エピローグ1 フェルマー王子の冒険
物語は終わりました。とても中途半端です。今回は、戦闘シーンらしきものはありません。でも、ほのぼの感があれば、嬉しいです。
(2032年4月7日です。)
今日は、グレーテル王国の王立音楽院大学高等部の入学式だ。フェルマー王子とドミノちゃんは、無試験で高等部へ進学した。中等部は、定員50名だったが、高等部は100名だ。各国の音楽の才能に溢れている子たちが集まってくる。タイタン市やセント・ゴロタ市にも音楽大学はあるが、伝統と教授陣の豊富さには敵わない。
フェルマー王子は、中等部を卒業した時に、シェルさんの許可を貰って、冒険者登録をした。ドミノちゃんも一緒だ。能力測定結果は、期待していた通りだった。
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【ユニーク情報】
名前:フェルマー・テーリ・ド・カーマン
種族:人間族
生年月日:王国歴2016年09月19日(15歳)
性別:男
父の種族:人間族
母の種族:人間族
職業:王族 高校生 歌手 冒険者ランク『C+』
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【能力】
レベル 14(11UP)
体力 130(120UP)
魔力 80(70UP)
スキル 140(100UP)
攻撃力 150(140UP)
防御力 110(100UP)
俊敏性 140(130UP)
魔法適性 火 聖
固有スキル
【威嚇】【瞬動】
習得魔術 『ファイアボール』
習得武技 【斬撃】
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毎日、剣の稽古をし、日曜日には、シルフさん達とダンジョンに潜っていた甲斐があった。武技に『斬撃』が加わっている。これは、大きな力を与えてくれるだろう。通常は、どんなに能力が高くても、『Fランク』からスタートするのが決まりだ。
しかし、グレーテル王国の冒険者ギルド総本部で登録したので、フェルマー王子のことは良く知られていた。奥で随分長く検討していたが、結局、冒険実績が無いので、『E』ランクからスタートだった。
ドミノちゃんも計測したが、魔力は高いが、戦闘力が中学生以下のため、最低の『F』ランクだ。
このランクは、一人では、討伐や戦闘のクエストは受けられない。採集や、雑用の仕事をこなして、ギルドポイントを稼いでいかなければならない。
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【ユニーク情報】
名前:ドミノカレン・モンド
種族:魔人族
生年月日:王国歴2016年10月10日(15歳)
性別:女
父の種族:魔人族(巨人族)
母の種族:魔人族(小人族)
職業:王族 高校生 歌手 冒険者ランク『F』
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【能力】
レベル 8(5UP)
体力 40(30UP)
魔力 260(190UP)
スキル 30(20UP)
攻撃力 20(10UP)
防御力 20(10UP)
俊敏性 10
魔法適性 聖 光 魔
固有スキル
【治癒】【封印】
習得魔術 『ライティング』、『地獄の触手闇の世界に誘う者達』
習得武技 なし
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ドミノちゃんは、もともと冒険者になる予定ではなかったし、シルフさんやゴロタさんに鍛えられてもいないのでしょうがない。
習得魔術の『地獄の職種、闇の世界に誘う者達』は、使えるらしいが、どうやったら使えるのか分からない。それにこの前みたいに意識をなくしてしまっては、どうしようもないので、使う事を封印している。
シルフもいないし、ドミノちゃんと2人で冒険に出るのは、まだ早いような気がしていた。しかし、学校が始るとあまり冒険ができなくなるので、卒業休み中に、少しでも実績を積みたかったのである。
フェルマー王子でも受注できる依頼はないかと、ボンヤリ依頼ボードを見ていたら、後ろの方が騒がしい。振り向くと、ドミノちゃんがタチの悪そうなパーティーに絡まれていた。
無理やりパーティーに組ませようとしているのだ。フェルマー王子は、怒りで頭が真っ白になってしまった。
