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紅き剣と蒼き盾の物語(コミュ障魔王と残念エルフの救世サーガ)  作者: 困ったちゃん
第40章 それぞれの道が見えてきます
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第410話 キキちゃんが指導者です。

キキちゃんは、小さいときにお兄ちゃんのお手伝いをしていました。

(3月1日です。)

  エーデル姫は、キキちゃんを見て、最近、ダンジョンに行ったか聞かれた。1度も行っていないので、首を横に振る。


  何か、鍛錬をしているか聞かれたが、これも首を横に振る。全く身に覚えがないのだ。エーデルが、不思議そうな顔をしている。


  エーデルは、最近『S』ランクになったが、ダンジョンボスを10体以上倒して、ようやくランクアップしたのだ。何もしないで、ランクアップするなんて信じられない。タイタン離宮には、何か知らない力が働いているようだ。


  エーデルは、キキちゃんを裏の広場に連れて行った。盾を持たせて構えさせる。メアリーちゃんは、ハラハラ顔で見ている。


  エーデルは、『百刺しのレイピア』を構えた。気合と共に、キキちゃんに向かって突きを繰り出す。キキちゃんの持っている盾では、絶対に防げない突きだ。


  盾を突き抜けると思われたが、その瞬間、土が盛り上がって縦の前に壁が出来た。黒曜石のような真っ黒に光る壁だ。エーデルのレイピアが跳ね返された。暫くして、黒い壁は消えてしまった。


  「やっぱり、そうね。」


  キキちゃんは、何が何だか分からない。後で聞いたら、キキちゃんのスキル『鉄壁』を確認したかったそうだ。キキちゃんの周辺にある組成物でシールドを作るスキルらしい。その後、キキちゃんは、実績がないので『E』ランクで登録された。


  キキちゃんが、エーデルに、ダンジョンに行きたいんだけど、どうしたら良いか聞いた。メアリーちゃんを、せめて『E』ランクにしてあげたいのだ。


  エーデルが、そんな格好では、採集のクエストだって受けられない。最低でも、冒険者服と武器が必要だと言われた。


  メアリーちゃんは、自宅にお兄ちゃんのお古があるから、明日、着てくると言った。キキちゃんもシェルさんに相談するので、明日、会いましょうと言う事になった。


  キキちゃんは、別館に戻ってからシェルに相談した。取り敢えず、シルフを呼んでドロップ品で死蔵しているミスリル軽鎧セットとミスリル・ソードを出して貰った。冒険者服は、シェルのお古を貰うことになった。これで何とか格好がついただろう。


  結局、明日シェルも一緒にダンジョンに行くことになった。シェルは、あくまでも保護者の立場だ。強敵以外は手を出さないことにした。


-------/------------/------------/-----


  次の日、冒険者ギルドの前で、メアリーちゃんを待っていた。メアリーちゃんは、お兄ちゃんの冒険服の上着だけを着ている。下はスカートだ。鎧は付けていない。武器は、鋼のショートソードだ。


  シェルは、それを見て皮の鎧セットを買ってあげた。セットで4万ギルの安物だが、無いよりはマシだ。


  ギルドで、依頼の中から『D』ランク相当の依頼を探した。オーガの魔石10個の回収を選んだ。報酬は10万ギルだったが、オーガの魔石は、単純に売却しても1個8000ギル以上だ。依頼では、受注料や交通費それに消耗品代で足が出るので、誰も受注しない。いわゆる氷漬けクエストだ。


  しかし、キキちゃん達には関係ない。少しでも高レベルのクエストをこなして、実績を重ねたいのだ。


  クエストを受注して、受注料5000ギルを支払う。いよいよ冒険へ出発だ。ダンジョンへは、舗装された街道の上を走る路面電車で向かう。以前は、馬車だったが、鉄道馬車になり、今は電化されて、路面電車になったのだ。


  ダンジョンの前には、キキちゃん達と同じ年位の男の子達が何人かいて、ポーターの依頼を受けていた。流石に、タイタン学院の子はいなかった。この子達は、皆、冒険者志望なんだろう。当然、キキちゃん達は、ポーターなど頼まない。


  ダンジョン地下1階は、多勢のパーティーで一杯だった。今日は、日曜日なので、小遣い稼ぎのパーティーが多いのだ。


  地下1階を奥まで進んで行くと、漸くパーティーも少なくなり、敵を見かけるようになった。ゴブリン1匹を見つけた。そのゴブリンは、キキちゃん達を見つけると、急に逃げ出した。追いかけようとしたが、シェルに止められた。


  「ダメよ。追いかけちゃ。逃げる魔物は、罠を仕掛けているの。特に、小狡いゴブリンは、待ち伏せしているわよ。」


  慎重に敵の逃げた方向を探索する。いた!ゴブリンの群れが潜んでいる。壁の上の出っ張りには、ゴブリンアーチャーが2体隠れている。総数は10体だ。シェルなら、瞬間で殲滅できるが、手を出さない。どうするのか、見ているだけにする。


  キキちゃん達は剣を抜く。メアリーちゃんはガタガタ震えている。キキちゃんだって、ゴブリンと戦った事はなかった。でも、昔、ゴロタさんに聞いた事がある。多勢の敵と戦う時は、とどめを刺してはいけない。足や眼を狙って、戦闘能力を奪えばいいと。


  キキちゃんは、メアリーちゃんにじっとしているように言ってから、走り出した。壁の上の出っ張りにいるアーチャーが気になるが、走り回っていれば当たらないだろうと軽く考えた。心配してもしょうがない。


  キキちゃんは、最初のゴブリンの脇を通り抜ける時、地面すれすれから、ショートソードを切り上げた。


   ザフッ!!


