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第425話 リヴァイアサンは、帰ってしまいます

いよいよ、災厄の神たちに撤退命令が下されました。もう、この世界をどうこうすることは、災厄の神レベルではできないようです。

(6月28日です。)

  今日、ハッシュタウンの『休み処 メリー・ドール2号店』に居候している『リバちゃん』こと『リバイアサン』が帰ることになった。この町に来てもう4年半になる。知らせを受けたゴロタが、お別れを言いに、ハッシュタウンに来た。


  以前は、タイタン離宮の露天風呂や大浴場によく来ていたが、最近、良い温泉がハッシュタウンの近くにできたので、そこに行っているので、めったにタイタン離宮には来なくなっている。店の売り上げから、月に約100万円、生活補助費として支給しているので、生活には全く困らなかった。まあ、何も食べなくても10年や20年は平気なようだが。


  人口1500人程度だったハッシュ村は、目覚ましい発展を告げ、今ではハッシュタウン市になっている。市長は、当然ジーク氏だ。昔の村長宅は、いまでは市行政庁兼ねて警察署となっており、ジーク市長は、郊外の耕作地に大きな屋敷を立てている。シスター・アリエールは、グレーテル王国のエクレア市にある聖恵世教会の大司教をしているそうだ。この宗教は、4大聖教とは異なり、はるか東の大陸、マングローブ王国の宗教に似ていて、神は唯一神で、神の神託を受けた預言者が、この世界を救う教えを教えてくれるという考えだ。神様のタイプは、男性だが4大精霊の一人『アリエス』様とよく似ている。その教義は『愛と慈しみ』だ。


  ゴロタは、ぜひ、リバちゃんに会いたいというフェンちゃんを連れていく。当然、イフちゃんも一緒だ。イフちゃんは、嫌がっているようだが、フェンちゃんは、すぐイフちゃんと腕を組むか、手を繋ぎたがる。しかも指を絡ませる恋人握りだ。どう見てもラブラブだ。どうやら、一人生活が長すぎて、愛情に飢えているようだ。精霊のくせに。


  リバちゃんは、いつものように『休み処 メリー・ドール2号店』の軒先の丸テーブルに座って、紅茶を飲んでいる。傍には、大きな紅茶ポットが置いてある。この周辺の住民は、皆、リバちゃんに挨拶をしていく。来た時と、まったく変わらない容姿、髪の毛も伸びなければ、服だっていつも同じなのに汚れない。酔っ払いが絡んできても、睨むだけで退散していく。


  ある時など、大きな喧嘩が店の前であった。店の娼婦を争っての争いに、それぞれの仲間が加わってしまったのだ。


  リバちゃんは、最初、優しくやめるように諭したそうだ。しかし、興奮した酔っ払い達に聞く耳などなかった。まだ喧嘩を続けようとしたので、半径30m位の四方に全員を跳ね飛ばしてしまったらしい。その結果、命を落とした者が3名、残りの者もまともな人生が暮らせなくなったらしい。


  この件以来、『リバちゃんは人間ではない。ゴロタ公爵閣下が霊獣させている魔物か霊獣だろう。』という噂が立ち、皆が畏怖の目で見るようになったのだ。まあ、決して誤りではない。


  人間でリバちゃんに敵う者などいないし、リバちゃんを倒そうと思ったら、1国の軍勢すべてでも可能かどうか疑わしい。


  なんといっても、災厄の神のうちの『嫉妬の神レヴィアターン』なのだから。本来の姿は海神それも全長500m以上の超巨大龍だ。あまりにも巨大すぎて、その全身を見た者はいないと言われている。それで言えば、フェンちゃんだって、あの『氷の精霊フェンリル』だし、イフちゃんも世界を恐怖に陥れる地獄の煉獄の使い手『火の精霊イフリート』だ。


  以前、リバちゃんから、天上界に帰る方法を聴いていた。それは、戦いで死ねば、生命なき者として天上界に帰ることができるらしいが、最近、この世界に魔界の王が復活したらしいので、天上界への門が開いているそうだ。魔界の王が君臨するこの世界で、好き勝手なことをしていると、その災いは天上界にも及ぶので、一旦、派遣を中止することになったらしい。


  最近、派遣されてきた『色欲の災厄アスモデウス』にも派遣中止の命令が行っているはずなのだが、本人から全く連絡がないので、今のところ連絡手段がないらしい。


  まあ、アスモデウスも馬鹿ではないので、魔界の王が降臨した世界で下手を打つことはしないとは思うが。そういうわけで、次の新月の夜0時に、天上界に帰ることにするそうだ。


  ゴロタは、リバちゃんにフェンちゃんを紹介する。二人は初対面らしく、お互いにきれいにカーテシを決めて挨拶をしている。絶世の美女2人が立っている店頭には、通行人が立ち止まって見ている。これで、『休み処 メリー・ドール2号店』の評判は、更に上がっていくだろう。最近は、この店の子を目当てに、わざわざグレーテル王国からお貴族様が、やってくるらしい。


  来る人達の特徴を聴いていたところ、どうもグレーテル国王もお忍びで来ているようだった。もう、グレーテル王国の王場内ゲートと南の別荘のゲートを占めてしまおうかと考えてしまう。


  まあ、それはいいとして、ゴロタはリバちゃんに、本当に帰りたいのか聞いたところ、意外な答えが返ってきた。


  「妾も、最初は早く天上界に帰りたかった。周囲の目を気にせずに、好き勝手にできたからの。しかし、ここに住み始めて4年、天上界にはないおいしいご馳走もあるし、この店の中で行われる男女の営みや痴話喧嘩など、妾が最も好むものじゃ。そうさな、あと100年位はいたいのじゃ。」


