第43話 美人のお姉さん クレスタさん
ゴロタは盗賊狩りに行きます。でも、本当の事は、まだわかりません。
(4月29日リンダバーグ村の夜です。)
宿屋はツインが一つだった。
いつものように、シェルさんをパンツ1枚にしてベッドに転がす。
エーデル姫は、シャワーを浴びてる。ゴロタは、洗面所に行って、濡れたタオルを準備し、シェルさんの身体を拭いてあげた。途中、寝ぼけたシェルさんが抱きついて来たが、無視した。
ツインベッドの一方を、もう片方にくっ付けて、ダブルベッドのようにする。
エーデル姫が、シャワー室から出て来た。凄く小さなパンツ1枚で、あのネグリジェは着ていない。
あの、エーデル姫、パンツが小さすぎて、何か見えているんですが。
ゴロタは、スルーしてシャワーを浴びに行った。
シャツと長パンツを付けて、シャワー室を出ると部屋は暗かった。
エーデル姫は、もうベッドの中だ。
ゴロタは、ベッドの間の隙間に入って寝た。直ぐにエーデル姫が寄ってきて、お休みのキスを要求してきた。
長いキスをしてから、ゴロタは、シェルさんの方を向いて寝た。エーデルさんが、ゴロタにくっ付いてきたが、色々背中に当たるのはスルーした。
夜中、変な感じがしたので、何かなと思ったら、エーデルさんが、ゴロタの大事なところを、パンツの上から触りながら何かしている。眠かったので、そのままほっといて眠った。
朝、エーデル姫は、またシャワーを浴びていた。
翌日、ゴロタ達は、来た駅馬車には乗らず、3日後にこの村を出る駅馬車に乗ることにした。
今日は、村の中の散策と、旅の用品の買い足しをした。取り敢えず買っておいて、宿に戻るときに受け取ることにした。
2日目の夜は、ワカコさんの手料理を食べた。大豆を発酵させたソースを使い、魔法石をテーブルの上で熱して、その上に置いた鍋で、牛肉と野菜を一緒に煮て、卵に付けて食べる料理だ。『スキなんとか』という変わった名前の料理だったが、とても美味しかった。
その日は、シェルさんはワインを飲まなかったので、静かな夜だった。昨日で懲りたのかも知れない。宿屋に戻るとき、ノエルが送っていくと言ったが、目的が分かっているだけに、女の子が夜で歩くのはいけないと諭して諦めさせた。
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(5月2日です。)
次の日、ダンテさんの家で遅い朝食を食べていると、村長が訪ねて来た。冒険者であるゴロタ達に、お願いがあるらしい。
朝食が終わるまで、待ってて貰い、皆で話を聞くことにした。
何でも、南の洞窟に野盗が棲み付き、毎年、収穫の3割を納めさせているとのこと。
隣町の代官様に相談しても、自分の分の年貢を納めてさえいれば、文句は無いので、何もしてくれないそうだ。そのため、村はいつまでも貧乏で、教会だって、ダンテさんがいなければ維持できない状況だとのこと。
そういえば、教会を良く見てみるとボロボロだった。屋根は、瓦が落ちている所に板を張っているし、壁も所々崩れていた。
ゴロタは、早速、盗賊退治に行くことにした。村長の話では、10人位の魔法使い集団らしい。年貢さえ納めれば、他に悪い事をしないらしい。変わった盗賊達だと思った。
魔法を使えるのならば、幾らでも生きていけるのにと思ったが、兎に角、行ってみる。
今回は、ゴロタだけで行くことにした。ノエルは、ワカコさんと、教会の大掃除をするそうだ。シェルさん達は、村の周りを探検するそうだ。お前達は、子供か!