ドミノちゃんのところに駆け寄り、男達との間に割って入った。その瞬間、目の前が真っ暗になり、星がチカチカしていた。男の一人に思いっきり殴られたのだ。
口の中が鉄の味がした。口の中が切れている。良かった。歯は無事だった。フェルマー王子は、2m位吹き飛ばされていた。これで頭の中の思考が正常になった。
フェルマー王子は、『瞬動』スキルを使ってドミノちゃんを取り戻した。男たちは、あっという間にドミノちゃんを3m位離れたところに連れ去っていったので、フェルマー王子達に警戒心をあらわにした。
基本、冒険者同士のイザコザには、ギルドはタッチしない。今回の件も、パーティーメンバーをめぐっての争いと言うところでケリをつけるようだ、ただし、ギルド内での武器の使用及び攻撃魔法の使用は厳に禁止されている。
フェルマー王子は、スキルを使ったので、決して魔法を使っていない。だから誰からも咎められることはないのだが、相手はそうは思わないようだ。
「てめえ、ここで魔法を使っていいのか。冒険者資格をなくしてやる。」
この男は、大きく2つ間違えている。1つは、フェルマー王子は魔法を使っていないこと。2つ目は、『瞬動』は、相手に対して何らダメージを与えないので、攻撃魔法にはならないのである。男たちが、ギルドに訴えても、ギルドは相手をしないだろう。
しかし、そんなことは知らないフェルマー王子は、ドミノちゃんを少し離して、ゆっくりと男たちの正面に立っていた。
「この子は。僕の連れで、すでに僕と二人でパーティを組んでいます。本人もいやがっているではありませんか。」
「フン、俺たちはよ、親切に冒険者の心得を教えてあげようとしてるだけなんだ。大体、なんで魔人の娘が冒険者なんだよ。魔人は、魔物の子孫だと言われているじゃないか。」
これは、完全に間違いだ。魔人は、『魔王』の子孫と言われているのであり、魔界や冥界に住む魔物たちとは全く異なる存在だ。でも、そんなことを彼らに説明してもどうしようもない。
フェルマー王子は、ドミノちゃんの手を握って、ギルドの外に出ようとした。手を握ったのは、いつもの癖で、特に意味はないが、これが、男たちの疳の虫に触ったらしい。
「てめえ、ここでイチャイチャするんじゃねえ。」
パーティーリーダーらしい男が、ニキビだらけの顔を真っ赤にして起こっている。見たところ、年齢は20歳まで行っていないだろう。身長は、フェルマー王子よりも少し小さいかも知れない。
フェルマー王子は、この3年間でぐんぐん伸びて、今は身長173センチだ。あと、5センチくらいは伸びるだろう。しかし、顔は、小学生のときのまま、大きくしたような童顔だ。体も、締まっているのだが、はた目には痩せてヒョロヒョロに見えるらしい。
「あなた達、一体私たちに何を言いたいの?」
ドミノちゃんが切れてしまった。手がプルプル震えている。あの、ドミノちゃん、それだと怖がっているようにしか見えないんですけど。
「お嬢ちゃん、ダンジョンに連れて行ってやるぜ。その坊やじゃ、まだダンジョンは潜れないだろうからな。」
確かにその通りだった。今のフェルマー王子のランクでは、ダンジョンにリーダーとして潜ることは出来ない。でも、彼らと一緒に潜る気はサラサラない。魔物より怖いものが出てきそうだからだ。フェルマー王子は、さっき、ボードからとっさに取った『D』ランク相当の依頼カードを見せて、
「御心配には及びません、この依頼を受けますので。」
フェルマー王子は、よく見もしないで、胸を張って答えた。その依頼書を見た男たちは、完全に馬鹿にしたような態度だ。
「おめえ、その依頼をよく見たのか?それはな、半年も誰も受けない腐れ依頼だぞ。おめえ、バカじゃねえか?」
男たちは、完全に馬鹿にした様子で、ギルドを出て行った。フェルマー王子は、まじまじと依頼書の内容を確認してみた。
依頼は、『幽霊の駆除』だった。
は?幽霊、魔物のゴーストとかスケルトン、ゾンビとは違う。あのふわふわした幽霊だ。依頼者は、王都から、徒歩で30分位離れた小さな集落だった。村よりも小さいので、衛士もいなければ教会もない。そんな集落を、この国では『庄』と呼んでいる。依頼の庄は、『フレブルの庄』と呼ばれているところで、その庄の長からの依頼だ。報酬は、夕食と朝食それに銀貨2枚だ。
