第353話 デリカ王女の我儘
デリカ王女が押し掛けてきました。これで、正規の王女は3人となりました。みんな我儘で残念なお姫様でした。
(5月10日です。)
デリカちゃんが、タイタン離宮に来てから1週間経った。シェル達が説得しているが、言うことを聞いてくれない。
お付きのメイドさんは、ドミノちゃんの例もあるので、注意して見ていたところ、きちんとメイドの仕事をしている。また、見た目が若く見える小人種だったが、どう見ても30歳以上に見えるので、もう騙されることはないだろう。
更に、婆やさんだが、どう見ても婆やさんだ。いつも紺色のロングドレスにエプロンをしている。デリカちゃんの行動にいつも文句を言っているが、デリカちゃんは、全く聞く気が無いようだ。
デリカちゃんは、デビちゃん達と同い年だから、本当は高校2年生だが、モンド王国では、家庭教師から教わっていたみたいだ。
王族は、巨人族でなければなれないので、デリカちゃんの両親も、当然、巨人族だった。デリカちゃんも、まだ16歳だが170センチ以上ある。
仕方がないので、モンド王国に行って、国王陛下の意向を確認することにした。
シェルと二人で行って、デリシャス・デル・モンド4世国王夫妻に会見を申し入れた。以前は、謁見を申し込んでいたが、皇帝となった現在、国主同士は会見となるのだ。ゴロタ達は、直ぐに国王の私室に案内された。女王陛下も同席している。
デリカちゃんをどうするのか聞いたところ、『出来るならば婚約して貰いたいが、それが無理ならタイタン州に留学という形で面倒を見て貰えないか?』と言われた。滞在経費は、婆やとメイドの経費も含めて、月にグレーテル金貨1枚を支払うそうだ。
シェルが、『婚約することは無いと思うが、本人の気持ちはどうなんですか?』と聞いた。
この質問には、女王陛下が答えた。
「4年前、初めてゴロタ殿とお会いしてから、熱に浮かされたようにゴロタ殿をお慕いしていたようです。二年半前、デビちゃんが引き取られて行った時には、自分も行くんだと言って、ずっと泣き続けていたんです。見ているだけで、かわいそうで。」
女王陛下は、ハンカチを目に当てて泣いていたが、シェルが念話で『嘘泣きよ。』と、伝えてきた。困った方達だ。絶対に政略結婚をさせようとしている。
しかし、国王陛下から留学させてくれと言われたら、無碍には断れない。渋々承諾した。滞在経費については、前払いとしてグレーテル金貨24枚を預かった。大学進学は、別途相談とした。
しょうがない。タイタン離宮に戻ったゴロタ達は、デリカちゃん達と話し合うことにした。
デリカちゃんは、帝立タイタン学院高等部2年に編入させるが、明日、編入試験を受けてもらう。学力が足りなければ、相当学年まで引き下げだ。メイドと婆やは月に大銀貨3枚を支給する。
デリカちゃんの住まいは別館にするが、デリカちゃんだけ1階に住まわせる訳にはいかないので、ドミノちゃん親子の部屋の隣の部屋に入って貰う。婆やさんとメイドさんは、現在の別館執事さんやとメイドさんと同じように使用人棟に入居し、そこから通って貰う。1日の労働時間は8時間なので、厳守してもらう。まあ、デリカちゃんが学校に行っている間は、基本、仕事がないので大丈夫だろう。
一応、ゴロタの預かりという形なので、婆やさん達はデリカちゃんの面倒だけ見ていただきたい。
料理は、シェフとメイドで作るので、給仕だけして貰う。後、洗濯とデリカちゃんの部屋の掃除も自分達でやって貰う。
婆やさんには、月に大銀貨3枚を預けるので、必要なものやデリカちゃんのお小遣いに当てて貰う。足りない時は、シェルに行ってくれればお渡しするので、遠慮無く言って貰いたい。
デリカちゃんはニコニコ聞いている。婆やさんは、待遇の良さに吃驚している。
毎月の国元からの経費で、残るのは大銀貨1枚だけだ。これで学院の授業料と3人の食費、住居費を引くと完全に赤字だが、これでゴロタのことを諦めてくれれば安いもんだと思うシェルだった。
翌日、デリカちゃんは、帝立タイタン学院高等部2年の転入試験を受けることとなった。
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デリカちゃんは、非常に不機嫌だった。
何故、私に転入試験なんか受けさせるのですか。今まで、試験なんか受けたこと無いのに。大体、この『学校』、バカでか過ぎですの。こんなに広いと、迷ってしまいますです。あ、どこに行くのか、分からないですの。大体、メイドのダブリンを連れていってはいけないなんて、シェル様も酷すぎますですの。
あ、あの子に聞いてみよう。
「すみませんですの。高等部は、どこですの?」
「ここは、中等部ですよ。高等部は、校舎を出て、道路の反対側、林の向こうです。」
「ありがとうですの。」
もう、何で学校の中に林があるの?絶対、意地悪ですの。もう、遅刻してしまいますわ。
あ、あれね。まあ、大きいこと。『郷』の宮殿よりも大きいのじゃないかしら。とにかく、行ってみましょう。シェル様の話では、ゲートを出たら、直ぐだからと言っていたけど、2つも学校があるなんて仰って下さらないんですもの。迷ってしまいましたわ。
あ、ここだわ。えっと、職員室に行くのね。職員室は?
