表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
450/753

第2部第2話 旅の仲間達

ゴロタ達の最初の冒険は、奴隷制度の廃止でしょうか。

(4月2日です。)

  ゴロタは、イオラさん達の後について森の中に入っていった。下草がびっしり生えているかと思ったら、踏み分け道ではあったが、きちんと道が出来ていた。


  北に2時間位進んだ頃、左右から小高い山に囲まれた広場に出た。ひろばの真ん中に木彫りの像が1本立っている。異形の顔が何面も彫られている。一部彩色されているが、あとは煤けた像だ。ゴロタは、おんぶしていたシェルを下ろした。シェルは、30分以上歩き続けようとすると、直ぐにオンブを要求してくる。そのうち、足が腐ってしまいますよ。


  『邪神像、神様。』


  イオラさんたちが、像を指さして叫んでいる。邪神も神として崇めているのだろうか。しかし、彼らのサイズからは、この像はいかにも大きい。それに、ノコギリやノミもないのに、この像をどうやって作ったのだろう。


  『邪神、前からあった。ずっと、あった。』


  広場の奥は、また森になっていたが、少し入ったところにイオラさん達の住居があった。倒木が寄りかかっているところに大きな枝や葉を屋根代わりに葺いているだけの粗末なものだった。当然、ゴロタ達が入れるようなスペースはないし、そもそも床がなかった。枯葉を敷き詰めているところが寝室だ。しかし、獣が襲ってきたら、直ぐに樹上に逃げられるように、誰かが起きて見張りをしなければならない。


  ゴロタは、広場に出て、イフクロークからキャンプセットを出した。テントにマット、テーブルセットに簡易コンロ、それとLEDランプだ。今日は、まだ明るいが、ここで野営の予定だ。イオラさん達のためにバーベキューをしてあげよう。かなりの量のお肉と野菜を出しておく。塩、コショウそれとハーブで下ごしらえをしておく。あと、土魔法でお風呂を作っておいた。水魔法で、湯船にたっぷり水を張ったら、火魔石に魔力を通して、発熱させてから、水の中に沈める。30分もしたら、丁度よい湯加減になるだろう。


 イオラさん達夫婦は、興味深げにゴロタのやることを見ていた。シェルは、いつものように焚き木拾いだが、イオイチ達3人を連れて行っている。というか、3人に焚き木を拾わせているだけのようだ。相変わらず、高ビーで何もしないシェルだった。


  イオフさんは、ゴロタの料理をじっと見ている。特に塩と胡椒に興味があるみたいだ。ああ、そう言えば、こんな森の中では、調味料が手に入る訳ないか。ゴロタは、イオフさんを手招きして、手のひらに塩を振ってあげる。舐めるしぐさをしてあげたら、マネをして塩をペロリと舐めている。吃驚しているようだ。物凄い勢いで自分の手のひらを舐めている。イオラさんも、オズオズと手を出してきた。塩を振りかけてあげたら、美味しそうに舐めている。きっと、塩分のおいしさを初めて知ったのだろう。


  お肉の下ごしらえが終ったところで、スープの具を作る。キノコにじゃがいも、それにタマネギとベーコンだ。ベーコンの端っこをイオフさんに上げたら、恐る恐る齧っていた。すぐに、イオラさんに手渡す。イオラさんも全部食べないで残している。きっと子供達に取っておくのだろう。うん、家族思いだ。


  シェル達が帰ってきた。子供達が、抱えきれないほどの焚き木を持っている。シェルは、小さなキノコを幾つか持っているだけだ。ま、いつもそうだからいいんだけど。竈に焚き木をセットし、火魔法で点火する。空気の通り道がキチンとできているので、いぶったりせずにすぐに点火した。スープが出来るまでの間、シェルがお風呂に入ることにした。ついでに、子供達も一緒に入れて貰う。とにかく、彼らは臭いのだ。獣臭と汗の乾いた匂いそれに、いろんな匂いが混ざっている。シェルは、直ぐに湯船には入れず、洗濯石とシャワー石で汚れを洗い流している。体の至るところの毛が絡まっていて、簡単には綺麗にならないようだ。イオフさんも、粗末な服を脱いで一緒にシャワーを浴び始めた。イオフさん、平素から毛づくろいをしているようで、絡まっている所はないが、やはり汚れているようだ。


  イオフさん、やはり女性なのだろう。胸と下半身をゴロタから見えないようにしている。そう言えば、シェルは素っ裸が恥ずかしくないのだろうか。まあ、まっ平らな胸では、隠すところもないだろうが。イオラさんも、シェルの裸身には全く興味が無いみたいで、イオフさんの入浴姿を一生懸命見ている。あのう、それって覗きなんですけど。


  洗い終わってから、浴槽に入って温まったのだが、抜け毛が凄い。結局、もう一度、お湯を張りなおすことになってしまった。シェルが上がってから、イオラさんとイオフさんが一緒にお風呂に入った。でも、魔力が無いので、洗濯石やシャワー石が使えないみたいだ。しょうがないので、石鹸を出してあげて、使い方を教えてあげた。あ、泡が出るのが面白いらしくイオイチ達も、もう一度お風呂に入っている。まあ、いいけど。何回入っても。


