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第397話 グレーテル王国王立音楽学院

コンサートは無事終了した。今日は、王立音楽学院の見学です。

(未だ12月21日です。)

  フェルマー王子とドミノちゃんは、王立音楽学院に来ていた。今日は、学校は休みだが、部活があるようで、色々な音が聞こえてくる。


  合唱だったり、ピアノだったり、管楽器だったり。校庭は、音楽で満ち溢れていた。2人はどこに行こうかと迷っていたが、今まで聞いたことのない音が聞こえて来た。音のする方に行ってみると、ある教室の中から聞こえて来ている。


  窓から覗くと、数人の学生が、変な楽器を弾いていた。大きなバイオリンのような形だが、弦が6本ある。胴体の真ん中には丸い穴が開いている。


  身体の前に横に構え、左手で弦を押さえ、右手で弾いている。綺麗な音色だ。2人で見ていると、中から声がかけられた。


  「君達、ギターに興味があるのかい?」


  急に声をかけられて吃驚した。あの楽器は、『ギター』と言うらしい。


  誘われて、教室の中に入っていった。皆が弾いていたのは、『500マイル』という曲だった。本当は、ギターと一緒に歌う曲らしいが、まず、ギターの練習をしているらしい。


  小さなギターを貸してもらったが、フェルマー王子には未だ大きかった。高音部分3弦のみの、押さえ方と弾き方を教えて貰って弾いてみる。


  いい音が出ない。まあ、しょうがない。初めて弾いてみたのだから。


  歌を歌ってみた。


  ♪あなたが列車に遅れたなら

  ♪貴方は知るのね 私が行ってしまったことを

  ♪私が乗った列車の汽笛が聞こえるかしら

  ♪100マイル向こうから

  ♪100マイル

  ♪100マイル

  ♪100マイル向こうから

  ♪汽笛が聞こえるかしら


  フェルマー王子は初めて歌ったが、楽譜があったので、すぐ歌えた。ドミノも、ギターを抱えて、アルペジオを引いて合わせて来た。


  フェルマー王子も、慣れないコードをコード譜を見ながら弾いている。30分位したら、ドミノちゃんが高音部をハモってきた。


  教室にギターのアンサンブルと2人の歌が響く。歌い終わったら、お兄さん達がポカンとしていた。


  あ、いけない。もう帰らないと。フェルマー王子が、お礼を言って、学院を後にした。帰りも、自然に手を繋いでいた。


  早めに外交館の待ち合わせ場所に戻って、自室にいたシェルさんにギターが欲しいとお願いした。すぐ楽器屋さんにいってギター2本を買って貰った。後、教則本と楽譜も買ってもらった。


  ドミノちゃんは、『アルカンヘル・フェルナンデス』と言うギターで、羊の腸の弦だった。もっと安いギターもあったが、店員さんがシェルさんの事を知っていたらしく、店で一番高いギターを買わされていた。


  フェルマー王子は、『マーチンD45』と言うギターにしたが、物凄く大きかったので、『OOー45』と言う少し小さめのシリーズのギターも、練習用に買った。弦はスチール製だったが、特に指が痛い事はなかった。


  シェルさんが支払ってくれたが、1千万ギル以上したらしい。最近は、ゴロタ帝立中央銀行の小切手で支払うので、重い金貨を持ち歩く必要が無いようだ。


  その夜、タイタン離宮の別館では、遅くまでポロンポロンとギターの音色が響いていた。


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  学校は、もう冬休みだったので、フェルマー王子は、自己鍛錬に集中できた。朝5時、暗いうちから早朝稽古だ。大剣木刀での1000本素振りは40分位で、出来るようになっていた。次に、大剣で明鏡止水流の古太刀の型をゆっくり練習する。


  長剣での型の練習は、2段を貰っているが、それを大剣でやるのは、全然違う。剣に振られてしまうのだ。


  それから、シルフさんとキティちゃんでダンジョンに入る。最近は、地下第5階層まで余裕で潜れるのだが、それ以上深いところは、シルフさんが許してくれない。


  キティちゃんが、男の子は行っちゃいけない所だと言っていた。


  午後は、ギターと歌の練習だ。手が小さいので、人差し指で、全ての弦を押さえる事が上手くできない。でも、コードを押さえてジャカジャカ弾いていると、それなりに伴奏になっている。


  夕方、ドミノちゃんとユニットの練習をする。ドミノちゃんは、ちゃんと曲になっている。才能って怖い。


  2人で歌っていると、シルフさんがレコード録音をしていた。直ぐに再生してくれる。それで補正をして、また歌うのだ。


  昔の『大工さん達』が、歌っていた曲を練習している。とても美しい歌ばかりだった。


  夕食後、フェルマー王子は、カテリーナさんに文字を教えている。もう、だいぶ書けるようになったが、発音がまだまだだった。『私』は、『アアイ』だった。


  ゆっくり練習する事にしている。文字と意味と発音が関連づけられていない様だった。


  シンシアちゃんは、お絵かきと書取りだ。もう小学校1年生レベルは完全にマスターしている。


  後、縦10行、横10列のマスがあり、上と横の数を足す練習をしている。毎日、10枚をやっているが、あっという間に終わってしまうようだ。


  キティちゃんは、『ミニMP5』の分解整備をしている。何が、面白いか分からないが、嬉しそうにしている。


  ドミノちゃんは、魔法学院大学も休みになり、1日、ピアノの練習だ。最近は、超絶技法よりも情景を大切にしているようだ。来年のコンクールには、高校生の部でエントリーするらしい。


