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紅き剣と蒼き盾の物語(コミュ障魔王と残念エルフの救世サーガ)  作者: 困ったちゃん
第40章 それぞれの道が見えてきます
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第409話 キキちゃん、15の春

15の春といえば、高校受験、そして小学校、中学校と一緒だったお友達との別れ。多感な時期です。

(2月20日です。)

  今日は、帝立タイタン学院高等部の入学試験日だ。中等部に在籍して、普通科コースなら、受験しなくても、そのまま進学できるが、理数科と魔法科は、試験を受けなければならない。キキちゃんは、理数科を専攻するつもりだ。将来は、シルフさんみたいにモノ造りをしたいのだ。


  元々、理数科の定員は30人と少なく、全国から入学してくる。モノ作りを職業とする場合、以前は、職人の工房へ無給の見習いとして就職する。それから、3年程度で適性を見分けられる。適性があると認められれば、弟子として正規に採用となるわけだ。


  しかし、ゴロタ帝国では、理数科で基礎を学び、大学で実践技能を習得する事が出来るのだ。途中、希望職種の現場への実習もあるが、基本的な知識は学校で学べるので、習得が早くなる事が期待できる。あのガチンコさんも教授として、指導に当たっている。


  キキちゃんは、絵を描くのが好きなので、工業製品の設計・デザインをやってみたいらしい。その分野の職人はいないので、シルフに習う事になるだろう。とにかく、今は、受験だ。


  キキちゃんは、受験会場に入っていく。タイタン学院大学の一番大きな教室だ。300人以上の生徒が、既に自分の受験番号の所に座っている。タイタン学院中等部からは、60人位が受験している。やはり授業料が無料なばかりではなく、奨学金が無償貸与つまり返済しないで貰えるのが魅力らしい。


  試験が始まった。最初は、数学だ。最初の方の計算問題は特に問題はなかった。二次関数や連立方程式は、すぐに解く事ができた。難関は、これからだ。文章問題だ。


  『問題:1個のさいころを続けて投げて,数直線上の駒を移動させるゲームを行うこととした。初め駒はスタート地点に置いている。さいころを投げるたびに、出た目の数だけ、駒を現在の位置からゴール目指して移動させる。この作業を続けて行い、駒が10に達するか、越えた時点でゲームが終了するルールだ。3回でゲームが終了する確率を示せ。』


  公式を知っていれば、答えは計算で出るが、知らなければ、膨大な出目を書き出さなければならない。『24分の11』という答えを出したのは、キキちゃんだけだった。図形問題の証明も、悩むことなく解く事ができた。


  キキちゃんは合格の自信が出て来たが、油断は禁物だ。最後の問題は難解だった。


  『問題:1以外の整数のa、b、cがある。cの立法数をaとbの立法数の和に表しなさい。表す事がことができない場合は、表せないことを証明せよ。』


  キキちゃんは、直感的に、この問題は自分には解けないと感じた。


  2つの小さい数2と3を考えるとその立法数の和は35だ。整数の立方数ではない。それより大きな数だとしたら、もう無限に計算していかなければならない。しかも解がない場合もあるのだ。


  キキちゃんは、この問題をスルーして、数学の試験を終えた。計算式問題を試し算で確認して時間を潰していた。


  2時間目は、理科だった。最初は、化学式の問題だった。キキちゃんは、高校化学Aに出てくる化学式程度までは暗記していたので、特に難しいことはなかった。次は、生物の細胞に関する問題だ。部位の名称などもすべて解答することができた。地域に生息する生物の特徴と種類も間違いなく解答できたはずだ。


  難しかったのは、やはり物理だった。重りと棒秤の問題とか磁力線と電磁誘導力に関する問題は簡単だったが、猫の問題は難問だった。


  ラジウムのベータ崩壊に関する問題だったが、猫を青酸ガスで殺すのかどうかを決めさせる問題だった。この問題はパスすることにした。


  最後は、回転する鏡を使って、光の速度を計算する問題だった。これは、シルフに聞いていたので、簡単に解く事ができた。


  午後は、国語と社会だったが、中学1年生レベルの問題だった。午前中の問題と格差がありすぎて、笑ってしまった。これなら満点は間違いなかった。


  離宮に帰ってから、シルフに分からなかった数学の問題の答えを聞いたが、聞かなければ良かったと後悔したのは後の祭りだった。


  入学試験が終わったら、卒業式まで自宅学習となった。シルフから、物理の宿題を貰っている。流体力学の基礎という参考書を貰い、『タイタニック号』を参考に新しい飛行機の設計をするのだ。


  まず、ラフをイメージする。何枚も何枚もイメージするのだ。絵に描いてみて、シルフに見せる。シルフは、人目見て『これでは飛べない。』とか『遅い。』と言ってくれるだけだった。


  合格点を貰っても、それからが大変だった。各部分の構造図と計算書を作成しなければならなかった。計算は大変だったが、計算尺を使って何とか答えを見つける事ができた。


  設計図は、別館2階の自分の部屋に製図台と製図セットを設置したので、そこで作業をすることにしている。調べたい事があれば、シルフに聞くことにしている。昼間は、いない事が多いし、カテリーナさんのリハビリもしているので忙しそうだが、夜は大抵、作業室にいるので、そこで疑問点を解消するのだ。


