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第360話 旅を再開しました。

旅は、駅馬車です。昔の冒険者の雰囲気を味わうためです。

(6月9日です。)

  朝、シタさんのご両親をシンカ村に送り出してから、駅馬車乗り場まで行く。本当は必要ないが、テントなどが入ったザックを背負っている。シェルは、LとVの紋様が入っている小さなザックを背負っている。ハンカチ、ティッシュー、鏡とブラシしか入っていない。ザックの上から、『ヘラクレイスの弓』を背負っている。


  キティちゃんは、お菓子の入ったポシェットだ。騎士服が可愛らしい。


  シェルは、冒険服を着ているが、シルクの冒険服って。また特注しましたね?


  ゴロタは、いつもの麻と木綿の冒険服だ。背中に『オロチの刃』を背負うのだが、馬車に乗るので、右手に携えている。


  馬車は、8人乗りだ。4人が左右に分かれて座る。椅子は木製のベンチだ。ずっと座っていると、お尻が痛くなる。シルフ以外は、少し椅子から浮かせて座る。『念動』製エアクッションだ。


  旅の同行者は、身なりの良い商人夫婦だ。帝都で商売をしているが、里帰りでフロッグタウンに来ていたらしい。今日は、隣の村まで行って温泉に入るそうだ。


  旦那さんは、ベゼさんと言い、饒舌な人だった。キティちゃんは可愛いだの、これからどこに行くのと聞いていたが、腰に下げているナイフに話が移った。


  この剣は、どうしたのか聞いてくるので、キティちゃんが、


  『拾ったの。』


  と何も考えずに話してしまった。シェルが、ダンジョンのドロップ品だと説明したら、金貨1枚以上もしそうなナイフをこんな子に預けてと叱られてしまった。


  キティちゃんがベソをかき始めたので、話は中断したが、次は、シェルの着ているオーダーメードの服と背負っているLとVのザックの話になった。


  この国では見ない商品だと言うのだ。また、絹はこの国でもあるが、シェルの着ている服は、極端に光る絹を使っている。この国の織り機では出来ないようだ。


  ベゼさんは、何とかして西の大陸と交易できる方法はないかと言うのだが、現状では難しいのだ。距離的な問題は何とかなるだろうが、赤道付近で発生する大型の嵐が邪魔をするのだ。


  ゴロタのジェットフォイル船なら、交易もできるかもしれない。嵐を回避しても、帆船の半分の日数で航海できるからだ。


  ベゼさんは、帝都に来たら、是非、うちの店に寄ってくれと言う。店の名前は『ベゼ・タウン・ショップ』と言うらしい。


  夕方、隣村についた。小さな村だった。宿屋も、民家に毛の生えた様な物だったが、家庭的な雰囲気のいい感じの宿だった。


  親父さんは、かなりの年配だったが、自分で狩って来た獣を捌いて料理する。


  今日は、鹿肉の燻製と猪鍋だ。山鳥の唐揚げも絶品だった。キティちゃんも、どこに入るのかと思うほどたくさん食べている。


  シェルは、山葡萄のワインがお気に入りだ。この地方は、ワインに蜂蜜を混ぜて、発酵を促進する。アルコール度数が高いのだ。飲み過ぎると大変な事になると思ったが、すでに遅かった。


  酔っ払ったシェルを抱き上げて、2階の客室に運ぶ。今日は、お風呂は無しだ。シェルを布団に転がした後、一人で風呂に行く。この辺は温泉が湧くらしく、大きな風呂があった。


  ゆっくり湯船に浸かっていたら、キティちゃんが入ってきた。頭が洗いたいらしい。子供は、直ぐに汗臭くなる。


  ゴロタが、キティちゃんの頭と背中を洗ってやっていたら、シクシクと泣き出した。どうしたのか聞いたら、お兄ちゃんにこうやって洗って貰っていたらしい。それを思い出してしまって、泣いてしまったようだ。


  部屋に戻ると、シェルがスッポンポンで寝ていた。ちょうど良かった。洗濯石で身体を綺麗にしてあげる。パンツだけは履かせて、毛布をかけてやる。もう23なのに、胸は相変わらずだった。未だにブラジャーをしていない。


  シェルの隣に寝たら、キティちゃんが、反対側から抱きついてきた。ゴロタが、頭を撫でていたらしい、直ぐ眠ってしまった。寝言で『お兄ちゃん』と言っている。お兄ちゃんに抱かれて寝てる夢でも見ているのだろう。


