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紅き剣と蒼き盾の物語(コミュ障魔王と残念エルフの救世サーガ)  作者: 困ったちゃん
第40章 それぞれの道が見えてきます
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第422話 グレーテル王都公演は大成功

今日は、以前から計画していたコンサートのお話しです。

(6月10日です。)

  グレーテル王国の王都、グレーテル市にある一番大きな劇場でタイタン音楽フェアを開催した。この劇場は、3500人が定員だ。シェルをはじめ女性陣とフェルマー王子が主役だ。主催は、ゴロタ帝国の文化庁だが、グレーテル王立音楽学院の後援も貰っている。


  前座で、学院の有望歌手や若手演奏家がステージに立つらしい。この劇場では、音楽コンクールも開催されているが、こんなに大勢のお客さんが入ることはめったにないので、緊張しまくっていた。


  午後1時から、前座公演が2時間ある。王立音楽院大学の4年生を主体としたオーケストラ演奏やピアノソロ、ヴァイオリンコンチェルトなど、いかにも音楽学校という感じだ。それなりに楽しめたが、今一歩、盛り上がりに欠けている。


  前座公演が終わると、一旦、全員に退場して貰う。正規公演は、全席指定だ。


  午後4時30分、開演の合図と共に、場内は暗転した。炭酸ガスのスモークが焚かれる。スポットライトで、デビちゃんが上手から出てくる。前奏が始まる。


  『桃色のスイートピー』


  と言うオリジナル曲だ。ジルちゃんの甘い歌声が、場内に響き渡る。途中から、次々とメンバーが左右から現れて来る。


  ジェリーちゃん、ブリちゃん、デビちゃん、デリカちゃん、キキちゃん、ドミノちゃん、最後はキティちゃんだ。8人揃った所で、場内は大興奮だ。皆、ペンライト、通称『キンブレ』を持って振っている。それぞれ『推し』のシンボルカラーに光らせている。


  演奏が終わると、センターのジルちゃんが、挨拶をする。


  「みんなー、こんにちは。今日は、私たちのためにきてくれて有難う。」


  ジルちゃんの『推し』ファン達が、ピンク色のキンブレをしきりに振っている。続いて、先日、発売されたばかりの新曲を披露する。ここは、ジェリーちゃんとデビちゃんのデュエットパートがある。曲名は、『プレイバック パート3』だ。


  もう、ステージいっぱいに歌い踊り、『TIT48』のステージは、ファンでなくても見ていて楽しい。


  最後に、ジルちゃんから衝撃発言があった。大学進学に伴い、この公演が最後だと言うのだ。しかし、今後はイブニング娘として活動すると発表したら、会場内から歓喜の叫びが上がった。


  15分の休憩の後、『フェル&ドミノ』の演奏だ。天幕が上がると、ステージ上には湖畔を描いた背景がかかっている。


  椅子が置かれていてドミノちゃんが、クラシックギターを抱えて座っている。そばにはフェルマー王子が立っている。


  最初の曲は『スカボロウ市場』だ。物悲しいイントロから入って行く。場内、爆発的な拍手だった。途中、ドミノちゃんのソロパートが入っていく。フェルマー王子のアルペジオもかなりの練度だ。


  マーチンの大型ギターは、音量も大きく館内に響き渡って行く。3曲程歌った後で、ドミノちゃんがギターをスタンドに立て、下手に置いてあるピアノのところに行く。


  ピアノの前奏が始まった。曲は、『昨日』という曲だ。これは、太古の天才ロックグループが作った曲で、中心人物は、若くして銃弾に倒れたらしい。フェルマー王子のソロが始まった。場内は、シーンとしている。聞き惚れているのだ。ピアノの伴奏も、超絶技巧を織り混ぜている。


  歌い終わってからの拍手が鳴り止まない。泣いている女の子もいた。ゴロタ達の座っている貴賓席には、グレーテル国王をはじめ、王国の要人達が座っていたが、あの子が、旧カーマン王国つまり現カーマン州連合の太守になる予定の子だと言われて、皆、びっくりしていた。


  最後に、ドミノちゃんのピアノの弾き語りだ。曲は『取扱説明書』という曲で、結婚したら妻を大切にしなさいと言うラブソングだ。皆、ドミノちゃんのピアノと歌声にうっとりしている。


  また15分間の休憩を挟んで、『イブニング娘』の登場だ。スカイブルーのステージ衣装を着て踊っている。流石にもうフミさんは参加していないが、クレスタも参加している。クレスタは、娘でも何でもない。アンドロイドだが、全く生身の人間と変わらない。と言うか、ダンスは正確無比、機械仕掛けの人形のように、僅かなズレもなく踊っている。まあ、当たり前なんだが。


