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第374話 キティちゃんの林間学校

キティちゃんは、本当なら幼稚園の年長さんですが、年中さんよりも小さいかも知れません。5歳児位です。

(8月3日です。)

  今日から、キティちゃんは2泊3日の林間学校だ。キティちゃんは、本当は小学校入学前だが、特別飛び級で小学1年に転入となった。


  小学1年生ともなると、大きい子は身長130センチ近くの子もいる。キティちゃんは110センチ位だ。頭半分は小さい。しかし能力はレベル11だ。冒険者ランクなら『D』ランク該当レベルだ。普通の男の子では、全てにおいて全く敵わないレベルだ。


  最近、キティちゃんは首に翻訳機をつけていない。シルフの睡眠学習のおかげで、日常会話に不自由しないレベルで、グレーテル語の読み書きができるようになっていた。まして、周りはまだしっかり喋ることもできない小学1年生だ。だれもキティちゃんの喋り方がおかしいなどとは思っていない。


  友達は、まだいない。余りにも周りが幼すぎるのだ。マングローブ帝国の孤児院で、小さい子たちの面倒を見ていた状況が再現されており、皆も何か困ったことがあると、すぐにキティちゃんに相談する。完全にお姉さん状態だった。


  それに、キティちゃん、同じ年齢の子達と遊んだ経験がない。


  マングローブでは、ダンジョンで荷物持ちの手伝いをしていたので、遊ぶなどとんでも無かった。朝5時前に起きて、朝食の準備だ。午前8時には、冒険者組合に行って仕事を探す。仕事にあぶれると、孤児院に戻って勉強だ。シスターは、難しい問題を出してくれるが、何回も同じ問題が出されるので、直ぐに終わってしまった。


  後は、小さい子や、勉強ができない子へ教えてあげるのだった。それが終わると夕飯の準備と、水汲みだ。冬場は、お湯を少し沸かして、冷たい水と混ぜて使うが、平素は、水で体を拭く。それも3日に1回だった。


  食事は、粗末なものだった。朝は、硬いパンとお湯だ。お昼は、お芋かお豆の煮たのだけだった。夜は、やはり硬いパンと具の少ししか入っていないスープ。たまに差し入れのお肉やお魚があったが、何回にも分けて食べるため、量はわずかだった。


  年に何回か、朝のパンにミルクがつくことがあった。水で薄めてあったが、パンをつけてふやかして食べると、お口の中にミルクの香りが広がって、とても美味しかった。でも、ミルクは保存が効かないので、その日の夕方にはもう無かった。


  小学校の林間学校でも、皆は、お母さんか家族が付き添いだったが、キティちゃんは一人だった。シェルが同行すると言っていたが、仕事が忙しいのにシェルのために、2日も無駄にできない。分かっていたので、一人で大丈夫と言って断ったのだ。最初、一人ぼっちだった。旅の馬車では、保護者と児童は別の馬車だ。でも、キティちゃんの隣りには誰も座らない。担任の先生が、自分の隣の席に座るようにしてくれた。


  キティちゃんは、どうして皆が、自分の隣に来ないのか不思議だった。この『MP5』がいけないんだろうか。これは、私の守り神。絶対に離してはいけないと、しゅは仰ったの。


  お風呂に入る時以外は、いつも一緒。シルフ姉様が、身体から離すときは、『あんぜんそうち』を必ず掛けるようにと言われたの。私の指以外では、外せないんだって。平素も掛けているんだけど、引き金を引くと、自然と外れるようになっているの。


  先生も、最初は『持ってきてはいけない。』と言ってたけど、直ぐに諦めたようで、最近は何も言わないの。


  今日の林間学校は、ドミノちゃんもいないし、保護者もいない。自分一人だけだから、いつもよりしっかりしなくっちゃいけないんだ。


  宿泊場所は、街から馬車で2時間程の場所だったんだけど、馬車の速度が超遅いので、距離にしては大したことはなさそう。10キロ位かしら。馬車代が勿体無いわ。


  合宿場所に着いたら、直ぐにお昼の準備だったわ。。メニューは、クリームシチューとパンだって。皆は、お母さんと一緒にじゃがいもを向いたり、ニンジンを切ったりで苦労していたけど、私に任せて。このために、ミスリルナイフをゴロタお兄ちゃんから借りてきたの。ポイズンダガーは、ここに持って行ってはいけないってシルフさんに言われたから。


