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第424話 氷の精霊フェンリル

今まで、土曜日は午前5時と午後5時に投稿していたのですが、執筆時間が殆どなくなり、かつ今まで書き留めていたものも枯渇してしまったことから、昨日の夕方の投稿はできませんでした。期待していた方々、申し訳ありません。余裕ができたら、復活いたします。

(6月26日です。)

  白い狼、いや金髪の美女は、年齢20歳位、身長170センチ位で、肌が透き通るように白く、目も薄い水色だった。


  体型は、成人女性だったら、誰もが羨むようなナイスバディで、まあ、イメージ通りに具現化出来る精霊の特権だ。自分の名前を『フェンリル』と名乗った。精霊や魔物が、自分の真の名を名乗る時は、相手に隷従しても良いと言う意思表示だ。力強き者が名を呼べば、それで盟約は結ばれる。


  「じゃあ、貴女はフェンさんだ。」


  一応、見た目が成人女性なので、『さん』付けだ。瞬間、フェンさんの身体が白く光った。フェンさんは、霊獣でも神獣でもないので、例のダジャレは効かなくて済む。


  フェンさんが、自分は、見た目は20歳にしていて、ゴロタよりも年下なので、イフちゃんと同じ『ちゃん』付けが良いと言う。


  うーむ、見た目に引っかかるが、了承した。フェンちゃんに、今の異常気候を引き起こした理由を聞くと、余りにも暇だったので、雪だるま同士で合戦をさせることにした。そのために、もう直ぐ夏だと言うのに、雪を降らせたらしい。季節外れの寒気団が北の地域に次々と発生して、この異常気象を引き起こしたらしいのだ。


  はっきり言って、とても残念な精霊だった。そんなに遊びたかったら、南半球に行けば、今は、冬の真っ盛り、時期的には、北半球の聖夜と同じ季節なはずだ。


  ゴロタが、そう言うと『それは気づかなかった。』と言うのだ。そのために、何万人と言う人が飢餓に陥るかもしれないのに。


  フェンちゃんに、直ぐに寒気団を消すように言うと、冷気の発生を止めることしかできず、寒気団は太陽が頑張って消して行くしかないそうだ。


  本当にイラッときたゴロタは、何も言わずに上空へ、ミニ太陽を浮かばせた。いつものホンワカしたミニ太陽ではない。直径1キロ以上あるミニ太陽だ。もう、こうなると周辺にフレアが発生している。高度を3万m以上に上昇させる。これで、地表の温度は35度くらいになった。


  みるみる、雪と氷が溶けて行く。あの砦もグジュグジュに溶けてきた。フェンちゃん、あまりの暑さに、ロングドレスの裾をたくし上げる。


  こいつは馬鹿だ。精霊なんだから、半袖の涼しい服になれば良いのに、気付かないようだ。イフちゃんが教えてあげる。


  『そんなに暑ければ、スッポンポンになれば良いではないか。』


  いや、違うから。しかし、遅かった。あっという間に、下着も付けないスッポンポンだ。見事なプロポーションだが、残念なことに、股間は何もない。毛も生えてなければ、割れ目もないのだ。イフちゃんと一緒だ。


  しかし、それ以外は完全な女性なので、見ていると恥ずかしくなってくる。クレスタの着ていた下着と夏物の服を出してあげたら、じっと見ていて、同じ服を着ている姿に変身した。


  精霊は、自由に変身するので、服も一緒に変化するのだ。これで、目のやり場に困ることはなくなった。フェンちゃんも時空の狭間に自由に出入りできるようなので、とりあえず、時空の狭間に行ってもらうようお願いしたら、拒否されてしまった。


  精霊との隷従の盟約は、非常に緩やかで、このように拒否されることも普通にあるのだ。何が嫌か聞いたら、『一人は寂しいから嫌だ。』というのだ。これまでだって、ずっと一人だったはずなのに、何が寂しいだ。と思ったが、それではかわいそうなので、しばらくは、一緒に行動して良いから、その後は、戻るようにお願いした。


  イフちゃんが、あの『お兄さん』の格好になってフェンちゃんと行動を共にしてくれることになった。二人が並ぶと美男美女のカップルだ。このまま、タイタン市に行ったら、きっと目立ってしまうだろうと思ったが、しょうがない。人間世界に慣れていないフェンちゃんには、しっかりしたサポートが必要だ。


  『タイタニック号』まで戻ると、シェルたちが、水着姿で日光浴をしている。あの、皆さん、いつも水着を持って歩いているのですか?シルフに、気圧配置を確認したところ、典型的な夏の気圧配置になっているらしい。と言う事は、ニモ村にも、太陽が顔をのぞかせているのだろう。ゴロタは、ミニ太陽のエネルギーをすべて取り込んで消滅させた。これ以上、北部を温かくしてしまうと、別の意味で、この星に大惨事が到来してしまうらしいのだ。


  これで、調査探索は終わりだ。皆を『タイタニック号』に搭乗させる。フェンちゃんが物珍し気に、搭乗してきた。イフお兄さんが手をつないでいるので、シェルも特に目が細くならなかった。自己紹介が終わった後、シェル達が夏用の飛行服を着ているのをじっと見ていた。


  目が、妖しく光ったと思ったら、皆と同じデザインの飛行服になった。しかし、皆は、それぞれ自分のテーマカラーの飛行服を着ていたが、フェンちゃんのは、『ヒョウ柄』の飛行服だった。どうやら、出身は●西の方らしい。