敵との会話は、イフちゃんにして貰う。そう言えば、イフちゃんは、来た時からから具現化しており、ノエルと一緒に寝たらしい。
村を出てから、1時間位歩いたので、凡そ20キロ位の距離だろう。小高い丘の中腹に、その洞窟があった。
木の陰から様子を見てみると、洞窟の入り口で、火を使って何かをしている。どうやら、昼食の準備をしているみたいだ。女の盗賊だった。2人で準備をしていた。年齢は、良く分からないが、2人とも若そうだ。
それよりも、その格好だ。5月上旬とは言え、まだ肌寒い時もあるのに、粗末な布を腰に巻いているだけで、上半身は裸だ。髪はボサボサだったが、顔や身体が汚れているという事はなさそうだ。
ゴロタは、鼻が良いので、洞窟の中から匂ってくる物凄い匂いに、頭がクラクラしそうだ。この匂いには、覚えがある。エーデル姫から時々匂ってくる匂いだ。一昨日の夜も、後ろから匂っていたのを覚えている。
イフちゃんが彼女達に近づいた。いつものミニスカート姿だが、裾を少し長くして、パンツは見えないようにしている。
女達は、近づいてくるイフちゃんを見て、驚いているが、10歳位の女の子を恐れる様子はない。当たり前だ。
「お主達が、盗賊か?」
「え、盗賊。私達が?そんな訳ないでしょ。」
「そうよ。あたい達はねえ、人様から物は貰っても、奪った事は一度もないよ。」
どうも、話が合わない。
「お主達の頭領に会いたい。」
イフちゃんの話し方に、違和感を覚えた二人は、火をそのままに洞窟の中に走って行った。
ゾロゾロと女集団が出てきた。殆どの者がボロを纏っているだけで、どう見ても盗賊というよりも、浮浪者だ。しかし、汚れた感じは全くしなかった。定期的に水浴びをしているか、洗濯石で綺麗にしているのだろう。
頭領らしき女が、前に出てきた。皆と同じくボロを纏っているが、胸も、ちゃんと隠れていた。
「あたいらに、何か用かい?」
ゴロタが木の陰から出て行った。ゴロタの腰に下げている双剣のため、女達に緊張が走る。
しかし、目のやり場に困る。大事なところは隠しているが、胸は特に隠す気もないらしい。
ゴロタは、あまり胸を見ないで、彼女らの顔を中心に見ている。
「お主らは、毎年、村から年貢を巻き上げているだろう。それで、村の人達が困っている事を知っているか?」
「はあ?あたい達はねえ、この周辺の魔物や野獣を狩ってやっているんだ。その報酬として、あたい達が生きていく最低限のものを貰っているんだよ。それで、文句があるなら、自分達で何とかして貰おうじゃ無いか。」
どうも、話が違うようだ。
彼女らの話によると、彼女らは、全員、元冒険者だった。魔法使いとしてパーティーに参加していたが、男の仲間にエッチな関係を迫られたり、中には無理矢理に関係させられたりと、女性の悲哀を痛感してパーティーを抜け出したのである。しかも、チームリーダーなどから、物を盗んだとか、先に逃げたなどと言いがかりを付けられ、冒険者資格を剥奪された者ばかりだそうだ。
そういう境遇の女の子ばかりが集まって、田舎の村を回って、魔物退治などの請負仕事をしているのだ。決して、村人を脅したり、暴行したりした事はないそうだ。
彼女らの格好だが、村に行ったり、狩に行く時は、ちゃんとした格好をするが、平素は、勿体無いので、こんな格好をしているそうだ。どうせ、女性しかいないし、見られたって恥ずかしい事はないそうだ。
「お主ら、何を言っているんだ。ここにいるゴロタは、15歳の男だぞ。」
それを聞いた彼女らは、悲鳴を上げながら洞窟の中に逃げて行った。
暫くして、出てきた彼女らは、普通の女性だった。中には、シェルさんと同い年位の女の子もいた。