  あっという間に、ジャガイモ、ニンジン、タマネギにマッシュルームそれに鶏肉を切り終わったわ。ナイフの切れ味が抜群なんだもの。簡単、簡単。周りのお母さんたち、あっけに取られていたみたい。


  それから、お肉をお鍋で炒めてと。あれ、みんな火が付けられないみたい。ああ、そんな太い木に直接、火を点けようとするから、点かないの。貸してみて。


  いい、火はね、こうやって点けるの。松葉や枯れ葉を敷いて。その上に細枝を並べて。太い枝はその周りに置いておくの。魔火石で、小さな火を起こしてと。そういえば、タイタン市では、かまどには木を燃やさないみたい。魔火石が安いので、それで料理しているんだって。なんて勿体ないの。


  後は、風魔法で風邪を送ってと。シェル様にやり方を聞いたの。こう手を前に出して、風邪を送るイメージで手の先に集中するんだって。簡単。簡単。


  後は、お鍋を掛けて。油と一緒に炒めるの。バターを少し入れて風味を出して。野菜を炒めて塩、胡椒、後は小麦粉をバターで炒めてお湯で溶いたホワイトソースを混ぜて、最後にミルクと生クリームを入れて出来上がり。


  ついでにパンも少し炙って、甘いジャムとバターをつけて合わせれば、ジャムバターパン。


  先生、出来ました。あれ、先生、何しているんですか?他のグループの火を起こそうとして煙にむせているみたい。


  結局、キティちゃんが全ての竈門の火を起こしてあげた。シェル様に、使っちゃいけないって言われている火魔法もちょっとだけ使ってしまったけど、内緒にしておこう。女には秘密があるのって、誰かが言っていたような気がする。


  午後は、森の散歩だったけど、女の子達に囲まれて大変だったの。お母さんたちは、キャンプ地で井戸端会議よ。


  どこで料理を覚えたのって聞かれたから、『孤児院』って答えたら何人かの女の子が泣き出してしまったみたい。私、いけない事言ったかしら。孤児院って、とても怖いというイメージだったみたい。


  夕方は、仕出しのお弁当だったけど、とっても豪華。オカズだけで大きな箱いっぱいで、パンも今日焼いたフワフワパン。スープもコーンクリームスープだったの。パンとスープはおかわり自由よ。私、パンを3個にスープも3杯お代わりしたわ。


  夜は、お風呂があったの。大きなお風呂で、女子みんなが一度に入れたわ。寝るのも、大きな部屋で一緒に寝るの。皆は、お母さんと一緒に寝たいみたいで、何人かがお布団の中で泣き出していたわ。


  次の日は、午前中はお勉強だった。お勉強と言っても、お絵かきや積み木で遊んでいるだけ。これでは全く勉強じゃあないわね。


  午後は、森の動物を観察するの。仲良くなった女の子3人と一緒に森の中に入って、動物や植物の観察なんだって。昔は、魔物や危険な動物がいっぱいいたんだって。


  まあ、獣程度なら、私の『MP5』の餌食ね。森の中に入って、10キロ位行くと谷があるらしいんだけど、そこまでは小学1年生で行くのは無理みたい。


  先生からは、森の奥に行ってはいけない。南の開けた場所が見える所だけって言われていたの。


  森の中は、とても気持ちが良いわ。少し涼しいし、いろいろな動物がいるの。でも、みんなは、なかなか見つけられないの。私は、ウサギやリス、それにタヌキも見つけたわ。あと、ネズミも、いろいろな種類を見つけておいた。全部、メモするの。あとで、先生に報告するんだって。


