第2部第34話 冒険者ランク『E』になります。
(5月29日です。)
今日は、ミリアさん達のランク上げだ。『F』ランクから『E』ランクにあがるには、ギルドの依頼を1件以上こなさなければならない。これは、1人1件と言うことなので、3人では3件の依頼を達成する必要がある。しかし、『F』ランクが受ける事が出来る依頼は、掃除か荷物運び、薬草採集に犬や猫を探すくらいだ。
ボードには、結構、低ランクの依頼が寄せられていた。
1.薬草採集:『紫水無し草』1キロ以上必要です。成功報酬大銅貨1枚、買取1キロ大銅貨1枚にて。
2.探し物:うちのタマを探してください。白色に黒の3本の線が入っている犬です。成功報酬大銅貨3枚。
3.探し物:うちのボスを探してください。黒色のニャンコです。眼が3つあります。成功報酬大銅貨4枚。
こんなもんだろう。探し物は、ミリアさん、ビンセント君で受ける事にした。薬草採集は、メリちゃんだ。『rggF』ランクの依頼は、依頼受託料は要らない。成功報酬の2割をあらかじめ依頼者から受け取っている。
薬草採集は、かなり日数が経っている。きっと割りが合わないのだろう。『紫水無し草』は、小さな草で、珍しくはないが、あまり群生はしていない。1キロ集めるのに結構時間がかかるのに報酬が安すぎるのだ。
探し物は、何件も失敗のスタンプが押されている。通常、失敗が続くと報酬を引き上げるのだが、この依頼はそのままだ。きっと子供の依頼なのだろう。お小遣いを貯めて依頼しているのかも知れない。
犬猫探しは、僕とミリアさん達のペアで担当する。薬草探しは、シェルとシルフが手伝う事にした。犬猫探しは、もしかするとダメかもしれない。既に拾われたり死んでいるかもしれないからだ。最初は、依頼主のところに行って詳しい状況を聞く。予想通り、依頼主は子供だった。ただ、猫の依頼は注意が必要だった。猫ではなく、魔物の『サードアイ・キャット』の子猫だそうだ。もしかすると、森に逃げてしまったかも知れない。
それぞれ、匂いの付いているものを借りた。探すのも、間違いないか確認するのにも必要だ。探索は、イフちゃんを飛ばして行う。犬や猫の気配を確認すると、そこまで行って毛並みを確認する。どちらも特徴があるので、確認は直ぐに終わった。午前中に、両方とも発見した。そばに寄って『威嚇』で動きを止め、ビンセント君が捕獲する。チョロい仕事だ。しかし、死んでいたり、誰かに拾われていなくて本当に良かった。
完了届けにサインを貰ってからギルドに戻った。ビンセント君達のランク・アップをする。ランクは、『E』に上がったが、各ステータスのレベルは全く上がっていない。街の中を僕について歩いただけでは、上がる訳ない。今度は、一つ上のランクの依頼をこなしてみよう。『E』ランクから『D』ランクに上がるには、依頼を10個以上達成しなければならない。まあ、1日に2~3個こなしていけば大丈夫だろう。その間に、レベルも上がるだろうし。
さあ、午後はダンジョンに潜るぞ。
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私はメリ、コボルトの女の子。今、13歳。今日は、私と一緒に王都まで旅をしてくれている人間族の人と一緒に冒険者ギルドの依頼を受けて、薬草を探して回っているの。でも、探すのは主にシフルさん、この人、一体何歳なのかしら。人間族って年齢が分からないわ。身長は150センチ位なんだけど、言う事とやっていることは、シェルさんよりずっと大人だし。あ、シェルさんっていうのは、この旅の責任者ゴロタさんの奥さんなんだけどエルフ族みたい。この人、いっつも何もしないの。馬車の中でも、寝てばっかりだし。でも、すっごい美少女。エルフって狡いわ。みんな、綺麗なんだもん。でもシェルさんって、別格ね。私が見たエルフの中でも一番可愛いわ。あ、シルフさんも可愛いんだけど、彼女、絶対、ゴロタさんの妹よ。だって、そっくりなんだもん。
今日のお仕事は、薬草探しなんだけど、『紫水無し草』って薬草、本当に小さいの。それにクローバーとかカタバミの葉の陰に隠れていて、見つけづらいの。でも、シルフさん、なんだか知らないけど、次々に見つけていくのよ。私は、言われた所を探して積んでいるんだけど、薬草入れの籠の中、直ぐに一杯になってしまった。あと、今日のお仕事の依頼ではないんだけど、いろんな薬草を見つけて集めているの。なんでも、『紫水無し草』よりも高額で引き取ってくれるんですって。私には、シルフさんの集めている草が何なのか全然分からないんだけど、もう、籠一杯なんだから、ギルドに戻っても良いと思うんですけど。ゴロタさんが、午後は、ダンジョンに潜るって言っていたから、早く帰らなくっちゃ。今日のお昼は、ギルドのレストランでオムライスを食べるって言っていたわ。私、オムライス、大好き。早く帰ろっと。
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お昼前には、メリちゃんも帰ってきて、無事ランクアップも済んだ。メリちゃんとのお約束なので、今日のお昼は、ギルドのレストランでオムライスにする。ここのオムライスは、フワトロではないが卵が分厚く、ボリュームのあるものだった。これは、これで僕の好きなオムライスだった。シェルは、ほうれん草の入っているパスタにしていた。パスタにほうれん草を練りこんでいて、緑色のパスタだ。こんど、作ってみることにした。