あった。『職員室』って書いてありますの。中に入って良いわよね。
「すみませんですの。試験を・・・」
「お、やっと来た。デリカテッセン・ミゼル・モンド君だね。僕は、今日の転入試験担当のフィリップだ。遅かったね。」
道に迷ったなんて、とても恥ずかしいのですの。黙って下を向いていようですの。
「とにかく、試験室へ行こう。ついておいで。」
試験室?何、それ。試験専門の部屋があるのですか?あ、この会議室ね。でも、広すぎですの?この学校、空間の無駄遣いね。
最初は、え、能力測定?何か、恐い。この機械に指を入れるのね。うん、あ、痛い。何これ?針で刺されたじゃない!
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【ユニーク情報】
名前:デリカテッセン・ミゼル・モンド
種族:魔人族
生年月日:王国歴2012年4月5日(16歳)
性別:女
父の種族:魔人族
母の種族:魔人族
職業:王族
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【能力情報】
レベル 3
体力 260
魔力 30
スキル 60
攻撃力 10
防御力 90
俊敏性 260
魔法適性 土
固有スル
【威嚇×】
習得魔術 なし
習得武技 なし
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「あれ?おかしいな。高校2年って聞いていたんだけど。君、今年、高校入学かい?」
「学校には、行ってないですの。先生が宮殿に来てくれたのですの。」
「自宅学習か。しょうがない。転入と言うことだったので、この問題集しか用意しなかったんだよね。兎に角やってみて。」
「分かったのですの。」
「時間は3時間。それでは、始め。」
試験は、始めてですの。でも、宮殿でも、3か月に1回は、似たようなテストを受けていたのですの。簡単だわ。最初は、数学ね。因数分解は、2年前に習ったは。簡単、簡単。次は、ベクトルね。これも簡単。
3次方程式の問題も、公式に当て嵌めてと。次は、三角関数の証明問題か。これも2年前に終わったわ。最後は、微分・積分の応用問題ね。えーっと。何々?
『次の3次方程式が重解Aを持つとき, 定数Cの値を求めよ。』
か。方程式はっと。あ、これ、去年やったところじゃない。簡単、簡単。
次は、国語ね。バカにしてるですの。綴りをかけなんて。小さい子供だって書けるのですわ。
理科も簡単。簡単っと。最後は、地理・歴史ね。先生に世界史を習ったのですの。5つの災厄だって、グレーテル王国歴で覚えましたの。地理は好きだったの。行ったこともない国々の事が学べるなんて。いつか、ゴロタ様の、あの銀色の飛行艇で世界中に行ってみるのですの。それって、もしかして新婚旅行?キャッ!
デリカちゃんは、試験中であることを、完全に忘れ、想像の翼を目一杯広げていた。転入試験の学科は、満点だった。
お昼は、別館に戻って食べることにした。いつもは、食後はお昼寝の時間だったが、今日は、学校に戻り、実技試験だ。体操着に着替えて、学校に転移した。
この体操着って、とても恥ずかしいわ。胸のポッチが分かってしまうじゃない。それに、下はパンツですの。下着で歩いているみたいで、とっても恥ずかしいわ。みんな、こんな姿で、恥ずかしく無いのかしら?
午後の最初の試験は、魔法の試験ね。私は、巨人族の王族には珍しく魔力もありますの。呪文は知らないけど、何とかなるわね。えーと、最初は、魔法で何かすれば良いのね。良かった。簡単なのね。
手の平を前にかざして、『炎』をイメージするのね。炎よ。あ、出来た。
デリカちゃんの前の空間に、炎が燃え上がった。
次は、風ね。『風』の渦巻きをイメージすれば良いのね。風よ。
デリカちゃんの前で燃え上がっている炎が渦巻いて上っていく。
フィリップ先生は、驚いて、魔法を中止させた。このままでは、学校が燃えてしまう。
魔法実技の試験は中止となった。次は、体力測定だ。これは、デリカちゃんが圧倒していた。今までは、ブリちゃんが、断トツ1位だったが、それ以上の身体能力だった。
転入試験は終わった。校長先生が、高校で教えることは何も無いと言ったが、シェルが、学校生活を体験さたいといったので、無理矢理1年生のクラスに転入させられたデリカちゃんでした。
デリカちゃん、異常です。これ迄に無いくらい異常です。これで冒険なんかに出たら、世界の女性冒険者1番になるかも。