  あと、鳥ね。みんな鳥を見つけられないの。あんなにはっきり見えてるのに、教えてあげないと見つけられないみたい。アカゲラにシジュウカラ、メジロにホオジロ、木の上にはオオタカもいたわ。あと、フクロウが高い樹の上に止まっていたの。ここは、鳥がいっぱい。きっと、今は食べ物がいっぱいあるのね。


  しばらく観察しながら歩いていたら、変な匂いがしたの。前のお国で、ダンジョンに近づいたときにした匂いよ。これは、どこからしているのだろう。弱い匂いだから、方向までは分らない。


  女の子を集めて、元来た道を帰るように言ったわ。この先は、きっと危険だからって。でも、森の奥の方から、男の子の悲鳴が聞こえてきた。あ、あれは、襲われている時の声だってすぐ分かったわ。


  皆には、すぐ森から出て貰いたかったけど、私と離れたら、もっと危険な気がしたので、私の後を付いて来て貰った。


  『MP5』を構えて、声のした方向に走っていったの。ミスリルナイフも腰にさしてあるし、きっと大丈夫よ。それに、早く行かなければ男子たちが危ない。


  すぐ現場に到着したの。魔物はレッサーウルフが1匹、男の子たちに迫っている。一人、草むらに倒れていたけど、『うんうん』うなっていたから、きっと大丈夫ね。男の子達は、固まって、震えていたの。誰もナイフを持っていないんだもん。これじゃあ、魔物のお昼とデザートだわ。


  私は、レッサーウルフの後ろから、『MP5』を連射したの。全弾、『爆裂弾』にして、思いっきり『気』を込めて打ち続けたわ。


  ババババババババババババババババババ!!


  次々と命中、外れ無し。すべて小爆発を起こして、レッサーウルフの毛皮がはげかかっている。というか、どんどん爆裂弾が肉をえぐっていったの。


  撃ち終わったときは、レッサーウルフは、横倒しで倒れてしまったの。すかさず、私はレッサーウルフののどをかき切ってとどめを刺したわ。ついでに魔石も回収しといた。あとは、その辺の葉っぱでナイフを綺麗にしたの。


  いけない。シルフ姉様に、『MP5』は、必要な時以外は撃ってはいけないと言われていたんだっけ。でも、きっと今が必要な時だったのよ。きっと、そうよ。


  怪我をしている子を見たら、太ももに咬み傷があったけど、大したことないわ。これなら、毒消草と消毒草を当てておけば大丈夫ね。すぐにその辺から拾ってきて手当てをしてあげたの。包帯がなかったので、男の子のシャツをナイフで切って、包帯代わりにしたわ。


  もう、立って歩けるはずなのに、歩こうとしないの。ショックが大きかったみたいね。しばらく待っていたら、先生が3人とお母さん達が現れたの。先生は、ナイフを持っていたけど、お母さんたちったら、その辺の木の棒よ。あれで魔物を倒せるわけないわ。


  先生が男の子を背負って、キャンプ場まで戻ったんだけど、その子のお母さん、ずっと泣いているの。『ごめんね。ごめんね。』って。謝るのは男の子の方だと思うけど。


  当然、一番最後は、私だったわ。あのレッサーウルフの仲間がいるかも知れないし。ずっと『MP5』を構えて、歩いていたの。


  後で、先生に『MP5』を見せてあげたわ。調べたいんですって。中に入っている『BB弾』も調べたけど、どう見ても玩具にしか見えないんだって。


  うん、玩具だもん。でも、気を込めると、この弾が自由に曲がるし、当たると爆発するの。なぜかは知らないけど、前のダンジョンで、何回も使っているうちにそうなったみたい。


  それから、ミスリルナイフも見られたわ。黒い皮のカバーで隠していたけど、カバーを外されたら、高価なミスリルナイフだという事がばれたみたい。でも、ナイフは先生達や何人かの男の子も携行しているので、何も言われなかった。まあ、ゴロタ様の縁者だという事もあったみたい。


  あとで、シェル姉様に学校に来るように伝えてもらいたいと言われたの。あれ、私、怒られるのかな?

キティちゃんはしっかり者です。働き者です。

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