頭領は、クレスタさんという名前で、年齢は25歳位の、赤く長い髪を後ろで結わえている、青い目の美人さんだった。今は、紺色の長いドレスと、茶色の靴を履き、三角のトンガリ帽子を被っていた。
村長さんと良く話し合う必要があるので、これから村へ行こうと言うと、もうお昼だし、これから行ったら、帰って来れなくなるので明日にしようと言われた。
「大丈夫じゃ。ゴロタに付いて行けば1時間で村じゃ。」
皆、キョトンとしていたが、誰かが『空間移転魔法』と言ったので、驚いてゴロタの顔を見た。
「まさか!」
「でも、あるかも。」
「背が小さいし。」
「顔が可愛いし!」
「何か、そそられるし。」
何、言ってるんですか、この人達は。
ゴロタは、皆の前で、クレスタさんをお姫様抱っこした。
「「「えーっ、ボス、ずるーい。」」」
クレスタさんは、妬みと顰蹙を買った。本当は、ゴロタとしても、オンブの方が走りやすい。しかし、クレスタさんの胸を見ると、オンブでは背中に凶器が当たるので、無難なお姫様抱っこにしたのだ。
ゴロタは、いきなり猛ダッシュで走った。
「きゃーっ、何これ、早過ぎるんですけどー。」
喋り方がおかしい。丘を駆け下りてからは、さらにギアを上げた。出会う獣や魔物は、『威嚇』で蹴散らしながら走る。
20キロを40分で駆け抜けた。村の外で探検ごっこをしていたシェルさん達が、土煙りを上げながら、向かって来る何かに警戒していたが、ゴロタだと分かってビックリし、グラマーな美人のお姉さんを抱っこしているのを見て、『またか』と言うジト目で見ていた。
クレスタさんは、顔が真っ赤だったが、目がトロンとしていた。ゴロタが、降ろそうとしても、首に回した両腕を離そうとしないので、シェルさん達に無理矢理、引き剥がされていた。
村に入ると村長の家に向かった。勿論、シェルさん達も一緒だ。
村長は、見覚えのあるクレスタさんとゴロタが一緒に訪ねて来たことに驚いたが、ゴロタ(イフちゃん)から話を聞くと、頭を抱えていた。
村長は語り始めた。
実は、クレスタさん達に納めている報酬(年貢ではない。)は、1割位なのだ。しかし、代官から、後2割上乗せして、3割を上納している事にしろ。2割は、コッソリ自分に渡すように脅されていたのだ。
でも、それでは暮らしが成り立たない。そこで、盗賊を討伐した事にすれば、代官に余分に納めている2割が無くなり、公定の3割を渡すだけになるだろうと考えたのだ。
勿論、クレスタさん達には、魔物討伐料として、1割を払い続ける予定だった。
ゴロタ君は、冒険者と言っても、小さな子だ。クレスタさんに対して余りひどい事はしないだろうと考えたのだった。
それを聞いていたエーデル姫が、超怒り始めた。ここは、キャッシュ領とは言え、グレーテル王国内だ。このような法と秩序を無視した行為が許される訳が無い。
エーデル姫が、この先の町にいる代官に抗議をすると言った。それには、皆で付いていくことにした。
話は、終わった。クレスタさんは、去年の秋以来の村だったので、色々買い物をしてから帰りたいと言ったので、シェルさん達と一緒に買い物に行かせた。
ゴロタは、洞窟で待っている仲間の人達へのお土産として、昨日の残りの鹿肉や鳥肉、それに乳製品をいくつか買ってベルのザックに入れた。簡易竃も忘れなかった。
クレスタさんが、帰って来たので洞窟に戻る事にした。シェルさんも一緒に行きたがったが、それでは洞窟に着くのが遅くなるので、ゴロタだけで行く事にした。
背中のザックに入っている荷物が増えたが、ゴロタにとっては、全く問題が無かった。
また、クレスタさんをお姫様抱っこして、洞窟に向かった。帰りは、ユックリ歩いたので、洞窟まで1時間半掛かってしまった。
どうやら、村のお代官様が一癖ありそうです。




