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第400話 娼婦の街

いよいよ、物語が400話目に突入しました。

フェルマー王子は、ドミノちゃんをひどい目に遭わせた奴等を許しません。

(まだ1月1日です。)

  南の魔人の国、モンド王国デビタリア市の修道寺院の地下の霊安室、その存在も忘れられている場所に安置されている木製の棺の中、その棺の中で、男は眼を覚ました。


  禍々しいツノが生えているその男は、探し求めた伴侶の誕生を知った。ニヤッと笑ったその口の中には、鋭い牙が6本、しかし男は起き出すこともなく、静かに眠りについた。たった一言呟いた後に。


  「まだ早い。」


------------/-----------------/------------/----------


(1月2日です。)

  今日は、カーマン州連合の太守フェルマー大公爵の居城である王城、今は大公城と言うが、その中に一般国民が入れる日だ。入ると言っても前庭だけだが。


  そこには2万人の大群衆が集まっていた。お城のバルコニーに、ロイヤルファミリーが出てくるのを、今か今かと待ちわびていた。


  まず、ミキさんが1人で出てきた。マイクを使って、新年の詩を歌った。透き通っていて、かつ心に響く歌声だった。次にキティちゃん、ドミノちゃんは母親のデリカさんと出てきた。


  そしてフランとビラ、それにシンシアちゃんとカテリーナさんだ。カテリーナさんが国民の前に出るのは初めてだ。顔が引きつって、足が震えている。


  最後にゴロタとシェルに挟まれてフェルマー王子だ。


  フェルマー王子の新年の挨拶が始まる。


  「新しい年を国民の皆様と迎えることができて、嬉しく思います。新しい年が、このカーマン州連合国にとって良き年になることを望みます。」


  草案はシルクが作った。州連合に『国』を付けたのはゴロタだった。最終的には、カーマン州連合とフェニック州連合は国として独立させ、ゴロタ帝国連合の構成国にする予定だ。


  大公城参賀は、この日3回行われた。国民にとっては、今までにも増して満足の行く参賀だった。


  女性達が絶世の美女だと言うことと、ミキさんの超絶美声を聴くことができた。最後に、我がフェルマー王子が皇帝陛下、皇后陛下に囲まれて登場されたことで、この国の未来が明るいものになると言う確信を得ることができたのだった。


  参賀式典が終わってから、ゴロタはジローさんから内偵結果の報告を得ていた。


  シャウルス市内には、非合法人身売買組織が3つあり、奴隷娼婦が働く娼館、風俗店が3店、地方都市を合わせると16店あるそうだ。殆どが、地元貴族の庇護を受けており、金銭的謝礼はないが、税収増となることから黙認しているとのことだった。


  どおりで、この前の貴族審査で引っかからなかった筈だ。直接、悪事に関与していなければ、白状しないで済む質問だったからだ。


  正月4日に一斉強襲で、全てを殲滅してやる。人身売買組織も、本拠地は、地方にあるようだった。シャウルス市内の組織は、王都出張所のようなものだそうだ。


  3日の夜、帝国内の警察組織を総動員する。各地方への転移は、シルフとクレスタの力も借りる。決行は、明日、午前5時だ。


  ゴロタとフェルマー王子は、最大の地下組織ジェロ一家の本拠地ベール市に向かう。ここは、逐電したベール公爵領の領都だったところだ。今は、ガーリック公爵が治める南部州の一地方都市に過ぎないが、規模は比較にならぬほど大きい。


  ガーリック公爵も、まだ州内情勢を完全に掌握していないようだった。ゴロタ達は、ベール市は、表向きは、自由と博愛をモットーとする都市を目指していることになっている。しかし、実態は専横と迫害、弱肉強食の街だ。


  表通りには、朝だというのに人が歩いていない。もう、真夏の太陽が出て来ているのに、大通りに人が歩いていないということは、少しおかしい。その理由はすぐに分かった。ほとんどの商店が店を閉めているのだ。というか、廃業しているのだ。


  死の街、ゴーストタウンだった。領主がいなくなってから、治安が極端に悪化し、まず善良な市民たちが市内から脱出した。それを追うように有力商店も転出してしまったのだ


  あとは、雪崩を打って、大脱出劇の始まりだった。残されたのは、まっとうな商売ではない稼業の連中ばかりだった。ゴロタ達は、あらかじめ、事務所の場所を聞いていたので、その場所へ向かう。


  裏路地に入り、くねくねとした道を進んでいくと、突き当りになっている。道路の両脇は、娼館や風俗店が軒を連ねている。その通りの先に、目的の事務所があった。


  建物は、木造2階建てだが、中から人の気配はない。きっと、皆、眠っているのだろう。ゴロタは、鍵のかかった扉を静かに開けた。ゴロタにとって、扉の鍵というものは、開けるのにひと手間係る程度のものに過ぎなかった。


  1階には、誰もいなかった。大きな広間があり、たくさんの椅子が並べられている。きっと、ここが人身売買のセリ場なのだろう。


  2階に上がっていく。小さな部屋が並んでいる。部屋の中から『いびき』が聞こえる。社長室と書かれた部屋の中に入っていく。誰もいない。


  デスクの奥に大きな金庫があった。金庫を開ける。中には、大量の証文と、わずかな金貨だけだった。すべてを回収する。隣の部屋に行って、大いびきで寝ている男をたたき起こす。


