表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
480/753

第2部 第32話 ゴトーダ・ダンジョン攻略戦

(5月28日です。)

  ダンジョンは、僕が先頭で入って行く。ダンジョンに入ってから、シルフが完全装備で異次元空間から現れた。でもシルフに任せていると、全ての魔物を殲滅してしまうので、索敵をお願いする。


  最初は、地下第1階層だ。ビンセント君は、初めてのダンジョンで超緊張している。メリちゃんは、泣きそうな顔になっている。武器は、解体用のナイフと小石を10個位だ。まあ、最初はそれでいいから。


  どこのダンジョンも同じだが、第1階層は、冒険者で一杯だ。あっちでトンカン、こっちでトンカンと壁を崩して、鉱石をさがしている。金鉱石や銀鉱石は、採掘して2~3日すると、再採掘できるようだ。中央付近では、冒険者と低レベルの魔物が戦闘をしている。今、ゴブリンと戦っているのは、どう見ても小学生か中学1年生位の坊や達だ。武器もナイフや樫の棒程度だ。それでも、坊や達は6人、ゴブリンは4匹なので、大きな怪我はしないだろう。彼らの脇をすり抜けようとしたら、ゴブリンの群れの1匹が急に向きを変えて、メリちゃんに襲いかかってきた。ゴブリンの特性上、男と女がいると、必ず女を襲ってくる。最初に邪魔者の男をやっつけるというような知恵が回らないのだ。


  「キャーッ!」


  メリちゃんの悲鳴が聞こえた。しかし、あらかじめメリちゃんに張っているシールドでゴブリンは、はじかれてしまった。そこにシルフの『MP5』とシェルの『ヘラクレイスの弓』の5連射が撃ち込まれた。かわいそうなゴブリンは、残骸も残らなかった。MP5の大音響が第1階層に響き渡り、他の冒険者達がこちらを注視している。さあ、さっさと奥に行きましょう。


  それからは、ミリアさん、ビンセント君、ミリちゃんが先頭、シルフとシェルが中間、僕が後衛という体形で進む。ゴブリン、オーク、トロール、オーガまでは、サクサクと討伐していく。


    1.魔物が現れる。

    2.メリちゃんが石を投げつける。

    3.ミリアさんがファイアを放つ。

    4.ビンセント君が、魔物に切り付けてから逃げる。

    5.シェルさんが殲滅する。

    6.ゴロタが魔石を回収する。

    7.次の獲物を狙う。


  完全に流れ作業だ。あっという間に地下第1階層のボスエリアに到達してしまった。階層ボスはケルベロスだ。冥界の番犬と言われている3つの頭を持つワンコだ。あ、先行していた冒険者チームが倒れている。どうやら息をしていないようだ。きっと初心者チームが自分たちのレベルを考えないで挑んだのだろう。


  まあ、彼らのことは諦めて、いつものパターンで行こうかと思ったが、どうもこのままでは寝覚めが悪い。ケルベロスに食われる前に、『念動』で安全エリアに引き戻す。シェルに治癒をお願いして、僕はケルベロスを殲滅することにした。『オロチの刀』を抜き放つ。左右面打ち込みの要領で『斬撃』を飛ばす。ケルベロスの3つある頭の内、左右の頭が地面に落ちてしまった。それでも、平気なのは流石である。放っておくと、直ぐに再生してしまうので、真ん中の頭は頭頂部から二つに分断してしまう。頭だけと思ったが、胸の辺りまで避けてしまった。夥しい血を流しながら絶命してしまった。僕は、直ぐに魔石を回収に行く。さっきのパーティは、5人組だったが、蘇生できたのは2人だけだった。3人の遺体と2人をダンジョンの入口まで『転移』させてから、僕達は地下第2階層に潜ることにした。


  地下第2階層に出た広場には、冒険者達が固まっていた。どうしたのか聞いてみると、この先にゴブリンソルジャーが隊列を組んで待ち構えているそうだ。え、ゴブリンが隊列? 僕は、『暗視』と『遠見』スキルを使って見てみると、戦闘には盾を構えた重装備ゴブリンが30匹、10匹ずつの横隊になって整列している。その奥には軽鎧のゴブリンが2列60匹、その後ろには両手剣を持っている剣士ゴブリンが30匹、その後ろに弓部隊、最後尾にはゴブリンメージの魔導士部隊が控えていた。


  シェルが、『ヘラクレイスの弓』を討ってみる。敵部隊の上に張られたシールドにことごとくはね返されてしまう。これでは、こちらの魔法も跳ね返されてしまうだろう。こうなったら肉弾戦だ。僕は、左手に『オロチの刀』、右手に『ベルの剣』を構えて、敵の前に走りこんでいく。遠距離攻撃を防ぐために張られているシールドは、頭上にあるため、近距離戦には全く効果が無かった。僕は、左の刀と右の剣を交互に切り裂いていく。前衛が構えている大館ごと、ゴブリンソルジャーたちを切り刻んで行く。将棋倒しのように、隊列が崩れていく。あ、後ろの方から、喚声が上がっている。固まっていた冒険者達が突っ込んでくるのだ。僕は、奥のアーチャーとメイジの頭上に特大のサンダーボルトを放つ。完全に予想していなかったようで、直撃を受けた者は即死、直撃を受けなくても近接して落雷を浴びたようなもので、殆どの敵が行動不能になっている。そのまま、前の敵を薙ぎ払いながら、部隊最高峰まで移動する。


