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第404話 タイタン離宮別館は幼稚園のようです。

小学生以下は、全員、別館に住んでいます。

(1月14日夕方です。)

  その日の夕方、別館の皆が揃った。リサちゃんは、カテリーナさんに近づいて行った。抱きつこうとしたら、シンシアちゃんが阻止していた。


  「いや、シンシアのママなの!」


  リサちゃんは、歯を剥き出して怒っている。シンシアちゃんも負けていない。今にも取っ組み合いをしそうになっている。ドミノちゃんが、優しく声を掛ける。


  「リサちゃん、こっちにおいで。」


  リサちゃんは、ドミノちゃんを見て、トコトコ歩いて来る。ドミノちゃんの膝に抱っこする。ドミノちゃんも、身長がそんなに大きくは無いので、抱っこには無理があった。キキちゃんが助け舟を出してあげる。結局、キキちゃんの隣がリサちゃんの指定席になった。


  食事は、ほぼ戦争状態だ。シンシアさんは、相変わらず、つい手を使ってしまう。そのたびに、ドミノちゃんが注意をしている。


  リサちゃんは、手さえ使わない。お皿やお茶碗に、直接、口を付けて食べている。それをジッと見ていたカテリーナさんが、真似を始める。シンシアちゃんが、怒り始めた。


  「リサちゃんが、そんな食べ方をするからママが真似をするの。」


  リサちゃんは、何故シンシアちゃんが怒っているのか分からず、キョトンとしていた。周りを見ると、皆、フォークやスプーンを使っている。自分のお皿の脇にも置かれている。


  フォークを手に取ってみる。暫くじっと見ていた。お皿には、きのことクリームのソースがかかっている大きなお肉がある。


  フォークを右手に持って、お肉に刺す。お肉を持ち上げてかぶりつく。左手は、お肉が動かないように掴んでいる。お肉に齧り付いたら首を左右に振ろうとする。お肉を獲物から切り離すためだ。でも、齧るだけで噛み切れてしまった。


  あっという間に、お肉を全部食べてしまった。キキちゃんが、リサちゃんの顔と手を、綺麗に拭いてあげる。パンを取って小さく切ってあげて、お口に入れてあげる。素直に食べている。


  オレンジジュースも、コップから飲むように教えてあげる。舌を出さずに飲んでいる。ずっと見ていたカテリーナさんが、フォークを使って食べ始めた。シンシアちゃんが、涙を拭きながら、


  「悪い子の真似をしてはダメ。」


  と言って、『駄目』の手話をしていた。カテリーナさんは、皆のナイフとフォークの動きをジッと見ていた。


  カテリーナさんは、すごく物分かりが良い時と、悪い時がある。シルフは、カテリーナさんの脳シナプスが再建されかけているので、そういう症状が出るそうだ。長い目で見るしかない。


  食事が終わった。別館組女性陣は、皆でお風呂に入りに行く。本館裏の大浴場だ。最近、屋内大浴場と露天風呂に分けている。屋内大浴場は、シャワー付きの洗い場もある。


  カテリーナさんは、メイドさんが洗ってあげる。キティちゃんは自分で洗えるが、シンシアちゃんとリサちゃんは、キキちゃんとドミノちゃんが洗ってあげていた。


  別館組のうち、フェルマー王子だけは、別館備え付けのお風呂に1人で入る事にしている。ドミノちゃんと一緒に入るのが恥ずかしいからだ。


  ゴロタやシェル達本館組は、食後のお茶を飲んでゆっくりしている。23匹の子狼とコマちゃんが遊んでいる。と言うか、コマちゃんの毛繕いをしている。そういえば、コマちゃん、ビラのところに帰らなくても良いのだろうか。


  コマちゃんは、この狼達に、礼儀作法を教えるために、来たらしい。今のところ、どの子狼も粗相をしていない。後、夜の遠吠えを禁止したりと教えることは山ほどあるらしい。


  お風呂から上がってきたシンシアちゃん達は、子狼を見て、目の色が変わった。皆、それぞれ抱き上げたり撫でたりしている。


  寝る時間になった。リサちゃんは、お風呂が終わると、ドミノちゃんに寝間着を着せてもらい、眠ることにした。トコトコとリムの所まで歩いていくと、お腹の所で丸くなってしまった。今まで、ベッドで寝たことがないので、そういうものがあるということを知らないようだ。


  ドミノちゃんが、抱っこをして2階の部屋に連れていく。ベッドに寝かすと、リムがベッドの横で丸くなった。部屋の中には、トイレとシャワーがあるので、不自由はしないだろうが、トイレのドアを開けておくことにした。


  ドミノちゃんが、リサちゃんを無理してトイレに連れていく。オシッコをさせるのだ。寝ぼけながらもキチンとオシッコができたようだ。それを見ていたリムが、便器にまたがって、オシッコとウンチをしていた。終わってから、ドミノちゃんが流してあげる。うん、頭の良い犬、いや魔物だ。


  翌朝、カテリーナさんは、いつもの通り別館の階段手すりを掃除して、メイドさん達に阻止されていた。朝食後フミさんがカテリーナさんを迎えに来た。


  カテリーナさんは、フミさんの孤児院で働いているが、ほぼ孤児院の子供たちと一緒に遊んだり、勉強したりするだけだ。シンシアちゃんも一緒だが、今日からリサちゃんも一緒だ。