冒険者を1人雇うと、最低でも銀貨2枚だ。ゴロタ帝国では、2万ギルだがグレーテル王国では、いまだに通貨制度を採用していない。金貨、銀貨の価値は重さだ。しかし、公定兌換率でいうと、銀貨1枚は、ゴロタ帝国通貨の1万ギルとなるのだ。
賃金も安いが、依頼内容も変だった。『幽霊』の討伐ではなく、『幽霊の駆除』となっている。詳しくは、長が説明してくれるらしい。
仕方がない。嫌な予感がするが、この依頼を受けて、フレブルの庄に向かった、フレブルの庄は、本当に小さな集落だった。長の家と、あと5件くらいの農家がひっそりと集まっている。
庄の長は、小さなご老人だった。話を聞くと、どうやら、北の共同墓地で幽霊が出るらしい。特に悪さをするわけでもないが、いつも墓地の中をフラフラしているらしい。隣村の教会の司祭様にお願いしたが、来てくれなかったし、王都の衛士隊は全く相手にしてくれなかったらしい。
この庄には、若い者は誰もいない。皆、王都に働きに行って、帰ってこないのだ。それで、年寄りばかりで細々と小麦を作っているが、幽霊の話を聞いて、皆、この庄を捨てようかという話になってきた。先祖様から引き継いできたこの庄を手放すのは、忍びないので何とかして貰いたいらしい。
フェルマー王子は、幽霊の出る時間を聴いたところ、午後10時頃らしい。それで、今日は、この庄にお泊りになってしまうらしい。
長の家の夕食をご馳走になる。田舎料理と思っていたが、なかなかしゃれた食事だった。パイ生地にベーコンとほうれん草を載せて、卵でとじた料理だ。料理の名前を聴いたら、『キッス』という料理だというので、フェルマー王子は顔を赤らめたが、ドミノちゃんが『キッシュよ。』と教えてくれた。
夜10時、二人で、庄の共同墓地に行ってみる。基本的に、二人には聖属性の魔法適性があり、幽霊やアンデッドには相性が良いのだ。墓地に到着してみると、いた。
フェルマー王子は、白くてモヤモヤした物を創造していたが、少し違った。というか、全然違った、そいつらは、ムニョムニョのドロドロのベトベトの発光体だった。そいつらは、フェルマー王子を見つけると、ズルズルと近づいてきた。
傍まで来たところで、そいつは地面から盛り上がってきた。全部で10体以上だ。盛り上がって、最終的には顔と手足のある人間の姿になった。しかも全裸の女性だ。胸はかなり大きく飛び出している。股間には、当然、何も生えていない。単に縦に割れているだけだ。フェルマー王子は、目が離せなくなっていた。
「フェルマー君、後ろを向いて!」
ドミノちゃんが、叫ぶ。ノロノロと後ろを向くフェルマー王子。うん、今夜のおかずゲットだ。ドミノちゃんが、聖なる力で墓地全体を覆う。
ダメだ、効かない。こいつらは、幽霊でもアンデッドでもない。たんなるドロドロだ。
ドミノちゃんは、次に光魔法の球を生じさせた。球を収縮させる。光がどんどん強くなる。光のエネルギーも集れば、熱エネルギー変換をする。
ドロドロ達は、頭から溶けていく。それで、元のドロドロになり、それがどんどん小さくなっていく。まるで、塩を掛けられたナメクジだ。最後は、何も残らなかった。、あのドロドロは一体何だったのか。しばらく、墓地にいたが、もうドロドロは出てこなかった。少し、残念そうなフェルマー王子だった。
庄に帰ると、長が、村の爺さんに確認に行かせる。この庄には、爺さんと婆さんしかいないのだからしょうがない。確認が取れたので、長が報酬金を支払ってくれた。しかし、少し足りない。聞くと、食事と宿泊代らしい。え、依頼条件に食事付きと書いてあったはずだが。それを言うと、長は、よく見てくれと言う。じっと依頼書を見る。やっぱり、『食事付き』とかいてある。その下に、小さな、本当に糸くずのような小さな字で、『ただし有料』と書かれていた。あ、やられたかも知れない。
この日の夜、フェルマー王子とドミノちゃんは、小さな布団1つに寝かされてしまい、完全寝不足モードで街に戻ることになった。
フェルマー王子の冒険は、まだまだ続くが。それは、いつか書くかも知れない続編に期待して貰いたい。
あ、ゴロタとシェルは、この星の裏側まで行って、その国の侯爵になっているそうだが、それはまた別のお話になるはずである。
この調子で、暇を見つけて、番外編というかエビローグを書いて行きますが、面白いなと思ったら、1度だけ、ポチっと押してみてください。次回作の励みになります。




