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第373話 災厄の神は諦めました。

久しぶりにリトちゃん登場です。

(7月20日です。)

  デビタリア市の辺境伯邸のでリトちゃんは、『魔王』の顕現を知った。強欲の神、ベルゼブブがなるはずだった王だ。この世界には、天上界、地上界、魔界そして冥界がある。リトちゃんは天上界から地上界に災厄をもたらすために転生してきた。しかし、ゴロタ、つまり全てを統べる者があまりにも強大なため、次世代まで待つことにしたのだ。


  しかし、その全てを統べる者が魔王だったなんて、絶対違反だ。自分には、もうどうしようもない結末しか待っていないことが分かる。


  かつて魔人族と人間族が争った事があった。その時、、『魔王』が顕現した。魔人族は、狂喜乱舞した。わが主が現れたと思ったのだ。しかし、なぜか『魔王』は、魔人族を滅ぼしたのだった。理由は分からない。あれは『魔王』ではなく、『全てを統べる者』だったという伝承もある。あの時、この星が無くなるのではないかと思われるほどの災厄だった。災厄の神の存在がケシ飛ぶほどの威力だ。


  今、『全てを統べる者』が『魔王』になった。ということは、過去のあらゆる事象が説明できる。今、ゴロタの行動基準は単純だ。弱い者が救われない社会、自分が大切にしている者が迫害されている社会を許さないのだ。


  リトちゃんは、今年の6月で3歳になった。口は、赤ちゃん言葉ではなく幼児言葉を話している。もう、オッパイは吸っていない。母親が、家庭教師を付けてピアノと算数を習わせている。くそ面白くもないが、子供らしさをアピールするためには、間違う必要があった。わざと間違えるのも面倒くさいものだった。ピアノは、天上界で最近流行ってきたので、いちおう弾けることは弾けるが、はっきり言って練習する価値もない。


  リトちゃんが、天上界で『アスモデウス』だった時、特異な楽器は竪琴だった。しかもかなり大きい。竪琴に比べたら、ピアノなど児戯に等しい。楽譜など、ある程度のルールさえ覚えれば、こんなに弾き方がすぐ分かるものはない。


  『子供のバイエル』と『子供のハノン』は、簡単すぎるが、まあ、手も小さいので、たどたどしく弾くことにしよう。その方が可愛らしいはずだ。


  『色欲の神』として、もっと扇情的な曲を弾きたいのだが、当分は我慢をしよう。


  算数は、小さな色のついた玉を数えたり、足したり引いたりするのだが、わらわを馬鹿にしているのか。あ、これだってあまり簡単にできると、天才少女とか言われて注目されてしまうので、注意深く時間をかけてこなしている。


  最近のお気に入りは、この宮殿内の乱れた男女関係だ。人間というのは、今も昔も、一日中、あの事ばかり考えておる。


  乳母が、しばらく姿を見ないなと思うと、体から精液と淫水の匂いを発散しながら帰ってくる。相手は、すぐに分かった。執事のじじいだ。乳母の淫水の匂いがプンプンしているのだから。今、何をやっていたかすぐにわかるのじゃ。


  あと、メイド達じゃ。父親のデビタリアの手が付いているのが3人、それに若い執事とできているのが2人いる。


  あと、あらゆる所で卑猥な思念が飛び交っている。昔から、人間など皆同じじゃな。


  ピアノの教師だけは、処女じゃ。まだ若いからか、経験は無いし、男の居ない学校だったのじゃろう。若い執事が勃起させて近づいてきても、全く気がつかないようじゃ。


  可哀想なので、男に射精をプレゼントじゃ。あはは、股間を押さえて逃げていったわい。


  わらわが散歩に行くと、街のあちこちで犬や猫が盛りおるのじゃ。乳母やメイドは顔を真っ赤にしておる。


  わらわは決して力を振るってなどおらぬぞ。低級な獣は、直ぐ感応してしまうのじゃ。まあ、犬猫でも行為中の思念は美味じゃから放っておくが。


  本当は、使途を使って、この魔人の国全てを喰らい尽くすと、気持ちが晴れるのじゃろうが、そんな事をしたら、直ぐにあの男にバレてしまうわ。ここは、100年位は我慢しておこう。


  そう言えば、この前変な男に会ったのう。わらわをじっと見ていたのじゃ。幼女趣味でも無さそうだし。真冬だと言うのに、黒のマントだけで寒くないのかのう?


  しかし、あの男、人間ではないな。何だか記憶がありそうで無さそうで。誰だったかのう。思い出せんわ。


  まあ良い。3歳の幼女に思い出せるわけ無いのじゃ。


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   名前を言ってはいけない男は、モンド王国のデビタリア市にいた。姿は、ちゃんとツノが生えている魔人族のものだった。



  この前は、参ったわ。まさか『全てを統べる者』が現れるなんて、聞いてまへんわ。と言うか、あの『ゴロタ』ちゅう名前やったかな、ゴッツ強うおますで。ワテの渾身の一撃を躱した奴なんて、初めてでっせ。


  ワテの剣、もうボロボロやわ。まあ、研がなくても直ぐに綺麗になるんやからええけど。


  地上界であんなん強いの、違反ちゃいますのん?