  翌朝、シェルは、朝風呂に入っていた。ゴロタは、いつもの剣の稽古だ。キティちゃんはまだ寝ている。


  シルフは、何かを一生懸命作っている。最近は、シルフのやることには、口を出さない事にしている。『それは、何。』と聞いたら、30分は知らない言葉で説明が始まるからだ。


  この日、ベゼさん達は馬車に乗って来なかった。ゴロタ達4人で、馬車に揺られる。窓の外を見ていたキティちゃんも、飽きてしまったのか、居眠りを始めている。シェルは、最初から眠っていた。


  この国では、警護も御者が兼ねている。御者席に2人、後部に3人が座れる席が設けられている。皆、それなりの腕を持っているのだろう。


  早速、その腕を見せてくれる場面が来た。森の中から、野盗が10人程現れたのだ。ゴロタは、随分前から知っていたが、御者達には、さすがにそれほどの探知能力はない。


  進路を塞がれているので、馬車を走らせて逃げる訳にも行かない。仕方なく止まった馬車から、御者達が飛び降りる。


  ゴロタ達もゆっくり馬車を降りる。キティちゃんも危ないから、一緒に降ろした。キティちゃん、ナイフはしまおうね。危ないから。


  御者達は、かなり強かった。リーダーらしい人は、もう2人倒している。後は、混戦だ。野盗の一人が詠唱を始めた。ゴロタは、『デスペル』を掛ける。魔法詠唱は中断された。


  うん、全体的には、いい勝負だが、御者さんに死なれたら困る。シェルが、3本の矢をつがえて放った。野盗のうち、大男から3人が、胸に深々と光の矢を受けて絶命した。御者さん達も野盗もこちらを見た。誰が射ったのか確認したのだろう。一気に形勢が逆転した。1対1なら決して負けないだろう。


  もうゴロタ達は見ているだけだった。


  野盗が、残り2人になった時、脱兎の如く逃げ出した。しかし逃さない。先に回り込んでいたシルフの『MP5』が、乾いた音を立てて掃射された。夜盗は殲滅された。


  御者さん達が戻ってきた。何人かが怪我をしていた。シルフがポーションを飲ませている。


  この国にもポーションはあるそうだが、高価で貴重品なので、普通は薬草を煎じて飲むだけだそうだ。


  馬車は、何事もなかったように出発した。乗客が野盗などと戦うのは普通のことなんだろう。駅馬車代は、女性の方が2割高かったのはそのせいだ。戦えない女性を守り切るのは大変だからだ。


  今夜は、夜営だ。森の開けたところに夜営スポットがあった。レンガで積まれたコンロがあった。御者さん達は、干し肉と乾パンだ。この辺は、何も変わらない。


  ゴロタは、テントを張ると、夕食を狩に行く。直ぐそばに猪の親子がいる。近づいていくと、気がついたようで逃げ出すが、子供の猪を1匹だけ戴く。後、ヤマドリを2羽落として、野営地に持ち帰った。シェルが鍋にお湯を沸かしている。


  直ぐに、下処理をして、干し野菜と一緒に猪を煮る。調味料は、コンソメと醤油だ。美味しそうな匂いがする。鍋が出来上がる前に、ヤマドリを真っ二つにして、タレにつけておく。フライパンでバター焼きだ。


  残ったバターは、パンを焼くのに使う。シナモンを掛けて出来上がりだ。猪鍋も出汁が出て良い味だ。


  流石に、テーブルは出せないから、キャンピングマットに皿を直置きで食べていた。御者さん達がこちらを見ている。いつものパターンだ。山鳥は余分がない、猪鍋は、たくさん作ったのでお裾分けだ。皆で舌鼓を打つ。


  食後、今日の戦いの話になった。シェルの弓の話だ。矢を持っていないのに、なぜ打てるか聞いてきた。シェルが、魔法の一種だと言って誤魔化した。


  次に、シルフの『MP5』の話題になった。シルフが、最近、西の大陸で開発された武器だと言っていた。うん、間違っていない。嘘は、言っていない。


  次の日、日の出と共に出発すると言うことだったので、山鳥の残りでサンドイッチを作っておいた。


  相変わらず、シェルは料理を一切しない。皆が、寝静まってから、3人でお風呂に入りにいく。森が深いので、周囲をシールドしておいた。キティちゃんを洗うのはゴロタの役目になった。


  テントに戻ったら、寝袋の中に二人が入ろうとしてきた。流石に無理があるので、寝袋は諦めて、マットに毛布をかけて眠る事にした。


  また、キティちゃんはお兄ちゃんと一緒に寝ている夢を見ているようだった。


シェルは、相変わらずチートでした。ゴロタは、キティちゃんの『お兄ちゃん』になりました。

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