  いた。指揮官が、ファング・ウルフに騎乗して、こちらを見ていた。ハッとして反転しようと手綱を引いたが、それが、そいつの最後だった。胸を僕の『斬撃』で貫かれ、大きな穴があいたまま動かなくなった。鞍上の騎手が死んだとも知らず、ぶら下げたままファング・ウルフは奥の方に向かっている。あ、ちょっともったいなかったかな。あいつは、きっとゴブリン・ジェネラルだ。魔石だって金貨1枚以上の価値があったかもしれない。しかし、あれだけ大きな穴を開けてしまったのだ。きっと魔石も消失してしまっただろう。


  後ろの方から聞こえていた戦闘の音もやんでいる。どうやら、殲滅したらしい。みな、黙々と魔石を取り出したり、武器・防具を回収している。ちゃっかり、壁をカンカン掘っている者もいた。シェルやミリアさん達が集合した。僕達は、先に進むことにする。冒険者の内、何人かが付いて来ているが、放っておく。いける所まで行って見るだけだ。後続の冒険者パーティが全滅しても僕には関係ない。そう思う事にした。実際は、きっと助けてしまうだろうけど。メリちゃんが、青い顔をしている。大量のゴブリンの死体を見たせいだ。ちょっと見には、ゴブリンとコボルトはよく似ている。ゴブリンは、頭がでかく剥げていて、下あごから牙が生えているのだが、肌の色が似ているせいか、どうも全くの異種族という気になれないらしい。まあ、それで言うなら、獣人の犬人とケルベロスやファング・ウルフも近親感を感じるかもしれない。この世界では、深く考えず、違うものは違うと割り切らなければいけない。うん、メリちゃん、頑張って。広場の奥は、迷路のようになっていたが、オークの上位種がオーガが出てくる程度で、メリちゃん達のレベル上げの餌食だった。魔石もキチンと回収していたので、後続のパーティにはうま味がないようだ。そのうち、いなくなってしまった。きっと、どこかで壁をカンカン叩いているのだろう。


  さあ、地下第2階層のボスエリアに来た。階層ボスは、ミノタウロス3体だ。大きな両刃斧を持っているのが1体、長い剣を持っているのが1体、最後の1体は片手剣と小楯を持っている。奴らは僕らを見つけると一斉に襲い掛かってきた。うん、それが正道だ。せっかく3体もいるのに1体ずつでは、集団の威力を発揮できなくなる。


  あ、シルフのMP5が火を吹いた。ついでにメリちゃんの小石もぶつかっている。あのう、ミリアさんとビンセント君まで、石を投げているのは何故ですか。シルフの30発入り弾倉が空になった時、ミノタウロスの肉の塊が散乱していた。


  ミリアさん、ビンセント君それにメリちゃんの身体が青白く光った。レベルが上がったようだ。どれくらい上がったのか分からないが、ミノタウロス3体となると『B』ランクソロではきついレベルだ。魔道具を駆使して何とかと言うレベルだから、ミリアさん達のレベルもグインと上がっているはずだ。


  ミノタウロスの武器を回収して、イフクロークに収納する。魔石は、それぞれで回収させたが、一番うまかったのはメリちゃんだった。解体用ナイフを上手に胸に差し込んでこじって魔石を取り出している。真っ赤な手は、洗濯石で綺麗にしていた。一番、下手だったのは予想通りビンセント君だ。ナイフを刺すまでは良いのだが、こじる力と方向が上手く行かないようだ。まあ、手が震えているんじゃあ、上手く行きませんよ。


  もう帰りますかと聞いたら、もう少しだけ、潜っていたいとのことだった。メリちゃん、急激なレベル上げで顔色が悪いんだけど。いつもの薄い緑色が青色がかった緑色になっている。まあ、どちらも緑色なんだけど。足元もフラフラしているので、オンブをしてあげることにした。最初、『赤ちゃんじゃあないから。』と恥ずかしがっていたが、シェルは今でもオンブして旅行しているんだと教えてあげたら、しっかりとオンブをしてきた。シェルさん、そこで『そうよ、そうよ。』と頷かないでください。


  地下第3階層は、密林エリアだった。ビンセント君は、地下に植物が生えているのに吃驚していたようだ。シェルはあからさまに嫌な顔をしている。通常、密林エリアは地下第4階層以下の場合が多い。地下第3階層は岩山エリアが普通だ。でも、そんなことに絶対はない。いつもなら僕の背中にオンして目を瞑っているのだが、今回は、メリちゃんがオンブされているので、シェルの逃げ場が無い事だ。シェルが『帰ろう。』と言ってきた。うん、悩むところだ。密林エリアで嫌なのは、手の平よりも大きいヤマビルや強力な毒牙のムカデ、あと糞を投げつけてくる猿にオナラがとても臭いゴリラなどなど、戦うのを避けたい魔物ばかりだ。そして強力な火魔法は、大火災になるおそれがあるので使えない。うん、やはりここは帰ろう。


  え、ビンセント君、少しだけ奥に行ってみたいの? 何事も経験ですね。仕方がないので、ビンセント君を先頭にソロソロと進んで行く。10mも進まないうちに大量のヤマビルがビンセント君に降りかかってきた。これは大きい。1匹でビンセント君の頭を覆いそうなくらい大きい。


    「ウギャー!」


  貴族とは思えない悲鳴を上げて、逃げて来た。シェルとミリアさんは、ビンセント君に近づかれないようにもっと下がってしまう。可哀そうなビンセント君。仕方がない。『フリーズ』でヤマビルを凍らせ、『念動』で引き剥がしてあげる。あーあ、ヤマビルに齧られた後から、ダラダラ血が垂れている。放っておくと、山ビルの溶血性毒素で物凄くはれ上がってしまうのだ。解毒魔法の『デポイズン』と『ヒール』で治療してあげた。あ、そう言えば、ビンセント君にシールドを掛けるのを忘れていた。まあ、内緒にしておこう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