  『イブニング娘』のステージは、8曲だけだった。少し短い気がしたが、もう、みんな息が上がっていた。最後は、ミキさんのワンマンショーだ。信じられないほどの音域と声量、歌姫に相応しい声だった。今日は、ドミノちゃんのピアノ伴奏で歌っている。


  最初の曲は『別れ詩』というスタンダードナンバーだ。


  ♪道の途中で倒れてしまい

  ♪誰かの名前を呼び続けたの

  ♪そんな思い出はもう沢山

  ♪あなたに言うことではないけれど

  ♪夕暮れ時はそんなに優しくないし

  ♪私の事はほっといて もうお人好しは辞めたから


  ♪別れ学校そんなに嬉しいの

  ♪もう私のことは構わないで

  ♪私は別れを忘れてしまいたいのに

  ♪黙って扉をあけてしまう


  この曲は、誰もが知っているのに、何故か聞いていると切なくて涙が出てしまう。


  この曲の後、『小さな鳥は飛び方を忘れてしまった』と言う曲を歌った。最初は、静かな歌い方だった。


  ♪空の上に行って雲をも下ろすの

  ♪雲はまるで雪のように見えるの

  ♪あなたの住む街は この雲の果てにあるのね

  ♪私の心は揺れているの

  ♪時は、全てを変えて行く

  ♪季節だって移って行くじゃない

  ♪地平線に沈みかけてる砂時計座が輝いている

  ♪小さな鳥は、もう飛んでいかないのね

  ♪心に痛手を受けた僕は

  ♪その場所で見つけたんだよ ささやかな幸せを


  物凄い声量だ。それに音域が半端ない。3オクターブは行っているだろう。もう場内は、完全にミキ・ワールドだ。


  コンサートは、大成功だった。今日の売り上げは、チケットが4000万ギル、グッズの売り上げが、1000万ギルだった。しかし、これから売り出すレコードの売り上げを考えると、儲け度外視でもペイ出来る。


  グレーテル国王陛下は、我が国でも、このような歌手グループが作れないかジェンキン宰相に相談していたが、かなり難しいようだ。


  まず、音楽の才能がある者は、殆どが音楽学院に進学している。そのレベルは、今日の前座で聞いたが、とても『TIT48』のようになることなど考えられない。


  そして今、これが最重要だが、グレーテル王国にはレコードを吹き込む施設もなければ、大量に生産する工場もない。レコード制作は、ゴロタ帝国の専売特許だ。


  公演終了後、恒例の握手会だ。ロビーで売っているレコードを買うと、好きな子と握手ができる券が付いて来るのだ。


  いつものように『フェル&ドミノ』は除外だ。ドミノちゃんが嫌がったのだ。フェルマー王子の人気は、女子の間では圧倒的だ。


  今までの歌手といえば、クラシック音楽の声楽家か、オペラ歌手くらいだった。それでも、王都にいればこそ聞くことができるので、地方に行けば、吟遊詩人位しかいなかったのだ。生きて行くのが精一杯で、娯楽など二の次の世界が、何百年、いや、それ以上続いていたのだ。


  今日は、全員、王都のタイタン屋敷に泊まることにした。大人数だったので、1部屋に2人以上寝なければならない。フェルマー王子の部屋にはキティちゃんが泊まる予定だったが、ドミノちゃんが大反対した。キティちゃんが泊まるくらいなら自分が泊まると言い始めたのだ。


  シェルが、ニヤニヤしながら、


  「貴方達、いつも寝る前にフェルマー君の部屋で何しているの?」


  と聞いてきた。最近は、寝る前の30分間位、ドミノちゃんはフェルマー王子の部屋で、色々話し込んでいるのだ。勿論、フェルマー王子のベッドに潜り込んでいる。


  別に何もしないのだが、当番のメイドさんに見つからないように、フェルマー王子の部屋に潜り込むのだ。


  フェルマー王子とドミノちゃんは、顔が真っ赤になっている。


  シェルが、『今日だけよ。』と言って、ドミノちゃんがフェルマー王子の部屋に寝ることになった。


  ちなみに、ゴロタの部屋には、シェルとエーデル、ジェーンにノエルと4人も一つのベッドで寝ることになった。この状況は、本当に久しぶりだった。


  王都の夜は、もう夏だった。

フェルマー王子は、まだ純情です。おやすみのキスは、いつもドミノちゃんの方から求めています。

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