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第390話 フェルマー王子は一生懸命です

フェルマー王子は、中学生レベルの剣の腕前を持っていますが、シズちゃんの前では、赤子同然です。

(11月24日です。)

  朝5時、タイタン市の朝は真っ白な霜に覆われている。その中、フェルマー王子は、ゴロタとシズちゃんの3人で裏庭にいた。早朝稽古だ。


  シズちゃんは、明鏡止水流の免許皆伝だ。総本部で、師範を務めているが、グレーテル王国騎士団の名誉大尉も務めている。以前は、正規な将校だったが、もう退役している。


  流石に、ゴロタ帝国の皇帝夫人の立場で他国の騎士団に在籍する訳には行かないらしい。しかし、道場は特に問題は無いので、師範を務めているそうだ。


  フェルマー王子も、明鏡止水流の2段を取得している。12歳で2段は、よほど筋が良いか裏技で取得したかだ。昇段試験は、同じ初段同士で3戦し2勝以上しなければならない。小学生では、普通、大人に勝てるわけがない。


  フェルマー王子は、『12の型』位は出来るが、未だシズちゃんには何も教わっていない。毎日、1時間、貸して貰った大剣の木刀を構えるだけだ。


  最初は中段つまり青眼に構える。それから、左足を前に出して上段に、決して剣先が下がらないように、上がりすぎないように。その姿勢のまま、右足を前にする。


  この繰り返しだ。1時間もやっていると、手が震え、腰が痛くなる。しかし、他に何も教わってないので、それだけをやっている。


  今日は、いつもよりも剣が軽く感じられる。剣の先が、余り震えない。自分では気が付かないが、昨日のダンジョンでのゴブリン討伐で、レベルが上がり、体力の数値もわずかに上がっていたのだった。


  早朝稽古が終わると、別館で食事だ。妹のシンシアちゃんとカテリーナさん、それにドミノちゃん親子とキティちゃんの6人で食事だ。時々、デリカさんも一緒だが、今日は食事は要らないと駄々を捏ねて婆やさんを困らせているようだ。カテリーナさん親子は、最近、本館から別館の2階に引っ越してきた。


  後、マリアちゃん親子がいるが、朝は別々だ。どうやら、クレスタさんがオッパイを上げるので、部屋から出てこないようだ。そう言えば、クレスタさんが食事をするのを見たことがない。いつ、食べているのだろう。


  カテリーナさんは、耳が悪いそうで、変な機械を耳に当てている。喋るのもうまく出来ずに、何を言っているか分からないが、シンシアちゃんは分かるみたいだ。


  時々、シルフさんが、カテリーナさんのこめかみに手を当てて、言葉を教えているけど、何をしているんだろう。


  朝食が終わると、ドミノちゃんと学校に行く。雨が降らなければ、歩いていくことにしている。1時間以上掛かるが、子供は歩かないと大きくならないそうだ。


  ドミノちゃんは、魔人族だが、優秀で、成績も学年トップらしい。特に魔法は、大人顔負けで、王国魔道士協会に誘われているらしい。でも、ゴロタさんの婚約者なので断っているとの噂がある。


  ゴロタさんは、身長もあるし、イケメンで、剣も魔法も常人離れしていて、とても狡いと思う。


  シェルさんが皇后陛下で、エーデルさん、クレスタさん、ビラさん、ノエルさん、フミさんそれにジェーンさんとフランさん、皆、正式な妻らしい。あ、シズさんもそうかな。


  みんな、すごく美人さんだ。その中でも、やはりシェルさんが特別に綺麗だと思う。妹のシルフさんだって、カーマン王国では見たことがない程の美少女だし。


  ドミノちゃんと自分は、タイタン学院大学付属初等部6年に通っている。この前のテストで、中学3年レベルの学力はあるらしいが、シェルさんの希望で小学校を経験した方がよいらしいそうだ。ドミノちゃんと一緒のクラスになった。


  クラスの男子は、自分よりも大きい子が多いし、虐められそうになる時があるんだけど、ドミノちゃんがいつも助けてくれるんだ。


  ドミノちゃんは、ピアノもうまいし、魔法も凄いし、身長は僕よりも小さいけどすごい女の子だ。顔だって、クラスで一番可愛いし。まあ、シルフさんほどじゃあないけど。


  今日は、体育の授業がある。一番嫌いな授業だ。走るのは遅いし。


  体格が違うのだ。自分は、母親に似たのかも知れない。だから、体力的に劣っていてもしょうがないと思う。今日は、『蹴球』だ。手を使っていいのは、ゴールを守る1人だけ。後は、ボールに手を触れたらアウトだ。


  いつもだったら、ボールに触れもしないのに、今日は違った。誰よりも早くボールに追いついてしまうのだ。ゴール前、キーパーのいない方に、思いっきり蹴った。


    ズバーーーーン!