  「社長は何処だ?」


  「誰だ、てめえは?」


  男は、ゴロタに飛びかかろうとする。しかし、フェルマー王子の抜いたショートソードが男の首に当てられていた。ツーッと1本の血が筋になって流れている。


  フェルマー王子は、ドミノちゃんの仇をとるつもりだ。自分はどうなってもいいのだが、ドミノちゃんに何かあったら、絶対に許さない。


  「社長は何処だ。」


  ゴロタは、『威嚇』を掛けながら、質問する。男は、小便を垂れ流しがら、この先の淫売宿にしけこんでいると白状した。もう、この男に用はない。


  フェルマー王子に合図する。フェルマー王子は、刃体を光らせて、男の腕1本と足1本を切り落とす。瞬間的に傷口が焼き付くので、血はほとんど出ない。完全に12歳の男の子のやることではなかった。


  男が教えてくれた宿は、すぐに分かった。赤やピンクのけばけばしい入口の看板が目を引く。中に入ろうとしたら、ドアに鍵がかかっている。きっと、娼婦たちが逃げるのを防いでいるのだろう。


  ゴロタは、構わずドアを開ける。蝶番が跳ねとんでしまった。物音に起きたのか、数人の男どもが出てきた。中には、パンツを履かずに一物をぶら下げながら剣を持っている奴もいた。


  ゴロタが『威嚇』を掛ける前に、フェルマー王子が、全員の利き腕つまり、剣を持っている腕を切り落としていた。


  男達は、何が起きたか分からないまま、一生を片腕で過ごすこととなった。今の段階ではだが。


  「社長は、どこだ。」


  「どこの社長だ?」


  そういえば、さっきの事務所の名前を聞くのを忘れていた。社長の名前も分からない。フェルマー王子が口を開いた。


  「探しているのは、ザット商事の社長です。」


  さっき、看板を見ていたようだ。男たちは、こんな小学生に、自分の片腕が落とされたなんて信じられないという顔をしている。


  「答えたくないんですか?」


  フェルマー王子は、ショートソードを横に一閃した。男の内の一人の口が耳まで切裂かれた。やはり、出血は少ないが、一生鏡を見たくないだろう。


 「わ、わかった。言う。言うから、命だけは助けてくれ。」


  片腕を抑えながら、腰を抜かしている。もう、嘘は言わないはずだ。社長は、209号室、この宿の二階の一番奥の部屋らしい。ゴロタが、フェルマー王子にここで待っているように言った。きっと二階では、男と女の情事の後がいっぱいだろうから、教育上良くないと思ったのだ。


  フェルマー王子は不満だったが、仕方がない。二階はゴロタ陛下に任せて、この男たちを処理することにした。


  最初の男は、口も切裂かれた男だ。


  「あなたは、今まで何人の女の子を攫ってきましたか?」


  思いっきり『威嚇』を掛けている。普通、フェルマー王子の『威嚇』程度では、成人男子は怯えることはないが、さっきの剣裁きを見た後だ。恐怖にひきつった顔をして指を8本立てた。


  フェルマー王子は、深いため息を立てて、男の一物と右足1本を切り落とした。これで、この男は、一生、女性が逃げ出す顔と、片腕、片足かつ男性の楽しみのない人生を送るしかなかった。フェルマー王子は、男を店の外に追い出すと、次の男に聞いた。


  「あなたは、何人の女の子を攫ってきたのですか?」


  男は、『許してください。』と泣きながら懇願したが、フェルマー王子の『威嚇』に指を5本立てた。男の右足が切り落とされた。


  結局、5人の男たちの内、この男が一番軽傷だった。後は、両足と股間の一物をいっぺんに失った者ばかりだった。すべて、店の外に放り出された。邪魔だ。

  

  二階では、ゴロタが社長をいたぶっていた。部屋には、素っ裸の女2人が、目の下にクマを作っていた。ボンヤリとゴロタのやることを見ていた。


  この男は、逃げたベール侯爵に貢いでばかりで、大して金を持っていなかった。すべての支店の場所を聞いたので、もう用はなかった。両目、両手、両足それに股間の一物を失って、この男はこれからどうやって生きていくのだろうか。ゴロタには興味のない話だった。


  1階の事務室には、やり手婆がいた。薄いネグリジェから真っ黒な乳首が見えている。年は40位だろうか。この店で一番若い子を連れてくるように言った。やり手婆は、連れてくる振りをして、逃げようとしたが、シールドを這っているので、ゴロタ達が出そうとしなければ誰も出ていけない。


  あきらめた女は、2階から1人の兎人を連れてきた。素っ裸だった。ゴロタは、フェルマー王子を後ろ向きにさせて、外に出させた。


  この兎人の女の子は、まだ11歳だった。やり手婆あは、当然、11歳と知っていて商売をさせている。


  「お兄さん、こんなヒヨッコが趣味なのかい?」


  女の目玉が飛び出た。後、鼓膜に修復不能な大穴を開けてやった。


  この日、この売春街で保護した未成年娼婦は25人だった。すべて救護院に転送させた。後の娼婦は、自分たちで身の振り方を考えるように言った。


  借金や保証金はすべて無いものになったので、もう自由だと言ったら、何人かの娼婦が、ここにある店をすべて自分達でやらせて貰えないかと言ってきた。


  ゴロタは、組合を作り、選ばれた理事長が代表で申請するように言って、街を後にした。


  後は、この市の警察本部の仕事だ。フェルマー王子は、さっきからずっと泣き通しだった。ドミノちゃんを守れなかった悔しさと、今日、その仇をとれたことの嬉しさで泣かずにはいられなかったのだ。

  カーマン王国は、グレーテル王国に比べて文化レベルが低いようです。

  400話目ともなると、登場人物も多く、過去に登場した人物のプロフィールを検索するのに非常に手間がかかってしまいます。名前のミスはないようにしているのですが、もしあったらごめんなさいです。

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