  それなら、なぜ天上界に帰るのかと聞いたところ、これも意外な答えが返ってきた。


  「妾は、魔王が怖いのじゃ。魔王により、存在そのものを消滅させられたら、1000年は復活できなくなるのじゃ。魔王に見つかる前に、天上界に帰りたいのじゃ。』


  あ、もう完全に見つかっているし。リバちゃん、ゴロタが魔王であることに気づいていないようだ。あまりにも長くこの世界にいすぎたため、いろいろと感覚が鈍ってきているのかも知れない。フェンちゃんなどは、精霊という精神世界の存在のため、ゴロタが魔王であることを、すぐ気づいたようだが。


  フェンちゃんが、念話で話してきた。


  『リバイアサンよ、おぬしの目の前にいるゴロタ殿こそが、そちが恐れる魔界の王じゃぞ。気づかぬのか?』


  「へ?」


  リバちゃんは、最初、理解ができなかった。その昔、魔界の王ベルゼブブは、天上界の創造伸と対をなすほどの絶対王者だった。天上界の覇権を争って行われた戦争は、3万年を超えたそうだ。そのうち、戦闘に飽きたベルゼブブは、自ら矛を収め、天上界を去った。行先は、地上界ではなく、時空間のまったく違う世界だったそうだ。自ら、魔界と名付けたのだが、それはルシファーが創造した冥界とも異なる時空間だ。天上界、魔界、冥界相互に行き来することはできないが、唯一、つながっているのは、この地上界なのだそうだ。


  魔界には、魔物が多く棲息しているが、それは単に、その世界の生命体として存在しているだけにすぎず、魔界のみで生きとし生ける者達だ。悪魔もいるが、下級悪魔ばかりで、力もなく、魔物におびえて暮らす地上界の人間みたいな存在だ。そのような世界の星が幾万と存在しているのが、魔界である。


  それに比べ、冥界は、死者の国だ。地上界や魔界、それに天上界でさえ、生命の灯が燃え尽きた精神体は、長くその世界に存在し続けることができずに冥界とのはざまに吸い込まれていく。冥界で、何百年、何千年と過ごすうちに生命体としての記憶も何もなくした真っ白な状態になってどこかの時空間に流れていく。いわば、冥界は魂の再生工場だ。


  この地上界の魔物たちのほとんどは、大昔の天上界戦争の際に、地上界に逃れてきた戦闘員達だ。そのほか、魔界から召喚された者の末裔も若干いるらしい。ゴロタは、魔界の王とはいえ、魔界に行く気などさらさらない。そんな辛気臭い所になんか頼まれたって行くものか。


  まあ、それはいい。今は、リバちゃんの問題だ。もし、ゴロタが本当に魔界の王ならば、リバちゃんは、好きなだけこの世界にいられる。そのうちアスモデウスも覚醒して連絡を寄こすだろう。そうしたら、二人でどうするか決めればよい。


  リバちゃんは、ゴロタに魔界の王である証拠を見せてもらいたいと言ってきた。ゴロタは、リバちゃんとフェンちゃんそれにイフちゃんを連れて、西の山の奥に行った。と言うか転移した。


  そこは、深い谷底で、上空にはワイバーンが跋扈している竜の谷だった。白竜の支配する谷だが、谷底には、誰もいない。上空のワイバーン達も、ゴロタ達のことは無視している。


  ゴロタは、上着を脱ぎ、自分の胸に手を当てた。熱が全身をかけめぐる。頭と背中から何かが生えてきているのが分かった。何かではない。魔王の印、山羊の角と蝙蝠の羽だ。しかし、そんなヤワなものではない。自分では分からなかったが、顔つきも変わっているらしい。イフちゃんが、少し引きながら、


  『ほう、これなら冥界の王と良い勝負かも知れない。』


  と言った。しかし、その言葉には、明らかに怖れが隠れていた。フェンちゃんは、たちまち巨大な白狼の姿になって、身構えていた。リバちゃんは、あれ、リバちゃんは気を失っていた。


  この姿を知っているのは、シェルとホワイトさんだけだった。ゴロタは、イフちゃんに『煉獄の炎』を吹きかけて貰った。『蒼き盾』は発動しないままで、全身で受けた。ズボンがまる焼けで、丸裸になったが、どこも火傷していない。というか、髪の毛1本も焦げていないのだ。ゴロタの身体から、魔界に炎が通り抜けていったのだ。


  フェンちゃんにも、絶対零度の冷気をかけてもらったが、結果は同じだった。次に、攻撃力の試しだ。300m先にある大岩に、左手人差し指を向ける。


  『バン。』


  大岩は、粉々に砕け、その後、燃え始めた。すべての物質は燃焼させることができる。酸素との結合ではない。素粒子同士の交換・結合・分離によって膨大なエネルギーが生じるのだ。あの大岩の質量なら、この地上界の一部がなくなってしまうことも考えられる。ゴロタは、拡散する熱エネルギーをすべて吸収して、この世界の消滅を防いだ。


  結局、リバちゃんは、天上界に帰るのをやめて、ゴロタがいなくなるまで、地上界に留まることになったのである。

あれ、リバちゃん、帰らないのですか?まあ、彼女達?にとっては、100年や200年などは、一瞬にすぎません。もうしばらく地上界にいても全く支障ありません。

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