  イフお兄さんは、機長と同じパイロット服だったが、濃色のナス型サングラスをかけている。頭には、機長用のフライトキャップではなく、ヘルメット姿だ。今のイフお兄さんは、身長が180センチ以上あり、ヘルメットをかぶっていては、天井の低いキャビンでは、必ず頭をぶつけてしまう。ほら、ぶつけた。仕方がないので、イフお兄さんは、ヘルメットを消して、機長用の帽子をかぶりなおした。というか、機内では、身長を縮めるか、女の子のイフちゃん姿になれば、問題は解決するはずなのに、あくまでも、身長180センチのイフお兄さんにこだわりたいようだ。


  CAアンドロイドが、ドリンクの注文を聞いてきた。イフお兄さんとフェンちゃんは、精霊なので、飲食する必要が無いはずなのに、フェンちゃんがアイスティーを注文していた。まあ、飲食できないのではなく、飲食しなくても平気なだけだし。


  アイスティーを一口飲んだフェンちゃんは、不味そうな顔をしている。そりゃそうだ。砂糖もレモンも何も入れていないのだ。イフお兄さんが、ガムシロップの入った器から、少しだけガムシロップをいれ、上からレモンを絞ってあげている。見ていると、新婚夫婦のようだ。


  そういえば、二人は、よく戦って遊んでいたそうだが、どうやらイフちゃんの性格の悪さが、フェンちゃんに嫌われているようだ。そういえば、フェンちゃんの戦い方とはどんなのだろうか。そう思っていたら、フェンちゃんから『念話』が送られてきた。


  『妾は、戦いは嫌いじゃ。戦いが避けられないときは、雪玉をぶつけたり、地面を氷にして、歩けないようにするのじゃ。』


  うん、子供の喧嘩だ。それでも氷の精霊だ。威力は半端ないはずだ。さっきの雪だるま軍団の攻撃も、巨大雪ゴーレムの攻撃も、通常人ならば、1個師団位は殲滅されるだろう。そう考えていたら、イフちゃんから『念話』が届いた。


  『何、甘っちょろいことを考えているのじゃ。こやつが、本領を発揮したら、見渡す限りの軍隊など、一瞬で氷の中に閉じ込められてしまうわ。こやつの絶対零度を食ってみろ。しもやけ程度ではすまぬぞ。』


  『国家レベル級の戦いになると、こやつは本領を発揮するのじゃ。地表を凍らせ、分厚い雲で太陽の光は一切地上に届かず、敵の末路は死の世界じゃ。わしのように一瞬で蒸発させる煉獄の炎が可愛く見えるほどじゃ。』


  あ、良かった。隷従の盟約を結んでおいて。ふと気が付くと、シェルがアイスティーのグラスをゴロタの方に差し出している。『何かな?』と思ったら、イフお兄さんのようにサービスしろと言うのだ。言葉に出さないが、はっきり『思念』が伝わってきた。


  しかたがないので、シェルのグラスに、ガムシロップの入ったミニポットからシロップを入れてやり、4分の1にかっとしたレモンを絞ってあげた。それを見ていたエーデル達も同じ行動をとったのは予想通りだった。


  2時間後、タイタン空港に到着した。空港には、マルタン男爵が待っていた。機長が、向こうを出発するときに、フライト許可をタイタン空港に貰っていたのだが、その際、マルタン男爵に知らせて貰うようお願いしたのだ。タイタン空港と行政庁は、直通電話があるので、知らせを受けたマルタン男爵は、すぐに迎えに来てくれたのだ。


  マルタン男爵に、すべてが上手く行ったと伝えた。すぐ後ろで、あたりをキョロキョロしているフェンちゃんのことは黙っていた。フェンちゃんは、空港の中でも際立っていた。透けて通るような真っ白な肌、『金髪とはこのような色よ。』と主張しているプラチナ色の髪の毛。信じられないほどに大きな瞳。美女とは、このような女性を言うのだとでも言わんばかりの容姿だった。これは、絶対にずるいと思うのだが、誰も何も言わない。


  空港ロビーでは、詳しい話もできないので、貴賓専用特別室に行くことにした。フェンちゃんが、ロビーの中を見て回りたいというので、イフお兄さんと手を繋いで出て行った。イフちゃんに、10万ギル位渡しておいた。買い物も飲食も大丈夫だろう。まあ、イフクロークの中には、無尽蔵と思えるほどの『金』をはじめとした貴金属と銀行顔負けの通貨があるので、困らないだろうが、お金は有限だと言う事を知らしめるためにも、現金をわたしたのだ。


  空港ロビーの中では、超目立つ二人が、手を繋いで歩いているのだ。イフお兄さんは、機長の制服、フェンちゃんは、ヒョウ柄の飛行服だ。普通の人は、絶対に近づかない。


  空港ロビーのレストランに入った二人は、アイスコーヒーとフルーツフラッペを注文した。アイスコーヒーは、もちろんイフお兄さん、フルーツフラッペはフェンちゃんだった。昔、イフちゃんに聞いたことがあった。飲食したものはどうなるのかと。答えは、簡単、イフちゃんの体内で素粒子レベルまで分解されてしまうそうだ。


  こうして、氷の精霊フェンリルは、ゴロタのパーティのメンバーになった。ああ。



フェンちゃん、やはり残念精霊だったようです。火の精霊と氷の精霊、それに東西南北の霊獣に神獣と『人ならざる者』が増えています。ゴロタは、最後にはどれほど強力になるのでしょうか?

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