  今まで、聞いたことに答えてくれなかったのは1度だけだった。それは、子供の作り方についてだった。キキちゃんは、最近ようやく月の印が始まった。最初、びっくりしたが、ドミノちゃんがよく知っていたので、慌てないで済んだ。これで、私も子供を埋める体になったんだと思ったが、どうも実感がない。


  タイタン離宮別館に住むようになっても、婚約者では、ゴロタと一緒に寝てはいけないことになったので、いつも1人で寝ている。


  男女の営みなど、別館の子供達は誰も知らないようだった。ドミノちゃんは、最近、フェルマー君とばかり学校に行くので、なかなか聞くチャンスがないのだ。クレスタさんも、いつもニコニコしているだけで、あまり喋らないし。


  まあ、知らなくても、すぐに困る訳では無いので別に構わないが。どうも気になってしょうがないのだ。


  飛行機の設計は順調に行っている。元々、シルフの描いた『翼改』の設計図と計算書あるので、自分の設計図に式を当てはめていくだけだった。


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(3月1日です。)

  今日は、キキちゃんのクラスメイトのメアリーちゃんが、冒険者登録をするというので、ハッシュタウンのギルド前で待ち合わせだ。服装は、学院の制服だ。


  メアリーちゃんは、ハッシュタウンの東で農家をしている両親らと暮らしている。タイタン学院へは、汽車通学をしていた。


  お兄さんが『D』ランクの冒険者をしていて、自分も冒険者になりたいそうだ。両親は、大反対しているそうだが、登録だけはしておきたいと言っていた。


  キキちゃんは、ハッシュタウンのギルドには、ゴロタとしか来た事がないがグレーテル王都のギルド総本部には何度も行っていたので、一緒について行ってあげることにしたのだ。


  ハッシュタウンのギルドは、以前はグレーテル王立冒険者総本部の支部だったが、今は、帝国冒険者ギルドのタイタン支部だ。メアリーちゃんは、お兄ちゃんのポーターとして何回かダンジョンに行った事があるが、今日は、冒険者登録だ。緊張している。


  受付の職員は、女性職員だった。


  「いらっしゃいませ。ゴロタ帝国冒険者ギルドタイタン支部へようこそ。本日は、どのようなご用件でしょうか?。」


  いつもの挨拶だ。メアリーちゃんは、緊張してうまく喋れない。キキちゃんが、代わりに話してあげる。


  「あのう、この娘の冒険者登録をしたいんですけど。」


  「はい、分かりました。それでは、この用紙に必要事項をお書きください。代書もできますが、いかがしますか?」


  代書料金は2000ギルだ。自分で作成することにした。キキちゃんは、ふと自分も登録しておこうと思い、用紙をもう1枚貰っておいた。


  2人で、記入を終えて提出した。これから、能力測定だ。例の機械の前に案内される。キキちゃんは、測定された経験がある。メアリーちゃんは、初めてなので、緊張している。


  測定の結果、メアリーちゃんはレベル3で冒険者ランクは『F』だった。『F』ランクは、見習いということなので、1人では簡単な採集しか受注できない。それでは冒険者ポイントがなかなか溜まらないので、強い冒険者とパーティーを組み、難度の高い依頼をこなさなくてはならない。敵の魔物は、弱い敵から狙ってくるので、新人が犠牲になりやすいのだ。


******************************************

【ユニーク情報】

名前:メアリー

種族:人間族

生年月日:王国歴2013年115月1日(15歳)

性別:女

父の種族:人間族

母の種族:人間族

職業:中学3年生 冒険者ランク F

******************************************

【能力】

レベル     3

体力     10

魔力     10

スキル     5

攻撃力    10

防御力     5

俊敏性    10

魔法適性   なし

固有スキル なし

習得魔術  なし

習得武技  なし

*******************************************


  みごとなまでに標準だ。普通の中学生に魔力やスキルが発現することは滅多にない。きっと、この子も冒険者となったら、早々に命を落とすか、不具者になって、冒険者人生を終えるのだろう。


  続いて、キキちゃんの番だ。2回目と言え、緊張する。機械に手を差し出した。


******************************************

【ユニーク情報】

名前:キキランド

種族:人間族

生年月日:王国歴2013年8月1日(15歳)

性別:女

父の種族:人間族

母の種族:人間族

職業:中学3年生 冒険者ランク D

******************************************

【能力】

レベル    10

体力     50

魔力    150

スキル    50

攻撃力    20

防御力   200

俊敏性    90

魔法適性  土 火

固有スキル

【鉄壁】

習得魔術  なし

習得武技  なし

*******************************************


  何故、レベルが上がっているのだろうか?それに『鉄壁』スキルが使えそうになっている。受付の女性が、すぐに奥のギルド長の部屋に走って行った。


  エーデルが、やってきた。測定機の値を確認している。何故か、顔が険しい。キキちゃんはドキドキしていた。きっと、なんかやらかしたんだ。もう、このまま帰りたい。


キキちゃんは、理系女子の先駆者です。シルフの影響がとても大きいような気がします。

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