  まあ、どっか行ってるベルはん程じゃあおまへんけど。


  この街はいい街やな。色気があるやんけ。これは、あれやな。あいつが近くにおるねん。名前、なんちゅうたかな。あのスベタ。


  まあ、ええわ。とりあえず、寝るところや。日の光の入らんところや。あ、あの教会なんかどやろ。まさかワテが教会にいるとは思いせんやろ。それに、教会には、仰山シスターがおるやろ。皆、シモベにしたる。


  あれ、シスターはどこにいるんや。この教会、ブラザーだけやないか。ワテ、その気はないんや。悪いけど。


  その男は、シスターのハーレムは諦めて、教会の祭壇の地下に安置室をつくった。その安置室には、粗末な木製の棺が安置された。


  安置室の入り口には、封印の術式が描かれている。この安置室の存在が、人に知られる事は無かった。


-----/----------------/--------------/------


  リトちゃんにお友達ができた。同い年の男の子だ。隣の男爵屋敷の子だ。母親同士が、仲が良かったようだ。


  リトちゃんは、いい暇つぶしと思い、いろいろ遊んでやった。まあ、ウサギ程度の知能しかない、人間の子だ。操るのに造作はない。


  最初、追いかけっこをした。リトちゃんは、3歳女子相当の体力しかないが、知能が高いので、同年齢の子供に負ける事はない。


  逃げている男の子は、直ぐ捕まってしまうし、追いかけても絶対に捕まらないので、すぐに飽きてしまった。


  仕方がないので、ボール遊びをする。これはリトちゃんの独壇場だ。コントロールといい飛距離といい、3歳男児は全く敵わない。決してリトちゃんが体力的に優れているわけではない。しかし、ボールを投げたり受けたりする理屈を覚えているのだ。


  男の子は直ぐに飽きてしまった。リトちゃんは、少し頭に来た。何をやっても、直ぐ飽きてしまう。これでは上達する訳もあるまい。


  こんな阿呆人間は放っておいて、乳母と話をする。


  「ねえ、婆や。さっきはどこに行っていたの?」


  当然、知っていたが、からかうのも面白い。乳母は、目を伏せて口をモグモグしている。漸く口を開いた。


  「先程は、執事長とお話をしていました。」


  「何のお話?」


  「色々です。大人のお話ですが、お嬢様には申し上げられません。」


  「秘密?」


  「はい、秘密でございます。」


  「フーン、じゃあ、婆やはさっき、執事長と大人の秘密だったんだ。」


  婆やは、顔を真っ赤にして、否定していた。


  「わーい、秘密、ひみつ。大人の秘密。男と女の大人の秘密。」


  リトちゃんは、大きな声で叫びながら、屋敷の中を走り回った。この後、婆やと執事長は暇をとって出ていくことになってしまったが、リトちゃんは、何も感じていなかった。


  リトちゃんには使徒がいる。昔から、この家で買われている猫だ。名前は『ペル』と言う。本当に普通の猫だが、使徒として隷従させた時から、リトちゃんのそばを離れなくなった。


  この世界では、犬やネコは10年は生きられない。栄養不足や寄生虫により、7年以上生きるのは珍しいのだ。


  しかし、ペルは11歳になるが、全く健康だった。と言うか、肉体的には5歳の壮年期だ。リトちゃんの使徒になると言う事は、神の加護を得ていると言う訳だ。


  リトちゃんは、ペルに命じて、屋敷内を探索させている。ペルが見ているものは、リトちゃんも見えるのだ。


  さっき、執事長の執務室で、机に手をついて尻を持ち上げている婆やを、後ろから突き上げている執事長の姿をはっきり見ていた。


  終わった後、醜く萎びれている一物を、口に咥えて綺麗にしている婆やの姿もだ。そんな口で、フウフウと冷ました食事など願い下げだ。


  結局、婆や達は、明日、出ていくことになった。二人で、何やら良からぬ相談をしている。リトちゃんのせいで、お屋敷を首になったと、逆恨みをしているようだ。


  まあ、あの程度のレベルなら、怖くも何ともないが、リトちゃんが直接手を掛けるわけにはいかない。正体がバレては、元も子もない。


  ここは、ペルに頑張ってもらおう。ペルは、長い尻尾を振ってリトちゃんの命令を聞いていた。


  次の日、婆やと執事長は屋敷の前で、喉を噛み裂かれて絶命していた。衛士隊の話では、『大型の猫型魔物に襲われたのだろう。』と言う見立てだったが、真相は分からず仕舞いだった。


  リトちゃんは、新しい婆やに抱かれてお昼寝中だった。  

災厄の神は、きっと目的を果たすことはできないでしょう。

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