  軽かったかもしれないが、相手のふくら脛が足から離れている。すぐ次のゴブリンの眼を剣で払う。少しずれたが、気にしない。


  次のゴブリンは、少し離れていて、棍棒を振りかぶっている。キキちゃんは、構わずに飛び込んだ。棍棒が振り下ろされたが、土の壁が、現れて防いでくれた。


  壁の向こうでゴキュッという音がしたと同時に、壁が消えた。ゴブリンは、ギョッとした時には、片手が切り落とされていた。


  残りのグループが、固まってこちらを見ている。思いがけない強敵に吃驚しているのだろう。キキちゃんは、走るスピードを上げる。剣術なんか関係ない。


  敵の集団は、慌てて散らばろうとしたが、もう遅い。キキちゃんは、足や腕だけを狙って切り付けていく。


  地上の全てのゴブリンは殲滅した。後は、壁の上だ。以前、ゴロタさんに習ったファイアボールを撃ってみる。剣を相手に向けて、


  「ファイアボール」


  詠唱も何もない。ファイアボールをイメージして、剣を振る。


    ズボッ!


  へなちょこファイアボールが、ヘロヘロと飛んでいって、敵に当たった。敵は、堪らない。へなちょこと言っても、ファイアボールの直撃だ。火だるまになって落下する。すぐ、もう1体のゴブリンアーチャーにも撃ってみる。うん、連発できた。


  全ての敵が、息も絶え絶えで逃げようとしている。メアリーちゃんに、とどめを刺させる。流石に、冒険者の妹だ。適確に、まだ息のあるゴブリンの心臓をえぐって、魔石を取り出している。容赦がない。


  シェルは、『ヘラクレイスの矢』を構えて、いつでも打てるようにしていたが、必要が無かったみたいだ。


  依頼は、オーガの魔石10個だ。この調子なら、今日中に完遂できるだろう。階層ボスは、オークソルジャーだったが、キキちゃんの『鉄壁』の敵ではなかった。あっという間に、殲滅してしまった。今回も、とどめはメアリーちゃんだった。


  地下2階層はオーク軍団だった。最初は1匹だけだったが、次は2匹、次は4匹とどんどん増えてくる。


  オークは力が強く、動きは緩慢だが、一撃は強烈だ。しかし、キキちゃんの作る壁は、全くダメージを通さない。と言うか、壁を強打したオークは、その衝撃で武器を取り落としてしまう。その隙に、キキちゃんがオーク達の足を切り裂いていく。


  やはり、とどめを刺すのはメアリーちゃんだ。シェルは、見ているだけ。これが初めてダンジョンに潜る女の子とは思えない。もう『ヘラクレイスの弓』を構えることもなかった。


  地下2階層のボスはオーガ2匹だ。顔が狼のタイプだ。長い剣を持っている。オーガは、スピードも速く、体力もオークの数倍だ。それに闘争心が強いので、格闘になると絶対の強さを誇る。


  キキちゃんは、オーガの顔に、へなちょこファイアボールを当てる。ダメージは少ないが、動きは止まってしまう。そこに飛び込み、左側に回ってふくら脛を切り裂いた。しかし動きが鈍らない。絶対に我慢している。


  そこで、背後に回り込み右アキレス腱を切り裂こうとした時、後ろからもう1匹のオーガが長剣を振り下ろしてきた。


  キキちゃんは、全く動ぜずに、最初の敵のアキレス腱を切り裂き、戦闘力を奪った。もう1匹の攻撃は、『鉄壁』が防いでくれた。それどころか、敵の長剣がパキンと折れてしまった。


  キキちゃんは、もう遠慮しない。『鉄壁』が消えた瞬間、相手の胸に飛び込んだ。深々と、ミスリルソードがオーガの胸に突き刺さった。これで、オーガの魔石2個をゲットだ。


  キキちゃんは、相手が何匹いようが、正面の敵だけをターゲットにできる事が強みだ。通常の魔法によるシールドは、詠唱をして張らなければならないが、キキちゃんの『鉄壁』は、自動で土が防いでくれる。まるで、ゴロタの『蒼き盾』のようだ。


  この調子なら、地下3階層も大丈夫と安心しているシェルだった。


  地下3階層は、山岳ゾーンだ。岩と急勾配の傾斜地や崖地だ。オーガの巣窟であり、今回のクエストの目的階層だ。オーガは、物陰から突然現れて襲いかかってくる。しかし、絶対防御の『鉄壁』の前では、ダメージを受けることはない。


  キキちゃんの戦いは、単純だ。敵の顔に無詠唱のファイアボールを当てて、怯んだ隙にアキレス腱を切り裂くのだ。


  オーガを10体位倒した時に、キキちゃんの技の変化に気がついた。ファイアボールが大きな火球になってきたのだ。そして、アキレス腱を切ったつもりが、敵の足首が切り落とされてしまうのだ。


  メアリーちゃんも、時々身体が光る時がある。きっとレベルアップをしているのだろう。シェルは、ずっと昔、ゴロタとレベルアップのために、ダンジョンに潜ったことを思い出していた。


  あの頃は、それだけで毎日が充実していた。ハッシュ村から郷へ帰るためだけの冒険旅行。また、あの頃に戻りたいなと思ってしまうシェルだった。


  この日、メアリちゃんは、『E』ランクに上がる事ができた。

キキちゃん、あまり苦労せずにランクアップしそうです。

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