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  今日は12月24日だ。フェルマー王子は、ゴロタ陛下と一緒に七面鳥狩りに出掛ける。最初に、ゴロタ陛下が見本を見せてくれる。『威嚇』で、気を失わせ、首を切って血抜きだ。終わるとシルフさんが、収納する。


  一番難しいのは、七面鳥を見つける事だ。ゴロタ陛下は、『気』を練って探査する方法を見せてくれた。やってみたが、全然出来なかった。未だ、気の練り方がチグハグだと言われた。


  昼前までに、フェルマー王子が10羽位、ゴロタ陛下が40羽位を狩った。


  離宮に戻ってから、七面鳥の下処理を手伝った。シェルさんが迎えに来た。もう、そろそろ聖夜コンサートの準備だそうだ。


  タイタン市音楽堂は、もう満杯だった。立ち見も入れて1500人位だろう。


  王都でのコンサートを再現する。自分でもビックリするくらい上手く歌えたと思う。


  前のコンサートと違ったのは、再アンコールで、ドミノちゃんと2人でギターを抱えてデュエットだった。例の『500マイル』を歌ったが、大好評だった。


  コンサートが終わってからのグッズ販売では、フェルマー王子の所にも、若い女の子が並んで、握手を求めている。クラスの女の子達も大勢並んでいた。


  夕方、聖夜のパーティーが行われたが、その場で、フェルマー王子とドミノちゃんのデュエットで『大工さん達』の歌のメドレーをした。


  『イエスタデイ・ワンス・モア』


  『トップ・オブ・ザ・ワールド』


  『プリーズ・ミスター・ポストマン』


  『シング』


  全て、昔の曲だったが、多くの人々から愛され続けた曲だった。フェルマー王子は、演奏を時々間違えたが、歌声の素晴らしさで補って余りあるものだった。


  ドミノちゃんの声も、可愛らしく小鳥のようだったが、声の伸びや心に響くフェルマー王子には敵わない。シルフが、ジッと聞いていて、何か思い付いたようだった。


  パーティーは終わった。2人はシェルとシルフさんに呼ばれた。来年、レコーディングをするそうだ。


  ユニット名は、『フェル&ドミノ』だ。とりあえずスタンダードナンバーを選曲する。全部で12曲を吹き込むらしい。


  30センチのレコード盤に吹き込むが、1枚3200ギルで発売する予定だと言うのだ。


  もう、完全に営業の目になっているシェルさんだった。


  ドミノちゃんが、来年の進学のことで相談してきた。この前まで、タイタン学院に新設される中等部音楽科に進学し、その後、ゴロタ帝国セント・ゴロタ市の帝立大学付属高等部音科学科に進学するつもりだったが、今はグレート王立音楽学院中等部に進学してみたい。この前の、見学で一層、その想いが強くなったそうだ。


  フェルマー王子も一緒に進学しても良い事になった。フェルマー王子は、金曜日の午後は、カーマン州連合の閣議があるので、その日は休講となるし、ドミノちゃんは、火曜日と木曜日に魔法学院での授業があるので、その時間は欠席になる。


  学校が認めてくれたら、進学しても良い事になった。


  フェルマー王子は、ドミノちゃんと王都で暮らせることになるので、なんとなく嬉しくなっていた。自分が、やりたいこととは違うような気がしたが、剣術については、明鏡止水流の総本部があるので、そこでシズさんに稽古をつけてもらえるし、ノエルさんやビラさん達、魔法学院の教授や助教授をやっている二人がいるので、魔法の練習も教えてくれるだろう。


  そして、歌うことについては、ミキさんという天才がいるので、自分にとってのデメリットは少しもない。今度の試験を頑張るつもりのフェルマー王子だった。


  音楽学院の受験は、1月だった。この試験に失敗しても普通科の学校を受験できるように早い段階での受験日が設定されている。もう、日があまりないので、受験勉強もあまりできないだろうが、学科については全く問題ない。ただし、音楽理論については、かなり勉強する必要があるため、ドミノちゃんに教わることにした。


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(12月30日です。)

  もう間もなく、2028年も終わろうとしている。今日は、カーマン州連合の今年最後の閣議だ。今日の議題は、新年の王城参賀についてだ。毎年、1月2日に、国民の王城参賀を行っていた。王城の正門の上の謁見台の上に王族が並び、国民の万歳三唱を受けるのだ。今年は、国王陛下と第二王子が欠席になってしまう。皇太子殿下も、実権を失っているのに、謁見台の上に立つのはどうかと思う。


  シルフが、提案したのは、ゴロタ陛下のご家族を整列させることだった。もうゴロタ帝国の一州になったのだから、その方が説明がつくということだった。でも、妻たちのほとんどは実家にかえっているので、どうしようかとなったが、メンバーは、厳選されているということで大丈夫となった。


  王城参賀の列席者は、ゴロタ皇帝陛下、フェルマー王子、カテリーナさん、シンシア王女。それにビラとフラン、ミキさんとレオナちゃん、キティちゃんだ。ドミノちゃんとデリカさんも参加することになった。デリカさん、もうモンド王国には帰りたくないそうだ。困ります。


  次の閣議は、全体会議とし、1月10日にタイタン離宮大広間で行うこととした。この閣議は、帝国全体の閣議となるので、議題も全国に共通のものとするようだ。

フェルマー王子は、人生を変える楽器に出会います。

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