、シルフが勤務経歴、資格、家族構成などを調査して給与の支給額を決定する予定だ。


  騎士団や行政庁職員は、年功序列固定給だが、ギルドについては、ギルドの収入に応じて臨時ボーナスがある。これはプラスアルファになるので、一生懸命頑張ったギルドの職員は、それなりに高収入になる予定だ。どこにでもある話だが、冒険者が命を懸けて獲得した素材や鉱石などを安く買いたたき、高く転売して、差額を横領するような事は絶対にしないようにお願いをしておいた。また、ギルド職員が依頼を直接受託する場合には、必ずギルドマスターの許可を得るようにもお願いしている。


  次に司法庁に顔を出して、司法長官代行の方、名前はロウさんと言うらしいのだが、その人の話を聞く。この国の司法制度は、あってないようなもので、領主が決めた規則や条例が国の法律よりも優先されることになっている。衛士隊だけは国から派遣されているが、犯罪捜査により捕まえた犯人を裁くのは領主の専権事項となっていたらしいのだ。


  僕は、セント・ゴロタ市から六法全書を取り寄せた。未だ憲法をはじめ、基本的な法律を交付していないので、参考に過ぎないが、これからの司法制度は、ゴロタ帝国の法律を基準に執行して貰うようにお願いした。


  次に、現在裁判中の案件について、シルフが全件、公判記録に目を通していた。まあ、僅か38件だけだったが、冤罪の可能性のあるものが13件、証拠不十分で不起訴相当と思われるものが7件あった。ロウ長官代行に聞くと、前のブキャナン侯爵が、恣意的に陥れようとした者達が多かった。また、どう考えても、この前殲滅したゴロツキの誰かが犯人と思われるのだが、全く違うものが犯人として訴追されている。これもブキャナン侯爵の差し金だそうだ。僕は、明らかに冤罪と思われる者の即時釈放を指示した。名目は、南アメリア統治領の成立に伴う恩赦としておく。あと、刑事事件で訴追するときには、必ず資格を持った弁護人を立てるように指示した。ロウ長官代行が、『資格とはどんな資格でしょうか?』と聞いてきた。ああ、そこからですか。


  では、法律に精通した人、司法庁を退官した人でも良いですから、その人達にお願いするようにロウ長官代行に指示をしておいた。司法庁の次は、税務庁に向かう。税務長官は、この前殲滅してしまったので、現在は首席徴税官が税務長官代行をしている。名前をタクスさんと言うそうだ。僕が行くと、顔が真っ青になっていた。タスク長官代行に、この国の税制を聞いたところ、全国共通の税金は、王室に上納する王国税で、収益の1割を徴収されるそうだ。農業の場合は、収穫の1割が年貢となり、不作の時でも平年並みの年貢を納めなければならない。当然、肥料や農機具等の経費は控除しないし、人件費も全く控除しないそうだ。


  商人の場合にも、売り上げの1割が税金であり、利益があっても無くても売り上げの1割を納めなければならない。そのため、この国の商品は、仕入れ価格よりも確実に1割以上高くなるそうだ。当然、必要経費などは認められない。国税については、毎年6月に王国の税務庁から侯爵のところへ、納税額及び納入年貢が通知されており、過去3年間の納税額等から平均されるそうだ。そのため、毎年わずかずつ上がって行っているのが実情とのことであった。今年も、既に通知が来ているが、いまだ年貢及び徴税額が足らないために、引き伸ばしているそうだ。僕は、もう王室に納税する必要はないので、安心するように言ったら、タスク長官代行はキョトンとした顔をしていた。


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