  イフクロークから、大きなタオルを何枚も出してあげる。とりあえず、身体に巻いて貰う。体形を見ても、ゴロタの収蔵品の中に、イオラさん達に合う服は無かったのだ。イオフさん、とっても喜んで、器用に子供達をタオルでくるんでいた。森の小枝を使って、ピン代わりに止めている。へえ、そんな使い方もあるんだ。感心しているゴロタだった。


  それから、食事タイムだ。彼らにとっては、初めて食べる食べ物ばかりのようだ。お皿に乗せて、スプーンとフォークを使って食べるのも初めてらしく、苦労していたようだが、さすがイオフさん、直ぐに起用に使い始めて、子供達に使い方を教えていた。彼らには食べきれない位の量だったのか大量に余ってしまった。仕方が無いので、残り物を、穴の中に捨てようとしたら、イオフさんが慌てて止めていた。


  「そのご馳走、明日のために保存したいんですけど。」


  「え、明日は別の料理を作りますよ。」


  「え、別の?それじゃあ、この残したものは?」


  どうやら、イオラさん達、料理を全部食べ切らずに保存したかったらしいのだ。ゴロタは、彼らにそんな必要はない、今日はお腹一杯食べて良いと教えてあげた。それからの彼らの食べること、食べること。どこにそんなに入るのかと思うくらい食べ続けていた。夜、彼らのためにテントを別に出してあげた。キャンプエリア全体をシールドで包んでいるので、虫1匹入ってこない。夜の見張りはいらないと教えてあげたんだけど、安心できなかったみたいだ。まあ、しょうがない。もう眠たいので、眠ることにした。


  翌朝5時、起きてみると見張りのイオニが、地面に横になって寝ていた。そっと念動で浮かばせてテントの中に入れてあげた。さあ、朝の稽古だ。キャンプ地から少し離れたところで、剣の型の稽古をする。いつもの癖で、この稽古をしないと朝食が美味しくない。1時間ほど稽古をしてから、朝食の準備だ。


  今日の朝朝食は、トーストとハムエッグだ。あと、蜂蜜入りのホットミルクにしよう。まず、食パンを2斤出す。パン用ナイフで1斤を6枚に切り分けた。竈の上に簡易オーブンを作り、パンを並べる。上にも火魔石をセットしているので、上と下から焼き上げていく。


  パンが焼けるまでの間にハムエッグ作りだ。大きなフライパンで、一度に4人前ずつ焼く。全部で7人だが、残りの1人前はお替り用だ。


  パンを焼いている間にイオラさん達が起きてきた。朝の挨拶をする。


  「おはよう。」


  「おはよう?なんだ。まじないか?」


  「朝起きた時の挨拶だよ。人間は、皆、こうやって挨拶するんだ。」


  「そうか、おはよう。おはよう。おはよう。」


  「おはようは、1回で良いんだよ。それと目上の人に挨拶するときは『おはようございます。』って言うんだ。まあ、僕は目上の人ではないけど。」


  「いや、ゴロタ殿は我が主、おはようございます。ゴロタ殿。」


  うん、イオラさん、まったく知恵が無いわけではないようだ。話し方も随分人間らしくなっている。楽しい朝食の時間だ。皆、席に着いた。シェルが、生と死の神、ゼロス様に祈りをささげる。ゴロタも目を瞑っている。イオラさん達は、何をしているのか分からず、キョロキョロしているみたいだった。


  さあ、食べよう。パンは、一杯焼いているし、バターを塗って、スライスチーズやジャムを乗せて食べよう。ハムエッグには軽く塩コショウをしている。スープはポトフ風の具沢山スープだ。ハーブを仕込んでいるので、香ばしくってとても美味しい。スープはたっぷりあるから、お替り自由だよ。


  食事がおわってから、後片付けをイオフさんに任せて、イオラさんに色々聞いてみた。まず、彼らイオークの他の仲間はどうしたのか聞く。イオラさんから、驚くべき話が聞かされた。


  かれらイオークは、もともと森の中で暮らしている種族で、若干の知恵とすばしっこさで、まあまあ暮らすのには困らなかったそうだ。しかし、数十年前、北の国から人間達がやってきて、彼らを強制的に連れ去って行ったらしいのだ。何とか逃げて来た仲間に聞いたら、彼らを奴隷として酷使しているらしいのだ。それからは、奴隷狩りから逃れて、どんどん、南下してきたらしいのだ。この最南端の森は、食べ物も少なく、彼ら達も何とか生き延びてきたらしいのだが、仲間は、死ぬか奴隷狩りの罠に引っかかってしまったそうだ。


  話しながら、イオラさんとイオフさんは泣き始めてしまった。きっと、大切な人をなくしたり、辛い思いをしてきたのだろう。うん、これは早く、その奴隷の国に行かなければ、大勢のイオーク達が死んでしまうかも知れない。


  イオラさんの話によれば、この森は、3日ほどで抜けられるそうだ。そこは人間の国で、鉄の武器を持っているので、とても敵わないと言っている。うん、でも大丈夫。ゴロタは、イオラさん達が安心して暮らせる国を作ってあげようと考えていたが、そのことは未だイオラさん達には内緒にしていた。

第2部は、ゆっくりと掲載して行こうと思ったのですが、なんとなく続きが気になってしまって。こんな調子では、長続きしないのではと心配です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