  ボールが、ゴールの隅のネットを破って向こう側に抜けていく。


  「へ!」


  皆が、立ち止まってしまった。ゴールのホイッスルが鳴り響く。観戦していた女子の歓声が聞こえた。


  この日、フェルマー王

子は、3得点のハットトリックだった。


  お昼休み、女子に囲まれて、顔を真っ赤にしているフェルマー王子を、睨みつけている男子グループがいたことに気が付かないフェルマー王子だった。


  学校が終わり、いつものようにドミノちゃんと一緒に帰ろうとしたフェルマー王子に、さっきの男子達が声をかけてきた。


  「フェルマー君、ちょっと良いかな。」


  振り替えると、同じクラスの男子3人だった。特に怪しい雰囲気はない。サッカーを教えてくれと言ってきた。ドミノちゃんは、何も考えずに先に帰ってしまった。


  校庭の方に向かって行くと、途中で両腕をがっしりと掴まれた。校舎の裏に連れて行かれる。


  「おい、フェルマー。チビのくせに、今日は恥をかかせてくれたな。」


  フェルマー王子は、何の事かわからなかった。しかし、この状況はとてもまずい事は分かる。自分の目の前にいる男の子は、『ビル』と言うクラスで一番身体が大きく、いかにもガキ大将というタイプだ。


  「とぼけんじゃあねえぞ。今日、蹴球の試合で、お前ズルしたろう。魔法か何かを使ったんだろう。」


  言いがかりだ。何もズルなんかしていない。しかし、相手はそう思い込んでいるようだ。


  いきなり、ボディにパンチが飛んできた。胃の内容物が込み上げてくる。筈だった。あれ?痛くない。


  何ともなかった。腕を振って、両脇を掴んでいる手を振り解く。2人が、転んでいる。何もしていないのに。


  「てめえ、何をした。」


  ビルが、殴りかかってくる。遅い。これなら誰でもかわせる位遅い。フェルマー王子は、パンチの下を潜り抜け、相手の脇腹をチョンと押してから、一目散に逃げ出した。


  追いついて来れないように走り続けた。あれ、前にドミノちゃんが1人で歩いている。フェルマー王子は、走るのをやめて、一緒に歩き始めた。


  「あれ、フェルマー君。用事は終わったの?」


  「うん、終わった。」


  11月だと言うのに、少し汗をかいてしまった。帰ったら着替えよう。


  ゴロタは、イフちゃんを通して様子を見ていた。ニヤリと笑ったのが気になったのか、『どうしたの?』と、シェルが聞いてきた。


  「別に。」


  1人で、楽しんでいるゴロタだった。


  次の日の朝から、『気』の練り方についても練習することになった。


-----/-----------/-----------/---------


  今日は、カーマン州連合政府の閣議だ。当然、フェルマー王子も参加する。将来の太守大公爵という立場だ。


  今日の議題は、国防軍の再編と、司法制度の改革だ。フェルマーには、よく分からない。三権分立とか、平和の希求、文民統制とか言われても、この世界の新しい概念なので分かりづらい。


  シルフが、閣僚に説明しているが、今一歩分かっていないようだ。既に、帝国内では実施されている制度で、来年1月1日からは、カーマン州連合でも施行される法律だ。


  刑法、刑事訴訟法、民法、民事訴訟法、商法、会社法、行政執行法、税法、裁判所法、あと一体幾つ法律があるんだ。


  シルフさんは、分厚い本を出してきた。六法全書と書いてある。これは、絶対に無理だ。


  皆が、黙り込んでしまった。突然、宮廷長官が口を開いた。第二王子のウィルが、我儘を言い始めているらしい。


  どうしても父の仇を討ちたいらしい。諌めても言うことを聞かず、酒を飲むと剣を持って宮殿から飛び出ようとするらしいのだ。


  シルフが、いくつかの案を出した。


  1案 ゴロタ皇帝陛下と公開決闘をさせる。一番、簡単だ。


  2案 王籍を剥奪して、追放する。叛旗を翻す貴族ごと成敗できるので一石二鳥だ。


  3案 どこか遠くに、放逐する。随行者が可哀想。


  4案 父君と同じく、異次元に幽閉する。いつか、復活ができるだろう。


  討議の結果、4案に決定した。


  シルフが、ウィル王子に面会に行く。フェルマー王子、フォンデュ宰相、宮廷長官を同行する。


  ウィル王子は、昼間から酒を飲んでいる。大きな身体だ。父親譲りの鷲鼻と鳶色の眼だ。フェルマー王子とは、あまり似ていない。


  「何だ、フェルマーか。何の用だ?うん、後ろのかわい子ちゃんは、お前のガールフレンドか。」


  フェルマー王子は、顔が真っ赤になった。


  「初めてお目にかかります。私は、ゴロタ皇帝陛下にお仕えしているシルフと申します。」


  綺麗なカーテシを決めて挨拶をする。


  「ゴロタ?ああ、父の仇か。そのシルフが何の用だ。」


  「はい、今日は、前国王陛下と御面会頂きたく参じました。」


  これには、全員吃驚した。聞いてない。そもそも、国王陛下は死んでいないと聞いているだけで、生きているとの確信はなかったのだ。


  「何、父上と面会だと。馬鹿言うな。父は殺されたのだぞ。」


  「いいえ、死んでなどおりません。」


  空中に、大きな穴が開いた。その穴が、床まで降りた時、カーマン前国王が現れた。


  手には、あの手紙、


  『お命頂戴仕る。理由は胸に聞いて下さい。ゴロタ帝国皇帝ゴロタ』


  を持っている。


  「フォンデュ、儂はどうすれば良いのじゃ。逃げるか?逃げるぞ!」


  消えた時の続きだった。


  「父上、父上!」


  2人の王子は、父に抱きついた。もう涙が溢れている。人間性に問題があっても、愛する父だった。


  「なんじゃ。お前達。どこから現れた?」


  「フェルマー王子、お離れください。」


  シルフの声が、聞こえた。ヨロヨロと、父から離れるフェルマー王子、ウィル王子は、まだ抱き合っている。その姿のまま、2人は消えてしまった。


フェルマー王子は、身長が150センチにかけています。クラスでも最前列です。

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