  ゲートを使って、孤児院の院長専用部屋に転移する。既に、もう何人かのシスターや臨時雇いの人達が来ていた。昨日の当直者から異常のないことを聞いて、引継ぎをする。


  孤児院では、朝食が終わり、これからお勉強タイムだった。学齢に達した子は、小学校に行くが、学齢前の子は、お絵描きやお遊戯など知育教育だ。


  リサちゃんを皆に紹介する。こんなに大勢の子供達を見るのは、初めてらしく、緊張していた。


  皆の前で『リサ。リサ。リサーーー!!』と叫ぶ。最後は、遠吠えのようだ。小さな子が耳を塞ぐ。


  「おはようございます。」


  フミさんが朝の挨拶をする。皆も復唱する。キョロキョロしていたリサちゃんが、


  「オアヒョドサエマ。」


  と、一生懸命挨拶をする。カテリーナさんは、


  「おああおごあああう!」


  一生懸命喋ろうとしている。焦ることはない。ゆっくりでいいのだ。シルフが、人工聴覚器を開発中だ。


  カテリーナさんは、絵を描くのが上手だった。小さい時から、絵で言いたい事を表現してきたので、上手になったらしい。


  幼児のレベルではない。鉛筆一本で、素晴らしい絵を描くのだ。フミさんの似顔絵など、王宮に飾ってもおかしくないレベルだった。


  基礎的な学習が終わったら、専門の学校に通わせるべきだと思ったが、それが何時ごろになるか見当が付かないフミさんだった。


  リサちゃんは、子供達とすぐに仲良くなっている。シンシアちゃんが、おしゃまに世話している。


  「リサちゃん、これ、遊ぼ!」


  見知らぬ小学校入学前の子が、犬の縫いぐるみを持ってきた。


  「リム。リム。」


  「リムじゃないよ、ジョンだよ。」


  「ジョン?」


  「うん、ジョンだよ。」


  「リサ、リム一緒。リム、ママ。」


  「ふーん、リサちゃんのママ、リムっていうんだ。シュリのママ、遠くにいるんだって。きっと迎えにきてくれるんだ。」


  ここにいる子達は、ほとんどの子が親が死んだか、売られた子だ。迎えに来ることは絶対にない。しかし、ここに来たばかりでは、自分の置かれている状況がわからないようだ。


  フミさんは何も言わない。


  「シンシアのママ、いつも一緒だよ。ここにも一緒に来ているんだ。」


  「シンシアちゃん、いいなあ。でもママがいたら、ここに来たらいけないんだよ。」


  「ママねえ、シンシアが守っているの。シンシア偉いんだ。」


  会話になっていないのは、仕方がない。リサちゃん、さっきから、シュリちゃんの持っているジョンが気になっている。シュリちゃんの手が少し緩んだ。サッとジョンを奪って逃げる。それから孤児院の中は大騒動だった。


  とても4〜5歳児の運動能力ではなかった。孤児達の頭の上を飛び越えるは、タンスの上に飛び乗るは。


  フミさんとシスター達は、ヘトヘトになってしまった。その間、シュリちゃんは泣き通しだし。それに釣られて他の子達も泣き始める。シンシアちゃんまで大声で泣き始めた。カテリーナさんの胸に飛び込んで泣いている。


  それを見ていたリサちゃんが、シンシアのそばに来て、咥えていたジョンをシンシアちゃんに差し出した。


  シンシアちゃんが、ジョンを受け取ってシュリちゃんに渡した。シュリちゃんも泣き止んだ。


  フミさんが、優しく言葉を教える。


  「ごめんなさいって、言うのよ。」


  「ごめんなチャイ。」


  リサが、目に涙をいっぱいに溜めている。突然、窓を開けて叫んだ。


  「オオーーーーーン!オオーーーーーーーン!」


  遠くで狼の遠吠えがした。段々近くなって来る。


  この日、孤児院は、リムと子犬達の遊び場になってしまった。勿論、孤児達も大喜びだった。


-------/------------/----------/--------


  カテリーナさんの人工聴覚器が出来た。


  鼓膜と中耳それに内耳から伸びる聴覚神経まで出来ている。しかし、直ぐに嵌るわけがない。ゴロタは、シルフの書いた聴覚機能の構造図をもとに作り上げなければならない。


  まず、シルフの作った麻酔注射をする。それから『錬成』で、術野を広げるとともに閉じられていた中耳を空洞にする。そこに鼓膜や中耳内の聴覚機関を埋めて、今度は『復元』で穴を塞いでいく。最後は腎臓の聴覚神経を、元の中途半端の長さの聴覚神経と繋ぐ。


  シルフが多機能細胞から創り出した聴覚神経だ。きっとうまく結合する筈だと説明されたが、ゴロタには分からない。


  今日は、右の片耳だけだ。じっくり音に鳴らして行くそうだ。脳まで音声信号が到達すれば、後は聴覚野が受信してくれる筈だ。よく分からなかったが、そんなものらしい。


  シルフは、例の首輪を使って、イメージを流し込んでいる。成人女性としての知識と思考能力だ。なかなか上手く行かないらしい。脳の一部が欠損しており、そこが言語野と記憶領域らしいのだ。しかし、毎日刺激を送っているので、だいぶ修復しているみたいだった。


  掃除とかメイドにいじめられた記憶は、ハッキリしているが、最近の記憶が駄目らしい。焦ることはない。


  耳が聞こえるようになれば、何もかも上手く行くような気がする。

デミアさんとカテリーナさんは、母親として、デリカちゃんは留学生として住んでいます。1階は、フェルマー王子とマリアちゃんそれにクレスタが居住しています。一番手が掛かるのは、カテリーナさんです。

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