午後は、任意でダンジョンに潜ることにする。受付に、ダンジョンに入る手数料を払って、昨日と同じようにダンジョンに向かう。今日は、イオラさんとイオイチ君も一緒に潜ることにした。総勢7名の大パーティだ。イオークは、ダンジョンに入るのに手数料は支払わなくて良いらしい。戦闘力として計算していないらしいのだ。
ダンジョン地下第1階層に潜って、人気のない所で、ゲートを開く。行先は、地下第3階層だ。シルフが殺虫剤噴霧器を準備していた。イオラさんとイオイチ君に噴霧器のタンクを背負わせて、管でつながった小銃のような噴射機を持たせた。防毒マスクと、全身を包む白い防護服を着ている。これならヤマビルなどの毒虫に襲われることもないだろう。
二人が、先頭で歩く。木の梢や、葉の裏に殺虫剤を噴霧して歩いている。ぼたぼたヤマビルや気持ちの悪い虫が落ちてくる。それをシルフが、超小型のバーナーで焼いている。少し延焼してしまう事もあるが、僕が直ぐにシャワーで消してしまう。その後ろにシェルとメリちゃん、ミリアさんとビンセント君が続いている。さっき、振り向いたら、ミリアさんとビンセント君が手を繋いで歩いていた。僕と視線があったら、あわてて手を離していたが、別に気にしていないので、繋ぎっぱなしでも良いのに。
密林エリアのメインキャラが登場してきた。ファング・エイプだ。下顎の牙が耳の近くまで伸びている。あれでは、邪魔になって噛みつき攻撃ができないのではないかと心配になってしまうが、こいつらの一番の攻撃は、糞攻撃だ。皆、一塊になって貰う。風属性のシールドを張る。エイプが糞を投げつけて来ても、防いでしまうだけでなく、風により遠くに飛ばしてしまうのだ。水属性のシールドでは、濡れてビチャビチャになった糞尿が下を流れてくるので、歩きづらくなってしまうのだ。
ミリアさんのファイア攻撃とシェルの『ヘラクレイスの弓』で殲滅していく。あ、メリちゃんとビンセント君の小石攻撃も効果的だからね。レベル上げには。
このエリアの階層ボスは、大型のジャイアント・ゴリラだ。本当に大型だ。身長10m以上ある。体が大きいのに俊敏で、魔法攻撃はないが、大きな叫び声で相手の神経をマヒさせる技を持っている。口を大きく開けた時は、耳を塞いで、聞こえないようにしなければならない。しかし、その口の開けた時が攻撃のチャンスだ。開けた瞬間、ファイア・ボムを撃ちこむ。慌てて開けた口を閉じようとするが、遅い。閉じた口の中で、ボムが爆発を起こした。首から上が消滅したジャイアント・ゴリラは、そのまま巨体を倒して絶命している。さあ、ゆっくり魔石でも採取しよう。あ、ドロップアイテムがあった。ミスリルのナイフだ。切れ味抜群、鋼鉄のナイフよりも固く、軽いナイフだ。このナイフ、メリちゃんに上げよう。イオイチ君が、欲しそうな顔をしていたが、次にドロップしたらあげるからね。
地下第4階層は、岩山エリアだ。高さ100mはあろうかという山が続いている。そのふもとをウネウネと曲がりながら進んで行く。天井は、青空の色なので、本当に地上の岩山を歩いているみたいだ。このエリアは、飛んでくる魔物と石系の魔物が出るはずだ。あ、出てきた。フライング・リザード、飛び蜥蜴だ。岩山の上の棚から滑空してくる。鋭い爪と、毒の牙が主力武器だ。シルフが、M1014散弾銃を2丁出してきた。1丁は、メリちゃんに渡す。この散弾銃は、7連発だが、撃ち終わると、メリちゃんの持っている散弾銃と交換する。メリちゃんは、直ぐに12ゲージの散弾7発を給弾する。上空には、なにもいなくなった。さあ、前進しよう。
100m位進んだところで、ローリング・ストーンズの攻撃を受けた。こいつは、直径1m位の転がり落ちてくる石と言うか岩なんだが、落ちた衝撃で大爆発を起こしてしまうのだ。一体、誰がこんな物騒な魔物をセットしたのかと思ってしまう。こいつらには、生存本能とかないんだろうか。自爆することが生きる価値なんて絶対におかしいと思うんですけど。
まあ、至近距離で直撃を受けなければ、こちらに被害は全くないのだが、時折、至近距離まで転がってくる時がある。当然、シールドで完全防御をするのだが、結構、面倒くさい奴らだ。シェルが、転がり落ちてくる途中のローリング・ストーンを『ヘラクレイスの弓』で撃ち抜いている。撃ち抜かれた奴らは、そこで爆発してしまうのだが、シェルさん、楽しんでますね。
このエリアの階層ボスはストーン・ゴーレムだ。たまには、ビンセント君に戦わせよう。狙いは、ゴーレムのアキレス腱だ。アキレス腱があるかどうかわからないが、その付近に切り付けてくるように指示した。切れなくてもいいから、脚元に潜り込んで、1合か2合切ったら、戻ってくる。この繰り返しだ。ビンセント君、緊張しながらロングソードを抜き、走り始めた。ビンセント君には内緒だが、ゴーレムの腕と膝の関節は凍らせておいた。もう、俊敏に動くことは出来ない筈だ。
ダッシュで接近する。カキン、カキンと切り付ける。全速力で戻ってくる。これを30回位繰り返させる。もう、息も絶え絶えだ。最後に、剣に魔力を込めさせる。ロングソードが真っ赤になる。そのまま、ゴーレムの傷だらけのアキレスに切り付けた。あ、切れた。ゴーレムの片足のくるぶしの上が切り離されてしまい、ズズーンという音とともに倒れこんでしまった。はい、お疲れさまでした。
もう、今日は帰りましょう。水着を買わなくっちゃ。




